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16 助産所管理者が行う助産管理で適切なのはどれか。
1.内科専門医を嘱託医として確保する。
2.緊急時搬送は嘱託医師を経由しなければならない。
3.応急医薬品の購入には医師の処方せんが必要である。
4.嘱託医師を定める際は医師の承諾書か合意書のいずれかを要する。
解答4
解説
助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。
1.× 必ずしも、嘱託医として確保するのは、「内科専門医」という規定はない。ただし、嘱託医師の業務範囲は、異常産の処理に限定されるものではなく、妊産婦の診察、新生児の保健指導を行わせることはむしろ望ましいとされている。(昭和25・4・1医収第210号)ちなみに、嘱託医とは、行政機関・医療機関・介護施設などから委嘱を受けて診察・治療をする医師や、生命保険においては、生命保険会社に委託されて診察・治療を行う医師のことである。(※参考:「助産所について」厚生労働省HPより)
2.× 必ずしも、「緊急時搬送は嘱託医師を経由しなければならない」という規定はない。「緊急時等他の病院又は診療所に搬送する必要がある際にも、必ず嘱託医師等を経由しなければならないという趣旨ではなく、実際の分娩時等の異常の際には、妊産婦及び新生児の安全を第一義に、適宜適切な病院又は診療所への搬送及び受入れが行われるべきものであるから、関係者においては、この考え方に基づいて適切に対応されたい」と厚生労働省医政局長により通知されている。(一部抜粋:「助産所、嘱託医師等並びに地域の病院及び診療所の間における連携について」厚生労働省HPより)
3.× 必ずしも、応急医薬品の購入には「医師の処方せんが必要である」とは限らない。緊急時の薬剤は、平成 17 年(2005年)の薬事法改正において、医師の書面の包括指示があれば、助産師が行う臨時応急手当のための助産所の開設者に対し、医薬品の販売が許可されるようになっている。
4.〇 正しい。嘱託医師を定める際は、医師の承諾書か合意書のいずれかを要する。開設後の届出事項(施行規則第3条)において、「嘱託医師の住所及び氏名(嘱託医師となる旨の承諾書を添付し、かつ、免許証を提示し、又はその写しを添付すること)」と規定されている。(※参考:「助産所について」厚生労働省HPより)
① 大規模災害時等において、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合に、患者(現に患者の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
② 地方自治体の実施する医薬品の備蓄のために、地方自治体に対し、備蓄に係る処方箋医薬品を販売する場合
③ 市町村が実施する予防接種のために、市町村に対し、予防接種に係る処方箋医薬品を販売する場合
④ 助産師が行う臨時応急の手当等のために、助産所の開設者に対し、臨時応急の手当等に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑤ 救急救命士が行う救急救命処置のために、救命救急士が配置されている消防署等の設置者に対し、救急救命処置に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑥ 船員法施行規則第 53 条第1項の規定に基づき、船舶に医薬品を備え付けるために、船長の発給する証明書をもって、同項に規定する処方箋医薬品を船舶所有者に販売する場合
⑦ 医学、歯学、薬学、看護学等の教育・研究のために、教育・研究機関に対し、当該機関の行う教育・研究に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑧ 在外公館の職員等の治療のために、在外公館の医師等の診断に基づき、当該職員等(現に職員等の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑨ 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第 104 号)第 12 条第1項に規定する業として行う臓器のあっせんのために、同項の許可を受けた者に対し、業として行う臓器のあっせんに必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑩ 新法その他の法令に基づく試験検査のために、試験検査機関に対し、当該試験検査に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑪ 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の原材料とするために、これらの製造業者に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑫ 動物に使用するために、獣医療を受ける動物の飼育者に対し、獣医師が交付した指示書に基づき処方箋医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)を販売する場合
⑬ その他①から⑫に準じる場合
(※一部引用:「薬局医薬品の取扱いについて」厚生労働省HPより)
17 母子健康手帳に綴じ込まれている松井式便色カードを下図に示す。
適切なのはどれか。
1.1番に近い色は母乳栄養児の便に特徴的である。
2.3番に近い色は胆道閉鎖症が疑われる。
3.4番に近い色は哺乳不良の児の便に特徴的である。
4.6番に近い色は消化管出血が疑われる。
5.7番に近い色は感染性腸炎が疑われる。
解答2
解説
(※図引用:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)
松井式便色カードは、胆道閉鎖症等の早期発見のための便色カードである。母子保健法施行規則の一部を改正する省令(平成24年:2012年)により、母子健康手帳に掲載することが義務付けられた。
正常:4~7である。1~3の場合は、胆道閉鎖症などの可能性があるので、小児科医の受診を勧めている。便の色の確認は、生後2週間、生後1か月、生後1~4か月と数回行うように勧めている。
(※参考:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)
1.× 1(~3)番に近い色は、「母乳栄養児の便」ではなく、胆道閉鎖症が疑われる。便色は栄養法によって異なり、母乳栄養のみの児の便色は、人工栄養児に比べて黄色みがやや強いと言われています。逆に母乳栄養でも人工栄養でも、緑色の便が出ることがある。これは、胆汁色素である黄色のビリルビンが、腸内で酸化されて緑色のビリベルジンになるためであるが、児の機嫌がよく、食欲があれば心配いらない。
2.〇 正しい。(1~)3番に近い色は胆道閉鎖症が疑われる。胆道閉鎖症は、新生児および乳児の肝外胆管が、原因不明の硬化性炎症によって閉塞するために、肝から腸へ胆汁を排出できない疾患である。出生 9,000人に1人が罹患する稀な疾患であるが、同年齢の肝・胆道系疾患の中では死亡率が最も高い。胆道閉鎖症の主な3つの症状は生後14日以降も続く黄疸、淡黄色便、濃黄色尿である。新生児の 90%に見られる生理的黄疸は生後14日までに肉眼上消失するが、胆道閉鎖症の黄疸は消失せずに持続する、あるいは一旦消失したものが再び現れていく。なお、生後1か月頃の患児の黄疸は皮膚やしろめの部分がくすんだ黄色であるため見逃されやすく注意が必要である。淡黄色便はもっとも特異的な症状のひとつである。胆道閉鎖症の患児の70~80%は生後 4 週までに便の黄色調がうすくなって淡黄色になり、残りの20~30%も多くは生後2か月までに淡黄色便を発症する。濃黄色尿は胆汁色素であるビリルビンが尿中に出ることによるもので、病初期から認められる症状です。黄疸が著明な時には尿が暗褐色になる。
3~5.× 4~7番に近い色は正常である。哺乳不良の児の便に特徴的である。
(※図引用:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)
18 非侵襲的出生前遺伝学的検査<NIPT>で正しいのはどれか。
1.母体の年齢が高いと陽性的中率は下がる。
2.遺伝カウンセリングと併せて行う。
3.公的医療保険の適用である。
4.妊娠8週未満で行う。
5.確定的な検査である。
解答2
解説
非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT:Noninvasive prenatal genetic testing)とは、お母さんの血液中には胎盤を通して赤ちゃんのDNAが10%程度混ざっているため、お母さんから血液を採血し、DNAの断片を分析することで赤ちゃんに染色体疾患があるかどうかを検出する検査方法である。この検査で検出できるのは、21トリソミー症候群(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つの染色体の数的異常症である。その他の染色体疾患や遺伝子異常の検査はできない。
【NIPTの検査】
①保険の適用にはならない。(20~25万円前後)
②対象:出産予定日の年齢が35歳以上の方、染色体疾患に罹患した児を妊娠もしくは分娩した経験のある方。
③検査期間:妊娠10週~22週の間。
④検査:遺伝カウンセリングが行われる。
⑤お母さんから血液を20cc採血し2~3週間後に結果が 陽性 / 陰性 で判定される。
1.× 母体の年齢が高いと陽性的中率は「下がる」のではなく高くなる。なぜなら、卵子の染色体異常は母体年齢の上昇に伴って増加するため。ちなみに、陽性反応的中度(陽性的中率)とは、検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合のことをいう。
2.〇 正しい。遺伝カウンセリングと併せて行う。非侵襲的出生前遺伝学的検査の対象は、出産予定日の年齢が35歳以上の方、染色体疾患に罹患した児を妊娠もしくは分娩した経験のある方であり、検査を受ける際には、遺伝カウンセリングを受けることが原則となっている。
3.× 公的医療保険の適用ではない。保険の適用にはならないとはならず、20~25万円前後の費用がかかる。ちなみに、公的医療保険とは、私たちやその家族が、病気やケガをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことである。日本では「国民皆保険」といって、すべての人が何らかの公的医療保険に加入しているが、その種類によって保障内容に若干の差がある。
4.× 「妊娠8週未満」ではなく妊娠10週~22週の間で行う。
5.× 確定的な検査ではない。陰性の場合は、赤ちゃんがその病気でない確率(陰性的中率)は99.9%といわれている。一方、陽性の場合、診断を確定させるため羊水染色体検査など行い確定診断する。ちなみに、羊水染色体検査とは、お母さんのおなかの中にいる胎児の染色体の数や大まかな異常 について調べる出生前診断法の1つである。この方法は20年以上前から行われているもので、羊水を採取し(羊水穿刺)、羊水中にある胎児の細胞を特殊な環境下で数日培養し、検査を行う。
・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。
・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。
・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。
19 妊娠初期の黄体に作用して黄体を維持するのはどれか。
1.hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
2.卵胞刺激ホルモン(FSH)
3.プロスタグランジン
4.キスペプチン
5.アクチビン
解答1
解説
1.〇 正しい。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、妊娠初期の黄体に作用して黄体を維持する。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、妊娠4週頃に母体尿中に現れるため、初期の妊娠判定に用いられる。妊娠初期に妊娠黄体を刺激し、エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)を産生させ黄体を維持する。約15週よりプロゲステロンの産生場所が胎盤に移り、妊娠黄体を刺激する必要がなくなりhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は減少していく。
2.× 卵胞刺激ホルモン(FSH)は、下垂体前葉で合成・分泌される。卵巣内で、卵胞刺激ホルモン(FSH)は未成熟の卵胞の成長を促進し成熟させる。
3.× プロスタグランジンは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。
4.× キスペプチンとは、脳内の視床下部の細胞から放出されるタンパク質で、生殖機能や思春期の発来に重要である。卵巣で産生されたエストロゲンは、脳の視床下部へ情報を伝えて、キスペプチンは性腺刺激ホルモン放出ホルモン<GnRH>の分泌を調節する働きを持つ。
5.× アクチビンとは、卵胞刺激ホルモン の合成と分泌を促進し、月経周期を調節する役割を持ったペプチドである。
・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。
20 正常な胎児において妊娠11週の胎児超音波検査で認められるのはどれか。
1.口蓋裂
2.腹壁破裂
3.全前脳胞症
4.脊髄髄膜瘤
5.臍帯ヘルニア
解答5
解説
・正常な胎児
・妊娠11週(妊娠初期)の胎児超音波検査で認められるものを選択する。
妊娠初期は、無頭蓋症無脳症、脳瘤、全前脳胞症、頸部囊胞性リンパ管腫、胎児水腫、巨大膀胱(Prune-belly 症候群)、上肢あるいは下肢欠損、その他の骨形成不全などスクリーニング検査を実施する。
1.× (口唇)口蓋裂とは、先天性異常の一つであり、軟口蓋あるいは硬口蓋またはその両方が閉鎖しない状態の口蓋裂と、口唇の一部に裂け目が現れる状態の口唇裂の総称である。(口唇)口蓋裂の有病率は日本では出生500人あたり1人程度である。(口唇)口蓋裂を胎児超音波で発見することは難しい。
2.× 腹壁破裂は、妊娠中期(妊娠 18 から 20 週頃)に確認する項目である。腹壁破裂とは、先天的に、赤ちゃんのへその緒より右側の腹壁が欠損しており、本来お腹のなかにあるはずの臓器の一部が、そのままお腹の外に脱出している状態で生まれる病気である。
3.× 全前脳胞症は、妊娠後期(妊娠28 から 31 週頃)に確認する項目である。全前脳胞症とは、胎生期の前脳の左右への分化の障害により生じる中枢神経および顔 面正中部の先天奇形である。発生頻度は10,000出生に対し0.48∼0.88人といわれ、自然流産児では頻度が高く0.4%という報告がある。
4.× 脊髄髄膜瘤は、妊娠中期(妊娠 18 から 20 週頃)に確認する項目である。脊髄髄膜瘤とは、胎生期に体の基本的なかたちが形成される時期に生じる異常で、背中の皮膚の一部が閉じられずに開いたままとなってしまう病気である。皮膚のみならず、その奥の皮下組織、背骨の後方部分、そして神経(脊髄)までが閉じられずに開いたままとなってしまう。
5.△ 臍帯ヘルニアは、正常な胎児において妊娠11週の胎児超音波検査で認められる。「産婦人科ガイドライン」には、妊娠中期(妊娠 18 ~ 20 週)に確認する項目であるが、超音波で確認されることがある。ちなみに、臍帯ヘルニアとは、胎児のおなかの壁が正しく作られず、おなかの壁に穴ができてしまい、赤ちゃんはへその緒(臍帯)の中に胃や腸、肝臓などが出たままの状態であること。
(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)