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41 Aさん(24歳、男性)は、突然出現した胸痛と呼吸困難があり、外来を受診した。意識は清明。身長180cm、体重51kg、胸郭は扁平である。20歳から40本/日の喫煙をしている。バイタルサインは、体温36.2℃、呼吸数20/分(浅い)、脈拍84/分、血圧122/64mmHgである。
胸部エックス線写真を下図に示す。
Aさんの所見から考えられるのはどれか。
1.抗菌薬の投与が必要である。
2.胸腔ドレナージは禁忌である。
3.右肺野の呼吸音は減弱している。
4.胸腔内は腫瘍で占められている。
解答3
解説
(※レントゲン写真:右肺が完全にしぼんでおり高度気胸の状態)
・Aさん(24歳、男性)
・突然出現した胸痛と呼吸困難があり。
・意識は清明、身長180cm、体重51kg、胸郭は扁平。
・20歳から40本/日の喫煙をしている。
・バイタルサインは、体温36.2℃、呼吸数20/分(浅い)、脈拍84/分、血圧122/64mmHg。
→本症例は、自然気胸が疑われる。理由として、①やせ型(BMI:15.6)、高身長の若者であること、②突然出現した胸痛と呼吸困難がみられること、③胸部エックス線写真上で右の肺が虚脱しているため。自然気胸とは、明らかな原因がなく起こる気胸のことである。一般的な症状として、①突然の胸の痛み、②咳、③呼吸困難などがあげられる。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起こる。若年者の特徴は、男性・長身・やせ型である。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられている。一方で高齢者の場合は、喫煙者で栄養状態の悪い方が多い。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することもある。
1.× 抗菌薬の投与は必要ない。なぜなら、抗菌薬の投与が必要なのは肺炎などの細菌感染症であるため。肺炎の主な症状は、発熱、咳、たんなどである。
2.× 胸腔ドレナージは禁忌ではない。中等度以上の自然気胸では胸腔ドレナージを実施する。胸腔ドレナージとは、胸壁を切開し、胸腔にチューブを挿入する医療技術である。主に何らかの疾患によって胸腔内に溜まった余分な空気、体液、膿胸などの分泌液を体外に排出するための処置として行われる。
3.〇 正しい。右肺野の呼吸音は減弱している。なぜなら、右の肺が虚脱しており、右胸腔に空気が入り込んでいるため。
4.× 胸腔内は腫瘍で占められていない。なぜなら、胸腔内が腫瘍で占められていれば、胸部エックス線写真で真っ白にみえるはずであるため。
42 Aさん(50歳、男性)は肝硬変と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる。
Aさんに指導する食事内容で適切なのはどれか。
1.塩分の少ない食事
2.脂肪分の多い食事
3.蛋白質の多い食事
4.食物繊維の少ない食事
解答1
解説
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。
【栄養治療の基準】
①エネルギー
・30~35kcal/kg/日
・25~30kcal/kg/日(糖尿病)
・35~45kcal/kg/日(低栄養)
②蛋白質:1.0~1.2g/kg/日
③脂質:エネルギー全体の20~25%
④食塩:5~7g/日
⑤分割食:就寝前に200kcalの軽食をとる。
1.〇 正しい。塩分の少ない食事は、Aさんに指導する食事内容で適切である。なぜなら、塩分摂取は体液貯留につながるため。目安として、食塩:5~7g/日に制限する。
2.脂肪分の「多い食事」ではなく、適切な量の食事を心がける。目安として脂質は、エネルギー全体の20~25%とする。肥満を避ける必要がある。
3.蛋白質の「多い食事」ではなく、適切な量の食事を心がける。目安として蛋白質は、1.0~1.2g/kg/日とする。なぜなら、過剰な蛋白質の摂取は血清アンモニア値の上昇を引き起こし、肝性脳症を招くことがあるため。
4.食物繊維の「少ない」ではなく多い食事を心がける。なぜなら、腹水による便秘では、腸内細菌の増加によりアンモニアが増加し、肝性脳症の出現悪化が起こることがあるため。肝性脳症とは、体内に発生した、もしくは腸管から吸収された中毒性物質が、肝硬変や門脈-大循環シャントにより、肝臓で解毒されることなく中枢神経に到達することで、さまざまな精神・神経症状が生じる症候群をいう。つまり、正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる合併症である。
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43 Cushing〈クッシング〉症候群の成人女性患者にみられるのはどれか。
1.貧血
2.月経異常
3.体重減少
4.肝機能低下
解答2
解説
Cushing〈クッシング〉症候群は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰によって起こる症候群である。原因の多くは副腎皮質腺腫である。コルチゾール過剰によってみられる症候は、ステロイド剤の副作用と共通する。コルチゾール過剰に伴う特徴的な症候として、満月様顔貌、赤ら顔、中心性肥満、水牛様脂肪沈着(水牛様肩)、皮膚の非薄化、皮下溢血、四肢近位筋萎縮・筋力低下、赤色皮膚線条がある。
1.3~4.× 貧血/体重減少/肝機能低下はみられない。
2.〇 正しい。月経異常は特徴的な症状の一つである。月経異常は、クッシング症候群のアンドロゲン過剰により起こる。このほかに、血糖値や血圧・コレステロールの上昇、骨粗鬆症、月経異常、うつ症状、感染症なども起こす。
44 Aさん(64歳、男性)は、肺炎のため抗菌薬の投与目的で入院となった。治療開始後3日に全身の皮膚、眼瞼結膜および口腔粘膜に紅斑と水疱が出現した。バイタルサインは、体温38.5℃、呼吸数24/分、脈拍80/分、血圧124/80mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%(room air)であった。
Aさんに出現している症状から考えられる病態はどれか。
1.後天性表皮水疱症
2.Sjögren〈シェーグレン〉症候群
3.全身性エリテマトーデス
4.Stevens-Johnson〈スティーブンス・ジョンソン〉症候群
解答4
解説
・Aさん(64歳、男性、肺炎)
・入院目的:抗菌薬の投与
・治療開始後3日:全身の皮膚、眼瞼結膜および口腔粘膜に紅斑と水疱が出現。
・体温38.5℃、呼吸数24/分、脈拍80/分、血圧124/80mmHg、SpO2:96%。
→本症例は、「Stevens-Johnson〈スティーブンス・ジョンソン〉症候群」が疑われる。本症例の発疹は、抗菌薬治療開始の3日後に急激に出現したことから、薬剤との関与が疑われる。また、全身の皮膚のほか粘膜(眼、口腔)に紅斑と水疱がみられ、発熱と呼吸促拍を伴っていることも重要な指標である。
1.× 後天性表皮水疱症とは、Ⅳ型コラーゲンを標的抗原とする表皮基底膜部自己免疫性水痕症である。非炎症型では、肘や膝など外的刺激を受ける部位に水疱を繰り返す。紅斑を伴う炎症型では体幹にも水疱を形成する場合もあるが、いずれも慢性疾患である。
2.× Sjögren〈シェーグレン〉症候群とは、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。ドライアイ、口腔乾燥を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。
3.× 全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。
4.〇 正しい。Stevens-Johnson〈スティーブンス・ジョンソン〉症候群は、Aさんに出現している症状から考えられる病態である。Stevens-Johnson〈スティーブンス・ジョンソン〉症候群とは、紅斑が全身に拡大し、水疱・びらんを生じ、粘膜疹や発疹を伴う。薬剤により惹起されることが多く、特に解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗てんかん薬が原因となることが多い。高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらん、水疱が多発し、表皮の壊死性障害を認める。原因として薬剤性、特にセフェム系・ペニシリン系抗菌薬は原因となることがある。多臓器不全および敗血症を合併し、死亡率は3%と報告されている。
45 膝関節鏡検査の説明として適切なのはどれか。
1.「外来の処置室で行います」
2.「関節内に空気を入れます」
3.「検査後1日は入浴できません」
4.「検査後に下肢の麻痺が起こることはありません」
解答3
解説
膝関節鏡とは、細い棒状の先端を膝関節内に挿入してその像をモニターに映し出す検査である。膝関節の中を直接観察して異常がないかどうか観察して診断する。異常があればそれがすぐに治療可能かどうかを判断し、可能なら器械を使い、関節鏡で見ながら治療する。適応疾患は、半月板損傷、前十字靭帯損傷、後十字靭帯損傷、離断性骨軟骨炎、骨軟骨骨折、変形性膝関節症などである。
1.× 「外来の処置室」ではなく、手術室で清潔操作下に行われる。
2.× 「関節内に空気入れず」、生理食塩水で充満させた状態で行う。
3.〇 正しい。検査後1日は入浴できない。なぜなら、検査直後は感染予防のため。膝関節鏡検査では、1cm程度の皮膚切開を2~3か所行い、そこから関節鏡などを挿入し操作を行う。
4.× 検査後に下肢の麻痺が起こることもある。なぜなら、腰椎麻酔を行う場合があり、その際の合併症として、神経損傷が起こるため。したがって、「検査後に下肢の麻痺が起こることはありません」と断定するべきではない。