第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前66~70】

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66 Aさん(25歳、男性)は、統合失調症と診断された。抗精神病薬の内服を開始した2日後、Aさんはそわそわして落ち着かず「足がムズムズする」と歩き回るようになった。
 Aさんにみられている状態はどれか。

1.アカシジア
2.ジストニア
3.ジスキネジア
4.ミオクローヌス

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、男性、統合失調症
抗精神病薬の内服を開始した2日後
・そわそわして落ち着かず「足がムズムズする」と歩き回る。
→統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

1.〇 正しい。アカシジアが、Aさんにみられている状態である。アカシジアとは、統合失調症患者が作業中に立ったり座ったりする、そわそわと落ち着かない行動である。ムズムズした感覚が下肢を中心に起こり、じっと座っていることができないため、鎮座不能症ともいわれる。抗精神病薬の副作用で、錐体外路系副反応のひとつである。
2.× ジストニアとは、筋の不随意収縮による呈舌(舌を出すこと)や四肢・体幹の捻転運動をいう。他にも眼球上転、発生に障害が生じる。抗精神病薬内服開始後、数日以内に起こる副作用である。
3.× ジスキネジアとは、顔面をゆがめたり口をもぐもぐさせたりなどの不随意運動のことをいう。抗精神病薬の長期服用による副作用である。
4.× ミオクローヌスとは、一の筋または筋群に生じる電気ショック様の短時間の筋収縮である。筋肉や筋肉群に起こる素早い稲妻のような収縮を指す。

抗精神病薬の副作用

錐体外路症状、パーキンソン症状、ジストニア、アカシジア、自律神経症状、口渇、便秘、排尿困難、精神症状、過鎮静による傾眠、抑うつ状態、内分泌・代謝、糖尿病、高血糖、体重増加などがあげられる。

 

 

 

 

 

67 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に定められている隔離について正しいのはどれか。

1.隔離の理由は解除する時に患者に説明する。
2.開始した日時とその理由を診療録に記載する。
3.隔離室には同時に2人の患者まで入室可能である。
4.行動制限最小化委員会で開始の必要性を判断する。

解答2

解説

患者の隔離について

第三 患者の隔離について
一 基本的な考え方
①患者の隔離(以下「隔離」という)は、患者の症状からみて、本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合に、その危険を最小限に減らし、患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行われるものとする。
②隔離は、当該患者の症状からみて、その医療又は保護を図る上でやむを得ずなされるものであつて、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあつてはならないものとする。
③十二時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが、この場合にあつてもその要否の判断は医師によつて行われなければならないものとする。
④なお、本人の意思により閉鎖的環境の部屋に入室させることもあり得るが、この場合には隔離には当たらないものとする。この場合においては、本人の意思による入室である旨の書面を得なければならないものとする。

(※参考:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」厚生労働省HPより)。

1.× 隔離の理由は、「解除する時」ではなく、隔離を行う際に患者に説明する。
2.〇 正しい。開始した日時とその理由を診療録に記載する。解除されるときも同様に、解除した日時とその理由も記載することが望ましい。
3.× 隔離を行っている閉鎖的環境の部屋に2人以上患者を入室させてはいけない。なぜなら、隔離対象同士で刺激しあいエスカレートしかねないため。
4.× 開始の必要性を判断するのは、「行動制限最小化委員会」ではなく医師である。12時間を超える隔離については、精神保健指定医の判断が必要である。行動制限最小化委員会とは、隔離および身体拘束の必要性と妥当性について検討を行う病院内審査機関である。

精神保健指定医とは?

精神保健指定医とは、「精神保健福祉法」に基づいて、精神障害者の措置入院・医療保護入院・行動制限の要否判断などの職務を行う精神科医のことである。原則として、精神科病院では,常勤の指定医を置かなければならない。臨床経験・研修などの要件を満たす医師の申請に基づいて厚生労働大臣が指定する。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)とは?

①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

68 Aさん(82歳、女性)は、要支援2である。
 Aさんの屋内での転倒予防と自立の促進のため、自宅で介護する家族への指導で適切なのはどれか。

1.車椅子での移動とする。
2.移動時にスリッパを使用する。
3.手すりがない場所での歩行を避ける。
4.移動の前に立ちくらみの有無を確認する。

解答4

解説

高齢者の転倒の原因

内的要因:加齢変化、疾患・障害、使用中の薬物など。
外的要因:屋内外の生活環境、履き物、衣服など。

【高齢者の転倒による骨折】

①大腿骨近位部骨折
②脊椎圧迫骨折
③上腕骨近位部骨折
④橈骨遠位端骨折

1.× 車椅子での移動とするのは時期尚早である。なぜなら、車椅子の使用は自立促進を阻害することもあるため。本症例は、要支援2(基本的に独力で生活できるが、日常生活のごく一部に介護が必要な状態)であり、環境調整や補助具などを使用することでより安全に歩行が可能と考えられる。
2.× 移動時にスリッパを、「使用する」のではなく、控えるべきである。なぜなら、スリッパは、すり足歩行になりやすく、段差・障害物にも引っかかりやすくなるため。つまり、スリッパの使用は、転倒リスクを上げる
3.× 手すりがない場所での歩行を避ける必要はない。なぜなら、手すりのない場所でも、歩行補助具(歩行器、杖など)を使用することで、安全に歩行してもらい身体機能の改善・自立の促進につながるため。
4.〇 正しい。移動の前に立ちくらみの有無を確認する。なぜなら、加齢に伴い起立性低血圧立ちくらみが生じやすく、転倒に繋がりやすいため。

 

 

 

 

 

69 Aさん(68歳、男性)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のため在宅療養中で、気管切開下で人工呼吸器を使用し、要介護5の認定を受けている。
 Aさんに提供される訪問看護で適切なのはどれか。

1.医療保険から給付される。
2.特別訪問看護指示書を受けて実施される。
3.複数の訪問看護事業所の利用はできない。
4.理学療法士による訪問は給付が認められない。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(68歳、男性、要介護5
筋萎縮性側索硬化症のため在宅療養中。
・気管切開下で人工呼吸器を使用している。
→訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

訪問看護の指示書には、①訪問看護指示書、②特別訪問看護指示書、③精神科訪問看護指示書などがある。

②特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。

③精神科訪問看護指示書とは、精神疾患のある利用者とその家族を対象とし、地域や家庭で療養上の援助・指導が必要であると主治医が認める場合に交付される。有効期間は6か月以内で、介護保険対象者であっても医療保険によるサービス提供となる。

1.〇 正しい。医療保険から給付される。介護保険における要介護状態として認定された療養者であっても、筋萎縮性側索硬化症(ALS)であれば、「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当し、訪問看護は医療保険から給付される。
2.× 特別訪問看護指示書を受けて実施されるものではない。特別訪問看護指示書とは、主治医が診療により、利用者が急性増悪期終末期または退院直後で「週4日以上で頻回の訪問看護の必要がある」と認めた場合に交付できるものであり、疾患や症状の制限はない。本症例の場合、在宅療養中であるため該当しない。
3.× 複数の訪問看護事業所を利用できる。原則、医療保険の訪問看護の場合は、複数の訪問看護事業所の利用はできない。しかし、「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合は、複数の利用が可能である。介護保険の場合は、訪問看護事業所数の制限はない。
4.× 理学療法士による訪問も給付が認められる。なぜなら、介護保険制度での訪問看護は、「保健師・看護師または准看護師・理学療法士・作業療法士または言語聴覚士」が実施するため。医療保険制度での訪問看護は、介護保険制度の実施者に加えて、助産師も実施する。なお、精神科訪問看護の場合は、理学療法士・言語聴覚士・助産師による訪問は給付が認められない。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

厚生労働大臣が定める疾病等

末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)
多系統萎縮症・線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

類似問題です↓

【12問】訪問看護事業所についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

70 Aさん(85歳、女性)は、要支援1で介護予防通所リハビリテーションを月2回利用している。Aさんから「最近排便が3〜4日に1回しかなくて、お腹が張って困っている」と通所施設の看護師に相談があった。
 看護師が行うAさんへの便秘に対する助言で適切なのはどれか。

1.〇 正しい。毎日、朝食後に便座に座る。
2.× 就寝前に水を500mL飲む。
3.× 1日1万歩を目標に歩く。
4.× 蛋白質を多めに摂る。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(85歳、女性、要支援1)
・介護予防通所リハビリテーション:月2回利用
・Aさん「最近排便が3〜4日に1回しかなくて、お腹が張って困っている」と。
便秘に対する助言をする。主に便秘のケア・予防として、①排便の規則性(便意がなくても一定の時間にトイレへ行く)、②適度な運動、③食生活があげられる。

1.〇 正しい。毎日、朝食後に便座に座る習慣は、看護師が行うAさんへの便秘に対する助言で適切である。主に便秘のケア・予防として、①排便の規則性(便意がなくても一定の時間にトイレへ行く)、②適度な運動、③食生活があげられる。
2.× 就寝前に水は、「500mL」ではなくコップ一杯分(150ml)ほど飲む。就寝前の多すぎる飲水は、夜間頻尿につながる可能性がある。水分を十分に摂ることは推奨されているが、食事、食間の水分摂取のほか、起床時に冷たい牛乳や冷水をコップ1杯程度飲む程度である。これは水分補給と腸の刺激に有効である。
3.× あえて、「1日1万歩」を目標に歩く必要はない。ただ、散歩などの適度な運動は、腸の運動が活発となり便秘の改善につながる。毎日続けることが重要であるため、85歳の女性には1日「1万歩」ではなく、6000~8000歩ほどが推奨される。
4.× 多めに摂るのは、「蛋白質」ではなく食物繊維である。なぜなら、食物繊維が水分を吸着し、便量を多くし、柔らかくして、便を排泄しやすくするため。また、腸粘膜に刺激を与えて蠕動運動を高める

 

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