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6 Aさん(39歳、1回経産婦)は、体重3,850gの児を経腟分娩した。分娩第3期までの出血量は羊水を含めて650mL。胎盤娩出時のバイタルサインは、脈拍80/分、血圧125/75mmHg。Aさんは分娩2時間後に気分不快を感じ、助産師を呼んだ。外陰部に当てたパッドを超えて血液があふれベッドのシーツに広く染みており、床にもこぼれていた。パッド内の血液量は120g。脈拍130/分、血圧72/38mmHgで、不穏な状態である。
分娩から分娩2時間後までの出血の総量として予想される値はどれか。
1. 770mL
2.1,000mL
3.1,500mL
4.2,000mL以上
解答4
解説
・Aさんの現在のバイタルサインは、脈拍130/分、血圧72/38mmHg、不穏な状態である。
→ショック指数(ショックインデックス)とは、出血、体液喪失が原因で起こる循環不全を循環血液量減少性ショックといい、重症度の指標としてショック指数(SI)を用いることがある。SI=「脈拍数(心拍数)/収縮期血圧」で表す。1.0で循環血液量のおよそ20%が、1.5でおよそ40%が失われていると考えられる。基準として、正常(0.5)、軽症(1.0)、中等症(1.5)、重症(2.0)となる。一般的なSI値による出血量は、①0.5〜1.0:750mL未満、②1.0〜1.5:750~1,500mL、③1.5〜2.0:1,500~2,000mL、④2.0以上:2,000mL以上である。一方、妊婦の場合は循環血液量が増加しているため、SI値が1.0で1,500mL、SI値が1.5で2,500mLの出血量と推定する。
本症例のショックインデックスを求める。
SI=「脈拍数(心拍数)/収縮期血圧」
=脈拍130/分 ÷ 収縮期血圧72mmHg
=1.8055…
したがって、本症例のショックインデックスは1.8である。
妊婦の場合は、循環血液量が増加しているため、SI値が1.0で1,500mL、SI値が1.5で2,500mLの出血量と推定する。
したがって選択肢4.2,000mL以上が分娩から分娩2時間後までの出血の総量として予想される値である。
7 25歳の初産婦。妊娠40週1日、分娩所要時間20時間30分で体重3,650gの女児を正常分娩した。分娩2時間後の観察時に「本当に痛くて大きな声で叫んでしまいました。二度とお産はしたくないです」と硬い表情で言った。
助産師の対応で最も適切なのはどれか。
1.「次のお産は今回と同じにはなりませんよ」
2.「赤ちゃんの顔を見たら気持ちが変わりますよ」
3.「痛かったですよね。でも上手なお産でしたよ」
4.「みんな大きな声を出すので気にしないでください」
解答3
解説
・25歳の初産婦。
・妊娠40週1日(正常分娩:分娩所要時間20時間30分、体重3,650g女児)
・分娩2時間後「本当に痛くて大きな声で叫んでしまいました。二度とお産はしたくないです」と硬い表情で言った。
→本症例から、出産体験に対する否定的感情(敗北感、自信喪失感、挫折感、恐怖、うまく子どもを産むことができなかったという罪悪感)が読み取れる。出産体験に対する否定的感情は、今後「①母親意識の形成・発達に影響を及ぼされる」、「②想起され再構築される」「③自己評価が抑うつやPTSDを引き起される」ことがあげられる。まずは、本人の訴えに対し傾聴・共感し、精神的な支援(出産体験を肯定的にフィードバックする)が必要になっていく(参考:「出産体験の自己評価に関する研究の文献レビュー」著:常盤洋子)。
1.× 「次のお産は今回と同じにはなりませんよ」と断定することはできない。なぜなら、出産体験に対する否定的感情の特徴として、想起され再構築されるため。客観的に次のお産は、今回と同じでなくとも、本症例が、記憶が再構築され「前回と同じ」だと言い張る場合も考えられる。
2.× 「赤ちゃんの顔を見たら気持ちが変わりますよ」と断定することはできない。なぜなら、出産体験に対する否定的感情の特徴として、母親意識の形成・発達に影響を及ぼされるため。また、気持ちを軽く見られているよう本症例が感じ取ってしまうかもしれない。
3.〇 正しい。「痛かったですよね。でも上手なお産でしたよ」と伝える。産痛への対処がうまくできなかった出産を体験したときに心理的結果としてもたらされる否定的な感情・敗北感や自信の喪失、挫折感、恐怖、うまく子どもを産むことができなかったという劣等感や罪悪感は、長期にわたって生々しく記憶されるという報告がある。正しい情報の提供と説明、処置やケアの意志決定への参加、助産師の1対1のケア、産婦のそばに寄り添う助産師の存在は母親に満足感を与える。まずは、本人の訴えに対し傾聴・共感し、精神的な支援(出産体験を肯定的にフィードバックする)が必要になっていく(参考:「出産体験の自己評価に関する研究の文献レビュー」著:常盤洋子)。
4.× 「みんな大きな声を出すので気にしないでください」と伝える必要はない。なぜなら、「大きな声を出したこと」に対してではなく、本当に痛かったことに対して「二度とお産はしたくないです」といっている可能性が高いため。まずは、本人の訴えに対し傾聴・共感し、精神的な支援(出産体験を肯定的にフィードバックする)が必要になっていく。
8 低置胎盤の妊婦が経腟分娩した。胎盤娩出直後に子宮収縮が不良となり、約800mLの出血がみられた。子宮双手圧迫法を行いつつ子宮収縮薬の点滴静脈内注射を開始し、子宮体部の収縮は良くなってきたが、その後も子宮腔内からの流血が続いている。経腹超音波検査の所見では子宮腔内に胎盤の遺残はなく、胎盤剝離面からの出血であると推定された。
止血処置に用いる器材はどれか。
解答1
解説
・低置胎盤の妊婦:経腟分娩。
・胎盤娩出直後:子宮収縮不、約800mLの出血。
・子宮双手圧迫法、子宮収縮薬の点滴静脈内注射を開始。
・子宮体部の収縮:改善傾向だが、子宮腔内からの流血が続く。
・経腹超音波検査:子宮腔内に胎盤の遺残はなく、胎盤剝離面からの出血である。
→本症例は、子宮弛緩症が疑われる。児の娩出後、子宮筋が良好な収縮を来さないものを子宮弛緩症と呼び、このため胎盤剝離部の断裂血管および子宮静脈洞が閉鎖されなくなり大出血を来すものを弛緩出血という。弛緩出血(分娩後異常出血)が増悪すると産科危機的出血に至る。産科DIC(播種性血管内凝固症候群)を伴うと、最悪の場合には母体死亡に至る。
1.〇 正しい。図はBakriバルーンである。本症例の止血処置に用いる器材である。Bakriバルーンは、保険適用することができ、分娩後異常出血(分娩後の子宮出血を軽減または止血)において適応となる。留置後の出血量モニタリングを可能にするドレナージルーメンがあるため、出血管理が簡便に行える。子宮腔内に挿入し、滅菌水・生理食塩水など(最大500mL)を注入し拡張する。なお、経腟分娩後の留置の場合には、バルーンが子宮腔内から腟内へ脱出するのを防ぐため、腟内に長ガーゼなどを充填(ガーゼパッキング)する。
2.× 図は胎盤鉗子である。子宮内容物(臓器や組織、血管など)を除去する際に用いる。血管を非外傷性に把持、結合、圧迫又は支持するために用いることができる。
3.× 図はキューレットである。使用用途として、主に子宮内容除去術があげられる。子宮内容除去術は子宮頸管を拡張し、胎児、胎児付属物、凝血塊などの子宮内容を胎盤鉗子で除去し、さらにキューレットで掻爬する手術方法である。初期人工妊娠中絶、侵攻流産、胞状奇胎、胎盤・卵膜遺残などに対して行われる手技である。
4.× 図はネーゲレ鉗子である。使用用途として、主に鉗子遂娩術があげられる。鉗子分娩とは、児頭を鉗子で挟み児を娩出させる急速遂娩法である。先進児頭の下降度によって、①低在鉗子(出口鉗子)、②中在鉗子、③高在鉗子に分けられる。①低在鉗子(出口鉗子)の定義は諸説あるが、おおむねStation+2~+3以上である。術前に陰部神経麻酔、硬膜外麻酔を行うことが望ましい。
緊急時の対応(症状の悪化や胎児仮死のある場合)として、鉗子分娩・吸引分娩及び緊急帝王切開などのほかにも、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術で、急速遂娩と呼ばれる。つまり、急速分娩とは、分娩中に母児に危機的状況が生じた場合に、分娩を早めるために、①帝王切開、②鉗子分娩、③吸引分娩などによって児を娩出することである。
鉗子分娩とは、児頭を鉗子で挟み児を娩出させる急速遂娩法である。先進児頭の下降度によって、①低在鉗子(出口鉗子)、②中在鉗子、③高在鉗子に分けられる。①低在鉗子(出口鉗子)の定義は諸説あるが、おおむねStation+2~+3以上である。術前に陰部神経麻酔、硬膜外麻酔を行うことが望ましい。
9 日本における平成27年(2015年)の乳児死亡について正しいのはどれか。
1.死因の第1位は乳幼児突然死症候群<SIDS>である。
2.乳児死亡数が2,000人を下回った。
3.死亡率は世界第2位の低率である。
4.早期新生児死亡は含まれない。
解答2
解説
(※図引用:「平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
性・年齢(5歳階級)別に主な死因の構成割合をみると、5~9歳では悪性新生物及び不慮の事故、10~14歳では悪性新生物及び自殺、15~29歳では自殺及び不慮の事故、30~49歳では悪性新生物及び自殺がそれぞれ多くなっている。年齢が高くなるにしたがって、悪性新生物の占める割合が高くなり、男では65~69歳、女では55~59歳がピークとなっている。1歳未満の乳児死亡数は11年連続で3000人を下回り、死因別構成割合では、男女とも「先天奇形、変形及び染色体異常」の占める割合が多くなっている。(※引用:「平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
1.× 死因の第1位は、「乳幼児突然死症候群<SIDS>」ではなく、「先天奇形、変形及び染色体異常」である。ちなみに、第2位は、「周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害」である。ちなみに、平成21年ではあるが、1位:先天奇形・変形及び染色体異常(35.1%)、2位:周産期に特異的な呼吸障害等(14.1%)、3位:乳幼児突然死症候群(5.7%)である。特に順位に変動はない。ちなみに、新生児とは、生後0日から28日未満の赤ちゃんのことで、それ以降は乳児と呼ばれる。
2.〇 正しい。乳児死亡数が2,000人を下回った。平成27年の乳児死亡数は1916人である。1歳未満の乳児死亡数は11年連続で3000人を下回り、死因別構成割合では、男女とも「先天奇形、変形及び染色体異常」の占める割合が多くなっている。
3.× 死亡率は、「世界第2位」ではなく世界第1位の低率である。新生児死亡率(1000人出産当たりの人数)は、1以下となっており、他にも同率にアイスランド、サンマリノ、シンガポールがあげられる。
4.× 乳児死亡に、早期新生児死亡は「含まれる」。乳児死亡とは、生後1年未満の死亡のことをさす。新生児死亡とは、生後4週(28日)未満の死亡のことをさす。早期新生児死亡とは、生後1週(7日)未満の死亡のことをさす(※用語参照:「厚生労働統計に用いる主な比率及び用語の解説」厚生労働省HPより)。
10 出産育児一時金について正しいのはどれか。
1.支給額は標準報酬日額の3分の2である。
2.被保険者本人が出産したときのみ支給対象となる。
3.妊娠85日以後の出産であれば死産でも支給される。
4.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律<男女雇用機会均等法>に定められている。
解答3
解説
出産育児一時金とは、健康保険法に基づき、日本の公的医療保険制度の被保険者が出産したときに支給される手当金(1児ごとに42万円)である。そもそも正常な出産のときは病気とみなされないため、定期健診や出産のための費用は自費扱いとなる。出産育児一時金は直接支払制度となっている。直接支払制度とは、出産育児一時金42万円が直接医療機関に支払われる制度であり、分娩後、褥婦は医療機関に保険証を提示し、所定の合意書に記載することでこの制度を利用する。出産費用が出産育児一時金の額より少ない場合、その差額を被保険者等に支給する。したがって、日本の公的医療保険に加入していることが条件となる。
1.× 支給額が、標準報酬日額の3分の2であるのは、「出産育児一時金」ではなく、出産手当金である。出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のため会社を休んだために事業主から報酬が受けられない場合に支給される手当金である。支給金額は、対象日数 ×(支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × (2/3)である。
2.× 「被保険者本人」だけでなく、「被保険者またはその扶養者」が出産したときに支給対象となる。出産予定日まで1か月以内の方、または妊娠4か月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する必要がある。
3.〇 正しい。妊娠85日以後の出産であれば死産でも支給される。支給を受けられる条件として、「被保険者または家族(被扶養者)が、妊娠4か月(85日)以上で出産をしたこと。(早産、死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)も支給対象として含まれる)」と規定されている。
4.× 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律<男女雇用機会均等法>」ではなく、健康保険法(第101条:出産育児一時金)に定められている。ちなみに、男女雇用機会均等法とは、1972年に施行された男女の雇用の均等及び待遇の確保等を目標とする日本の法律で、主に職場における性別による差別を禁止し、男女とも平等に扱うことを定められている。所管官庁は、厚生労働省である。