第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午前51~55】

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51 Aさん(42歳、女性)は、3日前から微熱と強い全身怠感を自覚したため病院を受診したところ、肝機能障害が認められ、急性肝炎の診断で入院した。1か月前に生の牡蠣を摂取している。Aさんはこれまで肝臓に異常を指摘されたことはなく、家族で肝臓疾患を罹患した者はいない。
 Aさんが罹患した肝炎について正しいのはどれか。

1.細菌感染である。
2.劇症化する危険性がある。
3.慢性肝炎に移行しやすい。
4.インターフェロン療法を行う。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(42歳、女性)は、
・3日前から:微熱と強い全身怠感を自覚した。
・肝機能障害が認められ、急性肝炎の診断で入院。
・1か月前:生の牡蠣を摂取。
・Aさんはこれまで肝臓に異常を指摘されたことはなく、家族で肝臓疾患を罹患した者はいない。
→本症例は、A型肝炎が疑われる。A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

1.× 急性肝炎の多くは、「細菌感染」ではなくウイルス感染によるものである。本症例は牡蠣の摂取から急性肝炎になっているので、A型肝炎ウイルス(HAV)が原因と考えられる。
2.〇 正しい。劇症化する危険性がある。A型急性肝炎は、1%以下と頻度は低いが劇症化(劇症肝炎)の危険がある。ちなみに、劇症肝炎とは、急性肝不全ともいい、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れる疾患である。この意識障害を「肝性脳症」といい、ひどい場合は昏睡状態に陥る。劇症肝炎(急性肝不全)は、全身の臓器に障害を引き起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になる。劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などで、わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めている。
3.× 慢性肝炎に移行することはない。なぜなら、慢性肝炎に移行しやすいのは、C型急性肝炎や一部のB型急性肝炎であるため。ちなみに、慢性肝炎とは、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気である。B型およびC型肝炎ウイルスのほかに、一般的な原因としては、特定の薬などがあり、ほとんどの場合は無症状である。全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもある。
4.× インターフェロン療法を行わない。なぜなら、インターフェロン療法とは、B型肝炎やC型肝炎の治療に用いられるため。インターフェロンとは、動物体内で病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のことである。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種である。一般的に、A型急性肝炎の治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

インターフェロンとは?

インターフェロンは、ウイルスに感染した時、生体を守るために体内で作られるタンパク質の一種である。 ウイルスを排除したり、ウイルスの増殖を抑える働きがある。 人工的に生産した インターフェロンを体外から注射によって補うのが、インターフェロン療法である。

 

 

 

 

 

52 ホルモン負荷試験について正しいのはどれか。

1.ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
2.分泌異常が疑われるホルモンを投与する。
3.前日の夕食から禁食にする。
4.入院が必要である。

解答1

解説

1.〇 正しい。ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。ホルモン負荷試験(内分泌負荷試験)とは、点滴をしながら同時に採血もして、体の中のホルモンのバランス(部位や機能)を調べる検査である。 点滴の中に薬を混ぜたり、薬を飲んだりしながら検査する。 内分泌負荷試験をよく行うのは、低身長のお子さんの成長ホルモンのバランスを調べるときである。
2.× 「分泌異常が疑われるホルモン」ではなく、「分泌異常が疑われるホルモンの分泌に影響を与えるホルモン」を投与する。分泌異常を調べるために、分泌抑制または分泌促進に働く物質を投与し、体内の反応を測定する検査である。
3.× 「前日の夕食」ではなく、検査当日の朝から禁食にする。なぜなら、血糖などの変化の影響をなくすためである。ただし、ホルモンの種類によっては各施設の各ルールで禁食にしているため確認していく必要がある。
4.× 必ずしも入院が必要ではない。なぜなら、外来で施行できるため。ただし、経過観察が必要な検査や長時間を要する検査については入院とする。

 

 

 

 

 

53 乳癌の自己検診法の説明で適切なのはどれか。

1.月経前に行う。
2.年に1回実施する。
3.指先を立てて乳房に触る。
4.乳房の皮膚のくぼみの有無を観察する。

解答4

解説

(図引用:「乳がんの自己検診法」富山県健康増進センター様より)

乳がんの自己検診法とは?

乳がんの自己検診法とは、自分自身で胸の状態を見て、触れて変化や異変を確認する。月1回、決まった日に行うのがおすすめである。乳房の形、左右の対称性、ひきつれ、陥没、皮膚の変化などを観察する。乳房全体やわきの下のリンパ節を触って、しこりなどの異常の有無を確かめる。

1.× 「月経前」ではなく、月経終了後の1週間前後に行う。なぜなら、月経前は最も乳房が緊満していて乳頭が敏感な時期であるため。
2.× 「年に1回」実施ではなく、毎月1回行うのが望ましい。
3.× 「指先を立てて乳房に触る」のではなく、指腹または手掌面を用いて圧迫しながらもみほぐすように行う。
4.〇 正しい。乳房の皮膚のくぼみの有無を観察する。乳房の変形や左右差、しこり、ひきつれ、えくぽのようなへこみやくぼみの有無、乳頭のただれ、出血や異常分泌物がないか観察する。

 

 

 

 

 

54 高齢者の看護において目標志向型思考を重視する理由で最も適切なのはどれか。

1.疾患の治癒促進
2.老化現象の進行の抑制
3.病態の関連図の作成の効率化
4.生活全体を豊かにするケアの実践

解答4

解説

問題解決型思考と目標志向型思考

看護実践には、大きく①問題解決型思考と、②目標志向型思考の2つがある。

①問題解決型思考とは、問題解決のゴールを定義した上で、その問題に対して課題を立てていくアプローチである。看護の場では、標準的な検査・治療や急性増悪に伴う健康問題の解決を目指すときに向いているといわれ、疾患・障害により対象者の自立的な生活を阻害している要因を除去し、健康問題を解決していくプロセスである。

②目標志向型思考とは、本人が納得して目標を設定し、それを達成することでより充実した生活・人生を獲得しようとする手法である。看護の場では、患者本人が「こうなりたい」と思うことを目標にすえ、患者が生活の主体者として日常生活において可能な限り自立的な生き方ができるよう、看護専門職者が支援し、働きかける。

1~3.× 疾患の治癒促進/老化現象の進行の抑制/病態の関連図の作成の効率化は、問題解決型思考である。なぜなら、問題解決のゴールを定義した上で、その問題に対して課題を立てていくアプローチとなるため。
4.〇 正しい。生活全体を豊かにするケアの実践は、目標志向型思考である。なぜなら、本人が納得して目標を設定し、それを達成することでより充実した生活・人生を獲得しようとする手法となるため。

 

 

 

 

 

55 高齢者の活動と休息のリズムの調整について最も適切なのはどれか。

1.午前中に日光を浴びる機会をつくる。
2.昼食後に入浴する。
3.昼寝をしない。
4.就寝前に水分を多く摂る。

解答1

解説

1.〇 正しい。午前中に日光を浴びる機会をつくる。なぜなら、午前中に日光を浴びると体内時計がリセットされ、日中の活動と夜間の休息のリズムが乱れにくいため。
2.× 「昼食後」ではなく夕食後(直後は避け、食後1時間以降)に入浴する。なぜなら、昼食後の入浴は、入浴による疲労からリズムが乱れやすくなり、午後は昼寝や傾眠傾向につながる可能性があるため。
3.× 必ずしも昼寝をしないと決める必要はない。むしろ、短時間(30分以内)の昼寝で、午後からの覚醒度の向上や夜間睡眠の質の向上が期待できる報告もある。
4.× 就寝前に水分を多く摂る必要はない。なぜなら、就寝前に水分を多く摂り過ぎると、夜間頻尿となり睡眠の質が低下するため。適度な水分摂取が大切である。

 

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