第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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問題引用:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験、第109回看護師国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

1 28歳の初産婦。妊娠初期から膀胱炎を繰り返していた。妊娠28週に、排尿時の痛みと37.5℃の発熱を訴えてかかりつけの産婦人科を受診した。
 腎盂腎炎と膀胱炎との鑑別で確認する所見はどれか。

1.頻尿
2.細菌尿
3.残尿感
4.腰背部の叩打痛

解答

解説

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

(※画像引用:「尿路感染症 表3 腎盂腎炎の重症度判定のための所見,検査」より)

1.3.× 頻尿/残尿感は、膀胱炎の症状である。膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が特徴であるが、膀胱炎を伴った腎盂腎炎で起こりえる可能性もあるため、腎盂腎炎と膀胱炎との鑑別には使用されていない。
2.× 細菌尿は両者ともみられる症状である。細菌尿とは、尿の通り道の何処かに細菌が入り込み、感染すると生じ、色は白濁し汚れている尿を指す。
3.× 
4.〇 正しい。腰背部の叩打痛が腎盂腎炎と膀胱炎との鑑別で確認する所見である。腎盂腎炎は、尿路感染症の一つで膀胱から尿管、腎臓へと細菌が上行して発症する。膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。側腹部痛の有無の確認には、腰背部の叩打することで確認する。

 

 

 

 

 

2 胎児期の免疫反応が出生後の発症の要因となる疾患はどれか。

1.仮性メレナ
2.先天緑内障
3.慢性肺疾患
4.未熟児貧血

解答

解説

1.× 仮性メレナとは、新生児メレナのひとつで、出生時に母体の血液を児が飲み込んだために便中や吐物に血液が混じることである。つまり、メレナとは、黒色便のことである。真性メレナとの区別が必要となる。新生児メレナとは、生後2〜4日の新生児に突然の吐血、血便、タール便(ノリのつくだ煮様)などの胃腸管出血をみる病気で、ビタミンKに依存する凝固因子の不足により血液が凝固しにくくなり出血を起こした病気を総称して呼ぶ。
2.× 先天緑内障(発達緑内障)とは、隅角という部分の発育異常により、眼圧が上昇し、視神経が障害される病気である。原因ははっきりわかっておらず、遺伝子(CYP1B1遺伝子)に変異を認める場合が多い。
3.〇 正しい。慢性肺疾患は、胎児期の免疫反応が出生後の発症の要因となる。新生児慢性肺疾患とは、新生児期の呼吸障害が軽快した後、あるいはそれに引き続いて、酸素吸入を必要とするような呼吸窮迫症状が日齢28を超えて続く病気である。胎児期から新生児期の肺が感染、炎症、酸素毒性、陽圧換気といった傷害因子に曝露されることが原因とされる。
4.× 未熟児貧血とは、早産児に発症する貧血であり、早産児は出産時の赤血球数が少なく、貧血に対する生理反応が正期産時よりも弱いため、貧血が進行しやすく鉄欠乏性貧血を発症するリスクも高い。未熟児貧血による症状は、短期的には頻呼吸、多呼吸、体重減少などがある。未熟児貧血に対して、予防的にエリスロポエチンが使用される。

新生児メレナとはどんな病気ですか?

“メレナ”とは、本来“黒色便”のことです。そのため、“新生児メレナ”は新生児期の下血による黒色便を意味し、新生児が吐血や下血などの症状を呈する病気を総称して新生児メレナと呼ばれます。新生児メレナには、吐血や下血となる血液の由来が母体の血液である “仮性メレナ”と、児の血液である“真性メレナ”があります。仮性メレナの要因としては、出生時の胎盤からの出血や、授乳時に母親の乳頭裂傷などによる出血の嚥下があげられます。一方、真性メレナでは、主に児のビタミン K 欠乏による消化管出血が要因となります。両者はアプト試験(新生児血液中に多く存在するヘモグロビン F のアルカリ抵抗性を利用して母体血か新生児血かを判定する簡易検査)で鑑別することができます。ビタミン K は数種類の凝固因子の産生に必要な補助因子です。そのため、ビタミン K が欠乏すると消化管出血だけでなく、重症例では頭蓋内出血などを合併し、死亡する場合もあります。ビタミン K は胎盤通過性が悪く、母乳中のビタミン K 含量が少ないことなどから、新生児は出生時からビタミン K が欠乏しやすく、哺乳条件によっては乳児期まで欠乏しやすい状態が持続します。

(※一部引用:「Q3-6. 新生児メレナとはどんな病気ですか?」著:川口 千晴より)

 

 

 

 

3 妊婦に投与された薬物と胎児への影響との組合せで正しいのはどれか。

1.アミノグリコシド系抗菌薬:エナメル質形成不全
2.アンギオテンシン受容体拮抗薬:臍帯ヘルニア
3.チアマゾール:肺低形成症
4.非ステロイド抗炎症薬:動脈管収縮

解答

解説

1.× アミノグリコシド系抗菌薬は、「エナメル質形成不全」ではなく結核非結核性抗菌症に使用される。副作用として、非可逆的第IV脳神経障害(難聴)や腎機能障害を生じる可能性がある。ちなみに、エナメル質形成不全とは、歯の表面にあるエナメル質がうまく形成できていない状態である。妊娠中期から後期の使用により歯牙着色やエナメル質形成不全を副作用にあげられるのは、テトラサイクリン系抗菌薬である。
2.× アンギオテンシン受容体拮抗薬は、「臍帯ヘルニア」ではなく高血圧治療剤(血圧低下)である。ただし、妊婦への投与は禁忌とされている医薬品である。妊娠中期~末期に投与された患者に胎児・新生児死亡、羊水過少症、胎児・新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全、羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、脳、頭蓋顔面の奇形、肺の発育形成不全等が生じる可能性がある。ちなみに、臍帯ヘルニアとは、胎児のおなかの壁が正しく作られず、おなかの壁に穴ができてしまい、赤ちゃんはへその緒(臍帯)の中に胃や腸、肝臓などが出たままの状態であることをいう。
3.× チアマゾールは、「肺低形成症」ではなく、抗甲状腺薬の一種である。副作用として、出生児に頭皮欠損症・頭蓋骨欠損症、臍帯ヘルニア、臍腸管の完全または部分的な遺残(臍腸管瘻、メッケル憩室等)、気管食道瘻を伴う食道閉鎖症、後鼻孔閉鎖症等の先天異常を起こす可能性がある。ちなみに、肺低形成症とは、肺胞や気管支・肺葉などの数やサイズの減少を伴う肺の発育形成不全のことをいう。正常肺の発育を阻害する他の胎児異常に伴って二次的に発症するものが多いが、特発性の発生も知られている。肺低形成は、しばしば新生児の死因となったり、死産においても時に認められる。
4.〇 正しい。非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用で動脈管収縮が懸念される。非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、妊娠14〜42週において新生児の不可逆性致死性心不全、動脈管の未熟性閉鎖、持続性肺高血圧を引き起こす。また妊婦と胎児に出血を引き起こす。したがって、ボルタレン(非ステロイド抗炎症薬:NSAIDs)は妊娠または妊娠している可能性がある女性は禁忌である。

非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>とは?

非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。

 

 

 

 

 

4 A病院の助産師は、出産予定の初産婦の実母・義母を対象に「産後の母乳育児のサポート」をテーマとした「孫育て教室」を計画している。
 教室に参加する実母・義母に関する情報で優先されるのはどれか。

1.家族形態
2.就労経験
3.出産回数
4.母乳育児経験

解答

解説

ポイント

孫育て教室」の計画
対象:出産予定の初産婦の実母・義母
テーマ:「産後の母乳育児のサポート
→今回、教室であることから集団で行うと考えられる。また、テーマに合った情報を優先するべきである。

1.× 家族形態より優先度が高いものが他にある。なぜなら、今回は集団で教室を行うと考えられるため。家族形態はプライバシーの観点で、さらけ出しにくく特殊な場合もあるため扱いには慎重に行うべきである。
2.× 就労経験より優先度が高いものが他にある。なぜなら、今回のテーマは「産後の母乳育児のサポート」であるため。就労経験から今後の母乳育児のサポートまで範囲を広くしてしまうと、収拾がつかなくなる可能性もある。
3.× 出産回数より優先度が高いものが他にある。なぜなら、「出産予定の初産婦の実母・義母の出産回数」と「産後の母乳育児のサポート」は関連性が薄いため。出産回数が多いからといって、「母乳育児のスキルが高い」または「産後の母乳育児のサポートを知っている」ということはない。
4.〇 正しい。母乳育児経験が優先される。テーマ「産後の母乳育児のサポート」と合致している。出産予定の初産婦の実母・義母の母乳育児経験を優先して情報収集することで、実母・義母の視点の意見も反映しやすくなる。

 

 

 

 

5 頭臀長<CRL>の計測によって分娩予定日を正確に診断できる妊娠時期はどれか。

1. 6週
2. 9週
3.12週
4.15週

解答

解説

頭殿長<CRL>

頭殿長<CRL>が 13〜41mm(8週0日~11週3日)において、分娩予定日(妊娠週数)決定を予想できる。これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭臀長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と頭殿長<CRL>からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、頭殿長<CRL>からの予定日を採用する。妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長<CRL>の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。

1. 6週は時期尚早で正確に診断できない。妊娠6週は、胎児の心拍が確認できる時期である。
2. 9週が頭臀長<CRL>の計測によって分娩予定日を正確に診断できる妊娠時期である。頭殿長<CRL>とは、胎児の頭から臀部までの長さである。妊娠初期は胎児の発育スピードがほぼ同じで個体差がないため、月経不順などで分娩予定日を決定しにくい際に、正確な分娩予定日を決めるのに最も利用される。特に計測精度がよいのが、妊娠8~11週とされている。
3〜4.12週/15週は時期としては遅く正確に診断できない。妊娠12週以降は、胎児大横径(BPD)を用いて妊娠週数を修正する。

 

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