第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

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36 バイオフィジカルプロファイルスコアの評価で正常と判断するのはどれか。2つ選べ。

1.5cmの羊水ポケットが確認できる。
2.四肢の運動が30分間に1回確認できる。
3.手掌の開閉運動が30分間に3回確認できる。
4.NSTで一過性頻脈が20分間に1回確認できる。
5.20秒続く呼吸様運動が30分間に1回確認できる。

解答1・3

解説

胎児のwell-beingの評価

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性品脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

1.〇 正しい。5cmの羊水ポケットが確認できる。ことは、正常と判断できる。
羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

2.× 四肢の運動が30分間に1回確認できることは、異常と判断できる。
胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

3.〇 正しい。手掌の開閉運動が30分間に3回確認できる。ことは、正常と判断できる。
胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

4.× NSTで一過性頻脈が20分間に1回確認できることは、異常と判断できる。
non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性品脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

5.× 20秒続く呼吸様運動が30分間に1回確認できることは、異常と判断できる。
胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

 

 

 

 

 

37 胎児体重の推定に用いられるのはどれか。2つ選べ。

1.頭殿長
2.大腿骨長
3.上腕骨長
4.児頭大横径
5.児頭大斜径

解答2・4

解説

MEMO

胎児体重の推定は2つ方法がある。

①胎児推定体重=1.07×児頭大横径(BPD)の3乗+3.42×腹部前後径(APTD)×腹部横径(TTD)×大腿骨長(FL)

②胎児推定体重=1.07×児頭大横径(BPD)の3乗+0.3×体幹周囲長(AC)の2乗×大腿骨長(FL)

したがって、胎児推定体重算出には、児頭大横径(BPD)、腹部前後径(APTD)、腹部横径(TTD)、大腿骨長(FL)、体幹周囲長(AC)の計測値が必要となる。

1.× 頭殿長は、主に妊娠週数を求めるときに用いられる。

これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭殿長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と頭殿長からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、頭殿長からの予定日を採用する。妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。

2.〇 正しい。大腿骨長(FL)/児頭大横径(BPD)は、胎児体重の推定に用いられる。

3.× 上腕骨長はあまり使用しない。胎児発達不全や染色体異常の際に観察することがある。

5.× 児頭大斜径とは、オトガイから小泉門より3cm前方の点を結んだ径線である。

 

 

 

 

38 経腟分娩後に正常に経過している産褥6週の褥婦の状態で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.子宮の重さは約70gである。
2.外子宮口は2cm開いている。
3.血液凝固機能は亢進している。
4.循環血液量は非妊時より多い。
5.腎血流量は非妊時の状態に回復している。

解答1・5

解説

産褥とは?

産褥とは、分娩終了直後から、妊娠分娩によって生じた母体の解剖学的および機能的変化が妊娠前の状態に復帰するまでの期間をいう。産褥の期間は通常6~8週で、この間に復古現象が進行する。通常6~8週にて、おおむね非妊時と同様の状態へと回復する。

1.〇 正しい。子宮の重さは約70gである。6~8週間後には非妊時の重さでもある約60~70gと戻る。ちなみに、子宮の重さが約300gになるのは、出産2週間ごろである。妊娠末期は1000gである。

2.× 外子宮口は、「2cm開いている」ではなく閉じている。2cm開いているときは、産後1週間ごろである。4週間後にはほぼ閉鎖する。ただし、横裂を生じることが多い。ちなみに、子宮の入り口から腟までの部分を子宮頸管といい、腟側を外子宮口、赤ちゃん側を内子宮口という。

3.× 血液凝固機能は、「亢進」ではなく妊娠前に改善している。産褥期の血液凝固機能の亢進は、出産後の出血を防ぐための生理的な反応である。産後2週間で回復することが多い。

4.× 循環血液量は、非妊時「より多い」のではなく変わらない。妊娠によって惹起された血液所見の変化は分娩後 2 週後にほぼ正常に復帰する。

5.〇 正しい。腎血流量は非妊時の状態に回復している。「妊娠中に増加した腎血漿流量や糸球体濾過率は産褥6週までに非妊娠時の状態に戻る。また、産褥早期にはANPが増加することもあり、分娩後は生理的利尿期があり尿量は増加する。一方、分娩後に一時的な尿閉をみることがあるが、これは、分娩時の膀胱、尿道、神経に対する過度の圧迫が関係している」(※引用:「分娩の生理・産褥の生理」杏林舎様HPより)」。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

 

39 マタニティブルーズについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1.幻覚妄想状態となる。
2.産後4週以降に発現する。
3.身体的不調の原因となる。
4.一過性の情動の障害である。
5.抗うつ薬による治療が必要である。

解答3・4

解説

マタニティーブルーズとは?

マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、原因は産後のホルモンの変動である。症状は、涙もろさ、抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状がみられる。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。

1.× 幻覚妄想状態とはならない。症状は、涙もろさ、抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状がみられる。ちなみに、幻覚妄想状態がみられる主なものとして、せん妄が考えられる。

2.× 産後「4週以降」ではなく分娩数日後から2週程度の間に発現する。2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。

3.〇 正しい。身体的不調の原因となる。なぜなら、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状も出現するため。

4.〇 正しい。一過性の情動の障害である。産後うつ病では、抑うつ状態が2週間以上は持続する。ちなみに、一過性とは、医学で症状が短期間起こり、すぐ消える性質を意味する。また、一般に、すぐに現れて、またすぐに消えてしまうような性質を持つ。

5.× 抗うつ薬による治療が必要とはいえない。なぜなら、一過性で自然に回復することが多いため。

産後うつとは?

産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。

 

 

 

 

40 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律において、性別の取扱いの変更を家庭裁判所で審判することができる条件はどれか。2つ選べ。

1.現に未成年の子がいないこと
2.ホルモン治療を受けていること
3.性染色体の核型が正常ではないこと
4.生物学的性と同一の性への恋愛感情を有すること
5.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

解答1・5

解説

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

この法律によって、性同一性障害者のうち一定の要件を満たす者について、家庭裁判所の審判により、戸籍上の性別を変更することが認められるようになった。この法律では、性別変更の要件として5つを掲げて、これらをすべて満たす必要があると規定している。

(定義)
第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

(※参考:「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)

1.5.〇 正しい。現に未成年の子がいないこと/生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあることが、戸籍上の性別の変更の条件として求められる。

2~4.× ホルモン治療を受けていること/性染色体の核型が正常ではないこと/生物学的性と同一の性への恋愛感情を有することは、戸籍上の性別の変更の条件ではない

 

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