第112回(R8)保健師国家試験 解説【午後11~15】

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11 A市では、市で作成した人材育成マニュアルに従い、保健師の現任教育を実施している。
 A市が行う新人保健師の職場外教育(Off-JT)はどれか。

1.退職保健師が指導者として家庭訪問に同行する。
2.A市の保健師による面接事例の検討会に参加する。
3.プリセプターと3歳児健康診査の問診を実施する。
4.A市を管轄する保健所主催の新人保健師研修会に参加する。

解答

解説

職場外教育とは?

・Off-JT(職場外教育)とは、職場を離れ、研修室や外部機関などで計画的に行う教育訓練である。実務から一時的に離れ、知識や理論、専門技能を体系的に学べる点が特徴である。

・OJT(On-the-job-Training:現任訓練、職場内訓練)とは、職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法であり、経験豊富な職場の上司や先輩が、実際の業務を題材に若手社員や後輩に知識や技術を計画的に伝えることで、研修やマニュアルだけではなかなか実践につながらない知識・スキルを身につけることができる。

1.× 退職保健師が指導者として家庭訪問に同行する。
これは、OJT(On-the-job-Training:現任訓練、職場内訓練)に該当する。なぜなら、家庭訪問同行は、実務を通して学ぶため。

2.× A市の保健師による面接事例の検討会に参加する。
これは、OJT(On-the-job-Training:現任訓練、職場内訓練)に近い概念である。なぜなら、職場内で実務に即した学習を行っているため。

3.× プリセプターと3歳児健康診査の問診を実施する。
これは、OJT(On-the-job-Training:現任訓練、職場内訓練)に該当する。なぜなら、実務を通して学ぶため。

4.〇 正しい。A市を管轄する保健所主催の新人保健師研修会に参加する
これは、Off-JT(職場外教育)に該当する。なぜなら、日常業務の場を離れて、外部機関である保健所が主催する新人保健師研修会に参加する教育であるため。

 

 

 

 

12 健康評価尺度の信頼性に関する説明で正しいのはどれか。

1.同意撤回や無回答による対象者の偏りがないこと。
2.評価したい健康の概念が正しく評価できていること。
3.健康度を評価した海外の事例と類似した結果が得られること。
4.同一対象者に対して間を空けず複数回測定して類似した結果が得られること。

解答

解説

信頼性とは?

信頼性とは、同じ対象を繰り返し測定した場合の測定値のばらつき、いわば測定の再現性に関わる概念である。偶然誤差を評価する指標となる。誤差はランダムに生ずる。つまり、真値との相関はない。

1.× 同意撤回や無回答による対象者の偏りがないこと。
これは、選択バイアスや脱落バイアスの説明である。たとえば、健康意識の高い人だけが回答し、健康状態の悪い人や関心の低い人が無回答になると、結果が実際より良く見える可能性がある。

2.× 評価したい健康の概念が正しく評価できていること。
これは、妥当性の説明である。
・妥当性とは、測定値のばらつきとは関わりなく、一定方向への偏りを示す系統誤差を評価する概念である。

3.× 健康度を評価した海外の事例と類似した結果が得られること。
これは、外的妥当性比較可能性に関係する内容である。なぜなら、海外事例と似た結果になるかどうかは、文化、対象者の背景、医療制度、生活習慣、翻訳の適切性などにも影響されるため。

4.〇 正しい。同一対象者に対して間を空けず複数回測定して類似した結果が得られること
これは、健康評価尺度の信頼性に関する説明である。同じ対象者に対して、同じ健康評価尺度を複数回実施したときに、結果が大きく変わらなければ、その尺度は信頼性が高いといえる。

 

 

 

 

13 令和4年度の後期高齢者医療制度の運営における医療給付の財源負担で正しいのはどれか。

1.後期高齢者による保険料は全体の約2割を占めている。
2.後期高齢者が医療機関を受診したときの自己負担額は無料である。
3.国、都道府県および市町村による公費が全体の約5割を占めている。
4.後期高齢者支援金は45歳以上75歳未満の者の医療保険料から拠出される。

解答

解説

(※図引用:「医療費の現状」東京都後期高齢者医療広域連合様HPより)

1.× 後期高齢者による保険料は、全体の「約2割」ではなく約1割を占めている。残りの約9割は、公費(税金)で約5割、現役世代(若年層)からの支援金で約4割が賄われる仕組みとなっている。

2.× 後期高齢者が医療機関を受診したときの自己負担額は、「無料」ではなく1~3割(所得に応じて)である。令和4年10月1日から、一定以上の所得がある75歳以上の人などは窓口負担が1割から2割へ変更され、現役並み所得者は引き続き3割負担である。

3.〇 正しい。国、都道府県および市町村による公費が全体の約5割を占めている。後期高齢者医療制度の医療費は、窓口負担を除き、概ね 公費約5割、現役世代からの支援約4割、高齢者本人の保険料約1割 で賄われる。公費部分は、国・都道府県・市町村が 4:1:1 の割合で負担する。

4.× 後期高齢者支援金は、「45歳以上75歳未満」ではなく75歳未満の現役世代が加入する各医療保険から拠出される。

 

 

 

 

14 地域共生社会の実現を目指して、令和2年の社会福祉法の改正によって創設された重層的支援体制整備事業で、一体的に実施する支援の3つの柱に含まれるのはどれか。

1.在宅医療と在宅介護の情報共有に関する支援
2.多世代が活躍できる地域づくりに向けた支援
3.構想区域における病床の機能分化・連携の支援
4.すべての高齢者を対象にした介護予防の継続支援

解答

解説

(※引用:「誰一人取り残さない社会に向けて」厚生労働省様HPより)

重層的支援体制整備事業の3つの柱

①相談支援:属性を問わず相談を受け止める。
②参加支援:社会とのつながりを回復・形成する。
③地域づくりに向けた支援:多世代交流や地域のつながりをつくる。

1.× 在宅医療と在宅介護の情報共有に関する支援は、重層的支援体制整備事業の3つの柱には含まれない。なぜなら、在宅医療と在宅介護の情報共有に関する支援は、主に地域包括ケアシステムに関連する内容であるため。

2.〇 正しい。多世代が活躍できる地域づくりに向けた支援は、重層的支援体制整備事業の3つの柱に含まれる。
・地域づくりに向けた支援とは、単に困っている人を相談窓口につなぐだけでなく、地域の中に人と人とのつながり、居場所、参加の機会をつくる支援である。

3.× 構想区域における病床の機能分化・連携の支援は、重層的支援体制整備事業の3つの柱には含まれない。なぜなら、構想区域における病床の機能分化・連携は、地域医療構想に関連する内容であるため。

4.× すべての高齢者を対象にした介護予防の継続支援は、重層的支援体制整備事業の3つの柱には含まれない。なぜなら、すべての高齢者を対象にした介護予防の継続支援は、主に介護保険制度の一般介護予防事業に関連する内容であるため。

 

 

 

 

15 平成25年に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針」に示される「都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁の保健衛生部門等に配置された保健師」の活動はどれか。

1.地区住民組織の育成
2.住民への総合相談の実施
3.保健師の需給計画の策定
4.広域的かつ専門的な保健サービスの提供
5.ソーシャルキャピタルの核となる人材の育成

解答

解説

地域における保健師の保健活動に関する指針

「都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁の保健衛生部門等に配置された保健師」の活動

(1)保健活動の総合調整及び支援を行うこと。
ア保健師の保健活動の総合調整等を担う部署に配置された保健師は、住民の健康の保持増進を図るための様々な活動等を効果的に推進するため、保健師の保健活動を組織横断的に総合調整及び推進し、人材育成や技術面での指導及び調整を行うなど統括的な役割を担うこと。
イ保健師の保健活動の方向性について検討すること。
ウ保健師等の学生実習に関する調整及び支援を行うこと。

(2)保健師の計画的な人材確保を行い、資質の向上を図ること。
ア保健師の需給計画の策定を行うこと
イ地方公共団体の人材育成指針に基づき、職場内研修、職場外研修、人材育成の観点から異なる部門への人事異動、都道府県と市町村(保健所設置市、特別区を含む。)間等の人事交流及び自己啓発を盛り込んだ保健師の現任教育体系を構築し、研修等を企画及び実施すること。
ウ現任教育の実施に当たり、地方公共団体の人事担当部門、研究機関、大学等の教育機関等との連携を図り、効果的及び効率的な現任教育を実施すること。

(3)保健師の保健活動に関する調査及び研究を行うこと。
(4)事業計画の策定、事業の企画及び立案、予算の確保、事業の評価等を行うこと。
(5)所属する部署内の連絡及び調整を行うとともに、高齢者保健福祉、母子保健福祉、障害者保健福祉、医療保険、学校保健、職域保健、医療分野等の関係部門及び関係機関とのデータ等を含め密接な連携及び調整を行うこと。
(6)災害時を含む健康危機管理における保健活動の連絡及び調整を行うこと。また、保健師を被災地へ派遣する際の手続き等についてあらかじめ定めておくこと。
(7)国や都道府県等の保健活動に関する情報を関係機関及び施設に提供すること。
(8)国民健康保険団体連合会や看護職能団体等の関係団体との連携及び調整を行うこと。
(9)国や地方公共団体の保健活動の推進のため、積極的な広報活動を行うこと。
(10)その他、当該地方公共団体の計画策定及び政策の企画及び立案に参画すること。

(※引用:「地域における保健師の保健活動について」厚生労働省様HPより)

1~2.× 地区住民組織の育成/住民への総合相談の実施は、主に市町村に所属する保健師が住民に身近な場で行う地区活動であるため。

3.〇 正しい。保健師の需給計画の策定は、平成25年に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針」に示される「都道府県、保健所設置市、特別区及び市町村の本庁の保健衛生部門等に配置された保健師」の活動である。
・需給計画とは、地域の保健活動に必要な保健師数を見込み、採用・配置・育成を計画的に進めるための計画である。

4.× 広域的かつ専門的な保健サービスの提供は、主に都道府県保健所等に所属する保健師の活動である。

5.× ソーシャルキャピタルの核となる人材の育成は、地域に根ざした市町村保健師都道府県保健所等の活動である。
・ソーシャルキャピタルとは、地域の健康課題解決のための資源のことである。ソーシャルキャピタルが醸成されることで高まる地域の力を考えることが重要である。人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念である。

地域における保健師の保健活動に関する指針

地域における保健師の保健活動に関する指針
①地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
②個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
③予防的介入の重視
④地区活動に立脚した活動の強化
⑤地区担当制の推進
⑥地域特性に応じた健康なまちづくりの推進
⑦部署横断的な保健活動の連携及び協働
⑧地域のケアシステムの構築
⑨各種保健医療福祉計画の策定及び実施
⑩人材育成

【活動領域に応じた保健活動の推進】
~都道府県保健所等~
都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほか、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図ること。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を積極的に行うよう努めること。

~市町村~
市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。

(一部抜粋:「地域における保健師の保健活動に関する指針」厚生労働省HPより)」

 

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