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問題引用:第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験、第108回看護師国家試験の問題および正答について
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。
1 妊婦の飲酒によって認められる特徴的な胎児異常はどれか。
1.小頭症
2.白内障
3.四肢欠損
4.末梢神経障害
解答1
解説
妊娠中の母親が習慣的に飲酒することで胎児がアルコールの影響を受けることがある。これを胎児性アルコール症候群(FAS:fetal alcohol syndrome)という。こどもに小さな目(短い眼瞼裂)、薄い上唇などの特徴的な顔つきや成長の障害、中枢神経系の障害が見られる。主な先天異常には、①胎児発育不全、②精神発達遅滞や多動などの中枢神経障害、③特異顔貌や小頭症など、④心奇形や関節拘縮などの構造異常がある。(※参考:「胎児性アルコール症候群(FAS)について」横浜市HPより)
1.〇 正しい。小頭症は、妊婦の飲酒によって認められる特徴的な胎児異常である。小頭症とは、先天異常や胎内ウイルス感染などにより脳の大きさが小さいために頭蓋も小さい状態をいう。主な先天異常には、①胎児発育不全、②精神発達遅滞や多動などの中枢神経障害、③特異顔貌や小頭症など、④心奇形や関節拘縮などの構造異常がある。
2.× 白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。
3.× 四肢欠損の最も頻度の高い原因は、羊膜索症候群に伴う四肢切断(遊離した羊膜線維が胎児組織に絡まったり癒合したりする)など、軟部組織および/または血管の破壊による欠損である。薬物服用(サリドマイドなど)で四肢の形成不全などを生じる。
4.× 末梢神経障害の主な原因は、①糖尿病などによる全身の代謝性疾患、②薬剤・重金属などによる中毒性疾患や感染性の疾患、及び遺伝性や特発性(原因が不明)のものなどが多い。
2 40歳以上を対象とした乳がん検診で推奨される検査はどれか。
1.胸部MRI
2.刺吸引細胞診
3.マンモグラフィ
4.遺伝性乳癌卵巣癌症候群に関連する遺伝子変異の検査
解答3
解説
乳がん検診(一次)は、国の指針によりますと、対象は40歳以上で、問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)が基本になっています。視触診の推奨はされていませんが、実施する場合はマンモグラフィ検査と併用します。乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、乳腺の密度が高い40代の検診精度が低くなるという課題があり、近年、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、単独で用いたりする方法を採用しているところもあります。約7万6千人の40代の女性を、マンモグラフィ検査を受けたグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループに無作為に分けて比較する大規模な臨床研究の結果、がんの発見率が、超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告があります。(※一部抜粋:「乳がんの検診について」日本対がん協会HPより)
1.× 胸部MRIは、①血管や心臓の形に異常がないか、②肺の腫瘍の存在を調べることができる。
2.× 刺吸引細胞診とは、病変に細い針を刺して病変部の細胞を吸引し、採れた細胞を顕微鏡で観察することにより、がんかどうかなど、細胞の性質を詳しく調べる検査である。視診や触診、マンモグラフィ、超音波検査で乳がんを疑う場合や、良性病変を疑うが乳がんとの鑑別が必要な場合に精密検査として、超音波をみながら、刺吸引細胞診を実施することがある。
3.〇 正しい。マンモグラフィ(乳房X線検査)とは、乳房専用のX線撮影のことである。乳房を板で圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影する。乳房全体をくまなく写し出すために、片方の乳房に対して複数の方向(MLO:内外斜位方向とCC:頭尾方向)から圧迫し撮影を行う。乳房を薄く伸ばすことで乳腺が広がり、腫瘤性の病変がより鮮明に観察可能とる。また、マンモグラフィでは、乳房を触っても、しこりがわからないようなタイプの乳がんも、白い点のように見える微細石灰化病変として見つけることができる。したがって、推奨グレードB(行うように勧められる科学的根拠がある)とされている。40~74 歳を対象として、科学的に乳がんによる死亡率の減少効果があるなど相応な証拠があり、検診効果が証明された方法である。
4.× 遺伝性乳癌卵巣癌症候群に関連する遺伝子変異の検査は、乳癌で実施される検査項目には含まれない。遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)とは、BRCA1もしくはBRCA2という遺伝子に生まれつき変化(病的バリアント)があることで乳がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がんなどの発症リスクが高くなる遺伝性疾患である。遺伝子に関する病気であるため、遺伝子検査つまり、特定の条件下の検査である。(家系内に複数の乳がん、卵巣がん患者が認められるなど)
3 妊娠による母体の糖代謝の変化で正しいのはどれか。
1.食後血糖値は低下する。
2.空腹時血糖値は低下する。
3.血中インスリン値は低下する。
4.インスリン感受性が亢進する。
解答2
解説
妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモン(ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、 プロゲステロン、 エストロゲン)の影響でインスリン抵抗性が強くなる。インスリン抵抗性とは、インスリンは十分な量が作られているけれども、効果を発揮できない状態である。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなることを指す。「インスリンの抵抗性が強くなる」ということは、つまり糖を効率よく取り込めない(分解できない)ことを意味する。したがって、連鎖的に下記の①~③のことが起こる。
①インスリンの過剰分泌→②食後血糖の上昇→③空腹時血糖の低下
糖質異常を有する妊婦の血糖コントロールは、低血糖のリスクを最小限にとどめ、可能な限り健常妊婦の血糖日内変動に近づけることを目標とする。これまでの報告では、食事療法やインスリン療法、血糖自己測定などを行い、良好な血糖値を維持することで、母児の予後が良好になることが示されている。血糖を厳格に管理するためには、血糖自己測定を活用し、適切な食事療法、運動療法、薬物療法(インスリン)を行っていくことが重要である。
1.× 食後血糖値は、「低下」ではなく上昇する。なぜなら、妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリン抵抗性が強くなり、インスリンが過剰分泌されるため。
2.〇 正しい。空腹時血糖値は低下する。なぜなら、妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリン抵抗性が強くなり、インスリンが過剰分泌されるため。インスリンの過剰分泌により、血糖の変動や変動幅が起こりやすく大きくなりやすくなる。
3.× 血中インスリン値は「低下」ではなく上昇する。妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモン(ヒト胎盤性ラクトゲン(HPL)、 プロゲステロン、 エストロゲン)の影響でインスリン抵抗性が強くなる。インスリン抵抗性とは、インスリンは十分な量が作られているけれども、効果を発揮できない状態である。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなることを指す。「インスリンの抵抗性が強くなる」ということは、つまり糖を効率よく取り込めない(分解できない)ことを意味する。ちなみに、胎盤でもインスリンが分解されるため、インスリンの必要量は非妊時の約2倍に増加する。
4.× インスリン感受性が「亢進」ではなく低下する。インスリン感受性が低いとは、インスリンに対しての反応が乏しいことを指す。妊娠中のインスリン感受性は、45~70%低下する。これは、食後、胎児へのグルコースの供給を確実なものとする反応であると考えられる。
4 過剰摂取によって胎児の形態異常のリスクが高まるのはどれか。
1.鉄
2.ビタミンA
3.ビタミンB2
4.n-3 系脂肪酸
解答2
解説
①葉酸(水溶性ビタミンB):例、ほうれん草など
・神経管閉鎖障害児の発症が増加する。
②ビタミンA:例、家畜および養殖魚内臓
③水銀:例、魚類
④微量元素:例、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン
(※参考「食事と先天異常」日本産婦人科医会先天異常委員会委員より)
1.× 鉄の過剰摂取によって、胎児の形態異常のリスクが高まる報告はない。むしろ摂取が推奨されている。鉄は赤ちゃんの体や、臍帯(赤ちゃんと胎盤をつなぐ器官)と胎盤に鉄を貯蔵したり、循環する血液量が増加するため赤血球の量も多く必要になる。また、もともと女性は貧血になりやすく、さらに妊娠期は鉄欠乏性貧血が多い。妊娠中期・後期は1日に16.0mgの鉄分が必要である(※参考:「日本人の食事摂取基準」厚生労働省HPより)。
2.〇 正しい。ビタミンAの過剰摂取によって胎児の形態異常のリスクが高まる。一般的に、ビタミンAは脂溶性ビタミンで、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがある。妊娠3ヶ月までの過剰摂取により赤ちゃんの耳の形態異常が増える。 妊娠中の必要量は1日2000 IU(600μg)で、上限は1日 5000 IU(1500μg)である。
3.× ビタミンB2の過剰摂取によって、胎児の形態異常のリスクが高まる報告はない。むしろ摂取が推奨されている。ビタミンB2は水溶性のビタミンで、糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生に関わる酸化還元酵素の補酵素として働く。18歳〜49歳の女性に推奨されているビタミンB2摂取量は、1日1.2mgです。 妊娠中は1日1.5mg、授乳中は1日1.8mgの摂取が推奨される。
4.× n-3系脂肪酸の過剰摂取によって、胎児の形態異常のリスクが高まる報告はない。むしろ摂取が推奨されている。n-3系脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸で、①α-リノレン酸、②EPA及びDPA、③DHAに分けられる。妊娠期の胎児の神経系の器官形成、および授乳期の母乳を通して子どもの脳や神経組織の発育や機能維持に重要な役割を果たす。
5 陣痛で正しいのはどれか。
1.胎盤循環は陣痛周期によらず一定である。
2.陣痛発作時間とは産婦が痛みを感じる時間をいう。
3.後産期陣痛は胎盤剝離面からの出血の止血に作用する。
4.分娩第2期で陣痛間欠4分は平均的な陣痛間欠時間である。
解答3
解説
1.× 胎盤循環は「陣痛周期によらず一定」ではなく「陣痛周期に影響を受ける」。胎盤循環とは、胎児期の特殊な血液循環の総称である。胎児は、臍帯静脈を通じて胎盤から酸素と栄養を受け取り、体内で生じた二酸化炭素や老廃物は、臍帯動脈を通じて胎盤に運ばれ、母体の血液との間で酸素と二酸化炭素、栄養と老廃物の交換が行われる。
2.× 陣痛発作時間とは、「産婦が痛みを感じる時間」ではなく「子宮が収縮している時間」のことである。「子宮が収縮して痛みがあるときを陣痛の『発作』、収縮が終わり、次の陣痛が来るまでの間を『間欠』という。「陣痛の間隔=発作+間欠の時間」である。陣痛の間隔が約10分で規則的に繰り返される(1時間に発作+間欠が6回ある)ことが、陣痛の始まりである。ちなみに、陣痛発作中は、常に産婦は痛みを感じている。
3.〇 正しい。後産期陣痛は胎盤剝離面からの出血の止血に作用する。後産期陣痛とは、後産娩出後からの陣痛で、胎盤剝離面を収縮させ止血し、子宮復古を促す陣痛をいう。おおむね産褥3日までで、不規則で弱いが経産婦ではかなり強いことがある。
4.× 分娩第2期で平均的な陣痛間欠時間は、「陣痛間欠4分」ではなく初産:4分以上・経産婦:3分30秒以上である。ちなみに、陣痛間欠とは、陣痛発作の間の休止期のことをいう。陣痛は、2〜4分ごとで40〜90秒間になる。
陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の頻度で認める場合、陣痛発来(分娩開始)とする。
分娩第1期:分娩開始から子宮口全開大まで。①潜伏期(1~2cm)、②移行期(3~4cm)、③活動期(5~9cm)
分娩第2期:子宮口全開大から児娩出まで。
分娩第3期:児娩出から胎盤娩出まで。