第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前56~60】

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56 日本の人口動態統計における妊産婦死亡について正しいのはどれか。

1.出生10万対で示す。
2.出産後1年までの女性の死亡をいう。
3.平成28年(2016年)の妊産婦死亡率は、10.1である。
4.間接産科的死亡に比べて、直接産科的死亡による死因が多い。

解答4

解説

妊産婦死亡率とは?

妊産婦死亡率とは、「妊娠中または妊娠終了後満42日未満の女性の死亡で、妊娠の期間および部位には関係しないが、妊娠もしくはその管理に関連したまたはそれらによって悪化したすべての原因」によって死亡した妊産婦の割合を示す数値である。

妊産婦死亡率を求める数式は、以下のとおりである。

妊産婦死亡率=(年間の妊産婦死亡数÷年間出産数)×100,000

1.× 日本の人口動態統計における妊産婦死亡は、「出生10万対」ではなく、通常出産(出生+死産)10万対で示す。ただし、妊産婦死亡率の国際比較をする場合は、出生10万対で示す。
2.× 妊産婦死亡とは、「出産後1年まで」ではなく、妊娠中または妊娠終了後満42日未満の女性の死亡をいう。
3.× 平成28年(2016年)の妊産婦死亡率は、3.3(出産10万対3.3)である。(データ引用:厚生労働省様HPより『平成28年(2016年)の妊産婦死亡率』)
4.〇 正しい。間接産科的死亡に比べて、直接産科的死亡による死因が多い。妊産婦死亡29人のうち、直接産科的死亡は17人、間接産科的死亡は12人である(データ引用:厚生労働省様HPより『平成28年(2016年)の妊産婦死亡率』)。ちなみに、直接産科的死亡とは、妊娠時における産科的合併症が原因で死亡したものをいう。間接産科的死亡とは、妊娠前から存在した疾患または妊娠中に発症した疾患により死亡したものをいう。

 

 

 

 

 

 

57 更年期女性のホルモン補充療法によってリスクが低くなるのはどれか。

1.乳癌
2.骨粗鬆症
3.子宮体癌
4.静脈血栓症

解答2

解説

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。

ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.× 乳癌の危険因子は、高エストロゲン状態がある。したがって、乳癌の既往のある患者や現在乳癌に罹患している患者に対してのホルモン補充療法(エストロゲン補充)は禁忌である。
2.〇 正しい。骨粗鬆症は、更年期女性のホルモン補充療法によってリスクが低くなる。なぜなら、骨粗鬆症の原因として、女性ホルモン(エストロゲン)の低下がひとつであるため。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。
3.× 子宮体癌の原因は、エストロゲンに過剰曝露すると発症リスクが高まる。したがって、子宮体癌患者に対してホルモン補充療法(エストロゲン補充)は禁忌である。
4.× 静脈血栓症の患者に対して、ホルモン補充療法(エストロゲン補充)は禁忌である。なぜなら、経口エストロゲン製剤は血栓形成を促進させるため。

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58 妊娠の初期と後期のどちらの時期にも起こるマイナートラブルはどれか。

1.下肢静脈瘤
2.掻痒感
3.つわり
4.頻尿

解答4

解説

マイナートラブルとは?

マイナートラブル(minor trouble)とは、小さな問題という意味で、妊娠に伴って生ずる不快症状を指す。妊娠による生理的変化や心理的な要因によって引き起こされる種々の不快症状で、重篤な器質的疾患を伴わないものをいう。不快感の程度は個人差が大きく、妊娠の経過に伴い自然に軽快・回復したり、新たな症状が自覚されたりすることもある。マイナートラブルは、妊娠によって生ずる体の生理的変動が、また精神的変化が不定愁訴の原因となっている場合が多いが、そのほか、妊娠による心理的葛藤や不安などが自律神経症状やその他の精神的および身体的症状を起こしやすくしている。主に、つわり、めまい、立ちくらみ、便秘、腰背痛、下肢のけいれん、静脈瘤、痔、頻尿、浮腫、胸やけ、帯下、瘙痒感などがあげられる。

1.× 下肢静脈瘤は、妊娠中期から末期(後期)にかけて起こりやすい。循環血液量が増大することと、増大した子宮が骨盤内の静脈を圧迫することにより、下肢の静脈の流れが悪くなることから、静脈が怒張しやすくなる。
2.× 掻痒感は、妊娠中期から末期にかけて起こる。ホルモンの変化や皮膚の乾燥により、腹部や腰部周囲あるいは全身に掻痒感が生じやすくなる。
3.× つわり症状(悪心・嘔吐、唾液分泌亢進など)は、妊娠5~6週頃から出現し、通常は妊娠12~16週頃に軽快する。つまり、妊娠初期でつわり症状に悩まされることが多い。
4.〇 正しい。頻尿は、妊娠の初期と後期のどちらの時期にも起こるマイナートラブルである。妊娠の初期から、増大子宮が膀胱を直接圧迫し頻尿となりやすい。また、妊娠後期は、循環血液量が増加し尿量も増え、増大子宮、特に児先進部(児頭など)の膀胱圧迫により頻尿となりやすい。

妊娠週数

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)

妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)

妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

 

 

59 早期新生児の生理的黄疸で正しいのはどれか。

1.生後24時間以内に出現し始める。
2.皮膚の黄染は、腹部から始まる。
3.生後4、5日でピークとなる。
4.便が灰白色になる。

解答3

解説

生理的黄疸とは?

黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。

新生児黄疸(生理的黄疸)とは、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸である。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びるが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸(生理的黄疸)である。この新生児黄疸(生理的黄疸)は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものである。過度に心配する必要はない。起きる機序として、新生児でのビリルビン産生の亢進、グルクロン酸抱合能の未熟、腸肝循環の亢進などにより、出生後に一過性に高間接ビリルビン血症となり、生理的黄疸となる。

1.× 「生後24時間以内」ではなく生後2~3日で肉眼的黄疸に出現し始める。ちなみに、生後24時間以内に肉眼的黄疸が出現する場合は、病的黄疸のひとつである早発黄疸である。早発黄疸は、溶血性疾患の可能性が高い(溶血性貧血)。早発黄疸では、一般的に高ビリルビン血症を呈し、急性ビリルビン脳症の発症の原因になるため予防が重要である。
2.× 皮膚の黄染は、「腹部」からではなく「強膜や顔面の皮膚」から始まる。血清ビリルビン値が4~8mg/dL以上に上昇する黄疸がみられるようになる。新生児の黄疸の進行は、クラマー法で確認する。通常の場合、黄疸は体幹部に強く、末梢になるほど弱くなる。①頭部・頸部→②へそから上の躯体→③腰・下腹部→④ひざから足関節/上腕から手関節→⑤四肢末端となる。
3.〇 正しい。生後4、5日でピークとなる。生理的黄疸では、生後5日前後で血清ビリルビン値がピークに達し、その後は自然に低下し、生後2週間以内に消失する。起きる機序として、新生児でのビリルビン産生の亢進、グルクロン酸抱合能の未熟、腸肝循環の亢進などにより、出生後に一過性に高間接ビリルビン血症となり、生理的黄疸となる。
4.× 便が灰白色になる場合、病的黄疸のひとつである閉塞性黄疸(先天性胆道閉鎖症)を疑う。閉塞性黄疸の原因は、胆道系疾患、胎内感染、敗血症などである。日本人の母乳栄養中の児では、生後4週目の時点で 10~15%の兄に肉眼的に黄疸が見られる。

腸肝循環とは?

脂肪の消化、吸収という役目を果たした胆汁は、一部が便や尿として排泄されるが、90〜99%は小腸の下部で吸収され、門脈を通って肝臓に戻る。そして、再び胆汁として分泌され、胆嚢に蓄えられることになる。こうして胆汁がリサイクルされることを腸肝循環という。

 

 

 

 

60 都道府県知事の任命を受けて、精神保健福祉センターで精神障害者や家族の相談を行うのはどれか。

1.ゲートキーパー
2.ピアサポーター
3.精神保健福祉相談員
4.退院後生活環境相談員

解答3

解説
1.× ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことをいう。つまり、「命の門番」とも位置付けられる人のことである。 自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぎ、支援することが重要である。
2.× ピアサポーターとは、障害や疾病など同じような境遇にある人が、自身の体験をもとに相談や同じ仲間として社会参加や地域交流など問題の解決を支援する活動を行う。同じ立場の当事者同士が体験を語り合うことで支え合うことをいいその当事者のことである。
3.〇 正しい。精神保健福祉相談員は、都道府県知事の任命を受けて、精神保健福祉センターで精神障害者や家族の相談を行う。精神保健福祉相談員は、主に保健所や精神保健センターに勤務し、精神障害者やその家族が安定した生活を送るために、必要な住居や就職先についての相談業務などに従事する。精神保健や精神障害者の福祉に関する相談に応じ、精神障害者とその家族を訪問して必要な指導を行う。
4.× 退院後生活環境相談員は、医療保護入院者が退院に向けての相談や地域援助事業者の紹介など円滑な退院後の地域生活への移行のための調整業務を行う。退院後生活環境相談員になれるのは、精神保健福祉士の資格を有する者等である。

精神保健福祉センターとは?

①根拠法令:精神保健福祉法(6条)
②目的:地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、自立と社会経済活動の促進のための援助等。
③設置基準:都道府県、指定都市
④配置職員:精神科医、精神保健福祉士(精神保健福祉相談員)、臨床心理技術者、保健師等

【業務内容】
①企画立案。
②保健所と精神保健関係諸機関に対する技術指導と技術援助。
③精神保健関係諸機関の職員に対する教育研修。
④精神保健に関する普及啓発。
⑤調査研究。
⑥精神保健福祉相談(複雑または困難なもの)
⑦協力組織の育成。
⑧精神医療審査会に関する事務。
⑨自立支援医療(精神通院医療)の支給認定、精神障害者保健福祉手帳の判定。

(参考:「精神保健福祉センターと保健所」厚生労働省HPより)

 

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