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21 Aさん(28歳、初産婦)。妊娠16週0日。分娩予約の目的で病院を1人で受診した。外来受診時に助産師は、Aさんの顔面の出血斑に気付き、ドメスティックバイオレンス〈DV〉を疑った。
このときの助産師の対応で適切なのはどれか。
1.顔面の出血斑の原因を聞く。
2.ソーシャルワーカーを紹介する。
3.配偶者暴力相談支援センターに連絡する。
4.次回の妊婦健康診査時にDVスクリーニングを行う。
解答1
解説
・Aさん(28歳、初産婦、妊娠16週0日)
・分娩予約の目的で病院を1人で受診した。
・助産師:Aさんの顔面の出血斑に気付く。
・ドメスティックバイオレンス〈DV〉を疑った。
→ドメスティックバイオレンス〈DV〉や虐待についての質問は、家族のことや周りの評判にもつながりかねないことから扱いに細心の注意を要する(センシティブ)な内容となるため、答えにくい質問である。したがって、closed-ended question(閉じられた質問)が有効である。closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。
1.〇 正しい。顔面の出血斑の原因を聞く。ドメスティックバイオレンス〈DV〉や虐待についての質問は、家族のことや周りの評判にもつながりかねないことから扱いに細心の注意を要する(センシティブ)な内容となるため、答えにくい質問である。したがって、closed-ended question(閉じられた質問)が有効である。closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。Aさんは1人で受診しており、プライバシーの守られた環境下でドメスティックバイオレンス〈DV〉が疑われる顔面の出血斑の原因を聞く。
2~3.× ソーシャルワーカーを紹介する/配偶者暴力相談支援センターに連絡するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、現時点では助産師がドメスティックバイオレンス〈DV〉を疑っている状態であるため。つまり、ドメスティックバイオレンス〈DV〉と確定したわけではない。原因が確定し必要に応じてソーシャルワーカーや配偶者暴力支援センターへ紹介する必要がある。ちなみに、ソーシャルワーカーとは社会福祉士や児童福祉司など社会福祉支援活動を行う人の総称である。
4.× 次回の妊婦健康診査時にDVスクリーニングを行うより優先度が高いものが他にある。なぜなら、次回の妊婦健康診査は1か月後となることが考えられ、その際に付き添いがいて正直に話せない可能性もあげられるため。ちなみに、DVスクリーニングとは、DVを受けている可能性がある人を早期発するための検査のことである。この検査を実施する際は、女性のプライバシーが守られる場所で、かつパートナーや 他の家族を同席させずに、女性が一人のときに行う必要がある。
22 助産所について正しいのはどれか。
1.開設した場合は所在地の市区町村長に届け出る。
2.分娩を扱わない助産所でも産後ケアを行える。
3.開設者は助産師でなければならない。
4.入所者数の上限は12名である。
解答2
解説
助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
1.× 開設した場合は、所在地の「市区町村長」ではなく都道府県知事(開設地が保健所を設置する市や特別区の区域にある場合、保健所を設置する市区町村長)に届け出る。これは医療法の開設許可(医療法第8条)に規定されており、助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に、助産所の所在地の都道府県知事(その開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。以下同じ。)に届け出なければならないとされている。
2.〇 正しい。分娩を扱わない助産所でも産後ケアを行える。「母子保健法の一部を改正する法律」の施行についてより、産後ケア事業は努力義務となっており、分娩を扱わない助産所でも産後ケアを行える。ちなみに、産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)
3.× 開設者は助産師でなければならないという規定はない。これは医療法の開設許可(第7条第1項、第4項)に規定されており、助産師でないものが助産所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。都道府県知事は、開設許可の申請があった場合において、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が省令の定める要件に適合するときは、許可を与えなければならないとされている。また、助産所の管理者は助産師でなければならない。
4.× 入所者数の上限は、「12名」ではなく10名である。医療法第14条では、助産所の管理者は同時に10人以上を入所させてはならないと定められている。ただし他に入院、入所させるべき適当な施設がない場合においては臨時応急のための入所は除外される。(※参考:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)
(※参考:「助産所について」厚生労働省HPより)
23 大規模災害が発生した。病院は停電・断水となった。建物の倒壊はない。入院中の褥婦に退院先の状況を確認したところ、全員から、停電・断水中だが居住可能な場所に退院する、との返答があった。
明日退院予定で混合栄養を行う褥婦に説明する内容で適切なのはどれか。
1.児は退院まで新生児室で預かる。
2.哺乳瓶の代わりに紙コップも使用できる。
3.母乳分泌量に関わらず母乳栄養は中止する。
4.調乳にはミネラルウォーター(硬水)を使用する。
解答2
解説
・大規模災害が発生した。
・病院は停電・断水となった。
・建物の倒壊はない。
・入院中の褥婦に退院先の状況を確認。
・全員「停電・断水中だが居住可能な場所に退院する」との返答。
→災害時も母乳育児が推奨されている。赤ちゃんを育てているご家庭で災害時においても普段と変わらない授乳ができるよう「~いつもの授乳を災害時にも~赤ちゃんのための授乳ハンドブック」というものが江戸川区HPより確認できる。①母乳育児の方の災害時における注意点、②粉ミルク授乳の際に気を付けること、③液体ミルクの災害時における活用について、④紙コップでの授乳方法、⑤避難時の持ち出し品リストなどが記載されているので目を通しておく。
(※図引用:「~いつもの授乳を災害時にも~赤ちゃんのための授乳ハンドブック」江戸川区HPより)
1.× 児は退院まで新生児室で預かる必要はない。なぜなら、母子は明日退院予定であり、退院まで新生児室で預かってしまうと、母乳育児ができず母子とも精神的ストレスがかかるため。また、災害もある中で母子での退院後の生活がイメージできず困難になることが予測される。
2.〇 正しい。「哺乳瓶の代わりに紙コップも使用できる」と明日退院予定で混合栄養を行う褥婦に説明する。断水中は哺乳瓶が準備できないこともあるため、哺乳瓶の代わりに毎回清潔に使い捨てできる紙コップも使用できることを説明する。紙コップでの授乳はまずは児の上体をまっすぐ起こした状態かやや傾いた状態で抱き、紙コップの縁が児の上唇に触れるように与える。ミルクが上下の唇に少し触れるようにすると、児は自分でミルクを飲み始める。この時ミルクを流し込まないように注意する。
3.× 母乳分泌量に関わらず母乳栄養は中止する必要はない。一時的に母乳の量が減ったり、出ないように感じても、母乳は体の中で作られ続けている。水分や栄養をできる限り取りながら、いつも通りのペースで授乳を行う必要がある。また、断水している中では粉ミルクを作ることが困難なこともあり、母乳の方があげやすいため母乳栄養を中止する必要はない。
4.× 調乳には、「ミネラルウォーター(硬水)」ではなく、硬度の低い軟水を使用する。なぜなら、児は消化器官が未熟なため。ミネラル分の多い水では腎臓に負担がかかり、消化不良を引き起こす可能性がある。また抵抗力や免疫力の弱い児を菌から守るために70度以上で調乳する。
24 出生前に行われる遺伝学的検査について正しいのはどれか。
1.検査後に遺伝カウンセリングを開始する。
2.マススクリーニングとして実施される。
3.確定的検査と非確定的検査がある。
4.妊娠22週以降には実施しない。
解答3
解説
インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P79」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
1.× 遺伝カウンセリングを開始するのは、「検査後」ではなく検査前・後である。特に、検査前に遺伝カウンセリングを行い、インフォームドコンセントを得て実施することが染色体検査や遺伝子検査の手順に明記されている。ちなみに、遺伝カウンセリングとは、19世紀末から20世紀初頭の優生学の反省に端を発した遺伝性疾患に関する悩みを抱える当事者に対する医療行為の1つである。専門の医師や遺伝カウンセラーなどが遺伝学的情報を家族に説明するとともに心理的支援や社会的な支援を総合的に提供するものである。遺伝カウンセリングでは染色体や遺伝子が関与している生まれつきの病気や特性・体質に関する様々な問題について相談できる。
2.× マススクリーニングとして実施されていない。出生前検査は、すべての妊婦にとって必ずしも必要な検査ではなく、特に遺伝学的検査は子宮内の胎児についての情報を得て周産期管理に役立てることなどが目的である。ちなみに、マススクリーニングとは、「マス=集団」、「スクリーニング=検査」という意味で、「マス・スクリーニング」は全員が受ける検査という意味である。
3.〇 正しい。確定的検査と非確定的検査がある。遺伝学的検査とは、染色体疾患、遺伝性疾患に関する検査で①確定的検査と②非確定的検査がある。①確定的検査は、胎児・母体に対して侵襲的で診断の確定に用いられる検査で、羊水検査や絨毛検査(CVS)がある。②非確定的検査は、母体血を用いた非侵襲的で非確定的な検査である。妊娠中期母体血清マーカー検査、妊娠初期コンバインド検査、出生前遺伝学的検査(NIPT)がある。
4.× 妊娠22週以降には実施しないといった明記はない。特に、遺伝学的検査は妊娠10週以降が対象である。検査によって検査対象、検査時期、検査感度・特異度が異なる。検査は妊娠22 週以降でも実施できるが、妊娠中後期からは母体の血液中の児由来のDNA濃度が減少することがあり、精度は低下する。
非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT:Noninvasive prenatal genetic testing)とは、お母さんの血液中には胎盤を通して赤ちゃんのDNAが10%程度混ざっているため、お母さんから血液を採血し、DNAの断片を分析することで赤ちゃんに染色体疾患があるかどうかを検出する検査方法である。この検査で検出できるのは、21トリソミー症候群(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つの染色体の数的異常症である。その他の染色体疾患や遺伝子異常の検査はできない。
【NIPTの検査】
①保険の適用にはならない。(20~25万円前後)
②対象:出産予定日の年齢が35歳以上の方、染色体疾患に罹患した児を妊娠もしくは分娩した経験のある方。
③検査期間:妊娠10週~22週の間。
④検査:遺伝カウンセリングが行われる。
⑤お母さんから血液を20cc採血し2~3週間後に結果が 陽性 / 陰性 で判定される。
25 分娩誘発・促進の方法で正しいのはどれか。
1.メトロイリンテルの挿入後、子宮収縮薬を併用する時は30分あける。
2.プロスタグランジンF2αは気管支喘息の合併妊婦には使用できない。
3.吸湿性頸管拡張材は子宮収縮薬投与中であっても使用できる。
4.プロスタグランジンE2錠は30分後に1錠追加できる。
5.オキシトシンの開始時投与量は5〜15mIU/分である。
解答2
解説
(※図引用:「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020」日本産科婦人科学会より)
1.× メトロイリンテルの挿入後、子宮収縮薬を併用する時は「30分」ではなく1時間以上あける。メトロと子宮収縮薬を併用する場合は、挿入時から1時間以上分娩監視装置で観察を行った後に投与する。ちなみに、メトロイリンテルとは、子宮口が開かない際に挿入する器具であり、挿入が容易で産婦の苦痛も少ない上に効果も大きいため陣痛誘発にも用いられている。
2.〇 正しい。プロスタグランジンF2αは、気管支喘息の合併妊婦には使用できない。プロスタグランジンF2αは、妊娠末期における陣痛誘発・陣痛促進・分娩促進の目的で静脈内注射投与により行われる。気管支を収縮させ、喘息発作を悪化または誘発する恐れがあるため、気管支喘息の合併妊婦には禁忌となっている。
3.× 吸湿性頸管拡張材は、子宮収縮薬投与中は使用できない。吸湿性頸管拡張材は、子宮収縮薬投与前の使用が効果的な陣痛を促す。吸湿性頸管拡張材は頸管内の水分を吸って徐々に子宮口を押し広げる器具であり、子宮口が硬い場合や分娩誘発時に使用される。子宮収縮薬は子宮口が開いていない場合、有効な陣痛が起きない可能性があるため、器械的に刺激して子宮口が開いてから投与することが望ましい。
4.× プロスタグランジンE2錠は、「30分後」ではなく1時間ごとに1錠追加できる(※上図参照)。プロスタグランジンE2錠は妊娠末期における陣痛誘発並びに陣痛促進の効能がある。通常1回1錠を1時間毎に6回、1日総量6錠(ジノプロストンとして3mg)を1クールとし、経口投与する。
5.× オキシトシンの開始時投与量は、「5〜15m IU/分」ではなく、「1〜2m IU/分」である。オキシトシンは子宮収縮の誘発、促進並びに子宮出血の治療目的で使用される。分娩誘発・促進目的の開始時の投与量は1〜2m IU/分から開始し、陣痛発来状況と胎児心拍等を観察しながら適宜増減していく。なお点滴速度は20m単位/分を超えないようにする。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P245」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)