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次の文を読み91~93の問いに答えよ。
Aさん(43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。
91 手術までの自宅でのAさんの過ごし方で、優先して指導すべき内容はどれか。
1.食事制限
2.足趾の運動
3.ベッド上安静
4.体位変換の方法
解答2
解説
・Aさん(43歳、女性、既往歴はない、身長150cm、体重98kg)
・2人暮らし:夫
・先日:庭で転倒、右腓骨骨折、膝関節から足関節までギプス固定。
・来週:プレート固定術の予定。
・本日:夫と一緒に術前オリエンテーションに来院。
・バイタルサイン:体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHg。
・夫「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と。
→Aさんは来週にプレート固定術を控えている。骨折の初期治療として、①局所の安静、②骨折部位の安定化、③疼痛の軽減などを目的にギプス固定を行うことも多い。骨折部の周辺は、炎症による腫れと、固定して動かせないためにむくみ・循環障害・血栓が生じやすい。したがって、ギプス固定の指導として、足趾の運動をして血流の改善に努めるよう指導する。下腿の骨折の場合には、コンパートメント症候群による足置の感覚鈍麻、血流障害、運動障害を確認する。
1.× 食事制限より他の選択肢の中に優先度が高いものが他にある。なぜなら、来週プレート固定術の予定があることから、バイタルサイン・内科的にも手術適応と主治医が判断している可能性が高いため。ただし、本症例は、BMIが約43.6と肥満であり、将来的に健康増進・疾病予防のため食事指導を行う可能性はある。
2.〇 正しい。足趾の運動は、優先して指導すべき内容である。Aさんは来週にプレート固定術を控えている。骨折の初期治療として、①局所の安静、②骨折部位の安定化、③疼痛の軽減などを目的にギプス固定を行うことも多い。骨折部の周辺は、炎症による腫れと、固定して動かせないためにむくみ・循環障害・血栓が生じやすい。したがって、ギプス固定の指導として、足趾の運動をして血流の改善に努めるよう指導する。下腿の骨折の場合には、コンパートメント症候群による足置の感覚鈍麻、血流障害、運動障害を確認する。足趾の運動により、筋萎縮の予防、血流うっ滞の予防(深部静脈血栓症の予防)などの効果が得られる。
3.× ベッド上安静にする優先度は低い。なぜなら、患者の年齢や受傷前の状態、現在ギプス固定していることから、足を地面に付かずに松葉杖で歩行することは可能であるため。筋力の低下や血栓症の予防のためにもベッド上安静する必要性は低い。
4.× 体位変換の方法を指導する優先度は低い。なぜなら、患者の年齢や受傷前の状態、現在ギプス固定していることから、容易に体位変換(寝返りなど)が可能と考えられるため。ちなみに、体位変換の指導が必要な症例として、脱臼などの危険性がある人工骨頭置換術(変形性股関節症など)があげられる。ギプス固定している状況では、荷重以外の動作の制限は特に必要としないことが多い。
①後方アプローチ:股関節内転・内旋・過屈曲
②前方アプローチ:股関節内転・外旋・伸展
人工骨頭置換術の脱臼発生率は、2~7%と報告されており、前方アプローチと後方アプローチと比較して、後方アプローチで発生しやすい。
次の文を読み91~93の問いに答えよ。
Aさん(43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。
92 Aさんは入院し、手術を受けた。手術室から病室への帰室後1時間、Aさんのバイタルサインは、体温35.9℃、呼吸数16/分、いびき様呼吸、脈拍60/分、血圧145/87mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%(鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下)。大きな声で呼ぶと開眼し、簡単な指示に従うことができる。尿量は70mL/時、血糖値128mg/dLであった。
看護師が優先して対処すべきAさんの症状・徴候はどれか。
1.体温:35.9℃
2.いびき様呼吸
3.血圧:145/87mmHg
4.尿量:70mL/時
5.血糖値:128mg/dL
解答2
解説
・夫「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」
・Aさん:入院、手術を受けた。
・帰室後1時間:体温35.9℃、呼吸数16/分、いびき様呼吸、脈拍60/分、血圧145/87mmHg、SpO2:96%(鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下)。
・大きな声で呼ぶと開眼し、簡単な指示に従うことができる。
・尿量:70mL/時、血糖値:128mg/dL。
→Aさんは、夫の「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」から、睡眠時無呼吸症候群が疑われる。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。また、いびき様呼吸で、SpO2:96%、鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下である。口呼吸により十分酸素が吸えてない可能性があるため優先してマスクの検討などが必要になる。術後の意識レベル低下を疑う「いびき様呼吸」は、気道閉塞や低酸素血症のリスクとなるため、対処が必要である。
1.× 体温:35.9℃は、優先度は低い。なぜなら、体温35.9℃は許容範囲内であるため。術後は麻酔により体温調節中枢が抑制され、低体温になりやすいため、シバリングや悪寒の訴えがないか観察していく必要がある。ちなみに、シバリングとは、体温が下がった時に筋肉を動かすことで熱を発生させ、体温を保とうとする生理現象である。体や口が震える症状もシバリングである。
2.〇 正しい。いびき様呼吸は、看護師が優先して対処すべきである。Aさんは、夫の「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」から、睡眠時無呼吸症候群が疑われる。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。また、いびき様呼吸で、SpO2:96%、鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下である。口呼吸により十分酸素が吸えてない可能性があるため優先してマスクの検討などが必要になる。術後の意識レベル低下を疑う「いびき様呼吸」は、気道閉塞や低酸素血症のリスクとなるため、対処が必要である。
3.× 血圧:145/87mmHgは、優先度は低い。なぜなら、Aさんの手術前の血圧は138/80mmHgで、術後は145/87mmHgと著明な変化がないことと、自覚症状・体調不良の訴えなどもないため。術後の血圧は、低体温や人工心肺、全身麻酔の影響などから高血圧になりやすいが、収縮期血圧が90~140mmHg内であれば許容範囲と考えられる。
4.× 尿量:70mL/時は、優先度は低い。なぜなら、帰室後1時間で尿量70mL/時は許容範囲内であるため。術後の尿量は体重1kgあたり0.5mL/時以上が目安とされ、Aさんの体重からは70mL/時は適正である。また、尿量は循環血液量を反映しており、術後は減少するが「0.5ml × Kg(体重) / h(時間)」出ているか確認する。
5.× 血糖値:128mg/dLは、優先度は低い。なぜなら、術後の血糖値は、一般的に140〜180mg/dl程度が許容範囲内であるため。術後は手術侵襲により高血糖になりやすい。これは、手術や麻酔の侵襲は体に大きな負担を与え、血糖値を上げる働きがあるアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールといったストレスホルモンが分泌されるため。また、インスリンは手術による炎症反応にて効きにくくなる。
次の文を読み91~93の問いに答えよ。
Aさん(43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。
93 手術後2日。Aさんはバイタルサインも安定しているため離床の準備を始めることになった。
初回離床時に最も注意すべき訴えはどれか。
1.「息苦しい」
2.「腰が重い」
3.「痰が出る」
4.「傷口が引きつる」
解答1
解説
・睡眠時無呼吸症候群が疑われる。
・右腓骨骨折→プレート固定術後(血栓予防)。
・手術後2日(離床の準備)
→肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。
1.〇 正しい。「息苦しい」は、初回離床時に最も注意すべき訴えである。なぜなら、術後ベッド上安静後の初回離床であり、肺血栓塞栓症が発症している可能性も考えられるため。肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。
2.× 「腰が重い」は優先度が低い。なぜなら、本症例の身長150cm、体重98kgで、これまで術後ベッド上安静であったため。「腰が重い」から、起き上がれないほどの腰痛があれば、腰や他の疾患を併発している可能性もあるため、主治医に報告する必要がある。
3.× 「痰が出る」は優先度が低い。なぜなら、術後に痰が出るのは気管挿管によるものである可能性が高いため。
4.× 「傷口が引きつる」はは優先度が低い。なぜなら、初回離床時の傷口が引きつりや疼痛は誰もが感じるものであるため。骨折の術後に創部の疼痛を訴える患者は多い。
次の文を読み94~96の問いに答えよ。
Aさん(26歳、男性)は1か月前から動悸と20m程度の歩行でも息切れが出現するようになった。ぶつけた記憶もないのに下肢に出血斑ができるようになり、医療機関を受診した。Aさんは急性白血病を疑われ、緊急入院し、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。
身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)、両下肢に散在する出血斑あり。
検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44.960mL、血小板1.5万mL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。
胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
94 Aさんの骨髄穿刺の30分後に観察すべき項目で優先度が高いのはどれか。
1.経皮的動脈血酸素飽和度
2.穿刺部の止血状態
3.下肢の運動障害
4.眼瞼結膜
解答2
解説
・Aさん(26歳、男性)
・1か月前:動悸と20m程度の歩行でも息切れ、下肢に出血斑。
・急性白血病を疑われ、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。
・身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、SpO2:97%、両下肢に散在する出血斑あり。
・検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44.960mL、血小板1.5万mL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。
・胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
→急性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。
1.× 経皮的動脈血酸素飽和度より優先して観察すべき項目が他にある。なぜなら、骨髄穿刺後に低酸素血症を起こす可能性は極めて低いため。また、本症例はSpO2:97%であり、胸部エックス線には縦郭・心陰影・肺野に異常がないことから優先項目から除外される。
2.〇 正しい。穿刺部の止血状態の観察は優先度が高い。なぜなら、急性白血病の症状のひとつに出血傾向があるため。また、骨髄穿刺の合併症には、検査部位からの出血や血腫を形成する可能性がある。検査後1時間は仰向けで安静を保持し、止血のために穿刺部位を圧迫する必要がある。
3.× 下肢の運動障害より優先して観察すべき項目が他にある。本症例の場合、急性白血病と骨髄穿刺の重複した症状が選択肢のなかにある。ただし、骨髄穿刺では、神経損傷の合併症として全身あるいは下肢の麻痺をきたし、しびれや感覚の麻痺、歩行障害など下肢の運動障害が一時的に発生することがあるため観察する必要がある。
4.× 眼瞼結膜(がんけんけつまく)より優先して観察すべき項目が他にある。結膜は、くろめ(角膜)のふちからまぶたの裏側までを覆っている粘膜である。しろめの表面のところは眼球結膜、まぶたの裏側のところは眼瞼結膜とよばれる。眼険結膜が白くなることがあるが、貧血やショック症状としてあらわれる。
次の文を読み94~96の問いに答えよ。
Aさん(26歳、男性)は1か月前から動悸と20m程度の歩行でも息切れが出現するようになった。ぶつけた記憶もないのに下肢に出血斑ができるようになり、医療機関を受診した。Aさんは急性白血病を疑われ、緊急入院し、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。
身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)、両下肢に散在する出血斑あり。
検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44.960mL、血小板1.5万mL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。
胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
95 Aさんは急性骨髄性白血病と診断された。化学療法によって寛解し、造血幹細胞移植を行う方針となった。
Aさんの造血幹細胞移植で正しいのはどれか。
1.Aさんと骨髄提供者の性別が一致している必要がある。
2.移植後2週間で退院できる。
3.移植前処置が必要である。
4.手術室で行う。
解答3
解説
造血幹細胞移植とは、健康な骨髄に置き換えることにより造血機能を回復させる治療であり、移植前処置として大量の化学療法や放射線照射など、自分自身の骨髄の造血幹細胞をすべて破壊する治療を受ける必要がある。患者に残存している白血病などの腫瘍細胞を減少させるほか、患者の免疫を十分に抑制して移植細胞を拒絶しないようにする目的で行われる。
1.× Aさんと「骨髄提供者の性別」ではなく、Aさんと骨髄提供者の白血球の抗原型(HLA型)が一致している必要がある(同種移植の場合)。ヒト白血球型抗原(HLA型)とは、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体のことである。
2.× 移植後2週間での退院はできない。なぜなら、移植された造血幹細胞が骨髄にたどり着き血球成分を作り始める(生着)まで2週間から1か月程度かかるため。造血回復後も数週かけて薬剤の調節やリハビリテーションを行うことがー般的で、移植入院期間は1~2か月を要することが多い。
3.〇 正しい。移植前処置が必要である。移植前処置とは、移植の準備のために行う大量化学療法や全身放射線治療などで、移植の1週間前から実施される。移植前処置として大量の化学療法や放射線照射など、自分自身の骨髄の造血幹細胞をすべて破壊する治療を受ける必要がある。
4.× 「手術室」ではなく無菌室で行う。なぜなら、造血幹細胞移植は骨髄提供者あるいは患者自身から事前に採取した造血幹細胞を含む骨髄液または末梢採取血液を静脈に点滴投与するものであるため。自家造血幹細胞移植(自家移植)の場合は、白血球減少期間が比較的短く免疫抑制剤が投与されないため、一般病室で治療を行うこともある。なお、移植された造血幹細胞が骨髄にたどり着き血球成分を作り始める(生着)までの期間はクリーンルーム(無菌室)、移植病室で過ごす。