【3問】全身性エリテマトーデスについての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

MEMO

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108回 午後

44 経皮的腎生検を受ける患者への説明で適切なのはどれか。

1.検査中の体位は仰臥位とする。
2.穿刺時にくり返し深呼吸をする。
3.検査後はベッド上安静とする。
4.検査後2日間は禁食にする。

解答3

解説

腎生検とは?

腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で直接観察する検査である。患者は腹臥位になってもらい、背中からボールペンの芯程度の太さの針を腎臓に刺して組織を採取する。この操作は、超音波装置で針が腎臓に当っているかどうかを観察しながら行う。局所麻酔(あるいは全身麻酔)や鎮痛剤を用いることで痛みは十分に軽減される。目的として、①各種の腎炎やネフローゼ症候群の診断と原因、②原因不明の蛋白尿や腎機能低下または血尿、③全身性エリテマトーデス(SLE)などがあげられる。合併症として、出血(血腫、血尿)、感染、その他の臓器の損傷、腎臓の嚢胞などがあげられる。

1.× 検査中の体位は、「仰臥位」ではなく腹臥位とする。なぜなら、腎臓は前面よりも背面からのほうがアクセスしやすいため。背臥位(腹部)からのアクセスの場合、腸管ガスなどにより超音波で腎臓を確認しにくい。また、腸管などを損傷するおそれもある。
2.× 穿刺時に、「くり返し深呼吸」をするのではなく、呼吸を止めてもらう。なぜなら、腎臓の呼吸性移動を抑制するため。ただし、穿刺前は、腎臓の呼吸性移動を使い、医師の指示に従い呼吸を行ってもらい、腎臓を特定・確定させる。
3.〇 正しい。検査後は、ベッド上安静とする。なぜなら、穿刺による合併症として出血が多く、穿刺後の止血は必要不可欠であるため。生検後は、12~24時間程度ベッド上安静とする。他にも、合併症として、感染、その他の臓器の損傷、腎臓の嚢胞などがあげられる。
4.× 検査後2日間は、禁食にする必要はない。当日より飲食が可能である。ちなみに、検査前の飲水はできるが食事を行えない。なぜなら、検査中の緊張や、止血のため背中からの圧迫で,気分が悪くなり嘔吐することがあるため。(※参考:「腎生検ガイドブック2020」日本腎臓学会HPより)

 

 

 

 

109回 午後

86 全身性エリテマトーデス(SLE)で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.遺伝素因の関与が大きい。
2.発症には男性ホルモンが関与する。
3.中枢神経症状は生命予後に影響する。
4.Ⅰ型アレルギーによる免疫異常である。
5.適切に治療しても5年生存率は50%である。

解答1・3

解説

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

1.〇 正しい。遺伝素因の関与が大きい。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。
2.× 発症には、「男性ホルモン」ではなく女性ホルモンが関与する。なぜなら、10~30歳代の女性に好発するため。また、妊娠中に発症あるいは増悪することがある。一卵性双生児での全身性エリテマトーデスの一致率は25%程度であることから、何らかの遺伝的素因を背景として、感染、女性ホルモン、紫外線、薬物などの環境因子が加わって発症するものと推測されている。
3.〇 正しい。中枢神経症状(抑うつ、せん妄などの精神症状のほか、けいれん、脳血管障害など)は、生命予後に影響する。予後を左右する病態としては、ループス腎炎、中枢神経ループス(中枢神経症状)、抗リン脂質抗体症候群、間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症などが挙げられる。死因としては、従来は腎不全であったが、近年では日和見感染症による感染死が死因の第一位を占めている。
4.× 「Ⅰ型アレルギー」ではなく、Ⅲ型アレルギーによる免疫異常である。なぜなら、全身性エリテマトーデスの合併症であるループス腎炎において免疫複合体の関与が示唆されているため。Ⅲ型アレルギーとは、免疫複合体型やArthus型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するが、免疫複合体も関与するアレルギーである。免疫複合体が血管内皮などの組織に沈着すると補体を活性化し、結果として組織障害を生じる。血清病、全身性エリテマトーデスなどに関連する。遅発型で3~8時間で最大の紅斑と浮腫が生じる。ちなみに、Ⅰ型アレルギーとは、即時型、アナフィラキシー型ともいい、肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の放出によって起こる即時型アレルギーで、アレルゲンに接触した数分後に、皮膚・粘膜症状が出現する。まれにアナフィラキシーショックとなり重篤化(血圧低下、呼吸困難、意識障害を伴う)することがある。
5.× 適切に治療すれば5年生存率は、「50%」ではなく95%以上である。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

細胞性免疫とは?

アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

112回 午後

問題76 全身性エリテマトーデス〈SLE:systemic lupus erythematosus〉でプレドニゾロンを長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下しているのはどれか。

1.インスリン
2.甲状腺ホルモン
3.エストラジオール
4.副甲状腺ホルモン〈PTH〉
5.副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉

解答

解説

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

プレドニゾロンとは、ステロイド薬で、炎症・免疫系をおさえる作用がある。炎症性の病気、免疫系の病気、アレルギー性の病気などに広く使用されている。たとえば、膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、重い喘息、ひどいアレルギー症状、めまい、耳鳴り などに用いる。「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である。

1.× インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
2.× 甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。
3.× エストラジオールとは、エストロゲンの一種で、母体の肝臓と胎盤、胎児の副腎を経て生成されるため、その血中濃度は胎児の生命状態の指標として用いられる。エストロゲンの中で最も強い卵胞ホルモン作用を持つ物質で、女性の二次性徴に働き、卵巣機能調節、卵胞発育、子宮内膜増殖などの作用を示す。
4.× 副甲状腺ホルモンとは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。つまり、副甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。別名:パラトルモンである。
5.〇 正しい。副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉は、全身性エリテマトーデスでプレドニゾロン(ステロイド薬)を長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下している。なぜなら、プレドニゾロン(ステロイド薬)を長期間服用している場合、常にステロイドレベルが上昇している状態となる。したがって、ステロイドレベルを上げる必要がなくなり、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を相対的にさぼり始めることにつながる(ネガティブフィードバック)。ちなみに、副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※図・一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

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