第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度< SpO2>89%であった。ジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧< PaO2>60Torr、動脈血炭酸ガス分圧< PaCO2>68Torr、pH7.29であった。

91 この時点でのAさんのアセスメントで誤っているのはどれか。

1.脱水である。
2.意識障害がある。
3.アシドーシスである。
4.ショック状態である。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、女性、慢性閉塞性肺疾患)
・1週前:感冒様症状、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車搬送。
・肩呼吸、発汗:著明、口唇:乾燥
・体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、SpO2:89%。
・JCS:Ⅱ-30
・PaO2:60Torr、PaCO2:68Torr、pH7.29。
→慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%が慢性閉塞性肺疾患を発症する。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

1.〇 正しい。脱水である。なぜなら、体温38.3℃あり、著明な発汗と口唇の乾燥が観察されるため。脱水とは、生体において体液量が減少した状態をいう。水やナトリウムの喪失が原因で起こる。この際、ナトリウムの喪失を伴わず水欠乏を起こす病態を高張性脱水(水欠乏性脱水)や一次脱水という。脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
2.〇 正しい。意識障害がある。なぜなら、JCSⅡ-30(痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する状態)であるため。
3.〇 正しい。アシドーシスである。なぜなら、pH7.29(基準値:7.40±0.05)であるため。Aさんの動脈血ガス分析はpH7.29であり、酸性に傾いている。また、呼吸数が35/分と多く、動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)68Torr(基準値:35~45Torr)を超えていることから、呼吸性アシドーシスの状態であると推測できる。呼吸性アシドーシスとは、換気が低下することが原因で、CO2が体内に蓄積している状態である。
【酸塩基平衡】血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
→pH7.30:酸性に傾いている状態
→pH7.50:アルカリ性に傾いている状態
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。
4.× ショック状態とは考えにくい。なぜなら、ショック状態では血圧が低下し、ショック状態の判断基準として収縮期血圧が90mmHgであるため。Aさん96mmHgであるのでショック状態とはいえない。ショックの状態とは、血圧が下がり生命の危機にある状態で、①蒼白、②虚脱、③冷汗、④脈拍の触知不能、⑤呼吸不全の五徴候がみられる。

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックであり,ほかにやや病態が異なるものとして子癇、羊水塞栓症、感染流産などがその基礎疾患となり得る。また仰臥位低血圧症候群、産科手術時の腰椎麻酔によるショックなどもこれに含まれる。

(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度< SpO2>89%であった。ジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧< PaO2>60Torr、動脈血炭酸ガス分圧< PaCO2>68Torr、pH7.29であった。

92 Aさんは肺炎による急性呼吸不全と診断され、点滴、膀胱留置カテーテルの挿入および気管内挿管が実施された。
 このときのAさんの観察で最も注意すべき状態はどれか。

1.乏尿
2.血圧上昇
3.末梢冷感
4.下肢の浮腫
5.呼吸音の減弱

解答5

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、女性、慢性閉塞性肺疾患)
・肺炎による急性呼吸不全と診断
・点滴、膀胱留置カテーテルの挿入および気管内挿管が実施。
→【挿管後の観察項目】
・バイタルサイン
・意識レベル
・呼吸状態(呼吸数、呼吸パターン、呼吸音、肺雑音、呼吸困難の有無、痰の量・性状)、胸郭の動き
・SpO2値
・鎮静の程度
・チアノーゼの有無
・四肢冷感の有無

1.× 乏尿は、最も注意すべき状態とはいえない。膀胱留置カテーテルが挿入されているので尿量の観察は必要である。また点滴も行われているため、水分の出納バランスにも注意が必要となるが、選択肢の中にさらに優先度の高いものがある。ちなみに、乏尿とは、1日の尿量が400mL以下となった状態である。
2.× 血圧上昇は、最も注意すべき状態とはいえない。気管内挿管の前後においてバイタルサイン測定は必要であるが、血圧上昇がかなり起こるとは言えないため。また、選択肢の中にさらに優先度の高いものがある。
3.× 末梢冷感は、最も注意すべき状態とはいえない。ただし、本症例は、気管内挿管されているため、経皮的酸素飽和度や末梢冷感(チアノーゼの有無)などの観察は必要となるが、選択肢の中にさらに優先度の高いものがある。
4.× 下肢の浮腫は、最も注意すべき状態とはいえない。下肢の浮腫は、尿量とともに心不全やうっ血傾向の指標として、観察の必要があるが、選択肢の中にさらに優先度の高いものがある。ちなみに、浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
5.〇 正しい。呼吸音の減弱は、最も注意すべき状態である。なぜなら、気管内挿管後は、食道挿管や片肺挿管の可能性もあり、最も生命に関連性が高いため。また、両肺の呼吸音を聴診器で聴取し、正しい位置に挿管チューブが留置されているかを確認する。挿管直後に最も注意が必要な観察項目である。

呼吸不全とは?

【呼吸不全の定義】PaO2≦60Torrである。

ここから、Ⅰ型呼吸不全かⅡ型呼吸不全か決定する。
【Ⅰ型呼吸不全の場合】PaCO2≦45Torr

【Ⅱ型呼吸不全の場合】PaCO2>45Torr

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度< SpO2>89%であった。ジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧< PaO2>60Torr、動脈血炭酸ガス分圧< PaCO2>68Torr、pH7.29であった。

93 Aさんは、胸部エックス線写真で右中下肺野の浸潤影が認められ、膿性の痰が吸引されている。
 このときの体位ドレナージで最も効果的なのはどれか。

1.右30°側臥位
2.左30°側臥位
3.右前傾側臥位
4.左前傾側臥位
5.腹臥位

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、女性、慢性閉塞性肺疾患)
・肺炎による急性呼吸不全と診断
・胸部エックス線写真:右中下肺野浸潤影あり。
膿性の痰が吸引されている。
→体位ドレナージとは、重力を利用して痰の排出を図る方法である。痰貯留部位が上、気管支が下となる体位をとり、痰を排出する。ブローイングとは、息を吹く動作(水に入れたコップにストローでブクブクと息を吹き込む動作)により、鼻咽喉が反射的に閉鎖されることを利用して、鼻咽喉閉鎖に関わる神経や筋群の機能を改善させる手法である。

1~2.× 右30°側臥位/左30°側臥位は効果的ではない。なぜなら、本症例は、右中下肺野浸潤影があるため。体位ドレナージとは、重力を利用して痰の排出を図る方法である。痰貯留部位が上、気管支が下となる体位をとり、痰を排出する。
3.× 右前傾側臥位(右前方へ45度傾けた体位)は効果的ではない。左上葉(S2)に痰が貯留している場合に効果的である。
4.〇 正しい。左前傾側臥位(左前方へ45度傾けた体位)が最も効果的である。右中下肺野に浸潤影が認められ膿性の痰が吸引されていることから、左側臥位にすべきである。
5.× 腹臥位は効果的ではない。下葉背面(S6、S10)に痰が貯留している場合に適した体位である。

(※画像引用:中高津クリニック様HP)

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、男性)は、運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+を指摘されたが放置していた。1週前、感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値でIgA腎症が疑われ入院した。

94 確定診断のために必要な検査はどれか。

1.腎生検
2.尿細胞診
3.腎血管造影
4.腹部超音波検査
5.腎シンチグラフィ

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(34歳、男性)
・運送会社で配達を担当している。
・6か月前の健康診断:血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+。
・1週前:感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられた。
・血清IgAが高値、IgA腎症が疑われた。
→IgA腎症とは、検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAという蛋白が沈着する病気である。多くは慢性の経過をたどる。

1.〇 正しい。腎生検は、IgA腎症の確定診断のために必要な検査である。なぜなら、IgA腎症は、検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に、免疫グロブリン のIgAという蛋白が沈着する病気で多くは慢性の経過をたどるため。腎生検とは、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で直接観察する検査である。患者は腹臥位になってもらい、背中からボールペンの芯程度の太さの針を腎臓に刺して組織を採取する。この操作は、超音波装置で針が腎臓に当っているかどうかを観察しながら行う。局所麻酔(あるいは全身麻酔)や鎮痛剤を用いることで痛みは十分に軽減される。目的として、①各種の腎炎やネフローゼ症候群の診断と原因、②原因不明の蛋白尿や腎機能低下または血尿、③全身性エリテマトーデス(SLE)などがあげられる。合併症として、出血(血腫、血尿)、感染、その他の臓器の損傷、腎臓の嚢胞などがあげられる。
2.× 尿細胞診とは、尿のなかに悪性の細胞がいないかを検査する方法である。主に、腎・尿路系の悪性腫瘍の鑑別診断に役立つ。
3.× 腎血管造影とは、腎動脈の血管病変や腎内腫癌の診断に役立つ検査である。ちなみに、血管造影とは、血管の状態や血液の流れ、血管病変、腫瘍を調べるための検査である。
4.× 腹部超音波検査とは、腹腔内臓器に対して行う超音波検査である。腹部エコーともいう。 一般的には肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・脈管系を対象とする。
5.× 腎シンチグラフィとは、腎臓の血行動態や炎症あるいは腫瘍の有無を評価する検査である。シンチグラフィとは、体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したものである。

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、男性)は、運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHgと尿蛋白2+、尿潜血2+を指摘されたが放置していた。1週前、感冒様症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値でIgA腎症が疑われ入院した。

95 AさんはIgA腎症と診断され、塩分1日6gの減塩食が開始された。入院前は塩辛いものが好物で外食が多かったAさんは「味が薄くて食べた気がしない。退院後も続けられるかな」と話している。
 このときの対応で最も適切なのはどれか。

1.「つらいですが慣れてきます」
2.「最初に甘いものを食べてください」
3.「各食事で均等に塩分を摂取しましょう」
4.「酸味や香味を利用するとよいでしょう」
5.「市販のレトルト食品は塩分が少ないので活用するとよいです」

解答4

解説

本症例のポイント

・診断:IgA腎症
塩分1日6gの減塩食が開始。
・入院前:塩辛いものが好物で外食が多かった。
・Aさん「味が薄くて食べた気がしない。退院後も続けられるかな」と。
→減塩食が続けられるように支援していこう。減塩には、①漬物や汁物の摂取量を減らす、②外食や加工食品の摂取を控える、③だしを効かせる、④香味野菜を使用するなどがあげられる。

1.× 「つらいですが慣れてきます」というのは、Aさんの不安な気持ちに無責任で根拠のない対応である。
2.× 「最初に甘いものを食べてください」というのは、減塩の効果の根拠が薄い。なぜなら、甘いものを食べた後、塩辛さを食べたところで、減塩にはつながらないため。
3.× 「各食事で均等に塩分を摂取しましょう」というのは、減塩の効果の根拠が薄い。なぜなら、各食事量(朝・昼・夜)が異なるため。1食を塩分を濃くするなど、様々な工夫することも必要となる。
4.〇 正しい。「酸味や香味を利用するとよいでしょう」と指導する。減塩には、①漬物や汁物の摂取量を減らす、②外食や加工食品の摂取を控える、③だしを効かせる、④香味野菜を使用するなどがあげられる。酸味や香味は、味を引き立てて食欲を損なわない効果があり、物足りなさを緩和することができるため有効である。
5.× 「市販のレトルト食品は塩分が少ないので活用するとよいです」というのは、虚偽の指導になりかねない。なぜなら、必ずしもすべての市販のレトルト食品塩分の含有量が少ないわけではないため。むしろ、一般的に市販のレトルト食品は、塩分が多い

 

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