第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 Aさん(17歳、女子)。11歳で初経が発来して以降、28日型の順調な月経周期であったが、4か月前から無月経となったため、思春期外来を受診した。Aさんには性交渉の経験はない。頭痛や視野異常の訴えはない。
 助産師が行う対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.有酸素運動を勧める。
2.体重の変動について聞く。
3.精神的ストレスの程度を確認する。
4.直ちに低用量ピルの内服を勧める。
5.基礎体温は朝トイレに行ってから測定するよう説明する。

解答2・3

解説

本症例のポイント

・Aさん(17歳、女子)
11歳:初経発来(28日型の順調な月経周期)
4か月前無月経
・性交渉の経験はない。
・頭痛や視野異常の訴えはない。
→本症例は続発性無月経が疑われる。なぜなら、①11歳から初経発来していること、②4か月前から無月経であるため。続発性無月経とは、規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし,以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。主な原因として、妊娠、授乳、急激なダイエット、肥満、強いストレスや環境の変化などによるホルモンバランスの乱れといわれている。女性ホルモンをコントロールする脳下垂体の腫瘍や他の病気、早発閉経が原因の場合もある。

1.× 有酸素運動を勧める優先度が低い。なぜなら、続発性無月経の原因として急激なダイエットがあげられるため。つまり、有酸素運動を勧めることでさらに症状の悪化に繋がりかねない。ちなみに、有酸素運動を勧められるものとして、更年期障害や糖尿病、肥満、脂質異常症などがあげられる。
2〜3.〇 正しい。体重の変動について聞く精神的ストレスの程度を確認する。なぜなら、主な原因として、妊娠、授乳、急激なダイエット肥満強いストレスや環境の変化などによるホルモンバランスの乱れといわれているため。環境・心因性ストレスが原因となっているストレス性無月経と言われることが多いが、明らかな原因が不明なことも多い。
4.× 直ちに低用量ピルの内服を勧める優先度が低い。なぜなら、本症例には性交渉の経験はない(妊娠が疑われない)ため。一般的に、低用量ピルをきちんと服用した場合、99.7%の避妊効果が期待される。その他の効果には、月経不順の改善、過多月経の改善、月経前の不快症状であるPMS(月経前症候群)、その重症型であるPMDD(月経前不快気分障害)の改善、肌荒れの改善、月経痛の緩和などの効果があげられる。
5.× 基礎体温は朝トイレに行ってから測定するよう説明する優先度が低い。なぜなら、本症例には続発性無月経が疑われ、何かしらの行動が必要であるため。基礎体温とは、毎朝覚限時に、安静な状態で計測した体温のことをいう。基礎体温を測ると、自分のカラダのリズムがわかり、約1ヵ月で変動する女性ホルモンのバランスを知ることができるため、排卵や月経、体調の変化の予測に役立つ。また、妊娠すると、高温期を保ったまま、体温は下がらず、通常は、36.7~36.8度程度をキープする。

月経の種類

無月経(月経がない状態)には①原発性、②続発性、③その他のものがある。

①原発性無月経:正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。

②続発性無月経:規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし、以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。

③その他:解剖学的原因(妊娠を含む)、慢性無排卵、卵巣不全など

(※参考:「無月経」MSDマニュアルプロフェッショナル版様より)

 

 

 

 

32 Aさん(32歳、初妊婦)。身長154cm。体重56kg(非妊時体重53kg、BMI 22)。既往歴は特記すべきことはない。職業は会社員で、デスクワークが主である。現在妊娠22 週で異常所見は認められない。助産師は、Aさんに食事バランスガイドを用いて、非妊時と比較した1日分の付加量について説明することになった。
 説明する内容で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.「主食はおにぎり1個分増やしましょう」
2.「主菜は卵1個分増やしましょう」
3.「副菜は増やす必要はありません」
4.「牛乳・乳製品は牛乳コップ1杯分増やしましょう」
5.「果物はりんご半個分増やしましょう」

解答2・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初妊婦)
・身長154cm。体重56kg(非妊時体重53kg、BMI 22)
・既往歴は特記すべきことはない。
・職業は会社員で、デスクワークが主である。
・現在:妊娠22週(妊娠中期)で異常所見は認められない。
・助産師は、Aさんに食事バランスガイドを用いて、非妊時と比較した1日分の付加量について説明することになった。
→本症例は、妊娠22週(妊娠中期)である。妊産婦のための「食事バランスガイド」を覚え非妊時と比較した1日分の付加量について説明する。ちなみに、食事バランスガイドとは、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかがひと目で分かる食事の目安である。「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つのグループの料理や食品を組み合わせてとれるようコマに例えてそれぞれの適量をイラストで示している。

(※図引用:「妊産婦のための食事バランスガイド」厚生労働省HPより)

 

1.4.× 「主食はおにぎり1個分増やしましょう」「牛乳・乳製品は牛乳コップ1杯分増やしましょう」と説明するのは、「妊娠中期」ではなく「妊娠後期・授乳期」である。
2.5.〇 正しい。「主菜は卵1個分増やしましょう」「果物はりんご半個分増やしましょう」と説明するのは、本症例の妊娠22週(妊娠中期)に当てはまる。
3.× 「副菜は増やす必要はありません」と説明するのは、「妊娠中期」ではなく「妊娠初期」である。
4.× 「牛乳・乳製品は牛乳コップ1杯分増やしましょう」と説明するのは、「妊娠中期」ではなく「妊娠後期・授乳期」である。

 

 

 

 

 

33 子宮口全開大で、努責感を感じている初産婦。仰臥位で陣痛発作時に時々児頭が陰裂から少し見える状況になってきた。
 陣痛発作時の産婦に対し、分娩を進行させる効果的な声かけで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「上半身を起こしますよ」
2.「天井を見ていきみましょう」
3.「ハッ、ハッ、ハッ、ですよ」
4.「フーウン、フーウン、ですよ」
5.「息の続くかぎり長くいきんでください」

解答1・4

解説

本症例のポイント

子宮口全開大で、努責感を感じている初産婦。
・仰臥位で陣痛発作時に時々児頭が陰裂から少し見える状況(排臨)になってきた。
→本症例は現在、分娩第2期(子宮口全開大から児娩出まで)に該当する。この時期は、排臨から発露までみられる。排臨とは、胎児の先端部が下降し、陣痛発作時に膣口に現れたり後退したりする状態である。その後、頭が見えたままの状態になることを発露という。

1.〇 正しい。「上半身を起こしますよ」は、分娩を進行させる効果的な声かけである。なぜなら、上半身を起こすことで産婦がいきみやすい体制に整えることができるため。
2.× 天井を見る優先度が低く、分娩を進行させる効果的な声かけとはいえない。なぜなら、仰向けのままではいきみや呼吸もしにくく、骨盤誘導線に沿う姿勢とはいえないため。
3.× 「ハッ、ハッ、ハッ、ですよ」(短息呼吸)は、児の頭が出るときに行う呼吸法で、助産師がリードする必要があるため効果的な声掛けとはいえない。短息呼吸とは、赤ちゃんの頭が出る瞬間に会陰部を傷つけないよう、お腹の力をゆるめて自然に産道を通過させるために行う。いきみから短息呼吸への切り替えは、助産師がリードする。〈方法〉①両手を胸に置き、体中の筋肉をゆるめ、口を開けハッハッハッと息を早く吐く呼吸をする。②息が続かなくなったら、息つぎをする。
4.〇 正しい。「フーウン、フーウン、ですよ」は、分娩を進行させる効果的な声かけである。子宮口全開大の時は、「いきんで!」と言われたら「フー・ウン!」と思いっきりいきむ。赤ちゃんの頭が出てきたら、全身の力を抜いてゆっくり「フーフー」と深く息を吐く。一回のいきみで出てこなかった場合は、次の波がくるまで力を抜き、「ハッハッハッ」と息を吐き続ける。これにより、自然ないきみを促すことが可能である。
5.× 息の続くかぎり長くいきむときは、排臨前に行う。本症例は、陣痛発作時に時々児頭が陰裂から少し見える状況(排臨)が起こっているため優先度は低い。

陣痛周期

陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の頻度で認める場合、陣痛発来(分娩開始)とする。
分娩第1期:分娩開始から子宮口全開大まで。
分娩第2期:子宮口全開大から児娩出まで。
分娩第3期:児娩出から胎盤娩出まで。

 

 

 

 

 

34 子宮内反症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.膀胱に尿がたまった状態で用手的整復を試みる。
2.子宮底輪状マッサージが誘因となる。
3.経産婦に比べて初産婦の発症が多い。
4.子宮底は著しく上昇する。
5.大量出血が起きる。

解答2・5

解説

子宮内反症とは?

子宮内反とは、子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう。子宮が裏返しになり子宮内膜面が腟内または腟外に露出し、胎盤剝離面から出血が続く状態である。病因は①外因性と②内因性、③もしくは複合したものがある。①ほとんどが外因性で、胎盤剝離前の臍帯牽引によることがもっとも多く、他のリスク因子として癒着胎盤や過短臍帯、臍帯巻絡がある。②内因性のものとしては、子宮奇形に伴う子宮筋の弛緩、多胎妊娠、巨大児、羊水過多などの子宮筋が弛緩した状態に起こりやすい。また、外因性と内因性が複合して発症する場合もある。

1.× 膀胱に尿が「たまった状態」ではなくたまっていない状態で用手的整復を試みる。
2.〇 正しい。子宮底輪状マッサージが誘因となる。病因は①外因性と②内因性、③もしくは複合したものがある。①ほとんどが外因性で、胎盤剝離前の臍帯牽引によることがもっとも多く、他のリスク因子として癒着胎盤や過短臍帯、臍帯巻絡がある。②内因性のものとしては、子宮奇形に伴う子宮筋の弛緩、多胎妊娠、巨大児、羊水過多などの子宮筋が弛緩した状態に起こりやすい。また、外因性と内因性が複合して発症する場合もある。
3.× 逆である。「初産婦」に比べて「経産婦」の発症が多い。
4.× 子宮底は、著しく「上昇」ではなく下降もしくは触知しにくくなる。子宮底とは、子宮体部の上端部に位置する丸みを帯びた部位である。反転の程度により全子宮内反(反転した子宮体部が外子宮口を越えて子宮内面が露出された状態)、不全子宮内反(反転した子宮体部が外子宮口を越えない状態)、子宮圧痕(子宮底がわずかに陥没した状態)に分類される。
5.〇 正しい。大量出血が起きる。大量出血を伴うため、出血に対する治療と内反した子宮を元に戻す処置を同時に行っていく必要がある。子宮内反症が発生した直後であれば、医師が手と腕を使って内反した子宮の底部を経腟的に押し戻す処置を行う(用手的整復)。このとき、子宮が後陣痛によって硬くなっている場合には、子宮収縮抑制薬(点滴や注射)を投与しながら処置を行うこともある。用手的整復で子宮が戻れば、子宮収縮促進薬を投与し、出血を抑えながらその後にまた内反しないようにする。

 

 

 

 

35 死産に関わる届出で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.死産届は24時間以内に提出する。
2.死産届は死産のあった場所の都道府県知事に提出する。
3.死産の分娩に立ち会った場合は死胎検案書を作成する。
4.死産児を検案して異常を認めた場合は、所轄警察署に届け出る。
5.提供した医療に起因する予期しなかった死産は医療事故調査・支援センターに届け出る。

解答4・5

解説

1〜2.× 死産届は「24時間以内」ではなく7日以内に提出しなければならない。死産届は死産のあった場所の「都道府県知事」ではなく市町村長に提出する。これは、死産の届出に関する規程の第四条「死産の届出は、医師又は助産師の死産証書又は死胎検案書を添えて、死産後七日以内に届出人の所在地又は死産があつた場所の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては、区長又は総合区長とする。以下同じ。)に届け出なければならない」と規定されている。(※一部引用:「死産の届出に関する規程」e-GOV法令検索様HPより)
3.× 死産の分娩に立ち会った場合は「死胎検案書」ではなく死産証書を作成する。死産証書は医師が立ち合う場合であり、死胎検案書は立ち合わない場合に作成する。
4.〇 正しい。死産児を検案して異常を認めた場合は、所轄警察署に届け出る。これは保健師助産師看護師法の41条「助産師は、妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない」と規定されている(※一部引用「保健師助産師看護師法」法令リードより)。
5.〇 正しい。提供した医療に起因する予期しなかった死産は、医療事故調査・支援センターに届け出る。これは医療法第6条10項に「病院、診療所又は助産所(以下この章において「病院等」という。)の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を第六条の十五第一項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

死産証書と死胎検案書の違い

妊娠満12週以後の死産の時に作成する。胎児と認め得ない場合や妊婦死亡の場合は作成不要である。
死産証書は医師が立ち合う場合であり、死胎検案書は立ち合わない場合に作成する。

 

 

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