第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

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6 高校2年生100人を対象に、助産師3人で全3回の性教育を行うことにした。第1回目は性に関する知識を獲得することを目標に専門家による講義を行った。第2回目は性感染症が自分にも起こりうる問題として捉えられることを目標に設定した。
 第2回目の健康教育の方法で最も適切なのはどれか。

1.助産師が講義を行う。
2.1人の生徒が体験談を話す。
3.少人数でのグループワークを行う。
4.男女を1人ずつ選びロールプレイを行う。

解答

解説

ポイント

・対象:高校2年生100人
・助産師3人:全3回の性教育を行う。
・第1回目の目標:性に関する知識を獲得すること(専門家による講義)。
・第2回目の目標:性感染症が自分にも起こりうる問題として捉えられること。
→第2回目の目標に最も適切な教育方法を考えよう。自分にも起こりうると思うには、問題を身近に感じられる方法が望ましい。したがって、参加者自身が積極的に関与し、他者と意見交換やディスカッションを行う。

1.× 助産師が講義を行うより優先されるものが他にある。なぜなら、講義の場合、一方通行的な情報の伝達になりやすく、受講者の自己表現の機会が少なく、受動的立場に置かれるため。したがって、学習者の態度変容や技能学習には向かず、学習者の個々の関心や能力に対応が難しい特徴を持つ。

2.× 1人の生徒が体験談を話すより優先されるものが他にある。なぜなら、1人の生徒が性感染症にかかった情報もなく、個人情報保護の観点からも適切ではないため。また、体験談は個人差も大きく、自分にも起こりうる問題として捉えられるかは疑問が残る。

3.〇 正しい。少人数でのグループワークを行う。グループワーク(集団援助技術)とは、援助者が自然発生的あるいは意図的に形成されたグループの利用者の相互作用を活用し、その治療教育的力によってさまざまな目標の達成を目指す。互いの意見交換を通じて、自分自身のリスクについて考えるきっかけになる。ただし、グループワーク(集団援助技術)のデメリットとして、①グループでの決断に過剰な自信を持つ、②グループとの同調に圧力がかかる、③怠惰を助長することがあげられる。

4.× 男女を1人ずつ選びロールプレイを行うより優先されるものが他にある。なぜなら、高校2年生100人に対し、1人ずつ行うことは現実的に時間がかかりすぎて現実的ではないため。また、性に関して体験の差も大きく、羞恥心を与えかねない。ちなみに、ロールプレイとは、「役割」と「演じる」を組み合わせた言葉で、実際の場面や状況を想定し、疑似体験を通して研修を行う手法である。

 

 

 

 

 

7 Aさん(17歳、女子、高校生)。月経不順のため受診した。「付き合っている彼が、最近メールの返信が遅れると怒るので怖い」と診察後に助産師に話した。
 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

1.「気にし過ぎではないですか」
2.「彼とは別れたほうがいいですね」
3.「もう少し詳しく聞かせてください」
4.「私が彼に怒らないように言いましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(17歳、女子、高校生、月経不順)。
・「付き合っている彼が、最近メールの返信が遅れると怒るので怖い」と。
→基本的に傾聴と共感を心がける。Aさん(17歳)の感情を尊重し、信頼関係を築くことで、彼女が感じている恐怖やストレスの根本的な原因を理解し支援していく。

1.× 「気にし過ぎではないですか」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんの感情を軽視し、彼女の不安を助長させる恐れがあるため。

2.4.× 「彼とは別れたほうがいいですね」「私が彼に怒らないように言いましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、安直な答えであるため。なぜAさんは返信が遅くなってしまうのか?、事前に連絡が遅くなる旨を伝えとくとどうか?などまだ情報収集すべきことがある。また、別れる/別れないは、Aさんの人生を大きく左右することであり、他人がどうこう言えることではない。Aさんのプライバシーを尊重し、彼女が自分で問題に対処する力を持てるように支援する。

3.〇 正しい。「もう少し詳しく聞かせてください」と伝え対応する。なぜなら、彼女の状況や感情を詳しく聞くことで、適切なサポートや支援を提供することができるため。傾聴と共感を心がけ、Aさんとの信頼関係の構築に努める必要がある。

 

 

 

 

8 成熟期女性の健康問題で正しいのはどれか。

1.早発閉経では骨量が増加する。
2.るいそうでは月経不順が生じる。
3.未産婦では子宮体癌のリスクが低い。
4.子宮腺筋症では過少月経が生じやすい。

解答

解説

エストロゲンとは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.× 早発閉経では、骨量が「増加」ではなく低下する。なぜなら、エストロゲンの不足を招くため。エストロゲンとは、骨の健康を維持するため、骨粗鬆症のリスクが高まる。ちなみに、早発閉経とは、一般に40歳未満で自然に閉経した場合をいう。

2.〇 正しい。るいそうでは月経不順が生じる。なぜなら、体重減少性無月経が起こるため。るいそうとは、やせの程度が著しい状態である。体重減少性無月経とは、やせすぎが原因で起こる無月経の状態である。基準や特徴として、標準体重の-15%以上のやせであるが、食行動の極端な異常はみられず、努力して食事制限をしていることが多く、体重減少の病識がある。そのため、ホルモン治療を行う前に、体重を増やすことで月経周期を回復させることが治療目標になる。

3.× 未産婦では子宮体癌のリスクが「低い」ではなく高い。なぜなら、妊娠や出産によって子宮内膜が脱落し、新しい細胞に置き換わることが子宮体癌の予防に寄与しているため。また、妊娠中は胎盤から大量のプロゲステロンが分泌されるため、エストロゲンの効果を打ち消して子宮体癌になりにくくなるといわれている。ちなみに、子宮体癌とは、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる場所に発生するがんである。主な症状は、生理中ではないのに性器から出血があったり、閉経後に性器から出血があったりするなどの不正出血である。子宮体がんの発生には、卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンが深く関係することが知られている。卵胞ホルモン(エストロゲン)が高いと、子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られている。

4.× 子宮腺筋症では、「過少月経」ではなく過多月経が生じやすい。子宮腺筋症とは、子宮内膜に類似した組織が子宮平滑筋組織の中に出来る疾患で、月経痛や月経血量の過多などの症状を来す。女性ホルモン(エストロゲン)が子宮腺筋症を進展・増悪させ、月経が有る限り、子宮腺筋症は進行していく。子宮腺筋症の病変が有ると、その部分の子宮筋層が肥厚する。

経口避妊薬とは?

経口避妊薬とは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる。正確に服用できれば避妊効果は確実であるが、短所として、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【利点】女性主体で避妊ができる。正確に服用すれば、避妊効果は確実である。以下のような避妊以外の利点がある。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
・子宮内膜症の症状緩和。
・月経困難症、月経前症候群の改善。

【欠点】服用開始後1~2週間くらいまで、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【禁忌】
大手術の前後および長期間安静状態を要する患者。
35歳以上で1日15本以上の喫煙者。
血栓性素因のある者。
重症の高血圧症患者。
血管病変を伴う糖尿病患者。
産後4週以内の者。
授乳中(産後6か月未満)の者など。

 

 

 

 

 

9 受胎調節実地指導員について正しいのはどれか。

1.母体保護法に定められている。
2.少子化の改善を目的としている。
3.子宮内避妊器具<IUD>を挿入できる。
4.厚生労働大臣の認定する講習を受ける必要がある。

解答

解説

受胎調節実地指導員とは?

受胎調節実地指導員とは、女子に対して厚生労働大臣が指定する避妊用の器具を使用する受胎調節の実地指導を行う者として都道府県知事の指定を受けた人のことである。避妊をすることによって妊娠、出産を計画的に調節することを受胎調節という。受胎調節実地指導員は母体保護法に規定されている。

1.〇 正しい。母体保護法に定められている。母体保護法第15条(受胎調節の実施指導)において、「女子に対して内閣総理大臣が指定する避妊用の器具を使用する受胎調節の実地指導は、医師のほかは、都道府県知事の指定を受けた者でなければ業として行つてはならない。ただし、子宮腔内に避妊用の器具を挿入する行為は、医師でなければ業として行つてはならない」と規定されている(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。

2.× 少子化の改善を目的としている。母体保護法第1条(この法律の目的)において「この法律は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする」と規定されている(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 子宮内避妊器具<IUD>を挿入できるのは、医者である。子宮内避妊器具とは、一度挿入すれば長期間(2~3年)有効であり、除去すれば再び妊孕性(にんようせい:妊娠するために必要な能力)を回復することができるが、不正性器出血、疼痛を起こすことがある。挿入や抜去は医師が行う。経産婦より未産婦のほうが、疼痛が大きく挿入しづらい。

4.× 「厚生労働大臣」ではなく都道府県知事の認定する講習を受ける必要がある。母体保護法第15条2項(受胎調節の実施指導)において、「前項の都道府県知事の指定を受けることができる者は、内閣総理大臣の定める基準に従つて都道府県知事の認定する講習を終了した助産師、保健師又は看護師とする。」と規定されている(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。

母体保護法とは?

母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

 

 

 

 

10 Aさん(28歳、初産婦)。分娩開始から8時間が経過した。内診所見は、子宮口7cm開大、展退度80%、Station±0。陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40秒。Aさんは「手がしびれて、なんだか頭がボーッとします」と言った。体温36.8℃、呼吸数48/分、脈拍80/分、血圧134/70mmHg。
 Aさんの状態として最も考えられるのはどれか。

1.代謝性アシドーシス
2.代謝性アルカローシス
3.呼吸性アシドーシス
4.呼吸性アルカローシス

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、初産婦、分娩開始:8時間経過)
・内診所見:子宮口7cm開大、展退度80%、Station±0。
・陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40秒。
・Aさん「手がしびれて、なんだか頭がボーッとします」と。
・体温36.8℃、呼吸数48/分、脈拍80/分、血圧134/70mmHg。
→本症例は、過換気症候群(過呼吸)が疑われる。妊娠中は胸式呼吸や多呼吸になりやすく、不安や精神的気質の誘因が加わることで発症しやすい。過換気症候群によって生じる体内の酸塩基平衡の変化をおさえておこう。

→過換気症候群とは、器質的障害が認められないのにストレスや緊張、不安などの心理的要因等により発作的に肺胞過換気状態を生じ、呼吸性アルカローシスに基づく臨床症状を呈する病態をいう。症状として、息をしにくい、息苦しい(呼吸困難)、呼吸がはやい、胸が痛い、めまいや動悸などがある。また、テタニーと呼ばれる手足のしびれや筋肉がけいれんしたり、収縮して固まる(硬直)症状がみられる。

1.× 代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

2.× 代謝性アルカローシスとは、嘔吐などで起こる。嘔吐により胃液(酸性)が失われ、HCO3−が高値となるのが特徴である。

3.× 呼吸性アシドーシスとは、換気が低下(肺気腫や喘息)することが原因で、CO2が体内に蓄積している状態である。

4.〇 正しい。呼吸性アルカローシスは、Aさんの状態として最も考えられる。呼吸性アルカローシスとは、換気が亢進(過換気症候群や過呼吸)することが原因で、CO2排出が亢進するとpHは上昇して生じる。主な症状として、ふらつき、錯乱、筋痙攣、失神などが起こる。

 

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