第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後1~5】

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1 妊娠週数と放射線被ばくによる児への影響との組合せで正しいのはどれか。

1.妊娠3週:中枢神経障害
2.妊娠5週:小児がん
3.妊娠8週:奇形
4.妊娠30週:精神発達遅滞

解答

解説

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P57」)

1.× 中枢神経障害は、妊娠「3週」ではなく9~26週である。

2.× 妊娠5週は、「小児がん」との関連性は低い。

3.〇 正しい。妊娠8週は、奇形が生じる。小頭症や網膜変性、白内障、骨格や性器の異常などである。ただし、50mGy未満では奇形発生率を上昇させないと説明できる。ちなみに、外因の影響を受けやすい妊娠時期(形態異常の発生しやすい臨界期)は主要な器官形成が起きる受精後3~8週(妊娠5~10週)に一致しており、 その前後の妊娠時期には減少している(※引用:「奇形の赤ちゃんはなぜ生まれるのか」著:野嶽 幸正 様)。

4.× 精神発達遅滞は、妊娠「30週」ではなく8週以降に生じやすい。妊娠後期(8週以降)に放射線に被ばくすると、100ミリシーベルト(mSv)以上の線量で発達障害、200mSv以上の線量で精神発達遅滞が生じることがある(※参考:「妊婦と放射線被曝」医療法人社団 心蘇会様HPより)。

 

(※引用:「確定的影響と時期特異性」環境省HPより)

 

 

 

 

 

2 経口避妊薬の作用について正しいのはどれか。

1.エストロゲンの分泌が増加する。
2.プロゲステロンの分泌が低下する。
3.卵胞刺激ホルモン<FSH>の分泌が増加する。
4.黄体形成ホルモン<LH>の大量放出が起こる。

解答

解説

経口避妊薬とは?

経口避妊薬とは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる。正確に服用できれば避妊効果は確実であるが、短所として、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【利点】女性主体で避妊ができる。正確に服用すれば、避妊効果は確実である。以下のような避妊以外の利点がある。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
・子宮内膜症の症状緩和。
・月経困難症、月経前症候群の改善。

【欠点】服用開始後1~2週間くらいまで、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【禁忌】
大手術の前後および長期間安静状態を要する患者。
35歳以上で1日15本以上の喫煙者。
血栓性素因のある者。
重症の高血圧症患者。
血管病変を伴う糖尿病患者。
産後4週以内の者。
授乳中(産後6か月未満)の者など。

1.× エストロゲンの分泌が「増加」ではなく低下する。なぜなら、経口避妊薬は、エストロゲンプロゲステロンの補充であるため。経口避妊薬とは、エストロゲンプロゲステロンの2種類のホルモンからなる。ちなみに、エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

2.〇 正しい。プロゲステロンの分泌が低下する。なぜなら、経口避妊薬は、エストロゲンプロゲステロンの補充であるため。経口避妊薬とは、エストロゲンプロゲステロンの2種類のホルモンからなる。ちなみに、プロゲステロンとは、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

3.× 卵胞刺激ホルモン<FSH>の分泌が「増加」ではなく低下する。なぜなら、卵胞刺激ホルモンは卵胞の成長を促進するが、この作用を抑えて排卵を防ぐため。卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌される。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを性腺刺激ホルモンと呼ぶ。卵胞刺激ホルモンは、卵巣の卵胞の成熟を促進し、エストロゲンの分泌を刺激する。更年期によるエストロゲンの分泌低下に働きかけるため上昇する(ネガティブフィードバック)。

4.× 黄体形成ホルモン<LH>の大量放出が起こるのは、「LHサージ」である。経口避妊薬との関連は低い。黄体形成ホルモンとは、下垂体前葉から分泌され、卵巣に影響し排卵を起こす上で重要な役割を担う。また、思春期に増加し、精巣においてテストステロン、卵巣においてエストロゲンの分泌を増加させる。ちなみに、LHサージとは、黄体形成ホルモンが一過性に放出される現象である。LHサージは排卵直前の大きさのグラーフ卵胞の卵母細胞の成熟分裂を再開させ、排卵を引き起こす。このLHサージにより第一減数分裂前期で停止していた減数分裂が再開し、第二減数分裂中期で停止する。 また、LHサージにより卵胞は急激に増大し、卵丘細胞・卵子複合体として排卵され、卵管采に捉えられ卵管膨大部に運ばれる。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

 

 

 

 

3 羊水について正しいのはどれか。

1.AFIが15以上で羊水過多を疑う。
2.羊水量は妊娠37週ころに最大となる。
3.妊娠初期の羊水は主に胎児の尿に由来する。
4.妊娠末期に胎児が嚥下する羊水量は500〜1,000mL/日である。

解答

解説

羊水とは?

羊水とは、羊水腔を満たす液体であり、その99%が母の血液の成分からつくられている。妊娠中期以降は胎児尿が主な生産源である。胎児は16週ころから羊水を嚥下し排尿行動と合わせて羊水量を維持する。嚥下した羊水は、食道・胃・小腸・大腸へと移行し、消化管の成熟を助ける。妊娠20週になると羊水量は350mlになり、赤ちゃんの腎臓が発達して、おしっこが出るようになる。赤ちゃんが羊膜腔内に満たされた羊水を飲み込んでは、おしっこをする「胎児循環」のしくみができあがっていく。羊水量が保たれていることは、羊水中で胸郭運動を行う胎児の肺発育にとってきわめて重要である。羊水は子宮の収縮によって胎児にかかる圧力を均等に分散し、臍帯や胎盤への圧力を軽減させる。 同時に、胎動が直接母体に伝わることを防ぎ、胎動による母体の痛みを緩和する。一方、羊水には外界や母体の温度変化からの緩衝作用があり胎児の体温を一定に保つ働きがある。

【羊水の働き】
①胎児の保護作用(物理的および機械的刺激に対する保護作用、感染防御作用、前期破水および早産の予防)
②胎児発育にかかわる作用
③分娩時の作用
④羊水から得られる臨床情報

1.× AFIが、「15」ではなく24以上で羊水過多を疑う。ちなみに、AFIとは、「amniotic fluid index」の頭文字で、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。

2.× 羊水量は、「妊娠37週」ではなく妊娠34週ころに最大となる。羊水量は、赤ちゃんの成長の段階によって変わっていく。一般的には、妊娠週数が進むにつれて増えていき、30~35週に約800mlとピークを迎え、40週を過ぎると500ml以下になり減少する。なぜなら、出産に向けて子宮への血流が減少するためである。

3.× 「妊娠初期」ではなく妊娠中期以降の羊水は主に胎児の尿に由来する。妊娠の初期と妊娠中期~後期では羊水の起源は大きく違う。妊娠の初期は、母体からの起源が主で、羊膜や絨毛膜を介して母体の血漿成分が漏出してできる。妊娠の中期(妊娠20週前後)以降では、胎児の尿が羊水の主な産生源となる。胎児の尿量は妊娠20週では100ml/日であるが、妊娠40週には1,200ml/日以上にも達する。

4.〇 正しい。妊娠末期に胎児が嚥下する羊水量は500〜1,000mL/日である。なぜなら、羊水には成長因子という物質が含まれているため。羊水を飲み込むことにより赤ちゃんは成長因子を肺や腸にしみこませている。生まれてからの呼吸や栄養の吸収ができる準備をしている。

 

 

 

 

 

4 骨盤と胎児とを図に示す。
 胎位胎向で正しいのはどれか。

1.第1単殿位
2.第2単殿位
3.第1複殿位
4.第2複殿位

解答

解説
1.〇 正しい。第1単殿位が設問の胎位胎向である。
・第1胎向とは、児背または児頭が母体の左側に向かう場合を指す。
・単殿位とは、胎児のお尻を下に向けてV字型の姿勢をとっている逆子の状態である。設問は、複殿位で、足踵が殿部に接して先進している状態である。

2.× 第2単殿位は当てはまらない
・第2胎向とは、児背または児頭が母体の右側に向かう場合を指す。

3~4.× 第1複殿位/第2複殿位は当てはまらない
複殿位とは、胎児の股関節および膝関節が屈曲し、下腿が下に向いているしている場合をいう。

 

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

5 Aさん(52歳、専業主婦)。子宮がん検診のため来院した。「最近のぼせることが増え、動悸もするようになった。すぐにイライラし、頭が重い。外に出るのも人と話すのも面倒です。子どもは独立したばかりです。夫は仕事が忙しく、毎日帰宅が遅いです」と助産師に相談があった。
 このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.地域でのボランティア活動の情報を提供する。
2.家で安静にしているよう促す。
3.更年期外来の受診を勧める。
4.夫に相談するよう勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(52歳、専業主婦、子宮がん検診)
・「最近のぼせることが増え、動悸もするようになった。すぐにイライラし、頭が重い。外に出るのも人と話すのも面倒です。子どもは独立したばかりです。夫は仕事が忙しく、毎日帰宅が遅いです」と。
→本症例は、更年期障害が疑われる。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.× 地域でのボランティア活動の情報を提供する優先度は低い。なぜなら、本症例は「外に出るのも人と話すのも面倒です」と言っているため。この状況で、この状況で新しい活動を勧めるのは、よりストレスに繋がるとも考えられる。

2.× 家で安静にしているよう促す優先度は低い。なぜなら、根本的な原因(例えば、更年期障害)を放置することになる可能性があるため。何かしらの対応や支援、治療が必要である。

3.〇 正しい。更年期外来の受診を勧める。なぜなら、本症例は、更年期障害が疑われるため。更年期外来での専門的な診察と治療が望ましい。

4.× 夫に相談するよう勧める優先度は低い。なぜなら、本症例から「夫は仕事が忙しく、毎日帰宅が遅いです」という情報があるため。更年期障害と診断されてから、夫に相談し、必要なサポートを受けるよう伝えるほうが、忙しい夫にも端的かつスムーズに伝えられる。

 

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