第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

16 胎児の器官形成と機能的発育に関して正しいのはどれか。

1.心血管系の基本的な形態は妊娠8週までに完成する。
2.中枢神経系の奇形感受性は妊娠10週が最大である。
3.胎児の尿産生は妊娠20週ころから始まる。
4.呼吸様運動は妊娠25週ころから始まる。
5.羊水の嚥下運動は妊娠30週ころから始まる。

解答

解説

MEMO

外因の影響を受けやすい妊娠時期(形態異常の発生しやすい臨界期)は主要な器官形成が起きる受精後3~8週(妊娠5~10週)に一致しており、 その前後の妊娠時期には減少している(※引用:「奇形の赤ちゃんはなぜ生まれるのか」著:野嶽 幸正 様)。

1.〇 正しい。心血管系の基本的な形態は、妊娠8週までに完成する。妊娠8週目までは胎芽と呼ばれ、妊娠9週以降になると胎児と呼ばれるようになる。心拍は、妊娠5週~6週頃に確認できるようになる。8週頃には4つの心房と心室を持つ構造が形成される。

2.× 中枢神経系の奇形感受性は、妊娠「10週」ではなく4~7週が最大である。妊娠4~7週には中枢神経、心臓、消化器、四肢などの主要臓器が形成される。催奇性に対して感受性が最も高い時期(臨界期)であり、催奇性が最も問題となる時期である。

3.× 胎児の尿産生は、妊娠「20週ころ」ではなく10週ごろから始まる。胎児は妊娠12週頃より尿を産生し始め、11週頃から膀胱におしっこが溜まってくるのが見られる。尿の量は徐々に増えていき、16週頃には羊水の主成分となる。

4.× 呼吸様運動は、妊娠「25週ころ」ではなく10週ごろから始まる。顕著となるのは、妊娠16〜17週頃から羊水を飲んでは肺の中でためてふくらませ、また吐き出すという呼吸様運動を認める。

5.× 羊水の嚥下運動は、妊娠「30週」ではなく16週ころから始まる。この嚥下運動により、胎児の消化器系の発達を促す効果があるといわれている。ちなみに、妊娠16〜17週には、超音波検査で嚥下運動や外性器の性差がわかるようになる。

羊水とは?

羊水とは、羊水腔を満たす液体であり、その99%が母の血液の成分からつくられている。妊娠中期以降は胎児尿が主な生産源である。胎児は16週ころから羊水を嚥下し排尿行動と合わせて羊水量を維持する。嚥下した羊水は、食道・胃・小腸・大腸へと移行し、消化管の成熟を助ける。妊娠20週になると羊水量は350mlになり、赤ちゃんの腎臓が発達して、おしっこが出るようになる。赤ちゃんが羊膜腔内に満たされた羊水を飲み込んでは、おしっこをする「胎児循環」のしくみができあがっていく。羊水量が保たれていることは、羊水中で胸郭運動を行う胎児の肺発育にとってきわめて重要である。羊水は子宮の収縮によって胎児にかかる圧力を均等に分散し、臍帯や胎盤への圧力を軽減させる。 同時に、胎動が直接母体に伝わることを防ぎ、胎動による母体の痛みを緩和する。一方、羊水には外界や母体の温度変化からの緩衝作用があり胎児の体温を一定に保つ働きがある。

【羊水の働き】
①胎児の保護作用(物理的および機械的刺激に対する保護作用、感染防御作用、前期破水および早産の予防)
②胎児発育にかかわる作用
③分娩時の作用
④羊水から得られる臨床情報

 

 

 

 

 

17 在胎39週5日、体重3,200gで吸引分娩によって出生した女児。生後30日に1か月児健康診査のため来院した。完全母乳栄養で、体重は4,000g。母親は児の頭血腫と黄疸が消失しないことを心配している。頭血腫は出生直後より小さくなったが、現在も触知できる。便色は黄土色で、時々便に血液が混入するという。排便は10回/日で、肛門周囲の皮膚に発赤と一部びらんとがみられる。
 この児にみられた所見のうち、直ちに精査を必要とするのはどれか。

1.便色
2.黄疸の遷延
3.体重増加率
4.頭血腫の残存
5.便への血液混入

解答

解説

本症例のポイント

・在胎39週5日:女児(吸引分娩、体重3,200g)。
・1か月児健康診査:完全母乳栄養体重は4,000g
・母親「児の頭血腫黄疸が消失しない」ことを心配
・頭血腫:出生直後より小さくなった(現在も触知可)
・便色は黄土色時々便に血液が混入する
・排便:10回/日、肛門周囲の皮膚に発赤と一部びらんとがみられる。
→上記の内容から、正常から逸脱しているものを選択できるようにしよう。

1.× 便色は、黄土色で直ちに精査が必要というものではない。なぜなら、一般的な便色であるため。特に注意を要する赤・黒・白色の便である。

2.× 黄疸の遷延より優先されるものが他にある。なぜなら、母乳性黄疸が最も考えられるため。本児は、完全母乳栄養で、体重増加も問題ない。ちなみに、2週間以上持続の肉眼で観察できる黄疸のことを「遅延性黄疸」というが、未熟性によるものや母乳性黄疸など比較的問題とならないものも含まれている。ちなみに、母乳性黄疸とは、生後1か月を経過しても黄疸が存在して長引く黄疸のことで、この場合には血液中に増加するビリルビンは非抱合型(間接型)であり、尿にも排泄されにくいために尿は黄色に着色しないのが特徴である。ただし、遷延性黄疸の原因として胆道閉鎖症などの重篤な疾患も考えられるため心配であれば主治医に相談することが望ましい。

3.× 体重増加率は、正常範囲内である。本児は、出生時の体重3,200gであり、1か月で体重4,000gとなっている。したがって、800gを30日で割れば、1日26.7gの増加となる。
【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

4.× 頭血腫の残存は、直ちに精査が必要というものではない。なぜなら、触診で小さくなってきているため。頭血腫は、数週間から数カ月で自然に消失し、何らかの治療が必要になることはほとんどない。ちなみに、頭血腫とは、骨膜の下に血がたまったものである。ただし、頭血腫が赤くなったり、液体が出てきたりする場合には、主治医に相談すべきである。

5.〇 正しい。便への血液混入が直ちに精査を必要とする。なぜなら、便への血液混入は、消化管出血真性メレナの可能性があるため。「“メレナ”とは、本来“黒色便”のことです。そのため、“新生児メレナ”は新生児期の下血による黒色便を意味し、新生児が吐血や下血などの症状を呈する病気を総称して新生児メレナと呼ばれます。新生児メレナには、吐血や下血となる血液の由来が母体の血液である “仮性メレナ”と、児の血液である“真性メレナ”があります。仮性メレナの要因としては、出生時の胎盤からの出血や、授乳時に母親の乳頭裂傷などによる出血の嚥下があげられます。一方、真性メレナでは、主に児のビタミン K 欠乏による消化管出血が要因となります。両者はアプト試験(新生児血液中に多く存在するヘモグロビン F のアルカリ抵抗性を利用して母体血か新生児血かを判定する簡易検査)で鑑別することができます。ビタミン K は数種類の凝固因子の産生に必要な補助因子です。そのため、ビタミン K が欠乏すると消化管出血だけでなく、重症例では頭蓋内出血などを合併し、死亡する場合もあります。ビタミン K は胎盤通過性が悪く、母乳中のビタミン K 含量が少ないことなどから、新生児は出生時からビタミン K が欠乏しやすく、哺乳条件によっては乳児期まで欠乏しやすい状態が持続します(※一部引用:「Q3-6. 新生児メレナとはどんな病気ですか?」著:川口 千晴より)」。

 

(※図引用:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)

松井式便色カード

松井式便色カードは、胆道閉鎖症等の早期発見のための便色カードである。母子保健法施行規則の一部を改正する省令(平成24年:2012年)により、母子健康手帳に掲載することが義務付けられた。

正常:4~7である。1~3の場合は、胆道閉鎖症などの可能性があるので、小児科医の受診を勧めている。便の色の確認は、生後2週間、生後1か月、生後1~4か月と数回行うように勧めている。

(※参考:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

18 正期産の分娩進行中に、間欠的胎児心拍数聴取で異常がない場合でも、児の娩出まで胎児心拍数陣痛図による連続的モニタリングを行うことが必要なのはどれか。

1.若年の産婦
2.前期破水後
3.低身長の産婦
4.妊娠高血圧症候群
5.胎児推定体重3,800g

解答

解説

連続モニタリングの適応

「経過観察」を満たしても、以下の場合は連続モニタリングを行う(ただし、トイレへの歩行や病室の移動等で胎児心拍数が評価できない期間を除く)
1)分娩第2期のすべての産婦
2)分娩時期を問わず、以下のような場合(①子宮収縮薬使用中、②用量41mL以上のメトロイリンテル挿入中、③用量41mL未満のメトロイリンテル挿入中であっても陣痛が発来した場合、④無痛分娩中、⑤38℃以上の母体発熱中、⑥上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合)
3)分娩時期を問わず、以下のようなハイリスク妊娠の場合(①母体側要因:糖尿病合併、“妊娠中の明らかな糖尿病”、コントロール不良な妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、妊娠・分娩中の低酸素状態が原因と考えられる脳性麻痺児、子宮内胎児死亡児出産既往(概ね30週以上)、子癇既往、子宮体部への手術歴、②胎児側要因:胎位異常、推定体重<2,000g、胎児発育不全、多胎妊娠、サイトメガロウイルス感染胎児、③胎盤、羊水、臍帯の異常:低置胎盤、羊水過多、羊水過少、臍帯卵膜付着が診断されている場合)
4)その他、ハイリスク妊娠と考えられる産婦(コントロール不良の母体合併症等)
7.以下の場合は分娩監視装置を一定時間(20 分以上)装着してモニタリングを記録し、評価する。1)破水時、2)羊水混濁あるいは血性羊水を認めたとき、3)間欠的児心拍数聴取で(一過性)徐脈、頻脈を認めたとき、4)分娩が急速に進行したり、排尿・排便後など、胎児の位置の変化が予想される場合(間欠的児心拍聴取でもよい)

(※引用「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223」)

1.3.× 若年/低身長の産婦は、連続的モニタリングを行う必要はない。なぜなら、ハイリスク妊娠とは言えないため。早産(妊娠37週未満の出産)、前期破水、多胎妊娠(双子以上の妊娠)、前置胎盤、妊娠高血圧症候群、糖尿病や妊娠糖尿病、その他の内科合併症(喘息、甲状腺疾患、慢性腎炎、膠原病など)、心疾患、腎疾患、てんかん、40歳を超える高年妊娠、高度肥満などが、ハイリスク妊娠に含まれる。

2.× 前期「破水後」ではなく破水時には、分娩監視装置を一定時間(20 分以上)装着してモニタリングを記録し、評価する必要がある。ちなみに、前期破水とは、陣痛開始前のいずれかの時点で胎児の周りの羊水が流れ出ることである。多くの場合、破水後まもなく陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。

4.〇 正しい。妊娠高血圧症候群は、連続的モニタリングを行うことが必要である。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

5.× 胎児推定体重「3,800g」ではなく2,000g未満は、連続的モニタリングを行うことが必要である。胎児側要因として、胎位異常、推定体重<2,000g、胎児発育不全、多胎妊娠、サイトメガロウイルス感染胎児があげられている。低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。

(※引用「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223-4」)

 

 

 

 

 

19 緊急避妊を目的としたレボノルゲストレルの内服に関する指導内容として適切なのはどれか。

1.3.0mgを2回内服する。
2.妊娠阻止率は99%以上である。
3.内服後7日間は他の避妊手段は必要ない。
4.性交後72時間以内であればいつ内服しても効果は変わらない。
5.次回の月経の経血量が通常より少なかった場合は妊娠検査を受ける。

解答

解説

1.× 「3.0mgを2回内服」ではなく1.5mgを1回内服する。6.用法及び用量「性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与する」(※参考:「緊急避妊剤 レボノルゲストレル錠」一般財団法人日本医薬情報センター様HPより)。

2.× 妊娠阻止率は、「99%以上」ではなく84%である。性交後72時間以内に他のレボノルゲストレル製剤1.5mgを1回経口投与した際の妊娠率及び妊娠阻止率は以下のように報告されている。


(※引用:「緊急避妊剤 レボノルゲストレル錠」一般財団法人日本医薬情報センター様HPより)

3.× 内服後7日間は他の避妊手段は「必要ない」とはいえない。なぜなら、性交後に妊娠を回避するためのものであるため。計画的に避妊する場合は、可能な限り避妊効果の高い経口避妊
薬などを用いて避妊することが望まれる。

4.× 性交後72時間以内であれば、いつ内服しても効果は「変わらない」のではなく変わる。早ければ早いほど避妊効果が高いとされている。

5.〇 正しい。次回の月経の経血量が通常より少なかった場合は妊娠検査を受ける。なぜなら、妊娠している可能性があるため。

 

 

 

 

20 37歳の初妊婦。妊娠28週4日、妊婦健康診査で来院した。1日に数回の子宮収縮の自覚がある。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。血圧128/78mmHg。尿蛋白(-)、尿糖+。血液検査データは、Hb 11.5g/dL、Ht 36%。75gOGTTで空腹時血糖90mg/dL、1時間値172mg/dL、2時間値160mg/dLであった。子宮底長25cm。子宮口は閉鎖、子宮頸管長32mm。児は骨盤位で胎児推定体重1,020g。
 このときのアセスメントで適切なのはどれか。

1.正常経過
2.切迫早産
3.妊娠糖尿病
4.妊娠性貧血
5.胎児発育不全<FGR>

解答

解説

本症例のポイント

・37歳の初妊婦(妊娠28週4日
・1日に数回の子宮収縮の自覚あり。
既往歴、家族歴:特記なし
・血圧128/78mmHg。尿蛋白(-)、尿糖+。
・血液検査データ:Hb 11.5g/dLHt 36%
・75gOGTT:空腹時血糖90mg/dL、1時間値172mg/dL、2時間値160mg/dL
・子宮底長25cm。子宮口は閉鎖、子宮頸管長32mm
・児:骨盤位、胎児推定体重1,020g
→各評価項目から、選択肢の消去される理由をあげられるようにしよう。

1.× 正常経過は考えにくい。なぜなら、血糖値の異常が見られるため。75gOGTTにおいて2時間値160mg/dLは、妊娠糖尿病の可能性が示唆され正常経過とは言いにくい。

2.× 切迫早産は考えにくい。なぜなら、本症例(妊娠28週4日)の子宮頸管長は32mmであるため。ちなみに、切迫早産とは、子宮収縮が規則的かつ頻回に起こることにより子宮口が開き、早産となる危険性が高い状態である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもある。切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みである。このような症状がある場合には、まず横になって安静に促す。

3.〇 正しい。妊娠糖尿病がもっとも考えられる。なぜなら、本症例は、既往歴が特記ないが、75gOGTTの2時間値160mg/dLであるため。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

4.× 妊娠性貧血は考えにくい。なぜなら、本症例の血液検査データは、Hb 11.5g/dL、Ht 36%であるため。
妊娠性貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称であり、ヘモグロビン濃度(Hb値)が11g/dL未満、あるいはヘマトクリット値(Ht値)が33%未満で診断される。妊娠性貧血は、全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。

5.× 胎児発育不全<FGR>は考えにくい。なぜなら、妊娠28週4日において胎児推定体重1,020gは正常範囲内であるため。確実に、胎児発育不全とは言いにくい。妊娠28週の標準推定胎児体重は1163g(-1.5SD:930g)、29週の標準推定胎児体重は1313g(-1.5SD:1057g)である。ちなみに、胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

 

(※図引用:「推定胎児体重と胎児発育曲線」)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)