第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後21~25】

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21 空気感染を予防するための医療者の個人防護具で適切なのはどれか。

1.手袋
2.N95マスク
3.シューズカバー
4.フェイスシールド

解答2

解説

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

1.× 手袋は空気感染を予防するためのものではない。手袋は、医療者の手指汚染を防ぎ、接触感染を防ぐために使用する。
2.〇 正しい。N95マスクは空気感染を予防するためのものである。N95マスクは、0.3μmの微粒子を95%以上除去することができる。ちなみに、N95マスクとは、アメリカ合衆国労働安全衛生研究所のN95規格をクリアし、認可された微粒子用マスクのこと。N95マスクの役割は空気感染源を捕集し、着用者の呼吸器感染のリスクを低減することである。
3.× シューズカバー(個人防護具のひとつ)は空気感染を予防するためのものではない。シューズカバーは、履物を汚染しないために用いる。感染経路別予防策として一律の規定はない。
4.× フェイスシールドは空気感染を予防するためのものではない。フェイスシールドは、飛沫予防策として着用する。

 

 

 

 

22 薬物の有害な作用を予測するために収集する情報はどれか。

1.居住地
2.家族構成
3.運動障害の有無
4.アレルギーの既往

解答4

解説
1.× 居住地を収集する優先度は低い。居住地が問題となるのは、性感染症公害(水質汚濁など)などである。
2.× 家族構成を収集する優先度は低い。家族構成が問題となるのは、特にない。ただし、家族構成によって、介護負担でうつ病となったり、サポートが受けられず持病の悪化などあげられる。
3.× 運動障害の有無を収集する優先度は低い。運動障害の有無が問題となるのは、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などの血流障害である。
4.〇 正しい。アレルギーの既往は、薬物の有害な作用を予測するために収集する情報である。特定の薬物にアレルギーがある場合は、基本的にその薬剤は投与禁忌である。薬物アレルギーとは、薬剤によって引き起こされる過敏反応で、薬剤が持っている本来の作用とは関係なく一部の人に起こる。症状として多いものは、発疹、皮膚や目のかゆみなどである。気管支喘息や、最も重症であるアナフィラキシー・ショックを起こすこともある。

 

 

 

 

 

 

23 成人の持続点滴静脈内注射のために選択される部位で最も適切なのはどれか。

1.足背
2.鼠径
3.前腕内側
4.肘関節付近

解答3

解説

持続点滴静脈内注射

持続点滴静脈内注射とは、大量の薬品を持続的に静脈内に注入する方法である。治療においても使用頻度が高く、与薬ミスや感染防止対策なども多い処置である。主に前腕正中皮静脈橈側皮静脈 尺側皮静脈が用いられる。表在性の静脈にならどこにでも行うことができ、針の固定が容易で、太く弾力のある血管を選択する。麻痺側、利き手などを避けることが推奨されている。

1.× 足背より優先度が高いものが他にある。なぜなら、足背は歩行などの活動時や布団による摩擦の影響も受けやすいため。また、末梢血管(特に細い)であるため血管外漏出を起こしやすい。
2.× 鼠径部より優先度が高いものが他にある。なぜなら、鼠径部は陰部からの汚染を受ける可能性が高く、股関節の可動性により留置針の固定が難しいため。
3.〇 正しい。前腕内側は、成人の持続点滴静脈内注射のために選択される部位で最も適切である。主に前腕正中皮静脈橈側皮静脈 尺側皮静脈が用いられる。なぜなら、前腕の静脈が太くて弾力性に富み、注射器を固定しやすいため。
4.× 肘関節付近より優先度が高いものが他にある。なぜなら、肘関節付近は、肘関節の可動性があり留置針の固定が難しいため。また肘関節付近には浅層部に尺骨神経が通っており、傷つけないよう配慮も必要になるため。

 

 

 

 

 

 

24 自動体外式除細動器〈AED〉の電極パッドの貼付位置を図に示す。
 適切なのはどれか。

解答1

解説

自動体外式除細動器とは?

AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。

1.〇 正しい。電極パッドは、心臓を挟むように、右前胸部(右鎖骨の下で胸骨の右)および左側胸部(脇の5~8cm下)の位置に貼り付ける。そのほかの注意点として、電極パッドは肌との間にすき間をつくらないように貼り付ける。ちなみに、未就学児(就学前の小児)も成人と同様の位置、あるいは胸部前面背面に貼付する。
2.× この貼り方は、心臓に最大限な電流を心臓に通すことができない。
3.× この貼り方は、電極で心臓を挟んでいない。
4.× この貼り方でも、心電図の測定・除細動は可能である(心電図は反転するが問題はない)。しかし、最も推奨されている貼り方を問われているため、選択肢1のほうが良い。

なぜ右前胸部と左側胸部なのか?

選択肢4の解説でも記載したが、選択肢4の貼り方でも心電図の測定・除細動は可能である(心電図は反転する)。電気ショックには問題ないが、心電図解析の都合で、上記の貼り付け方になっている。心電図計測の第Ⅱ誘導で一番心電図が計測しやすい。第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。

 

 

 

 

25 巨赤芽球性貧血の原因はどれか。

1.ビタミンA欠乏
2.ビタミンB12欠乏
3.ビタミンC欠乏
4.ビタミンE欠乏
5.ビタミンK欠乏

解答2

解説

巨赤芽球性貧血とは?

巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

1.× ビタミンA欠乏は、眼球乾燥症・夜盲症を生じる。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。
2.〇 正しい。ビタミンB12欠乏(胃全摘後)は巨赤芽球性貧血の原因となる。また、他にも葉酸欠乏により巨赤芽球性貧血がみられる。
3.× ビタミンC欠乏は、壊血病を生じる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。
4.× ビタミンE欠乏は、溶血性貧血神経障害の原因となる。溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。
5.× ビタミンK欠乏は、出血傾向となる。新生児ではこれを予防するためシロップなどにより補充を行うことが一般的である。

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは?

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、出生後7日以内に起きるビタミンK欠乏に基づく出血性疾患である。出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血が認められ、重度の場合は頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もある。特に第 2~4生日に起こることが多いものの出生後24時間以内に発症することもある。合併症をもつ新生児やビタミンK吸収障害をもつ母親から生まれた新生児、妊娠中にワルファリンや抗てんかん薬などの薬剤を服用していた母親から生まれた新生児では、リスクが高くなる。また、新生児でビタミンK欠乏状態に陥るのは、①母乳中のビタミンK含量が少ないこと、②ビタミンKは経胎盤移行性が悪いこと、③出生時の生体内の蓄積量が元々少ないうえ、腸内細菌叢が十分には形成されていないことが理由として考えている。

 ビタミンK欠乏性出血症の予防には、出生直後および生後1週間(産科退院時)ならびに生後1か月の3回、ビタミンK2シロップ1mL(2mg)をすべての合併症のない成熟新生児に投与する方式が普及している。

 

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