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次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
Aさん(32歳、初産婦)。妊娠経過は順調であった。妊娠39週5日で3,420gの女児を吸引分娩で出産した。分娩所要時間20時間50分、破水から分娩までの所要時間1時間30分。分娩時出血量450mL。正中側切開術が施行された。
46 産褥3日。母児同室となり、Aさんは頻回に授乳を行っている。児の体重は3,300g。排便(移行便)3回/日、排尿5回/日。活気があり吸啜良好である。Aさんは「授乳のコツもわかってきましたが、昨晩も眠れなかったので疲れてきました」と言う。
Aさんへの助産師の対応で適切なのはどれか。
1.「ミルクを足しましょう」
2.「このまま頑張りましょう」
3.「授乳の回数を減らしましょう」
4.「一時的に赤ちゃんを預かりましょう」
解答4
解説
・産褥3日(母児同室)
・Aさん:頻回に授乳を行っている。
・児の体重:3,300g(出産時:3,420g)
・排便(移行便):3回/日、排尿:5回/日
・活気あり、吸啜良好
・Aさん「授乳のコツもわかってきましたが、昨晩も眠れなかったので疲れてきました」と。
→本症例の児は、体重・排便・排尿などいずれも正常範囲内である。Aさん「昨晩も眠れなかったので疲れてきました」と不眠や疲労を訴えている。経過は順調であるため、Aさんの様子を観察しながら安心して休息をとれると判断する。
1~3.× ミルクを足す/授乳の回数を減らす優先度は低い。なぜなら、授乳は順調に進んでおり、体重も生理的体重減少の範囲内で問題ないため。ちなみに、授乳の回数を減らす(卒乳)は、1歳を目安に行うことが多い。
2.× 「このまま頑張りましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Aさん「昨晩も眠れなかったので疲れてきました」と不眠や疲労を訴えているため。このまま頑張り続けると、さらに不眠や疲労が蓄積し、体調不良につながることが考えられる。
4.〇 正しい。「一時的に赤ちゃんを預かりましょう」と伝える。なぜなら、Aさん「昨晩も眠れなかったので疲れてきました」と不眠や疲労を訴えているため。現在の経過は順調であるが、母児同室で授乳以外のお世話で休めていないこともあるため、一時的に児を預かり、休息をとってもらう。
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。
次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
Aさん(32歳、初産婦)。妊娠経過は順調であった。妊娠39週5日で3,420gの女児を吸引分娩で出産した。分娩所要時間20時間50分、破水から分娩までの所要時間1時間30分。分娩時出血量450mL。正中側切開術が施行された。
47 産褥4日。Aさんは、明日退院の予定となった。Aさんは「赤ちゃんの世話にもやっと慣れてきました。赤ちゃんはかわいいです。出産後に助産師さんとお産のことを話した時は、よく頑張ったねと言ってもらえました。でも出産に時間がかかり吸引分娩になるとは思いませんでしたし、傷がまだ痛いです。私はちゃんとしたお産ができなかったのではないかと思います」と言う。
Aさんへの助産師の対応で最も適切なのはどれか。
1.「よく頑張ったのだから立派なお産ですよ」
2.「無事にお産が終わったことを喜びましょう」
3.「もう一度、お産の振り返りをしてみませんか」
4.「新生児訪問でお産の話を聞いてもらってください」
解答3
解説
・産褥4日(Aさん:明日退院予定)
・Aさん「赤ちゃんの世話にもやっと慣れてきました。赤ちゃんはかわいいです。出産後に助産師さんとお産のことを話した時は、よく頑張ったねと言ってもらえました。でも出産に時間がかかり吸引分娩になるとは思いませんでしたし、傷がまだ痛いです。私はちゃんとしたお産ができなかったのではないかと思います」と。
→本症例は「私はちゃんとしたお産ができなかったのではないかと思います」と精神的不安定な発言からマタニティブルーズが疑われる。マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、内分泌バランスの変化や母体の体力低下、育児への精神的負担などから、涙もろさ、不安感などの症状や、集中力低下、頭痛などの身体的症状が表れやすい。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。助産師の価値観で判断せず、共感・傾聴が大切である。
1.× 「よく頑張ったのだから立派なお産ですよ」と伝える必要はない。なぜなら、助産師の価値観や判断基準での発言となっているため。また、Aさんの「ちゃんとしたお産ができなかったのではないか」という発言を否定しているように感じられる。助産師の価値観で判断せず、共感・傾聴が大切である。
2.× 「無事にお産が終わったことを喜びましょう」と伝える必要はない。なぜなら、今回はAさん自身がお産に対していいイメージを持っていないため。また、Aさんの発言に対し、傾聴の様子がないように感じられる。
3.〇 正しい。「もう一度、お産の振り返りをしてみませんか」と伝える。なぜなら、Aさんの分娩体験自体が現実と異なっている可能性があるため。助産師と一緒にバースレビューを行い、必要であれば認知のゆがみの修正が必要である。ちなみに、バースレビューとは、分娩後のお母さんに、今回のお産の体験について振り返ってもらい、お産は想像した通りだったのか、どんなことを感じていたのかなどを、お産をご一緒した助産師と話し合う機会を持つものである。
4.× 「新生児訪問でお産の話を聞いてもらってください」と伝える必要はない。なぜなら、放任的な発言であるため。さらに不安を助長する可能性がある。共感・傾聴が大切である。ちなみに、新生児訪問とは、新生児訪問指導事業のことであり、保健師、助産師、看護師が家庭を訪問してくれる制度で生後28日以内の児がいる家庭を対象に行われ、母子が健康であるかどうかを確認し、必要なケアや支援を行うことを第一の目的としている。
産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。
次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
Aさん(34歳、初妊婦)。産婦人科に通院し、妊婦健康診査を受けていた。妊娠30週0日に規則的な子宮収縮を自覚して来院し、緊急入院となった。バイタルサインは、体温38.0℃、呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧130/80mmHg。胎児心拍数モニタリングで胎児心拍基線170bpmであった。内診所見では、頭位、子宮口2cm 開大、未破水。腟分泌物に少量血液が混じっており、悪臭を伴っていた。血液検査は、白血球数18,000/μL、CRP 3.0mg/dL。尿検査では尿混濁はなく、尿蛋白(-)、尿糖(-)であった。
48 入院時のアセスメントで正しいのはどれか。
1.絨毛膜羊膜炎が疑われる。
2.子宮頸管縫縮術が有効である。
3.妊娠高血圧症候群<HDP>である。
4.妊娠の延長を目指す必要がある。
解答1
解説
・Aさん(34歳、初妊婦)
・妊娠30週0日:規則的な子宮収縮を自覚、緊急入院。
・バイタルサイン:体温38.0℃、呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧130/80mmHg
・胎児心拍数モニタリング:胎児心拍基線170bpm
・内診所見:頭位、子宮口2cm 開大、未破水。
・腟分泌物:少量血液が混じり、悪臭を伴う。
・血液検査:白血球数18,000/μL、CRP 3.0mg/dL
・尿検査:尿混濁なし、尿蛋白(-)、尿糖(-)
→本症例は、「絨毛膜羊膜炎」が疑われる。絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。(※参考:「子宮内感染について」より)
1.〇 正しい。絨毛膜羊膜炎が疑われる。絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。(※参考:「子宮内感染について」より)
2.× 子宮頸管縫縮術は有効ではない。なぜなら、子宮頸管縫縮術とは、子宮頚管を縫い縮める方法であり子宮頸管無力症などで早産予防のために行われるため。シロッカー手術、マクドナルド手術がある。子宮頸管無力症とは、陣痛などの下腹部痛や性器出血などの症状がないが子宮頸管が開いてきてしまう状態のことを言い、流産や早産の原因となってしまうことがある。
3.× 妊娠高血圧症候群<HDP>とは言い切れない。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。本症例の血圧は血圧130/80mmHgであるため妊娠高血圧症候群<HDP>は否定できる。
4.× 妊娠の延長を目指す必要はない。①妊娠の延長が必要な場合、②羊水過少に随伴する変動一過性徐脈の発現を抑制する目的で、子宮収縮抑制薬を使用することがある。子宮収縮抑制薬(子宮鎮痙薬とも)の臨床応用としては、切迫早産や切迫流産の際に子宮収縮(陣痛)を抑制するのに用いられる。主な副作用として、動悸、振戦(手足の震え)、吐き気、発疹などが報告されている。作用機序として、β受容体刺激剤の中でも強いβ2選択性により、細胞内c-AMPを上昇させ、子宮収縮抑制効果を示す。
次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
Aさん(34歳、初妊婦)。産婦人科に通院し、妊婦健康診査を受けていた。妊娠30週0日に規則的な子宮収縮を自覚して来院し、緊急入院となった。バイタルサインは、体温38.0 ℃、呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧130/80 mmHg。胎児心拍数モニタリングで胎児心拍基線170 bpmであった。内診所見では、頭位、子宮口2cm 開大、
未破水。腟分泌物に少量血液が混じっており、悪臭を伴っていた。血液検査は、白血球数18,000/μL、CRP 3.0 mg/dL。尿検査では尿混濁はなく、尿蛋白(-)、尿糖(-)であった。
49 Aさんは入院翌日、経腟分娩で男児を出産した。羊水混濁は認めなかった。出生直後の児は啼泣を認めるが、呼吸数60/分、心拍数140/分。鼻翼呼吸、呻吟、陥没呼吸、中心性チアノーゼを認め、マスクを用いた持続的気道陽圧呼吸療法<CPAP>が行われた。しかし、努力呼吸とチアノーゼに改善が認められず、気管挿管による人工呼吸が開始された。
児の状況で最も考えられるのはどれか。
1.喉頭軟化症
2.肺動脈閉鎖症
3.呼吸窮迫症候群
4.胎便吸引症候群
解答3
解説
・入院翌日:男児出産(経腟分娩)
・羊水混濁なし。
・出生直後の児:啼泣あり、呼吸数60/分、心拍数140/分。
・鼻翼呼吸、呻吟、陥没呼吸、中心性チアノーゼあり。
・マスクを用いた持続的気道陽圧呼吸療法<CPAP>が行われた。
・しかし、努力呼吸とチアノーゼに改善が認められず、気管挿管による人工呼吸が開始。
→本症例は呼吸窮迫症候群が疑われる。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。
【用語の説明】
・鼻翼呼吸:鼻の孔を広げて呼吸すること。
・呻吟(しんぎん):うめき, 呻吟 苦しくて唸ること。 ウ-ウ-、ウンウン等の音の総称。
・陥没呼吸:息を吸い込むとき胸の一部が陥没する状態の呼吸。発作が小発作から中発作へ悪化し始めると、息を吸うときにのどの下(胸骨の上)や鎖骨の上が引っ込む(=陥没する)ようになる。さらに発作が悪化すると肋骨と肋骨の間も陥没するようになる。
1.× 喉頭軟化症とは、息を吸ったときの陰圧により喉頭の上部構造が喉頭内宮に引き込まれ気道が狭窄や閉塞する疾患である。症状は低酸素発作、吸気性喘鳴、哺乳障害がある。気管支鏡検査で診断する。
2.× 肺動脈閉鎖症とは、肺動脈弁、肺動脈弁の下、または肺動脈弁の上で閉鎖している状態である。原因として、先天性疾患で心臓の発生初期の発生過程で肺動脈が閉鎖することがである。症状として、生後まもなくチアノーゼが出現し、動脈管の自然閉鎖に伴い、酸素をもらうための肺血流が減少するとともにチアノーゼが増強する。治療なしでは死亡する。
3.〇 正しい。呼吸窮迫症候群が児の状況で最も考えられる。なぜなら、本症例の児は妊娠30週1日であり、頻呼吸、鼻翼呼吸、呻吟、陥没呼吸、中心性チアノーゼなどの症状がみられるため。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。ちなみに、肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。
4.× 胎便吸引症候群とは、ストレス(感染症や酸素レベルの低下など)が原因で胎児が激しくあえぎ、その結果、胎便を含んだ羊水を肺に吸い込み(誤嚥し)、それが肺に沈着することで発生し、 出生後、吸い込まれた胎便が新生児の気道をふさぎ、肺をつぶれた状態にしてしまうことをいう。出生前または周産期に肺に胎便を吸い込んだ新生児に呼吸困難がみられることである。妊娠後期である36週以降に発生しやすく、妊娠42週以降の過期産の胎児は子宮内の羊水が減少しているため、胎便が排出された際に濃縮された状態となるので症状を起こしやすい。本症例の場合、羊水混濁がみられなかったため胎便吸引症候群は優先度が低い。
次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
Aさん(34歳、初妊婦)。産婦人科に通院し、妊婦健康診査を受けていた。妊娠30週0日に規則的な子宮収縮を自覚して来院し、緊急入院となった。バイタルサインは、体温38.0 ℃、呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧130/80 mmHg。胎児心拍数モニタリングで胎児心拍基線170 bpmであった。内診所見では、頭位、子宮口2cm 開大、
未破水。腟分泌物に少量血液が混じっており、悪臭を伴っていた。血液検査は、白血球数18,000/μL、CRP 3.0 mg/dL。尿検査では尿混濁はなく、尿蛋白(-)、尿糖(-)であった。
50 児はNICUに入院となり、保育器内で人工呼吸器管理、輸液管理が行われている。分娩後6時間、Aさんは会陰切開部の創部痛のため非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用しており、車椅子で児の面会のためにNICUを訪れた。Aさんは「赤ちゃんが心配です」と話し、涙を流している。
助産師のAさんへの声かけで正しいのはどれか。
1.「赤ちゃんの状況はご主人から聞いてください」
2.「両手でお子さんを包み込んであげてください」
3.「大きな声で呼びかけてあげてください」
4.「鎮痛薬使用中は搾乳を控えてください」
解答2
解説
・児:NICUに入院(保育器内で人工呼吸器管理、輸液管理)
・Aさん分娩後6時間:会陰切開部の創部痛のため非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用。
・車椅子:児の面会のためにNICUを訪れた。
・Aさん「赤ちゃんが心配です」と涙を流している。
→今後Aさんは、親子関係や家族関係の形成が必要になる。ルービン(Rubin)は、母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分けている。①受容期(自分自身の基本的欲求に意識が向けられる時期):産褥1~2日目(赤ちゃんを指先で触れたり、抱っこしたりすることで自分の子供だと認識する)、②保持期(自分の体のセルフケアができ、赤ちゃんの欲求に関心がうつり、子供との関係づくりが始まる時期):産褥3~10日間(喜びと同時に、母親としての能力があるかどうか不安を抱いたり、些細な周囲の言葉が傷つく)、③解放期(ママとしての課題を果たす時期):産褥10日~1か月(子供と母親がお互い理解し合っていくが、子供の要求が多すぎてママは応えきれずに罪悪感を抱き、自らの存在に対し否定的になることもある)。これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。
1.× あえて赤ちゃんの状況を「ご主人」からのみ聞く必要はない。なぜなら、ご主人からの説明だけではAさんの不安が解消されるとは限らないため。Aさんは「赤ちゃんが心配です」と涙を流している。ご主人はAさんの不安を押し付けられたと感じるかもしれない。助産師の価値観で判断せず、共感・傾聴が大切である。
2.〇 正しい。「両手でお子さんを包み込んであげてください」と声かけする。なぜなら、保育器で抱っこは難しい状態であるが、赤ちゃんを指先で触れたり包み込むだけでも、自分の子供だと認識することができる。これはルービン(Rubin)の母親として適応するため①受容期(自分自身の基本的欲求に意識が向けられる時期):産褥1~2日目に行えることである。親子関係形成のために両手でお子さんを包み込むなど保育器内でできる関わりを提案する。
3.× 大きな声で呼びかける必要はない。なぜなら、NICUの推奨dB基準値は45dBであるため。40dBは図書館内、50dBは静かな事務所、60dBは普通の会話、デパートの店内レベルである。
4.× 鎮痛薬使用中は搾乳を控える必要はない。アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は授乳しながらでも安全に使用できる。ただし、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は妊娠後期の使用により、胎児の動脈管の早期閉鎖が起こり、出生後に遷延性肺高血圧症や動脈管開存症が起きることがあるため禁忌である。
ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。
①模倣:先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすること。
②ロールプレイ:自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験すること。
③空想:自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。
④取り込みー投影ー拒絶:空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味すること。
⑤悲嘆作業:母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすること。
母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分ける。
・受容期:産褥1~2日目
・保持期:産褥3~10日間
・解放期:産褥10日~1か月
これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。