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※問題の引用:厚生労働省より
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。
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105回 午前
60 生活技能訓練<SST>について正しいのはどれか。
1.退院支援プログラムの1つである。
2.診断を確定する目的で実施される。
3.セルフヘルプグループの一種である。
4.精神分析の考え方を応用したプログラムである。
解答1
解説
社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。
1.〇 正しい。退院支援プログラムの1つである。生活技能訓練(SST)は、退院後の社会生活の中での困りごとを想定し、解決していくための技能を訓練していく。対人関係能力(あいさつ・人の要求を丁寧に断る・謝るなど)や生活技能などを高め、退院後の地域生活や社会復帰を支えるプログラムのひとつである。外来でも行われており、厳密には退院支援のためだけのものではない。
2.× 診断を確定する目的で実施されていない。なぜなら、生活技能訓練(SST)は社会復帰に向けたリハビリテーションの一つであるため。
3.× セルフヘルプグループの一種ではない。セルフヘルプグループとは、何らかの共通した問題や課題を抱えた人やその家族たちが主体となり、互いに支え合う自主的に活動するグループのことである。生活技能訓練(SST)は、看護師や作業療法士などの医療専門職が参加する。
4.× 精神分析の考え方を応用したプログラムではない。生活技能訓練(SST)は、認知のゆがみ(ものの考え方の誤り)に気づかせ、少しずつ行動を変容させる認知行動療法の考え方を応用したプログラムである。精神分析とは、フロイトにより開発され「自由連想法」によって無意識のうちに抑制されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせるものである。
自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。同じ悩みをかかえる人々がコミュニティをつくって交流するもので、例えば、青年期のひきこもり状態にある者の支援として、同じような健康課題への対処能力を高めるために活動するグループをつくることが有効である。
105回 午後
66 山村部で地震による家屋倒壊と死者が出た災害が発生し、3週が経過した。避難所では、自宅の半壊や全壊の被害にあった高齢者を中心に10世帯が過ごしている。
高齢者の心のケアとして最も適切なのはどれか。
1.認知行動療法を行う。
2.自分が助かったことを喜ぶよう説明する。
3.地震発生時の状況について詳しく聞き取る。
4.長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
解答4
解説
・山村部での地震(地震家屋倒壊と死者)
・3週経過
・避難所:被害の高齢者10世帯が過ごしている。
→現在、地震後3週間経過し、避難所生活が始まっていることから、災害サイクルでいうと【災害復旧・復興期~災害前の状態に戻るまで】に該当する。災害状況としては、①慢性疾患の増悪、②疲労による体調不良、③仮設住宅等への転居、④新しい環境での孤立となり、保健活動は、①巡回健康相談、②廃用症候群・閉じこもり・孤立死の予防・対策、③心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対応、④新たなコミュニティづくりの支援、⑤職員の健康管理、⑥通常業務の再開など行っていく。
1.× 認知行動療法を行う時期ではない。なぜなら、被害にあわれた高齢者10世帯が同じ悩みや不安とは限らないため。ちなみに、認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
2.× 自分が助かったことを喜ぶよう説明する必要はない。なぜなら、避難所の方たちも自宅の半壊や全壊の被害にあわれているため。無理やりの感情の抑制は、ストレスと与えかねない。
3.× 地震発生時の状況について詳しく聞き取る必要はない。なぜなら、かえって心理的侵襲(不安・ストレス)となるため。
4.〇 正しい。長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。なぜなら、話せる場をつくることで、人と話して楽になったり、抱え込むことがなくなるため。不安を表出することが出来るよう援助する。心のケアチームとは、精神科医を中心としたメンバーで構成される精神医療チームである。平成23年の東日本大震災の際には、被災地に多くの医療チームが派遣され、救護・支援活動を行った。災害後にみられる主な精神症状は、①再体験(フラッシュバック):心的外傷の原因となった出来事を繰り返して思い出したり、悪夢をみたりする症状、②回避:心的外傷の原因となった出来事を連想させることや関連することを避けようとする、③過覚醒:神経が高ぶった状態が続き、不安や不眠が強く現れ、集中することが困難となることが見られやすくなる。
心的外傷後ストレス障害とは、大規模な災害や事故の現場、他人の悲惨な死など、心理的に大きなストレスを受ける状況下に居合わせた場合、1か月以上心的外傷による障害が持続した場合に生じる。典型的な症状として、①感覚や情動の鈍化、②心的外傷を想起するような状況の回避、③再現的で侵入的な回想(フラッシュバック)や悪夢、④過覚醒、⑤驚愕反応の亢進などが認められる。
107回 午後
61 精神科デイケアの目的で最も適切なのはどれか。
1.陽性症状を鎮静化する。
2.家族の疾病理解を深める。
3.単身で生活できるようにする。
4.対人関係能力の向上を目指す。
解答4
解説
精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。
1.× 陽性症状を鎮静化より優先度が高いものが他にある。なぜなら、陽性症状を鎮静化は、主に薬物療法で行われるため。例えば、統合失調症の陽性症状とは、幻覚、妄想、自我障害など、患者さんが体験するものである。精神科デイケアでは、多くの人が集まる場所であり、ストレスと刺激にさらされる可能性がある。
2.× 家族の疾病理解を深めるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、家族の疾病理解を深めることは、主に心理教育プログラムで行われるため。基本的に、精神科デイケアが対象にしているのは患者本人であるため、家族へのアプローチは難しい。ちなみに、心理教育プログラムとは、病気の概要や治療方法・経過を知ることで病気に対する理解を深め、今後の日常生活での対処法、再発防止について学ぶものである。
3.× 単身で生活できるようにするより優先度が高いものが他にある。なぜなら、精神科デイケアの利用者の目的はさまざまであるため。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。一概に利用者全員「単身で生活できるようにする」ことを目的としていない。
4.〇 正しい。対人関係能力の向上を目指す。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。ちなみに、社会生活技能訓練(SST)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。
111回 午前
66 認知行動療法で患者に期待できる効果はどれか。
1.物事の捉え方のゆがみが修正される。
2.自ら催眠状態に導くことができるようになる。
3.過去の自分の態度についての自己洞察が深まる。
4.自分の状態をあるがままに受け入れることができるようになる。
解答1
解説
認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
1.〇 正しい。物事の捉え方のゆがみが修正される。認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知のゆがみとは、①全か無か思考、②一般化のしすぎ、③心のフィルターなどの思考の偏りである。
2.× 自ら催眠状態に導くことができるようになるのは、「催眠療法」の説明である。催眠療法とは、人為的に催眠状態を作り出し、直接的な暗示によって症状の除去や情動カタルシス(心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること)、自然回復力の賦活などを目指すものである。解離性障害の治療に用いられる。
3.× 過去の自分の態度についての自己洞察が深まるのは、「内観療法」の説明である。内観療法とは、自分が身近な人からしてもらったことや、迷惑をかけたことなどを繰り返し想起して(これを「見調べ」という)自己洞察力を深める方法である。人間関係の不和を誘因とした、不登校、出勤困難、神経症、うつ病、依存症、心身症などが対象である。
4.× 自分の状態をあるがままに受け入れることができるようになるのは、「森田療法」の説明である。森田療法とは、目的・行動本意の作業を繰り返すことにより、症状にとらわれず、症状を「あるがまま」に受け入れながら生活できるようにする方法である。強迫症(強迫性障害)、社交不安症(社交不安障害)、パニック症(パニック障害)、広場恐怖症(広場恐怖)、全般性不安症(全般性不安障害)、身体症状症(身体表現性障害)、病気不安症(心気症)、長引くうつ病、不登校・ひきこもりなどが対象である。