第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)。半年間の不妊治療を受け、クエン酸クロミフェンの内服によって妊娠に至った。経腟超音波検査で子宮内に胎囊が3つ認められ、三胎妊娠と診断された。妊娠9週で総合周産期母子医療センターの産科に紹介され受診した。

46 妊娠31週1日。Aさんに38.2℃の発熱がみられた。感冒様症状や尿混濁はない。診察したところ腟内に血液の混じった液体の貯留があり、破水検査の判定結果は陽性であった。子宮口は1cm開大しており、最も下降している胎児の先進部は両足である。児の推定体重はそれぞれ1,560g、1,400g、1,320gであった。抗菌薬の点滴静脈内注射が開始された。血液検査の結果、白血球15,500/μL、CRP5.8mg/dLであった。
 Aさんに行われると予想される治療はどれか。

1.1日3回の腟内洗浄
2.抗菌薬腟錠の挿入
3.リトドリン塩酸塩の再開
4.子宮頸管縫縮術
5.帝王切開術

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、初産婦、三胎妊娠切迫早産の疑い)。
・リトドリン塩酸塩の点滴静脈内注射の開始翌日から全身の発疹と肝機能異常とが出現した。
・妊娠31週1日:発熱38.2℃(感冒様症状や尿混濁なし)。
・腟内に血液の混じった液体の貯留があり。
・破水検査の判定結果:陽性。
・子宮口:1cm開大、最も下降している胎児の先進部:両足
・各児の推定体重:1,560g、1,400g、1,320gであった。
・抗菌薬の点滴静脈内注射:開始。
・血液検査の結果:白血球15,500/μLCRP5.8mg/dL
→Aさんは、前期破水絨毛膜羊膜炎が疑われる。前期破水とは、陣痛開始前のいずれかの時点で胎児の周りの羊水が流れ出ることである。多くの場合、破水後まもなく陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。

→絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P142」)

1.× 1日3回の腟内洗浄は必要ない。なぜなら、本症例は、破水を伴っているため。また、絨毛膜羊膜炎の治療として、膣内洗浄を行うことがあり、破水を伴っていない場合、1日1回程度が望ましい

2.× 抗菌薬腟錠の挿入は必要ない。なぜなら、絨毛膜羊膜炎に対し、「膣」だけでなく全身への「静脈内投与」が必要となるため。

3.× リトドリン塩酸塩の再開は必要ない。なぜなら、リトドリン塩酸塩の点滴静脈内注射の開始翌日から全身の発疹と肝機能異常とが出現しているため。また、破水を伴っている場合、児の娩出が優先される。

4.× 子宮頸管縫縮術は必要ない。なぜなら、子宮頸管縫縮術とは、子宮頚管を縫い縮める方法であり、子宮頸管無力症などで早産予防として行われるため。シロッカー手術、マクドナルド手術がある。子宮頸管無力症とは、陣痛などの下腹部痛や性器出血などの症状がないが子宮頸管が開いてきてしまう状態のことを言い、流産や早産の原因となってしまうことがある。

5.〇 正しい。帝王切開術がAさんに行われる治療である。なぜなら、Aさん(40歳、初産婦、三胎妊娠切迫早産の疑い)、妊娠26週を過ぎた絨毛膜羊膜炎、最も下降している胎児の先進部:両足(臍帯脱出の危険がある)ことなどが考慮されるため。
【帝王切開術の適応】
①母体適応:児頭骨盤不均衡前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延など。
②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産前期破水多胎など。

Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準

絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。

【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】
母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。

(※参考:「子宮内感染について」より)

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)。病院で妊婦健康診査を受けており、妊娠経過は順調であった。妊娠35週3日、妊婦健康診査で行われたスクリーニング検査で、肛門周囲からB群溶血性レンサ球菌<GBS>が検出された。Aさんは児への感染を心配している様子である。

47 Aさんへの説明で最も適切なのはどれか。

1.「分娩のときに抗菌薬の点滴で予防します」
2.「抗菌薬を1週間、毎日内服してください」
3.「手洗いを徹底してください」
4.「性交渉は控えてください」
5.「週に1回腟洗浄をします」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦、妊娠経過は順調)。
・妊娠35週3日:肛門周囲からB群溶血性レンサ球菌が検出。
・Aさんは児への感染を心配している様子である。
→B群レンサ球菌とは、膣内に常在することのある細菌で、妊婦以外では、膀胱炎などの尿路感染症でもおこさない限り問題となることは少ない。ところが、出産時にこのB群レンサ球菌が膣内に存在すると、生まれる新生児に敗血症、髄膜炎、肺炎などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがありえることが知られている。この母から子への感染が問題とされている。B群連鎖球菌は、新生児における、敗血症や髄膜炎、肺炎の主要な原因菌の一つである。髄膜炎が死亡原因となることや、髄膜炎の後遺症として、聴力や視力が失われたり、運動や学習の障害などが残る場合もある。妊婦では、膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)、死産を起こすことがある。妊婦以外では、尿路感染症、敗血症、皮膚・軟部組織の感染症および肺炎を起こすことがあり、死亡例もある(※参考:「B群レンサ球菌(GBS)感染症について」横浜市HPより)。

1.〇 正しい。「分娩のときに抗菌薬の点滴で予防します」と説明する。なぜなら、B群連鎖球菌が陽性であるため。妊産婦の経腟分娩中あるいは前期破水後,新生児の感染を予防するため、ペニシリン系などの抗菌薬を点滴静注する(※参考:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P297」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。

2.× 「抗菌薬を1週間、毎日内服してください」と説明は不要である。なぜなら、「内服」ではなく静注が必要であるため(※下図参照)。

3.× 「手洗いを徹底してください」と説明は不要である。なぜなら、児への感染は産道感染により生じるため。産道感染とは、分娩が始まって産道を通る時に感染するものである。

4.× 「性交渉は控えてください」と説明は不要である。なぜなら、性交渉では児への感染は生じないため。

5.× 「週に1回腟洗浄をします」と説明は不要である。なぜなら、膣洗浄によって児への感染を予防できないため。むしろ、腟内の正常な細菌叢を乱す可能性がある。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P297-8」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)。病院で妊婦健康診査を受けており、妊娠経過は順調であった。妊娠35週3日、妊婦健康診査で行われたスクリーニング検査で、肛門周囲からB 群溶血性レンサ球菌<GBS>が検出された。Aさんは児への感染を心配している様子である。

48 妊娠37週3日に妊婦健康診査を受診した。子宮底長34cm、第1頭位。経腹超音波検査では胎児の推定体重は2,850gで、胎盤位置は子宮底部で羊水量は正常である。内診所見は、子宮口2cm開大、展退度50%、Station-2。胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
 胎児心拍数陣痛図で認められる所見はどれか。

1.胎児心拍数基線の上昇
2.基線細変動の減少
3.変動一過性徐脈
4.遅発一過性徐脈
5.一過性頻脈

解答

解説

MEMO

胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。胎児心拍数パターンをみるときは、①心拍数(基線の高さ)、②心拍数の細かい変動(基線細変動)、③胎動や子宮収縮に対する心拍数の変化(一過性変動)の3点についてチェックする。

1.× 胎児心拍数基線の上昇は認められない。なぜなら、本児は140~150bpmであるため。ちなみに、正常脈の範囲は、110bpm~160bpmである。

2.× 基線細変動の減少は認められない。なぜなら、本児は6~25bpm(細変動中等度)みられるため。ちなみに、5bpm以下の場合、細変動減少と判断できる。また、胎児心拍数基線細変動とは、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。基線細変動の減少・消失していた場合、異常所見である。

3.× 変動一過性徐脈は認められない。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。

4.× 遅発一過性徐脈は認められない。遅発一過性徐脈とは、子宮収縮の最強点に遅れて心拍数が減少し、減少開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなって元に戻る徐脈である。母児間におけるガス交換の減少を示し、胎児の危険を示す。糖尿病、高血圧、妊娠中毒症、腎炎、予定日超過などの胎盤機能不全や母児低血圧、その他子宮収縮剤の過剰投与などが原因となる。

5.〇 正しい。一過性頻脈が認められる。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。一過性の胎児心拍数変動で、多くは子宮収縮、胎動などに関連して出現する。心拍数が開始からピークまで30秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm以上、元に戻るまでの持続が15秒以上2分未満のものをいう。

胎児心拍数陣痛図の基準値

胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。

①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満

②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上

 

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)。病院で妊婦健康診査を受けており、妊娠経過は順調であった。妊娠35週3日、妊婦健康診査で行われたスクリーニング検査で、肛門周囲からB 群溶血性レンサ球菌<GBS>が検出された。Aさんは児への感染を心配している様子である。

49 妊娠39週1日、Aさんは自宅にて睡眠中に突然下着とシーツとが濡れて目が覚め、受診している病院に電話連絡した。子宮収縮の自覚はなく、いつもどおりの胎動を感じている。性器出血はない。
 電話を受けた助産師の指示で最も適切なのはどれか。

1.「規則的におなかが張ってくるようなら来院してください」
2.「尿漏れかもしれないので様子をみてください」
3.「出血があればまた電話で連絡してください」
4.「今すぐ来院してください」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦、妊娠経過は順調)。
B群溶血性レンサ球菌<GBS>
・妊娠39週1日:自宅にて睡眠中に突然下着とシーツが濡れている
・子宮収縮の自覚はなく、いつもどおりの胎動を感じている。
・性器出血はない。
→本症例は前期破水が疑われる。
【用語説明】
破水とは、卵膜が破れて羊水が子宮外に流出することである。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。

1~3.× 「規則的におなかが張ってくるようなら来院してください」「尿漏れかもしれないので様子をみてください」「出血があればまた電話で連絡してください」と伝える必要はない。なぜなら、前期破水の場合、①絨毛膜羊膜炎の有無、②胎児健常性の評価をしなければならないため。また、本症例は、B群溶血性レンサ球菌<GBS>が検出されているため、感染予防の抗菌薬投与も必要となる。したがって、経過観察や様子を見たり、電話での連絡は初期対応が遅くなる可能性が高い。

4.〇 正しい。「今すぐ来院してください」と伝える。なぜなら、前期破水の場合、①絨毛膜羊膜炎の有無、②胎児健常性の評価をしなければならないため。また、本症例は、B群溶血性レンサ球菌<GBS>が検出されているため、感染予防の抗菌薬投与も必要となる。したがって、来院での対応となる。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P142」)

 

 

 

 

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、2回経産婦)。これまでの出産はいずれも正常分娩であった。診療所に通院し、今回妊娠経過中に特に異常の指摘はなかった。妊娠41週1日、前期破水にて入院。入院時の内診所見は、子宮口4cm開大、展退度60%、Station-2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方であった。

50 入院後12時間が経過し、内診所見は、子宮口8cm開大、展退度80%、Station+1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方であった。陣痛間欠4分、陣痛発作60秒で、大泉門が先進し1時方向に触れる。
 この時点でのアセスメントで正しいのはどれか。

1.正常経過
2.微弱陣痛
3.高在縦定位
4.前方前頭位
5.後方後頭位

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、2回経産婦、これまで正常分娩)。
・妊娠経過中:特に異常の指摘なし。
・妊娠41 週1日:前期破水にて入院。
・所見:子宮口4cm開大、展退度60%、Station-2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方。
・入院後12時間の所見:子宮口8cm開大、展退度80%、Station+1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方。
陣痛間欠4分、陣痛発作60秒で、大泉門が先進し1時方向に触れる
→ほかの選択肢が消去される理由を説明できるようにしよう。

1.× 正常経過とはいえない。なぜなら、正常の第2回旋の前半の場合、児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)ため。

2.× 微弱陣痛とはいえない。なぜなら、本児の陣痛間欠は4分(子宮口8cm開大)であるため。ちなみに、微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。

3.× 高在縦定位とはいえない。なぜなら、本児の場合、Station+1まで進行し、大泉門が先進し1時方向に触れているため。ちなみに、高在縦定位とは、児頭が骨盤に進入する際、矢状縫合が前後径に一致した状態である。児頭が縦向きのまま下降するため、横長の骨盤入口部で引っかかってしまい分娩が停止した状態となる。前方高在縦定位と後方高在縦定位がある。

4.〇 正しい。前方前頭位といえる。本児は、子宮口8cm開大であることから、第2回旋の前半といえる。1時方向に先進した大泉門がStation+1で触れることから、「母体の前方に大泉門(児の前頭)」がある。したがって、前方前頭位であると判断できる。

5.× 後方後頭位とはいえない。なぜなら、本児の場合、Station+1まで進行し、大泉門が先進し1時方向に触れているため。ちなみに、後方後頭位とは、胎児後頭が母体の後方に向かって回旋(先進部の小泉門が後方に回旋)したものをいう。分娩の経過中に後方後頭位をとるものは1~5%であるが、約70%は分娩進行中に前方後頭位に変わり、一部は定在横定位になる。産道に比べて児頭が相対的に小さい場合に起こりやすいとされ、広骨盤または過少児頭の場合に問題となる。第2回旋の異常(後方後頭位) に対し、腹側を下にした側臥位で休むことにより胎児の自己回転を促す方法がある。

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)