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16 乳癌で正しいのはどれか。
1.超音波検査によって診断が確定する。
2.好発年齢は20〜30歳代である。
3.授乳期には発見が遅れやすい。
4.腫瘤の可動性は良好である。
5.圧痛を生じることが多い。
解答3
解説
1.× 診断が確定するのは、「超音波検査」ではなく、細胞診や組織診(針生検)である。乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。ちなみに、超音波検査やマンモグラフィなどの画像診断で、良性か?悪性か?、はっきりしないしこりや癌の可能性があるしこりに対して行われる。
2.× 好発年齢は、「20〜30歳代」ではなく40〜50歳代である。乳癌の好発部位は、「乳房の内下部」ではなく、1位:外側上部、次いで2位:内側上部、3位:外側下部、4位:内側下部、5位:乳輪部の順となっている。乳がんの7〜8割が女性ホルモンのエストロゲンが関係しているため、エストロゲンの分泌が高くなる月経の回数が多い人ほど、乳がんになりやすい。また、飲酒や喫煙、肥満なども乳がんを発症する要因である。
3.〇 正しい。授乳期には発見が遅れやすい。妊娠中から授乳期にかけては乳腺が発達するので、乳房の腫瘤が発見しづらくなる。授乳期では乳汁がうっ帯している状態と乳癌の鑑別が難しい場合もあり、発見が遅れ、癌が進行してしまっていることもある。
4.× 腫瘤の可動性は「良好である」と断言することはできない。むしろ、腫瘤は固く可動性が少ないのが特徴である。良性の場合は指で押すと逃げるが、悪性の場合は指で押しても動きにくく典型的な場合では可動性は少ない。
5.× 圧痛を生じることが「多い」のではなく少ない。乳癌の主な症状は、乳房の硬いしこりである。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあげられる。
17 経口避妊薬の服用が禁忌となるのはどれか。
1.授乳中である。
2.BMI 25である。
3.子宮内膜症の既往がある。
4.1日5本の喫煙をしている。
5.子宮頸部円錐切除術後である。
解答1
解説
①本剤の成分に対し過敏性素因のある女性
②エストロゲン依存性腫瘍(例えば乳癌、子宮体癌、子宮筋腫),子宮頸癌、性器癌及びその疑いのある患者
③診断の確定していない異常性器出血のある患者
④血栓性静脈炎,肺塞栓症,脳血管障害,冠動脈疾患またはその既往歴のある患者
⑤35歳以上で1日15本以上の喫煙者
⑥血栓症素因のある女性
⑦抗リン脂質抗体症候群の患者
⑧大手術の術前4週以内,術後2週以内,産後4週以内及び長期間安静状態の患者
⑨重篤な肝障害のある患者
⑩肝腫瘍のある患者
⑪脂質代謝異常のある患者
⑫高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)
⑬耳硬化症の患者
⑭妊娠中に黄疸、持続性そう痒症または妊娠ヘルペスの既往歴のある女性
⑮妊娠または妊娠している可能性のある女性
⑯授乳婦
⑰思春期前の女性
(一部引用:「経口避妊薬(OC)の処方の手順」日本産婦人科医会より)
1.授乳中は、経口避妊薬の服用が禁忌となる。経口避妊薬に含まれるエストロゲンには、母乳の量的、質的低下が起こることがある。また、母乳中に移行することが報告されている。
2.BMI 25でも経口避妊薬を使用できる。経口避妊薬は血栓症のリスクがあり、BMIが25以上で2倍、30以上で5倍に血栓症のリスクが上がる。禁忌ではないが、BMI30以上の方は慎重投与になっている。
3.子宮内膜症の既往でも経口避妊薬を使用できる。むしろ、子宮内膜症の治療・予防に使用することがある。子宮内膜症とは、子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内側以外の部位に発生する病気である。腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛などが出現する。経口避妊薬を内服することによりエストロゲンの総量が低く抑えられ、排卵を抑制し、子宮内膜症の症状を軽減し、子宮内膜症予防にもなる。なお、乳癌や子宮内膜癌などのエストロゲン依存性悪性腫瘍や子宮頸癌及びその疑いのある場合は腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがあるため禁忌となっている。
4.1日5本の喫煙でも経口避妊薬を使用できる。喫煙に関しての禁忌は、「35歳以上で1日15本以上の喫煙者」である。心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
5.子宮頸部円錐切除術後でも経口避妊薬を使用できる。大手術に関しての禁忌は、「大手術の術前4週以内,術後2週以内,産後4週以内及び長期間安静状態の患者」である。血液凝固能が亢進し、心血管系の副作用の危険性が高くなることがある。
18 流産を繰り返している夫婦の原因検索を行ったところ、均衡型転座が確認された。
この夫婦に対する次回の妊娠での流産再発率を低減させる治療法はどれか。
1.免疫グロブリン療法
2.夫のリンパ球免疫療法
3.着床前診断後の胚移植
4.低用量アスピリン療法
5.プロゲステロン補充療法
解答3
解説
均衡型転座とは、22番と11番染色体のそれぞれの長腕上の特異的な切断点で、遺伝情報の場所が入れ換わっていることを意味しています。 均衡型転座保因者は健常です。 なぜなら、通常の位置にはないけれども、正しい量の遺伝情報が全てあるからです。不均衡の胎児を妊娠した場合、胎児は2本の正しい11番染色体と、2本の正しい22番染色体と、11と22番の両方からなる1本の過剰な染色体を持っています。その過剰な染色体は保因者である親から受け取ります。
(※一部引用:「染色体についての基礎」)
1.× 免疫グロブリン療法とは、Rh不適合妊娠で行い、妊娠28週前後と分娩後に抗D人免疫グロブリン製剤を投与する治療法である。治療抵抗性の抗リン脂質抗体症候群に対して行われる。ちなみに、抗リン脂質抗体症候群とは、抗リン脂質抗体症候群(APS)は自己免疫疾患であり、リン脂質(またはリン脂質と結合した蛋白)に対する自己抗体により引き起こされる様々な病態の総称である。抗リン脂質抗体症候群(APS)には、基礎疾患を伴わないもの(原発性APS)と伴うもの(続発性APS)があり、続発性APS は全身性エリテマトーデス(SLE)を基礎疾患とする場合が多い。主症状は動静脈の血栓症と妊娠合併症である。
2.× 夫のリンパ球免疫療法は優先度が低い。リンパ球免疫療法とは、免疫異常による習慣流産の場合(ごく限られた症例)に行われるが、効果は概ね否定的なものが多い。夫の血液を採取してその中のリンパ球を妻に皮下注射していく方法である。
3.〇 正しい。着床前診断後の胚移植がこの夫婦に対する次回の妊娠での流産再発率を低減させる治療法である。均衡型転座のように夫婦の染色体異常が発覚した場合、着床前診断後の胚を移植するという方法がある。着床前診断後の胚移植とは、体外受精で得た受精卵から細胞を採取して染色体検査を行い、染色体正常の受精卵、または染色体異常のある受精卵を子宮内に戻して着床を待つ方法である。
4.× 低用量アスピリン療法は優先度が低い。低用量アスピリン療法とは、抗リン脂質抗体や血液凝固異常によって血栓ができて習慣流産となっている場合に行われる。
5.× プロゲステロン補充療法は優先度が低い。プロゲステロン補充療法とは、更年期障害や生理前症候群で行われている。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、主に妊娠を維持する役割を担う。排卵を終えた卵胞が変化した黄体、もしくは妊娠中は胎盤から分泌され、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にすることや基礎体温を上昇させる働きがある。卵巣で産生されるため、卵巣摘出により減少する。
19 Aさん(29歳、初産婦)。妊娠経過は正常。妊娠9週の経腟超音波検査で、左卵巣内に5cmの囊胞が確認された。囊胞は単房性で、内部に充実成分はなかった。妊娠13週に再度、経腟超音波検査が行われ、左卵巣内の囊胞は2cmに縮小していた。
この左卵巣囊胞の種類で最も考えられるのはどれか。
1.妊娠黄体
2.皮様囊腫
3.卵巣妊娠
4.粘液性囊胞腺腫
5.子宮内膜症性囊胞
解答1
解説
・Aさん(29歳、初産婦、妊娠経過正常)
・妊娠9週の経腟超音波検査:左卵巣内に5cmの囊胞が確認(囊胞:単房性、内部に充実成分なし)
・妊娠13週の経腟超音波検査:左卵巣内の囊胞は2cmに縮小。
→卵巣嚢胞とは、卵巣の内部や表面にできる液体で満たされた袋状の病変で、比較的よくみられる。そのほとんどは良性(がんではない)で、自然に消失する。悪性の嚢胞(がん)は40歳以上の女性で多くみられる傾向がある。様々な種類があるため、以下のHPを参考にしてほしい(※参考:「良性の卵巣病変」MSDマニュアル家庭版より)。
1.〇 正しい。妊娠黄体がこの左卵巣囊胞の種類で最も考えられる。卵細胞は、排卵後24~96時間で黄体に形成される。そのときに受精して着床した場合は妊娠黄体となり、ますます増大し、妊娠12週以降で次第に退行していく。したがって、黄体嚢胞は、基本的には自然に消えていくものなので、卵巣嚢腫(腫瘍)ではなく黄体嚢胞だと判断できれば、経過観察となる。
2.× 皮様囊腫とは、卵巣腫瘍の1つで、卵巣に脂肪、髪の毛、歯などがたまっているものである。精子と受精していないにもかかわらず卵巣内で突然細胞分裂が開始され、形成されるが、受精でないので中途半端な細胞として残ってしまう。自覚症状として腹部膨満感や下腹部痛、頻尿などがあるが無症状で経過することもある。
3.× 卵巣妊娠とは、正常妊娠とは異なり、受精卵が子宮内膜以外に着床し、胎芽・胎児の発育が進んでしまう子宮外妊娠の1つである。妊娠数週とともに大きくなるのが特徴である。
4.× 粘液性囊胞腺腫とは、良性腫瘍でネバネバした粘液が卵巣内にたまってしまう腫瘍のことである。症状は、選択肢2.皮様嚢腫と同じであるが、平均直径は15cm以上で、多くは多房性である。直径10センチ以上のものは開腹腫瘍切除となる。
5.× 子宮内膜症性囊胞とは、卵巣チョコレート嚢胞のことであり、卵巣内で月経時に出血が起きて卵巣内に貯留するものをいう。月経痛、性交痛、慢性骨盤痛などの症状がある。
20 分娩経過中に、胎児心拍数陣痛図上で変動一過性徐脈の発生のリスク因子となる胎児付属物の所見はどれか。
1.副胎盤
2.臍帯偽結節
3.臍帯長40cm
4.臍帯辺縁付着
5.胎盤の石灰沈着
解答4
解説
変動一過性徐脈は急な心拍の低下と速やかな回復を特徴とし、通常臍帯血管の血流障害によって生じる。
血流障害は、
①臍帯巻絡や短い臍帯などが原因で臍帯が伸張される。
②冷たい人工羊水を急速に注入することによる。
③子宮収縮や体動に伴い、臍帯が圧迫される。
などによって生じる。臍帯血流障害は子宮収縮ごとに異なるため、一過性徐脈の深さや長さも収縮ごとに異なる。
1.× 副胎盤とは、胎盤は通常は1つであるが、主胎盤から離れて複数存在する場合、小さい方のことをいう。臍帯付着部位の異常などがあれば娩出時に胎児機能不全や胎児死亡の原因となるが、問題がなければ分娩経過中に異常はない。
2.× 臍帯偽結節とは、膠質または血管の捻転により一見結節状に肥厚しているものである。臍帯中の血管がワルトンジェリーの中で渦を巻いたような状態となり、臍帯が膨らんでいるものである。結び目やこぶに見えるだけであって実際は結節となっていないため、胎児・血行には影響が薄い。
3.× 過短臍帯は「25cm未満」のため、臍帯長40cmは問題ない。通常の臍帯は、50~60cmである。
4.臍帯辺縁付着は、変動一過性徐脈の発生のリスク因子となる。臍帯辺縁付着や卵膜付着は胎児発育不全や胎児機能不全の原因となる。
5.胎盤の石灰沈着とは、正期産の胎盤に見られる白色の細かい粒(石灰沈着)であるが、特に異常はない。
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)