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21 Aさん(32歳、1回経産婦)は、妊娠35週3日に常位胎盤早期剝離のため緊急帝王切開術で分娩した。術後の血液検査で播種性血管内血液凝固<DIC>と診断された。体温37.2℃、脈拍70/分、血圧135/80mmHg。
このときのAさんに投与されるのはどれか。
1.降圧薬
2.ジアゼパム
3.新鮮凍結血漿
4.硫酸マグネシウム
5.ヘパリンナトリウム
解答3
解説
・Aさん(32歳、1回経産婦、常位胎盤早期剝離)
・妊娠35週3日:緊急帝王切開術で分娩。
・術後:播種性血管内血液凝固<DIC>。
・体温37.2℃、脈拍70/分、血圧135/80mmHg。
→常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。
→播種性血管内凝固症候群とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。
1.× 降圧薬は優先度が低い。なぜなら、Aさんの血圧は135/80mmHgで、降圧薬を投与するほどの高血圧とはいえないため。
2.× ジアゼパムは優先度が低い。なぜなら、ジアゼパムと播種性血管内凝固症候群の治療の関連性は低いため。ジアゼパムとは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、主に抗不安薬、抗痙攣薬、催眠鎮静薬として用いられる。
3.〇 正しい。新鮮凍結血漿をAさんに投与する。なぜなら、播種性血管内凝固症候群の治療となるため。播種性血管内凝固症候群の治療は、①基礎疾患の治療、②抗凝固療法、③補充療法が行われます。③補充療法は、播種性血管内凝固症候群で消費されて減少していく血液成分を体外から補っていく方法で、血小板製剤、凝固因子全般を補うための新鮮凍結血漿製剤、アンチトロンビンⅢ製剤が投与される(※参考:「DIC(播種性血管内凝固症候群)」日本血液製剤協会様HPより)。
4.× 硫酸マグネシウムは優先度が低い。なぜなら、硫酸マグネシウムと播種性血管内凝固症候群の治療の関連性は低いため。妊婦に対する硫酸マグネシウムの【作用効果】は、①切迫早産における子宮収縮の抑制、②重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療などである。また、「硫酸マグネシウムは、米国、独国、仏国、加国、豪州において、子癇の予防の効能・効果で承認されており、また、米国及び欧州のガイドラインにおいても子癇の予防に用いる旨記載されている」(※参考:「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議、公知申請への該当性に係る報告書、硫酸マグネシウム、重症妊娠高血圧症候群における子癇の予防及び治療」より)
5.× ヘパリンナトリウムは優先度が低い。なぜなら、ヘパリンナトリウムは、妊婦には禁忌であるため。ちなみに、ヘパリンナトリウムの作用として、①汎発性血管内血液凝固症候群の治療、②血液透析・人工心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止、③血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、④輸血及び血液検査の際の血液凝固の防止、⑤血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の治療及び予防である(※参考:「医療用医薬品 : ヘパリンナトリウム」株式会社陽進堂様HPより)。
【作用効果】
①切迫早産における子宮収縮の抑制
②重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療
【副作用】
①マグネシウム中毒(眼瞼下垂、膝蓋腱反射の消失、筋緊張低下、心電図異常(房室ブロック、伝導障害)、呼吸数低下、呼吸困難等)
②心(肺)停止、呼吸停止、呼吸不全
③横紋筋融解症
④肺水腫
⑤イレウス(腸管麻痺)
(※参考「医療用医薬品 : マグセント」より)
22 骨盤と胎児を図に示す。
胎児の位置で正しいのはどれか。
1.斜位
2.反屈位
3.単殿位
4.第2分類
5.第1胎向
解答4
解説
1.× 斜位とは、胎児が斜めに位置する胎位異常である。胎児の縦軸が子宮の縦軸に斜めに交差している状態である。設問は、骨盤位である。
2.× 反屈位とは、小泉門が先進する状態である。設問は、屈位(後頭位)で、大泉門が先進する状態である。
3.× 単殿位とは、胎児のお尻を下に向けてV字型の姿勢をとっている逆子の状態である。設問は、複殿位で、足踵が殿部に接して先進している状態である。
4.〇 正しい。第2分類である。第2分類とは、児背が母体の後方を向かうものである。一方、第1分類とは、児背が母体の前方に向かうものである。
5.× 第1胎向とは、児背または児頭が母体の左側に向かう場合を指す。設問は、第2胎向で、児背または児頭が右側に向かう状態である。
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)
23 助産業務ガイドライン2014に基づき、正常分娩急変時に経産婦を助産所から搬送すべき状況はどれか。
1.羊水が淡黄色である。
2.第2度の会陰裂傷がある。
3.母体の体温が37.5℃である。
4.破水後24時間経過したが陣痛が発来しない。
5.子宮口全開大から1時間経過したが分娩が進行しない。
解答4
解説
(※図引用:「助産業務ガイドライン 2014 P18」)
1.× 羊水が、「淡黄色」ではなくうぐいす色~暗緑色である。 なぜなら、これは、羊水混濁が高度であることを示すため。
2.× 「第2度」ではなく第3~4度の会陰裂傷がある(下図参照)。なぜなら、拍動性の出血が持続的に流出(大量出血は「分娩後出血」に準ずる)していることが多いため。
3.× 母体の体温が、「37.5℃」ではなく38.0℃以上である。なぜなら、これは、母体発熱を示すため。
4.〇 正しい。破水後24時間経過したが陣痛が発来しない。また、破水後陣痛が発来しても破水から36時間以上経過し、分娩進行が認められない場合は、早めに医師に連絡しておく。ちなみに、破水とは、卵膜が破れて羊水が子宮外に流出することである。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。
5.× 子宮口全開大から、「1時間経過」ではなく2時間以上したが分娩が進行しない(下図参照)。なぜなら、これは分娩が遷延していることを示すため。分娩第2期は、有効な陣痛はあるが2時間以上分娩が進行しない場合に、搬送すべき状況といえる。
(※図引用:「助産業務ガイドライン 2014 P20」)
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
第1度:会陰の皮膚、腟壁粘膜のみに限局し、筋層には達しない裂傷。
第2度:会陰筋層まで及ぶが、肛門括約筋には達しない裂傷。
第3度:肛門括約筋や腟直腸中隔に達する裂傷。
第4度:第3度裂傷に加え、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う裂傷。
24 Aさん(37歳、1回経産婦)。妊娠25週3日で妊婦健康診査のため来院した。これまでの妊娠経過は順調である。前回の妊娠では妊娠31週で起床後に胎動を感じず、外来を受診したところ子宮内胎児死亡と診断された。原因は不明であった。Aさんは助産師に「寝ている間に赤ちゃんが死んでしまうのではないかと気になって熟睡できない」と話した。
助産師の対応で適切なのはどれか。
1.夜間に数回起きて胎動を確認するよう勧める。
2.主治医に睡眠薬を処方してもらうよう勧める。
3.妊娠中の胎児に関心が向くような話題を提供する。
4.妊娠経過が順調であるため再度起こることはないと伝える。
5.今後の妊娠管理について主治医と助産師を交えて相談することを提案する。
解答5
解説
・Aさん(37歳、1回経産婦)。
・妊娠25週3日:妊婦健康診査(妊娠経過は順調)。
・前回の妊娠:妊娠31週で起床後に胎動を感じず(子宮内胎児死亡)。
・原因は不明であった。
・Aさん「寝ている間に赤ちゃんが死んでしまうのではないかと気になって熟睡できない」と。
→Aさんの気持ちも尊重しつつ、助産師としての対応を考えよう。
1.× 夜間に数回起きて胎動を確認するよう勧める必要はない。なぜなら、よりAさんの睡眠の質を低下させ、さらに不安を助長する可能性があるため。
2.× 主治医に睡眠薬を処方してもらうよう勧めるより優先されるものが他にある。なぜなら、妊娠中の睡眠薬の使用は慎重に行う必要があり、「熟睡できない」→「睡眠薬処方」は、あまりにも安直な考えであるため。まず、睡眠薬で対処する前に、Aさんの不安な気持ちを傾聴する。
3.× 妊娠中の胎児に関心が向くような話題を提供する必要はない。なぜなら、既に胎児に関心が向いているため。これは、Aさん「寝ている間に赤ちゃんが死んでしまうのではないかと気になっている」という発言からも伺える。関心を他に向けるだけではなく、対象者に寄り添い、不安を解消するかかわりが必要である。
4.× 妊娠経過が順調であるため「再度起こることはない」と伝える必要はない。なぜなら、絶対に「再度起こることはない」と断言することはできないため。本症例は、37歳で、前回の妊娠経過を考慮すると、安易な断定は行わないようにしよう。
5.〇 正しい。今後の妊娠管理について主治医と助産師を交えて相談することを提案する。なぜなら、本症例の不安を受け止めることができ、さらに適切な対応を検討することができるため。本症例と主治医、助産師が同じ場で、管理について話し合うことは、本症例に安心感を与えることができる。
25 Aさん(23歳、初産婦)。妊娠40週4日。前日20時に陣痛発来で入院した。23時に排尿があったが、その後尿意はなく排尿はみられていない。最後の排便は2日前であった。現在7時で、内診所見は、子宮口7cm開大、展退度100%、Station ±0、胎胞を触れた。胎児心拍数陣痛図で陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40〜50秒。Aさんは、陣痛発作時には顔をしかめて辛そうであり、前日の夜からほとんど眠れていない。強い悪心に伴って嘔吐があり、食欲はない。
この時点でのAさんへの援助で最も適切なのはどれか。
1.室内歩行を促す。
2.炭酸飲料を勧める。
3.トイレでの排尿を促す。
4.グリセリン浣腸を実施する。
5.消化の良い食べ物を勧める。
解答3
解説
・Aさん(23歳、初産婦、妊娠40週4日)。
・前日20時:陣痛発来で入院。
・23時以降:尿意はなく排尿はみられていない。
・最後の排便:2日前。
・現在7時:子宮口7cm開大、展退度100%、Station ±0、胎胞を触れた。
・胎児心拍数陣痛図:陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40〜50秒。
・陣痛発作時には顔をしかめて辛そうであり、前日の夜からほとんど眠れていない。
・強い悪心に伴って嘔吐があり、食欲はない。
→本症例から、適切な支援・対応を考えていこう。
1.× 室内歩行を促すより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは①前日の夜からほとんど眠れていないこと、②強い悪心に伴って嘔吐があることから、室内歩行できる状況ではない可能性が高い。ただし、一般的に室内歩行は、分娩進行を促進するために役立つことがある。歩行に関して「分娩第1期での歩行をはじめとする体動により、分娩第1期の時間が短縮する可能性は示されており、小規模のRCTにおいて、その他の分娩アウトカムを改善するという結果がある。しかし、大規模試験では、現在のところ、陣痛促進を目的とした歩行を積極的に勧めるだけの十分なエビデンスは示されていない。臥位になることより身体を起こして自由な動きをすることは、分娩時間を短縮するというエビデンスは示されていた」と記載されている(※一部抜粋:「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期 2016」)。
2.× 炭酸飲料を勧める必要はない。なぜなら、Aさんは①強い悪心に伴って嘔吐があるため。なぜなら、炭酸飲料は、一般的にゲップを助長し嘔吐を伴いやすいため。
3.〇 正しい。トイレでの排尿を促す。なぜなら、Aさんは最終排泄から8時間経過(23時以降:尿意はなく排尿はみられず、現在7時)しているため。膀胱に尿が充満していることは、分娩進行を妨げることにつながりかねない。
4.× グリセリン浣腸を実施するより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの最後の排便は2日前であるが、嘔吐があり、食欲はないことから便秘の可能性は低いため。ちなみに、グリセリン浣腸は、分娩第1期に行われる浣腸の一種で、細いチューブを肛門から挿入してグリセリン液を注入し、便意を促す方法である。子宮収縮の促進や軟産道拡大、分娩時の外陰部の清潔保持などの効果が期待されている。
5.× 消化の良い食べ物を勧める必要はない。なぜなら、消化が良いからといって、強い悪心に伴って嘔吐があるAさんにとって容易に摂取できるとはいえないため。さらに嘔吐を助長しかねない。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。