第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前21~25】

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21 感染予防のための手指衛生で正しいのはどれか。

1.石けんは十分に泡立てる。
2.洗面器に溜めた水で洗う。
3.水分を拭きとるタオルを共用にする。
4.塗布したアルコール消毒液は紙で拭き取る。

解答1

解説

標準予防策〈standard precautions〉とは?

標準予防策〈standard precautions〉とは、院内感染の防止策として推奨されている方法である。感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚などは感染の恐れがあるとみなして、対応、行動する方法である。

1.〇 正しい。石けんは十分に泡立てる。泡立てることにより洗浄効果が得られる。また、第一指間腔は、手洗いで最も洗い残しが多い部位である。石けんと流水を用いた手の洗い方として全工程を40~60秒かけて行う。
2.× 洗面器に溜めた水で洗うのは清潔ではない。手洗いは①石けんと流水による手洗いか、②速乾性擦式消毒(アルコール消毒)を行うことが望ましい。WHOはアルコールの方が手荒れ対策に有効であることを強調している。
3.× 水分を拭きとるタオルを共用にするのは清潔ではない。感染予防のため、使い捨てのペーパータオルを用いる。手を洗った後にペーパーハンドタオルを使って手を拭くと、拭かなかった場合に比べて指先で平均76%、手のひらで平均77%の菌を減らセルと言った報告がされている。
4.× 塗布したアルコール消毒液は紙で拭き取るのは清潔ではない。なぜなら、アルコール消毒液は、乾燥するまで擦り込むことで、消毒効果が現れるため。発するまで15秒以上こすり合わせる必要がある。

手指衛生の5つのタイミング

①患者に触れる前( 手指を介して伝播する病原微生物から患者を守るため)
②清潔/無菌操作の前( 患者の体内に微生物が侵入することを防ぐため)
③体液に曝露された可能性のある場合(患者の病原微生物から医療従事者を守るため)
④患者に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
⑤患者周辺の環境や物品に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)

(※引用:「WHO手指衛生ガイドライン」矢野邦夫より)

 

 

 

 

 

 

22 経鼻胃管の先端が胃内に留置されていることを確認する方法で正しいのはどれか。

1.腹部を打診する。
2.肺音の聴取を行う。
3.胃管に水を注入する。
4.胃管からの吸引物が胃内容物であることを確認する。

解答4

解説

1.× 腹部を打診しても確認できない。なぜなら、腹部の打診の目的は、その部位におけるガス実質物の有無などの確認であるため。鼓脹を確認することで、腸にガスが溜まっているかどうかが分かる。
2.× 肺音の聴取を行っても確認できない。なぜなら、肺音の聴取の目的は、呼吸状態の確認であるため。肺音とは、呼吸音のことである。 聴診器を用いて呼吸音を聴診し、換気状態などと推測に役立てる。
3.× 胃管に水を注入によって確認してはならない。なぜなら、万一気管内に胃管の先端が入っていた場合は、肺に水を注入することになってしまうため。肺炎につながる非常に危険な行為である。ちなみに、胃管が胃内に入っているか確認する方法として、注射器で空気を10~20ml注入し、聴診器で気泡音を確認するものもある。
4.〇 正しい。胃管からの吸引物が、胃内容物であることを確認する。胃の内容物が吸引することで、胃管の先端が胃まで到達していることを確実に判断できる。胃液は酸性であるため、pH試験紙を用いれば胃の内容物かどうかの鑑別も可能である。また、レントゲン撮影によって確認をする方法もある。

 

 

 

 

23 輸液ポンプを使用する目的はどれか。

1.感染の防止
2.薬液の温度管理
3.薬物の効果判定
4.薬液の注入速度の調整

解答4

解説

輸液ポンプとは?

輸液ポンプとは、一定の速度で正確な点滴静脈内注射を連続で行うための装置である。多量の輸液を確実に注入したり、微量の薬液を正確に持続注入するなど、一定の注入速度で長時間の点滴静脈内注射を実施することができる。抗癌薬、血管拡張薬、昇圧薬、持続麻酔薬、抗凝固薬、各種ホルモン剤などの持続注入に用いられる。

1.× 感染の防止は、輸液ポンプを使用する目的ではない。輸液ポンプを使用するにあたって感染の可能性は少なからずある。使用にあたって感染防止に重要なことは、①静脈留置針および輸液ラインの定期的な交換、②刺入部の観察などである。
2.× 薬液の温度管理は、輸液ポンプを使用する目的ではない。そもそも輸液ポンプに温度管理をする機能はない。したがって、薬液に対する温度湿度などに注意する必要がある。薬剤保管時は添付文書に従う。
3.× 薬物の効果判定は、輸液ポンプを使用する目的ではない。そもそも輸液ポンプに薬物の効果を判定する機能はない。薬物の効果は、患者の状態や画像検査、血液検査などによって判定する。
4.〇 正しい。薬液の注入速度の調整は、輸液ポンプを使用する目的である。輸液ポンプとは、一定の速度で正確な点滴静脈内注射を連続で行うための装置である。多量の輸液を確実に注入したり、微量の薬液を正確に持続注入するなど、一定の注入速度で長時間の点滴静脈内注射を実施することができる。抗癌薬、血管拡張薬、昇圧薬、持続麻酔薬、抗凝固薬、各種ホルモン剤などの持続注入に用いられる。輸液中は、体動や手の向きなどによって滴下の速さが変わることがあるため、輸液投与量を正確に保つ必要がある場合には、輸液ポンプを使用する。輸液ポンプの流量と予定量は医師の指示に基づき設定する。

 

 

 

 

 

 

24 1回の鼻腔内吸引時間の目安で適切なのはどれか。

1.10~15秒
2.20~25秒
3.30~35秒
4.40~45秒

解答1

解説

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、 実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのこと」と定義されている。(※引用:気管吸引ガイドライン2013

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。
①人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避する。(ディスポーザブル手袋を着用、管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行う)
②吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は2~2.9kPaに保ち1回の吸引時間は10秒以内とする。
③カテーテル挿入時は陰圧をかけず、自発呼吸がある場合は、患者さんの吸気に合わせて吸引を行う。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

(※参考:「吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ」ナース専科様HPより)

1.〇 10~15秒は、1回の鼻腔内吸引時間の目安で適切である。挿入中は吸引の陰圧を止め粘膜損傷を予防する。吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は2~2.9kPaに保ち1回の吸引時間は10秒以内とする。
2~4.× 20~25秒/30~35秒/40~45秒は、吸引の時間が長い。吸引の時間が長いと経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下し二次障害につながりやすい。

 

 

 

 

25 成人の心肺蘇生時の胸骨圧迫の深さの目安はどれか。

1.2cm
2.5cm
3.8cm
4.11cm

解答2

解説

胸骨圧迫とは?

胸骨圧迫とは、心停止した傷病者の心臓付近を圧迫することにより脳や心臓に血液の循環を促す心肺蘇生を目的とした一次救命処置である。成人と幼児で適する力の入れ具合や胸骨の沈み具合が異なる。成人では胸骨が、5cmほど沈むように胸骨圧迫をする。一方で、幼児では年齢に応じた体格の差があるため、成人のような絶対値を当てはめることができない。そのため、幼児においては個別の体格を判断したうえで、胸の厚さの1/3程度が沈む強さで胸骨圧迫を行うことが推奨されている。年齢にかかわらず100~120回を目安に行う。

1.× 2cmは浅すぎる。有効な心拍出を得ることができない。
2.〇 正しい。5cm(正確には5~6cm)は成人の心肺蘇生時の胸骨圧迫の深さの目安である。胸骨圧追は、圧迫だけではなく、胸骨圧迫と胸骨圧迫の間に十分に胸郭を引き上げ拡張させる(リコイル)ことが重要である。血液が全身の静脈から心臓へと還流し、胸骨圧迫により有効な心拍出が得られる。
3~4.× 8cm/11cmは深すぎる。6cm以上の胸骨圧迫にて有害事象(肋骨骨折)の発生率が上昇する。

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

 

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