第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 卵胞期と比較して、排卵期の頸管粘液の変化で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.pHは酸性を呈す。
2.牽糸性は低下する。
3.粘稠度は低下する。
4.分泌量は減少する。
5.透明度が増加する。

解答3・5

解説

用語の説明

頸管粘液とは、一般的には「おりもの」と呼ばれ、子宮頸部の腺から分泌される卵白様の粘液である。頸管粘液はエストロゲンによりその症状や量が変化する。

卵胞期とは、1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期である。

エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.× pHは、「酸性」ではなくアルカリ性(7.0〜8.5)を呈す。なぜなら、排卵期の頸管粘液は精子が生存しやすくするためである。ちなみに、卵胞期の頸管粘液は酸性(pH4.0〜6.5)である。

2.× 牽糸性は、「低下」ではなく増加する。なぜなら、排卵期に、粘稠度が低下し、精子が容易に通過できるようにするため。ちなみに、牽糸性とは、糸を引き,伸びる性質のことをいう。

3.〇 正しい。粘稠度は低下する。なぜなら、排卵期に、粘稠度が低下し、精子が容易に通過できるようにするため。ちなみに、牽糸性とは、糸を引き,伸びる性質のことをいう。

4.× 分泌量は、「減少」ではなく増加する。なぜなら排卵期には頸管粘液の分泌量が増加することにより、精子の移動を容易するため。

5.〇 正しい。透明度が増加する。一方、卵胞期の頸管粘液は不透明となりやすい。

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

 

 

 

 

 

32 正常に経過している妊婦の妊娠中期において、非妊娠時よりも血中の値が増加しているのはどれか。2つ選べ。

1.遊離サイロキシン<FT4>
2.黄体形成ホルモン<LH>
3.インスリン
4.空腹時血糖
5.食後血糖

解答3・5

解説
1.× 遊離サイロキシン<FT4>とは、代謝機能を調節する甲状腺ホルモンの一つである。妊娠中は特段の変化は示さない

2.× 黄体形成ホルモン<LH>とは、下垂体前葉から分泌され、卵巣に影響し排卵を起こす上で重要な役割を担う。また、思春期に増加し、精巣においてテストステロン、卵巣においてエストロゲンの分泌を増加させる。妊娠中期には黄体形成ホルモンの値は低下する。妊娠が成立すると、フィードバック機構によって黄体形成ホルモンの分泌は抑制される。つまり、妊娠中期には黄体形成ホルモンの値は低下する。

3.〇 正しい。インスリンは、妊娠中期において、非妊娠時よりも血中の値が増加している。なぜなら、胎児の栄養供給を維持するために母体の血糖値を高めるため。したがって、妊娠中期になると、インスリンの抵抗性が増し、インスリンの分泌量が増加する。ちなみに、インスリンとは、血糖を下げる働きがあり、妊娠すると、胎盤からでるホルモンの働きでインスリンの働きが抑えられ、また胎盤でインスリンを壊す働きの酵素ができるため、妊娠していないときと比べてインスリンが効きにくい状態となる。

4.× 空腹時血糖は、非妊娠時と比較してわずかに低下(ほぼ同程度)する。なぜなら、正常に経過している場合は母体のインスリン分泌が増加するため。

5.〇 正しい。食後血糖は、妊娠中期において、非妊娠時よりも血中の値が増加している。なぜなら、妊娠中期には、インスリン抵抗性が増加するため。妊娠中、空腹時血糖は非妊時よりわずかに低下(ほぼ同程度)であるが、食後、血糖の上昇の程度はより大きくなる。これに反応してインスリンの分泌量は著増し、急速に血糖の低下が起こる。その結果、食事による血糖の変動が起こりやすくなる。

妊娠中の生理的機序

心疾患合併の頻度は全分娩の1~3%である。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。正常妊娠ではこうした増加に対し、末梢血管抵抗が低下し、腎臓や子宮への血流量を増加させている。実際、腎血流量は非妊娠時に比べ30%増加し、子宮血流量は10倍になる。これらの循環変化は母体が順調に胎児を育んで行く上に必須のものであるが、心疾患を合併した妊婦ではしばしば負担となる。また、分娩中は子宮収縮により静脈環流量が増加し、第2期では努責による交感神経興奮により頻脈になり、心拍出量が増加する。したがって、分娩中は心疾患合併妊婦の症状が悪化する危険な時期といえる。分娩後(産褥早期)、子宮は急速に収縮し静脈環流量が増加するが、循環血液量は急には減少しないため、一過性に心負担は増加する。この心拍出量増加は、産後の利尿により循環血液量が減少するまで継続する。産褥期に一過性に浮腫が増悪することがあるが、こうした循環器系変化のためと考えられる。

(※一部引用:「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」(中井章人著,東京医学社)より)

 

 

 

 

33 前方後頭位分娩における児頭の応形機能で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.児頭の大斜径が延長する。
2.分娩所要時間は影響しない。
3.後頭骨は両頭頂骨の下に入る。
4.頭頂骨は前在側が後在側の下になる。
5.児頭の変形が回復するには生後10日を要する。

解答1・3

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

MEMO

骨重積とは、児頭が産道を通過する際に周囲から強く圧迫され、頭骨の辺縁が互いに重なり合うことである。母体の骨盤に合わせて変形し、産道内通過が容易になるこの胎児の頭蓋が変形する性質を応形機能という。

1.〇 正しい。児頭の大斜径が延長する。なぜなら、児頭が産道を通る際に大斜径が延長することで、産道を通過しやすくなるため。児頭は通過面に対して縮小し、骨盤軸の方向に延長する。ちなみに、児頭の大斜径とは、オトガイと小泉門より3cm前方の点を結んだ径線である。

2.× 分娩所要時間は、影響「する」。なぜなら、応形機能(児頭の応形変形)が適切に進行することで、産道を通過しやすくなり、分娩所要時間が短縮されるため。

3.〇 正しい。後頭骨は、両頭頂骨の下に入る。圧力のかかる仙骨側の頭頂骨が反対側の頭頂骨の下に入り込み、さらに後頭骨がその下に入り込む。

4.× 頭頂骨は、前在側が後在側(母体の背中側)の「下」ではなくになる。前在側とは、母体のお腹側のことを指す。一方、後在側とは、母体の背中側のことを指す。

5.× 児頭の変形が回復するには、生後「10日」ではなく2~3日を要する。遅くとも1週間で消失する。

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

 

 

 

 

 

34 院内助産で体重3,500gの児を正常分娩した初産婦。分娩第3期までの出血量は550mL。胎盤娩出直後から出血が続き、5分間で出血量は100mLであった。脈拍90/分、血圧100/70mmHg。子宮底の高さは臍上2横指で軟らかく、弛緩出血と判断し子宮底の輪状マッサージを行い、医師に診察を依頼した。
 この状況で助産師が行う対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.血管確保
2.輸血の準備
3.子宮双手圧迫法
4.子宮収縮薬の局所投与
5.子宮・腟強圧タンポン挿入法

解答1・3

解説

本症例のポイント

・初産婦(体重3,500g、正常分娩、初産婦)。
・分娩第3期までの出血量:550mL。
・胎盤娩出直後から出血が続き、5分間で出血量は100mL。
・脈拍90/分、血圧100/70mmHg。
・子宮底の高さ:臍上2横指で軟らかい。
弛緩出血:子宮底の輪状マッサージを行った。
→産科危機的出血に至る前に,出血量が多くなってきたところで先手を打った対処が重要となる。児娩出後 24 時間以内の子宮や産道からの出血量が経腟分娩で 500mL、帝王切開で 1,000mL を超えてなお活動性の出血がある場合が「先手を打つ」目安となる。子宮双手圧迫、輸液、子宮収縮薬投与など初期治療を開始する。止血困難な産後の異常出血および出血性ショック時には産科危機的出血の対応も必要となる。

→弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P260」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.〇 正しい。血管確保は、助産師が行う対応で優先される。なぜなら、出血が続いている場合、急速に体内の血液量が減少し、ショック状態に陥る可能性があるため。血管確保は緊急時の輸液や薬物投与をスムーズに行うために重要である。

2.× 輸血の準備より優先されるものがほかにある。なぜなら、輸血の準備の基準として、出血量が経腟分娩では1L、帝王切開では2Lを目安とすることが多い。

3.〇 正しい。子宮双手圧迫法は、助産師が行う対応で優先される。なぜなら、本症例は弛緩出血と判断されているため。子宮双手圧迫法とは、左手を腟内に、右手を子宮底部のある腹壁に、それぞれ置き、それら両手で子宮を挟み込むように圧迫する方法である。適応は弛緩出血である。輸液、子宮収縮薬投与などの初期治療を開始する。ちなみに、弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後に本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続いてしまう状態である。原因は、子宮筋の収縮不全に起因して起こる。

4.× 子宮収縮薬の局所投与は、「助産師」ではなく医師が行う。また、「局所投与」ではなく点滴静注法を用いる。子宮収縮薬(オキシトシン)として、通常5~10単位を5%ブドウ糖注射液(500mL)等に混和し、点滴速度を1~2ミリ単位/分 から開始し、陣痛発来状況及び胎児心拍等を観察しながら適宜増減する。なお、点滴速度は20ミリ単位/分を超えないようにすること。(※参考:「医療用医薬品 : オキシトシン」より)

5.× 子宮・腟強圧タンポン挿入法より優先されるものがほかにある。なぜなら、ガーゼタンポンの操作に取掛る時点までの出血総量は、少なくとも650ccに達している場合み用いられることが多いため。これは、処置者の技術による効果が異なり、詰め方が緩く、死腔があると出血が増えることも考えられるため。

 

 

 

 

35 健やか親子21(第2次)の学童期・思春期から成人期に向けた保健対策の指標で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.飲酒率
2.自殺死亡率
3.うつ病の発症率
4.不慮の事故による死亡率
5.性感染症<STD>の罹患率

解答2・5

解説

(※図引用:「課題の概要」厚生労働省HPより)

健やか親子21とは?

健やか親子21は、平成25年の第1次計画の最終評価報告書を受け、平成27年度より第2次計画が開始されている。第1次計画では目標を設定した指標が多かったため、第2次計画では見直しを行い、目標を設けた52の指標と、目標を設けない「参考とする指標」として28の指標を設定した。第2次計画の中間評価は5年後、最終評価は10年後を予定している。

<目標>
1. 思春期の保健対策の強化と健康教育の推進(十代の自殺、人工妊娠中絶、性感染症罹患)
2. 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援(妊産婦死亡、産後うつ病、産婦人科医・助産師数)
3. 小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備(低出生体重児、事故、妊娠・育児期間中の喫煙)
4. 子どものこころの安らかな発達の促進と育児不安の軽減(虐待死亡、母乳育児、心の問題に対応する小児科医)

(※参考:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)

(※引用:「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策(基盤課題B)」厚生労働省様HPより)

1.× 飲酒率は、「保健対策」ではなく健康行動の指標である。

2.5.〇 正しい。自殺死亡率/性感染症<STD>の罹患率は、保健対策の指標である。基盤課題Bの健康水準の指標として、「十代の自殺死亡率」、「十代の人工妊娠中絶率」、「十代の性感染症罹患率」、「児童・生徒における痩身傾向児の割合」、「児童・生徒における肥満傾向児の割合」の5つを設定した(※引用:「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策(基盤課題B)」厚生労働省様HPより)。

3.× (産後)のうつ病の発症率は、基盤課題Aの【切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策】の指標である。

4.× 不慮の事故による死亡率は、基盤課題Cの【子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり】の指標である。

(※図引用:「課題の概要」厚生労働省HPより)

 

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