第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午後46~50】

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46 Aさん(37歳、女性)は、月経異常で病院を受診し、糖尿病および高血圧症と診断された。また、満月様顔貌や中心性肥満の身体所見がみられたため検査が行われ、ホルモン分泌異常と診断された。
 原因となるホルモンを分泌している臓器はどれか。

1.副甲状腺
2.甲状腺
3.副腎
4.卵巣

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、女性、月経異常)
・診断:糖尿病、高血圧症、ホルモン分泌異常
・身体所見:満月様顔貌中心性肥満
→本症例は、クッシング症候群が疑われる。クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

1.× 副甲状腺ホルモンとは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。つまり、副甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。別名:パラトルモンである。
2.× 甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。
3.〇 正しい。副腎が、原因となるホルモンを分泌している臓器である。クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。
4.× 卵巣ホルモンとは、卵巣から分泌されるホルモンで、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)がある。エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。一方、プロゲステロンとは、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

副腎とは?

副腎皮質から、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などが分泌される。コルチゾールは、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

①球状帯:電解質コルチコイド(アルドステロン)を産生する。皮膜直下の薄い層で、皮質細胞が球状の塊を形成する。
②束状帯:糖質コルチコイド(コルチゾール)を産生する。最も厚い層で、細胞は縦に並び、細胞索を形成する。その間を洞様毛細血管が髄質に向かって走行する。
③網状帯:アンドロゲンを産生する。皮質の最深部で、網状をなす細胞索からなる。

 

 

 

 

 

47 日本の平成25年(2013年)の国民生活基礎調査において高齢者世帯の所得で、1世帯当たり平均所得金額の構成割合が最も高いのはどれか。

1.稼働所得
2.財産所得
3.公的年金・恩給
4.仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得

解答3

解説

(※図引用:「平成26年国民生活基礎調査」厚生労働省様HPより)

1.× 稼働所得は、高齢者世帯の1世帯あたり55万円で、構成割合は18.3%である。ちなみに、稼動所得とは、雇用者所得、事業所得、農耕、畜産所得などいわゆる「勤労」によって得ている収入のこと。
2.× 財産所得は、高齢者世帯の1世帯あたり22万9千円で、構成割合は7.6%である。ちなみに、財産所得とは、カネ、土地および無形資産(著作権・特許権など)を貸借する場合、この貸借を原因として発生する所得の移転である。
3.〇 正しい。公的年金・恩給が、1世帯当たり平均所得金額の構成割合が最も高い。公的年金・恩給は、高齢者世帯の1世帯あたり203万3千円で、構成割合は67.6%である。公的年金とは、社会保障の観点から財政援助や税制優遇措置を与え、国が行う年金である。 日本の公的年金には、老齢年金として国民年金、厚生年金、共済年金がある。また、恩給とは、恩給法に規定される、官吏であったものが退職または死亡した後本人またはその遺族に安定した生活を確保するために支給される金銭をいう。
4.× 仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得は、高齢者世帯の1世帯あたり16万円で、構成割合は5.3%である。

(※データ引用:「平成26年国民生活基礎調査」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

48 認知症の高齢者に対するノーマライゼーションで正しいのはどれか。

1.散歩を勧める。
2.決められた服を着るよう勧める。
3.重度の場合は精神科病棟に入院を勧める。
4.食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧める。

解答1

解説

ノーマライゼーションとは?

ノーマライゼーションとは、「障害者が一般市民と同じ環境で、同じ条件で家庭や地域で共に生活すること」を目指す概念である。障害を持つ人が健常者と共存して「普通の社会生活」営めるように、当該社会から物心両面において改善しようという社会的志向である。

1.〇 正しい。散歩を勧めるのは、認知症の高齢者に対するノーマライゼーションである。なぜなら、散歩は、障害者(認知症患者)が一般市民と同じ環境で、同じ条件で共に生活すること(行えること)であるため。
2~4.× 決められた服を着るよう勧める/重度の場合は精神科病棟に入院を勧める/食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧めることは、ノーマライゼーションの概念から外れる。なぜなら、決められた服や精神科の入院、箸を使用しないように勧めることは、「普通の社会生活」とは逸脱し、むしろ強制や差別にあたる可能性があるため。

 

 

 

 

 

49 Aさん(80歳、男性)は、脳梗塞の治療のために入院した。Aさんは多弁であり「めがねをとってください」のことを「めとねをとってください」などと話す様子が観察される。
 Aさんの症状で正しいのはどれか。

1.錯語
2.感情失禁
3.喚語困難
4.運動性失語

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、男性、脳梗塞
・多弁で、「めがねをとってください」のことを「めとねをとってください」と。
→本症例は、錯語が考えられる。錯語とは、①音韻性錯語(字性錯語)と②意味性錯語(語性錯語)があげられる。音韻性錯語とは、「とけい」を「とてん」「とけん」などと発音を間違えることである。一方、意味性錯語とは、「いぬ→ねこ」「あそぶ→はしる」といった意味を間違えることである。

1.〇 正しい。錯語である。特に、音韻性錯語が考えらえる。錯語とは、①音韻性錯語(字性錯語)と②意味性錯語(語性錯語)があげられる。音韻性錯語とは、「とけい」を「とてん」「とけん」などと発音を間違えることである。一方、意味性錯語とは、「いぬ→ねこ」「あそぶ→はしる」といった意味を間違えることである。どちらも側頭葉病変が多く感覚性失語(流暢性:ウェルニッケ失語)で出現しやすい。
2.× 感情失禁とは、軽度の情動的刺激で笑ったり、泣いたりする現象で、感情の調節がうまくいかない状態である。前頭葉障害や脳血管性認知症に多い症状である。
3.× 喚語困難とは、本人に何か伝えたいことがあるのにその内容が言葉になって出てこない状態のことをいう。
4.× 運動性失語(ブローカ失語)とは、他人の話すことは理解できるが、自分の思っていることを言語に表現できない状態である。「はい」「いいえ」で答えられるよう質問を工夫したり、言いたいことを推測して答えを書いて示すことが有効である。前頭葉Broca野(運動性失語中枢)を中心とした前頭葉の障害によって生じる。

 

 

 

 

 

50 便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化で誤っているのはどれか。

1.大腸粘膜の萎縮
2.骨盤底筋群の筋力低下
3.直腸内圧の閾値の低下
4.大腸の内括約筋の緊張の低下

解答3

解説

加齢に伴う消化器の変化

・消化管では、消化液の分泌低下、蠕動運動の低下が起こる。

・腸の運動低下、腹筋の弛緩、直腸内圧閾値上昇により、便秘傾向になる。

1.〇 正しい。大腸粘膜の萎縮は、便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化である。大腸粘膜とは、主な役割として水やナトリウム、カルシウムを吸収する機能や、体を外界(消化管内容物)から防御する障壁としての機能がある。
2.〇 正しい。骨盤底筋群の筋力低下は、便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化である。骨盤底筋群とは、子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。排便時に便を押し出す力が低下(=骨盤底筋群の筋力の低下)し、便秘の原因となる。
3.× 誤っている。加齢に伴い、直腸内圧の閾値は、「低下」ではなく上昇する。閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。したがって、加齢に伴い直腸内圧の闘値は上昇し、便意を感じにくくなるため便秘となる。
4.〇 正しい。大腸の内括約筋の緊張の低下は、便秘の原因となる加齢に伴う身体的変化である。内肛門括約筋とは、腸の筋肉の一部(平滑筋)で、おしりを締めようと意識しなくても、自律神経のはたらきでおしりを締めてくれる働きをする。加齢に伴い、大腸の内括約筋の緊張の低下することで、便意が感じにくくなり、便秘(習慣性便秘)となる。

直腸性便秘とは?

習慣性便秘とは、直腸性便秘ともいい、習慣的に便意をおさえたり、下剤・浣腸を乱用していることにより排便反射が減弱し、排便が起こりにくくなる。 便は硬く、途切れがちである。 朝食を十分にとり、繊維の多い食物や水分をとる。

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【22問】加齢の影響についての問題「まとめ・解説」

 

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