第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 障害のレベルを運動機能と知能指数で区分するのはどれか。

1.大島分類
2.NYHA分類
3.国際生活機能分類(ICF)
4.Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)分類

解答1

解説

1.〇 正しい。大島分類は、障害のレベルを運動機能と知能指数で区分する。大島分類とは、1971年に重症心身障害児の区分法として、東京都立将中育センクーの大鳥一良が発表したものである。大島分類では、分類1~4に該当するものを重症心身障害児と定義し、分類5~9に該当するものを「周辺児」と呼んでいる。この分類は福祉サービスを受け取る対象となるための福祉行政診断としても使われている。
2.× NYHA分類(New York Heart Association)分類は、心不全の重症度分類である。自覚症状から判断する心不全の重症度分類である。労作時の自覚症状に基づき、Ⅰ度からⅣ度の4段階で判定する。
3.× 国際生活機能分類(ICF)は、目標指向的アプローチに用いられ、大きく「生活機能と障害」と「背景因子」の2つの要素からなっている。機能障害は、健康状態に関連した心身機能の問題そのものとして用いられている。人間の生活機能と障害を「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の3つの次元、および「環境要因」などの影響を及ぼす背景因子の側面から分類したものである。
4.× Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)分類は、吸器疾患患者の運動機能と呼吸困難からみた重症度(Ⅰ~Ⅴ段階)評価基準である。

NYHA心機能分類

Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。

Hugh-Jones分類とは?

Ⅰ:同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段昇降も健康者並みにできる。
Ⅱ:同年齢の健康者と同様に歩行できるが、坂道・階段は健康者並みにはできない。
Ⅲ:平地でも健康者並みに歩けないが、自分のペースなら1マイル(1.6km)以上歩ける。
Ⅳ:休み休みでなければ50m以上歩けない。
Ⅴ:会話・着替えにも息切れがする。息切れのため外出できない。

 

 

 

 

 

57 人間の性の意義と特質の組合せで適切なのはどれか。

1.快楽性としての性:種の保存
2.生殖性としての性:心理・社会的属性
3.性役割としての性:性的指向
4.連帯性としての性:人間関係の形成

解答4

解説

性の種類

①快楽性(衝動性):性的指向
②生殖性:種の保存
③性役割:心理・社会的属性(ジェンダー)
④連帯性(親密性):人間関係の形成
⑤性別:性別学的な男性・女性を区別する。

1.× 快楽性としての性は、「種の保存」ではなく、生殖とは無関係に行われる性行為のことである。性衝動が充足されたことに伴う心地よさが特徴である。
2.× 生殖性としての性は、「心理・社会的属性」ではなく、種の保存のために行われる性行為である。種の保存と繁栄を目的とする生物学的な性の側面を持つのが特徴である。
3.× 性役割としての性は、「性的指向」ではなく、心理・社会的属性である。男女の性別によって期待される役割規定(ジェンダー)である。ジェンダーとは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指す。つまり、特定の社会で共有されている価値観を元に、男女の役割などで区別される性別のことである。例えば、①すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす、②すべての女性や女の子へのあらゆる暴力(女性や女の子を売り買いしたり、 性的な目的などで一方的に利用することを含む。) をなくす、③子どもの結婚、早すぎる結婚、強制的な結婚、女性器を刃物で切りとる 慣習など、女性や女の子を傷つけるならわしをなくすなどである。一方、性的指向とは、恋愛感情などが異性か、同性か、両性か、どちらに向かうかのことである。つまり、ヒトの恋愛感情や性的な関心が、どの性別に向かうかの指向をいい、異性に向かうヘテロセクシュアル(異性愛)、同性に向かうホモセクシュアル(同性愛)、男女両方に向かうバイセクシュアル(両性愛)、性的対象のないノンセクシュアルがある。
4.〇 正しい。連帯性としての性は、人間関係の形成として正しい。愛を得て人間関係を形成し、それを維持するための性であり、愛情の表現による人と人の結びつきは人間の性の特質である。

 

 

 

 

58 出生前診断を目的とした羊水検査で適切なのはどれか。

1.先天性疾患のほとんどを診断することができる。
2.診断された染色体異常は治療が可能である。
3.合併症として流早産のリスクがある。
4.妊娠22週以降は検査できない。

解答3

解説

出生前診断とは?

出生前診断とは、妊娠中に実施される胎児の発育や異常の有無などを調べる検査を行い、その検査結果をもとに、医師が行う診断のことをいう。広い意味では、通常の妊婦健診で行われる超音波(エコー)検査や胎児心拍数モニタリングなどを使った診断も出生前診断に含まれる。出生前診断を行うことにより、形態異常や染色体異常といった胎児の先天性疾患を調べることができる。超音波画像を使う超音波検査(エコー検査)は、形態異常を検査するものである。血液や羊水などを採取して行われる検査は、染色体異常を調べる検査になる。

羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。

1.× ほとんどの先天性疾患を診断することはできない。先天性疾患とは、生まれたときの体の形や臓器の機能に異常がある疾患のことを指す。先天性疾患の原因としては、①染色体、②単一遺伝子、③多因子遺伝、④環境や催奇形性因子などがあげられる。その中でも、羊水検査で診断できるのは、先天性疾患のうち染色体・遺伝子異常に限られる。
2.× 診断された染色体異常は治療が、「可能」ではなく困難である。染色体異常とは、染色体の数や形の変化で起こる病気のことをいう。遺伝子の文字の変化で起こる病気を遺伝子異常症と呼ぶ。 染色体異常症・遺伝子異常症があると、体や脳の成長や発達が遅れたり、顔つきに特徴が出たり、体のいろいろな組織の形が通常と異なるなど、さまざまな症状が出る。数的異常には、2本のペアが3本になっているトリソミーや、1本しかないモノソミーなどがある。染色体異常そのものを治療することはできない。
3.〇 正しい。合併症として流早産のリスクがある。羊水を採取するため、0.3~0.5%の確率で破水・胎児感染・流早産などがある。
4.× 妊娠22週以降でも検査は行える。主に試行時期は、15~16週以降に行われる。検査結果が出るまで3週間ほどかかる。母体保護法による人工妊娠中絶が、妊娠22週未満まで可能であることから、15週前後に検査することが多い。

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

59 新生児聴覚スクリーニング検査で正しいのはどれか。

1.空腹時に行う。
2.泣いていない時に行う。
3.タンデムマス法で行う。
4.生後24時間以内に行う。

解答2

解説

聴覚スクリーニング検査とは

新生児聴覚スクリーニング検査は、生まれて間もない赤ちゃんを対象とした「耳の聞こえ」の検査である。出産した医療機関等で、退院までの間に検査を受けることが一般的である。赤ちゃんが眠っている間に、小さな音を聞かせて、反応を検査機器で確かめる。おおむね生後3日以内に行う。検査は、数分から10分以内で終わり、痛みや赤ちゃんの体への影響のない安全な検査である。

1.× 「空腹時」ではなく、主に寝ているときに行う。
2.〇 正しい。泣いていない時に行う。主に寝ているときに行う。
3.× タンデムマス法は、ろ紙に染み込ませた少量の血液を用いて、先天性代謝異常症をスクリーニングするものである。
4.× 「生後24時間以内」ではなく、生後24時間以降でおおむね生後3日以内に行う。なぜなら、出産当日は中耳に液体が貯留していることが多いため。

(※図引用:「タンデムマス法の導入にともなう新生児マススクリーニングの新しい体制」小児保健研究より)

 

 

 

 

60 リエゾン精神看護の活動はどれか。

1.行動制限の指示
2.向精神薬の処方
3.他科への転棟指示
4.コンサルテーションへの対応

解答4

解説

リエゾン精神医学の概念とは?

リエゾン精神医学の概念とは、身体疾患で入院中の患者に対して、患者の精神的・心理的トラブルの改善を図り、身体的疾患の回復を促すことを目的とした医学である。他科の医師およびスタッフの要請に応じてその協力のもと、身体・心理・社会・倫理的な全人的医療を行う。また、リエゾンとは、仲介・つなぎ・橋渡しといった意味をもつフランス語である。リエゾン精神看護の活動は、①直接ケア、②コンサルテーション、③コーディネーション(関係調整)、④倫理調整、⑤教育、⑥研究など多岐にわたる。

【リエゾン精神医医療ベッドサイドマナー12カ条】
①座ること
②患者のためにちょっとした何かをしてあげること
③患者に触れること
④笑顔で接すること
⑤最初に患者について知っていることを話すこと
⑥今一番心配なことを訊くこと
⑦病気についての患者の解釈や不安をよく聴いておくこと
⑧患者の仕事や家族に対して、病気が与えている影響についてよく聞いておくこと
⑨患者が誇りに思っている活動や業績を知っておき、時にそれを誉めること
⑩患者が遭遇している人間としての苦境に理解を示すこと
⑪病気を検討することの必要性と目的を共有し、共同観察者の役割を担ってもらうこと
⑫診察の終わりには何か有益な情報を患者にもたらすこと

1~3.× 行動制限の指示/向精神薬の処方(薬の処方権)/他科への転棟指示/ができるのは、医師のみである。
4.〇 正しい。コンサルテーションへの対応は、リエゾン精神看護の活動である。コンサルテーションとは、異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象である問題状況について検討し、よりよい援助のあり方について話し合うプロセスをいう。 自らの専門性に基づいて他の専門家を援助するものを「コンサルタント」、そして援助を受けるものを「コンサルティ」という。リエゾン精神看護師の場合、身体疾患をもつ患者や家族の心のケアに関する相談や、看護師に対するメンタルヘルス支援を指す場合が多い。

 

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