第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後26~30】

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26 成人の骨格で線維軟骨結合があるのはどれか。

1.頭蓋冠
2.脊柱
3.寛骨
4.仙骨

解答2

解説

線維軟骨結合とは?

線維軟骨結合とは、骨と骨の間に線維軟骨が存在し、可動性がまったくないかごくわずかである不動関節のことである。線維軟骨結合は、①恥骨の線維軟骨結合で連結された寛骨、②椎間板で連結された椎骨があげられる。

(※図引用:「イラスト素材:女性の骨盤 説明図」illustAC様HPより)

1.× 頭蓋冠は、骨結合および靭帯結合による縫合である。軟骨結合は存在しない。頭蓋冠は主に前頭骨や頭頂骨から成り、脳を保護し、脳の発育とともに成長していく骨である。
2.〇 正しい。脊柱を構成する椎体間には、線維軟骨結合である。椎間板で連結されている。
3.△ 寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)は、骨結合である。ただ、そのうち恥骨は、左右の連結部分(恥骨結合)に線維軟骨結合である。
4.× 仙骨(仙腸関節:仙骨と寛骨の関節部分)は、靭帯結合である。軟骨結合は存在しない。

骨化形成

①軟骨内骨化:全ての長管骨・椎骨・肋骨・下顎頭及び頭蓋底。

②膜性骨化:頭蓋冠・上顎骨・下顎体・肩甲骨・恥骨・長骨・鎖骨などの肩平骨。

 

 

 

 

 

27 咀嚼筋はどれか。

1.頰筋
2.咬筋
3.口輪筋
4.胸鎖乳突筋

解答2

解説

MEMO

三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。咀嚼筋とは、下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。

1.× 頰筋(きょうきん)は、表情筋の1つである。口唇周囲の口筋のなかで口角を外側に引き、頬を歯列に押し付ける筋肉である。
2.〇 正しい。咬筋は、咀嚼筋の1つである。咳筋は、口を閉じる働きをする。ちなみに、他の咀嚼筋の側頭筋は、口を閉じると同時に下顎骨を後ろに引く筋肉である。外側翼突筋は、下顎骨を前方に押し、左右に動かすことができる筋肉である。内側翼突筋は、咳筋と同じで、口を閉じる働きをする。
3.× 口輪筋は、表情筋の1つである。口唇周囲の口筋のなかで、口を閉じ、口の周囲を前方に尖らせる筋肉である。
4.× 胸鎖乳突筋は、頚部の筋肉のひとつである。主な作用は、両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助などである。

 

 

 

 

28 体温のセットポイントが突然高く設定されたときに起こるのはどれか。

1.立毛
2.発汗
3.代謝抑制
4.皮膚血管拡張

解答1

解説

セットポイントとは?

 セットポイントとは、設定値と直訳でき、体温調節中枢には、体温を一定に保つ働きがあり、こうして設定された体温のことを指す。体温のセットポイント(設定値)が突然高く設定された場合(つまり、通常の体温が低く寒い)と認識するため、寒冷にさらされた場合と同様に体温を上昇させる反応が起こる。

1.〇 正しい。立毛が起こる。立毛とは、鳥肌のことである。他にも、体温を上昇させる反応として、皮膚血管の収縮、熱産生量を増すために筋肉のふるえ(熱産生)などが生じる。小刻みな収縮:シバリングによって生体内で熱が産生される現象である。寒さによる「ふるえ」は骨格筋の不随意運動による筋収縮で発生するエネルギーが熱となるため、熱産生が増加する。
2~4.発汗/代謝抑制/皮膚血管拡張は、体温のセットポイントが「高く」のではなく低く設定されたときに起こる。発汗/皮膚血管拡張は熱を放散させるために起こる。冷えにより代謝が抑制される原因として、組織細胞の酸素需要は減少するためである。

寒冷療法の生理作用

寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。

(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)

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【8問】体温の基本についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

29 二次性高血圧症の原因となるホルモンはどれか。

1.アルドステロン
2.ソマトスタチン
3.グルカゴン
4.メラトニン

解答1

解説

高血圧症とは?

高血圧症とは、①本態性高血圧(原因が生活習慣や環境、遺伝などはっきり特定できないもの:高血圧症全体の9割)と、②二次性高血圧(ホルモン分泌異常や臓器の奇形などで生じ原因が特定できるもの:腎血管性高血圧を含む)に分けられる。

二次性高血圧症の原因として、①腎実質性、②腎血管性、③内分泌性、④血管性、⑤脳・中枢神経性(脳幹部血管圧迫)、⑥遺伝性、⑦薬剤誘発性などがある。②腎血管性高血圧は、腎動脈硬化症や線維筋性異形成、高安大動脈炎、解離性大動脈瘤などによる腎血流低下により腎臓でレニン産生が増加するため高血圧となる。③内分泌性高血圧には、先端巨大症、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、レニン産生腫瘍などにより高血圧となる。

1.〇 正しい。アルドステロンは、二次性高血圧症の原因となるホルモンである。アルドステロン(鉱質コルチコイド)は、副腎皮質や副腎腺腫から分泌され、腎臓に作用してナトリウムの再吸収、水の再吸収を促進、血圧を上昇させる。
2.× ソマトスタチンとは、脳の視床下部、膵臓のランゲルハンス島δ細胞、消化管の内分泌細胞などから分泌される。作用は、成長ホルモン・インスリン・グルカゴン・ガストリン・セクレチンの分泌を抑制する。
3.× グルカゴンとは、主に膵臓α細胞から分泌され、血糖値を上昇させる作用がある。
4.× メラトニンとは、夜間に脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計による夜間の身体の休息を促す働きを持つ。メラトニン分泌量が低下するため睡眠障害が起こりやすくなる。

補足事項

副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。
コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

 

 

 

 

30 成人の急性扁桃炎の原因となる菌はどれか。

1.百日咳菌(Bordetella pertussis)
2.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
3.インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)
4.ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)

解答2

解説

急性扁桃炎とは?

急性扁桃炎とは、ウイルス感染や細菌感染によって発症する上気道感染症である。ウイルス感染に続発して細菌感染が起こることも多いため、治療には抗菌薬を用いることが多い。

1.× 百日咳菌(Bordetella pertussis)は、百日咳の原因菌である。百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険性も高い。症状として①カタル期(1~2週間)、 ②痙咳期(4~6週間)、 ③回復期(2~3週間)に分類され、痙咳期には、新生児・乳幼児期では無呼吸発作を伴う。百日せきワクチンを含むDPT三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)接種はわが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減している。しかし、ワクチン接種を行っていない人や接種後年数が経過し、免疫が減衰した人での発病はわが国でも見られており、世界各国でいまだ多くの流行が発生している。
2.〇 正しい。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、成人の急性扁桃炎の原因となる菌である。急性扁桃炎は、ブドウ球菌肺炎球菌溶血性レンサ球菌(溶連菌)による感染が多く、溶血性レンサ球菌の感染によるものは重症化しやすい。
3.× インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は、カタラーゼおよびオキシダーゼ陽性のグラム陰性短桿菌で、中耳炎・副鼻腔炎・肺炎などの呼吸器系感染症の原因菌である。ほかにも、菌血症や細菌性髄膜炎等の侵襲性インフルエンザ菌感染症を引き起こす。成人の急性扁桃炎の起炎菌(きれんきん:感染症を起こす原因となった菌)として検出されることがあるが、その頻度は稀ため、選択肢2.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の方が優先されて選択される。
4.× ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃癌などに関与している菌である。ヘリコバクター・ピロリ菌は、井戸水などにより経口感染するヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。

M R S A(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは?

 黄色ブドウ球菌は非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。

 

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