第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後46~50】

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46 成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいのはどれか。

1.乳び漏:眼気
2.術後出血:ドレーン排液の白濁
3.反回神経麻痺:口唇のしびれ
4.低カルシウム血症:テタニー

解答4

解説

甲状腺機能低下症状

甲状腺機能低下症状は、甲状腺ホルモン減少により、皮膚の乾燥、疲労感、眠気、むくみ、無気力、月経異常、便秘、体重減少などが起こる。甲状腺ホルモンにはエネルギー産生作用があり、基礎代謝率を上昇させる。

1.× 乳び漏と眼気との直接的な関連はない。乳び漏とは、脂肪分を多く含んだ白色のリンパ液が漏出することである。甲状腺全摘出術によりリンパ管や胸管が損傷することにより、腸管にて吸収された脂肪(カイロミクロン)を含むリンパ液が漏出した状態となる。したがって、乳び漏は、選択肢2.ドレーン排液の白濁と関連する。
2.× 術後出血は、「ドレーン排液の白濁」ではなく、ドレーンから血性排液血液が認められる。ちなみに、ドレーン排液の白濁は、選択肢1.乳び漏の所見である。
3.× 反回神経麻痺は、「口唇のしびれ」ではなく、嗄声(させい:かすれた声)むせである。ちなみに、口唇のしびれは、主に低カルシウム血症でみられる。甲状腺全摘出術の操作によって副甲状腺も一緒に切除されたり、あるいは副甲状腺の血流が低下する。したがって、副甲状腺の機能が低下し、血液中のカルシウム濃度が下がる。副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症と呼ばれる合併症である。
4.〇 正しい。低カルシウム血症は、テタニーなどの症状が起こる。ちなみに、テタニーとは、自分の意志とは関係なく手足などの筋肉が 痙攣している状態である。甲状腺全摘術にて副甲状腺も一緒に切除された場合、(二次性)続発性副甲状腺機能低下症が起こる。続発性副甲状腺機能低下症では、副甲状腺ホルモン低下により低カルシウム血症となり、テタニーなどの症状が現れる。

 

 

 

 

 

 

47 Aさんは右側の人工股関節全置換術(後方アプローチ)を受けた。
 Aさんへの脱臼予防の生活指導で適切なのはどれか。

1.「靴はしゃがんで履いてください」
2.「右側に身体をねじらないでください」
3.「椅子に座るときは足を組んでください」
4.「浴室の椅子は膝の高さより低いものを使ってください」

解答2

解説

人工骨頭置換術の患側脱臼肢位

①後方アプローチ:股関節内転・内旋・過屈曲
②前方アプローチ:股関節内転・外旋・伸展

人工骨頭置換術の脱臼発生率は、2~7%と報告されており、前方アプローチと後方アプローチと比較して、後方アプローチで発生しやすい。

1.× 靴はしゃがんで履かない。なぜなら、股関節を過屈曲は脱臼を誘発しやすく禁忌であるため。しゃがむのではなく高めの椅子などに腰かけて、靴ベラを使用して靴を履くよう指導する。
2.〇 正しい。「右側に身体をねじらないでください」と、生活指導する。なぜなら、右側に身体をねじると、相対的な股関節の内旋と同様な力が働くため。つまり、身体を右側にねじると脱臼を誘発しやすい肢位となる。
3.× 椅子に座るときは、足を組まないほうが良い。なぜなら、患肢を上にして足を組む動作は股関節の過屈曲内旋を伴うため。したがって、靴下を履きたいときは、ソックスエイドを使用する。
4.× 浴室の椅子は膝の高さより、「低いもの」ではなく高いものを使用する。なぜなら、低い椅子は、股関節過屈曲を伴い脱臼しやすいため。

 

 

 

 

48 後期高齢者医療制度が定められているのはどれか。

1.介護保険法
2.老人福祉法
3.高齢者の医療の確保に関する法律
4.地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律〈医療介護総合確保推進法〉

解答3

解説

MEMO

後期高齢者医療制度とは、2008年施行の「高齢者の医療の確保に関する法律」を根拠法とする日本の医療保険制度である。①75歳以上または②65~74歳で一定の障害があると認定された人である。

1.× 介護保険法とは、1997年12月に公布された法律で、40歳以上で介護が必要になった人の自立生活を支援するために、国民が負担する保険料や税金を財源として、日常生活の行為にかかるさまざまな介助リハビリなどのサービスにかかる給付を行うことを目的にしている。加齢に伴って生じる心身の変化による疾病等により介護を要する状態となった者を対象として、その人々が有する能力に応じ、尊厳を保持したその人らしい自立した日常生活を営むことができることを目指している。
2.× 老人福祉法とは、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もって老人の福祉を図ることを目的として制定された法律である。
3.〇 正しい。高齢者の医療の確保に関する法律は、後期高齢者医療制度が定められている。後期高齢者医療制度の対象は、原則として75歳以上の者であり、自己負担は高所得者を除き原則として1割である。
4.× 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律〈医療介護総合確保推進法〉とは、平成26(2014)年に成立された地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保等を目的する法律である。持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を 構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行う。(※参考:「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(概要)」厚生労働省HPより)

地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。

 

 

 

 

 

 

49 認知症高齢者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。

1.説得するように話す。
2.作話があっても話を聞く。
3.一度に多くの情報を伝える。
4.同じ内容を繰り返している場合は会話を終了する。

解答2

解説

認知症の患者に対する対応

認知症の患者に対する対応では、バリデーション(本人の思いを肯定し、共感的・受容的態度で安心感を与えることを基本とし、信頼関係を構築すること)という考え方を用いると良いとされている。
【バリデーションを構成する要素】
・傾聴する(相手の言葉を聞いて、反複する。)
・共感する(表情や姿勢で感情を汲み取り、声のトーンを合わせる)
・誘導しない(患者にペースを合わせる。)
・受容する(強制しない、否定しない)
・嘘をつかない、ごまかさない

1.× 説得するように話す必要はない。なぜなら、説得するように話されると、「強制されている」、「そのようにしなくてはならない」という印象を与えかねないため。
2.〇 正しい。作話があっても話を聞く。なぜなら、認知症高齢者とのコミュニケーションでは、傾聴が基本となるため。作話があっても、訂正や否定をせず、患者を受け入れるように対応することが望ましい。患者が発した言葉を反復することで安心感を与えることができ、信頼関係構築につながる。
3.× 一度に多くの情報を伝える必要はない。なぜなら、一度に多くの情報を伝えると、認知症患者は情報を整理しきれず混乱してしまう可能性があるため。患者にペースを合わせるように話す。
4.× 同じ内容を繰り返している場合は会話を終了する必要はない。認知症高齢者とのコミュニケーションでは、バリデーション(本人の思いを肯定し、共感的・受容的態度で安心感を与えることを基本とし、信頼関係を構築すること)が大切となる

 

 

 

 

50 平成25年(2013年)の高齢者の地域社会への参加に関する意識調査で、高齢者が参加している活動のうち割合が最も多いのはどれか。

1.教育・文化
2.子育て支援
3.生涯・就業
4.健康・スポーツ

解答4

解説

(※図引用:「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(概要版)」内閣府HPより)

1.× 教育・文化啓発活動の割合は、6.8%である。
2.× 子育て支援活動の割合は、4.9%である。
3.× 生涯・就業活動の割合は、3.4%である。
4.〇 正しい。健康・スポーツ活動の割合は、33.7%で最も多い。(※データ引用:内閣府HPより「平成25(2013)年度の高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」)

 

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