第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後106~110】

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次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。骨盤位のために妊娠38週0日に予定帝王切開術で午前11時に男児を出産した。分娩時出血量は480mLであった。出生後、手術室で男児と面会をして「無事に生まれてきてくれてありがとう」と話した。帰室後、子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20gであった。後陣痛と創部痛があり夜間に鎮痛薬を使用した。

106 帝王切開術後1日、午前9時、子宮底は臍下1横指、硬度良好、バイタルサインは体温36.9℃、呼吸数18/分、脈拍72/分、整、血圧110/70mmHgであった。夜間に排ガスを認めた。Aさんは「痛み止めを使用した後は眠れましたが、また痛みが出てきました。こんな状態で動けるか心配です。この後の予定を知りたいです」と話した。
 このときのAさんへの説明で適切なのはどれか。

 1.「入院中は毎日、タオルで身体を拭きます」
 2.「膀胱に入れている管は明日抜きます」
 3.「今日から歩行を開始します」
 4.「食事は明日からです」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠38週0日午前11時:帝王切開術で男児出産(骨盤位)。
・分娩時出血量:480mL。
・帰室後:子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20g。
・後陣痛と創部痛があり、夜間に鎮痛薬を使用。
帝王切開術後1日午前9時:子宮底は臍下1横指、硬度良好。
・バイタルサイン:体温36.9℃、呼吸数18/分、脈拍72/分、整、血圧110/70mmHg。
・夜間に排ガスを認めた。
・Aさんは「痛み止めを使用した後は眠れましたが、また痛みが出てきました。こんな状態で動けるか心配です。この後の予定を知りたいです」と。
→本症例の状態から、異常な評価がみられるか判断できるようにしよう。また、帝王切開術後の一般的なスケジュールも覚えておこう。

(※図引用:「入院中のスケジュール(帝王切開)」NTT東日本関東病院様HPより)

 1.× 「入院中は毎日、タオルで身体を拭きます」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の現状の状態で、今後も異常がなければ、基本的に帝王切開術後2日目からシャワー浴が可能となるため。
 2.× 「膀胱に入れている管は明日抜きます」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の現状の状態で、今後も異常がなければ、基本的に帝王切開術後1日のお昼ごろに膀胱カテーテルを抜去するため。
 3.〇 正しい。「今日から歩行を開始します」と説明する。なぜなら、本症例の現状の状態で、今後も異常がなければ、基本的に帝王切開術後1日のお昼ごろに歩行が可能となるため。
 4.× 「食事は明日からです」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の現状の状態で、今後も異常がなければ、基本的に帝王切開術後1日の朝ご飯から可能となるため。流動食→五分粥→全粥→産褥食と2食ごとにかわっていくことが多い。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。骨盤位のために妊娠38週0日に予定帝王切開術で午前11時に男児を出産した。分娩時出血量は480mLであった。出生後、手術室で男児と面会をして「無事に生まれてきてくれてありがとう」と話した。帰室後、子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20gであった。後陣痛と創部痛があり夜間に鎮痛薬を使用した。

107 帝王切開術後3日、子宮底は臍下3横指、悪露は褐色であった。乳房に熱感があり、乳管は左右とも3本開通しており、移行乳の分泌を認める。看護師が訪室するとAさんは「まだ、お腹の創が痛くて、動くのはつらいです」と話す。慣れない手付きで児に授乳をしながら「上手にできなくてごめんね」と児の顔を見て語りかけている。Aさんと児の目と目が合う様子がみられる。
 アセスメントで適切なのはどれか。

 1.子宮復古が遅れている。
 2.乳汁分泌が遅れている。
 3.母子相互作用がみられる。
 4.マタニティブルーズである。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・2人暮らし:夫
・妊娠38週0日午前11時:帝王切開術で男児出産(骨盤位)。
帝王切開術後3日:子宮底は臍下3横指悪露は褐色であった。
・乳房に熱感があり、乳管は左右とも3本開通しており、移行乳の分泌を認める。
・Aさん「まだ、お腹の創が痛くて、動くのはつらいです」と。
・慣れない手付きで児に授乳をしながら「上手にできなくてごめんね」と児の顔を見て語りかけている。
・Aさんと児の目と目が合う様子がみられる。
→本症例の状態から、異常な評価がみられるか判断できるようにしよう。また、一般的なスケジュールも覚えておこう。

(※図引用:「入院中のスケジュール(帝王切開)」NTT東日本関東病院様HPより)

 1.× 子宮復古が遅れているとはいえない。なぜなら、帝王切開術後3日の本症例の子宮底は臍下3横指悪露は褐色であるため。一般的な子宮復古の状態の3日として、①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)である。
 2.× 乳汁分泌が遅れているとはいえない。なぜなら、本症例に移行乳の分泌を認めるため。ちなみに、移行乳とは、初乳と成乳の間に出る母乳で、産後5日目頃から2週間ほどの間に出る母乳である。通常、産後72時間以上経っても乳汁分泌が活性化しない場合、乳汁分泌遅延を疑う。
 3.〇 正しい。母子相互作用がみられる。なぜなら、本症例は、慣れない手付きで児に授乳をしながら「上手にできなくてごめんね」と児の顔を見て語りかけたり、Aさんと児の目と目が合う様子がみられるため。ちなみに、母子相互作用とは、赤ちゃんが生まれると、愛おしくなり、「我が子を守りたい」という気持ちが強く湧く。 このように、お母さんが自分の子どもに抱く気持ちのことを、お母さんから赤ちゃんへの「ボンディング」と呼ぶ。出生直後から始まる授乳や児の欲求に応じる母親や養育者のかかわりに対し、児が、微笑む・吸啜・泣く・声を出すなどの愛着行動を示すことで形成されていくものである。
 4.× マタニティブルーズであるとはいえない。マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦(約30%)が経験し、原因は産後のホルモンの変動である。症状は、涙もろさ抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状がみられる。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。骨盤位のために妊娠38週0日に予定帝王切開術で午前11時に男児を出産した。分娩時出血量は480mLであった。出生後、手術室で男児と面会をして「無事に生まれてきてくれてありがとう」と話した。帰室後、子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20gであった。後陣痛と創部痛があり夜間に鎮痛薬を使用した。

108 帝王切開術後5日、診察の結果、明日退院することになった。Aさんの乳房は緊満しており、乳管は左右とも5、6本開通している。母児同室を行い、児の哺乳の欲求に合わせて1日10回の授乳を行っている。「母乳で育てたいと思っています。でもおっぱいが張ってつらいです。この子も上手に吸ってくれません」と看護師に話した。
 このときの看護師の説明で適切なのはどれか。

 1.「授乳の回数を減らしましょう」
 2.「授乳前に乳輪を柔らかくしましょう」
 3.「授乳と授乳の間は乳房を温めましょう」
 4.「乳房の緊満が強くなるのはこれからです」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・2人暮らし:夫
・妊娠38週0日午前11時:帝王切開術で男児出産(骨盤位)。
・分娩時出血量:480mL。
帝王切開術後5日:明日退院。
・乳房は緊満、乳管は左右とも5、6本開通。
・母児同室:児の哺乳の欲求に合わせて1日10回の授乳。
・「母乳で育てたいと思っています。でもおっぱいが張ってつらいです。この子も上手に吸ってくれません」と。
→本症例は、①おっぱいが張ってつらいこと、②上手に授乳できないことを悩んでいる。これらを支援しよう。

 1.× 「授乳の回数を減らしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、授乳回数を減らすことは児の成長や体重にも影響をきたすため。一般的に生後1か月の授乳回数は8~9回が多く、10回以上だと頻回授乳といえる。ちなみに、授乳の回数を減らす(卒乳)は、1歳を目安に行うことが多い。
 2.〇 正しい。「授乳前に乳輪を柔らかくしましょう」と説明する。なぜなら、本症例の悩み(①おっぱいが張ってつらいこと、②上手に授乳できないこと)の改善につながるため。乳房マッサージ(乳房ケア)とは、乳房の手入れ(産後の授乳の準備)のことを指し、妊娠後期(37週)から始めることが多い。乳房ケアとは、赤ちゃんが飲みやすいおっぱいにするため、乳輪と乳頭の伸びが良く、やわらかいおっぱいを目指し、乳頭をやわらかくするような手入れを行うことである。【方 法】①乳輪を親指、人さし指、中指で押すようにつまむ。②3本指で痛くない程度の強さで圧迫する。角度を変えて何度か圧迫する。③痛くなければ3本指でつかんだまま少し前方に引き出し、3本の指のはらでもみほぐす。
 3.× 「授乳と授乳の間は乳房を温めましょう」と伝える必要はない。なぜなら、乳房の温罨法の目的は、乳房内の循環促進、射乳反射の促進であるため。血管の拡張により血液・リンパ液の循環を促進し、乳汁の産生・分泌、射乳反射を促す。本症例の場合、乳房の冷罨法が勧められる。乳房の冷罨法の目的は、乳房痛や熱感が強い場合に、解熱、疼痛緩和、乳汁産生抑制する。また、血管を収縮させることにより乳房内への血液の流入を低下させ、乳汁産生を抑制する。
 4.× 「乳房の緊満が強くなるのはこれからです」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は帝王切開術後5日で、一般的に乳房緊満が改善される次期であるため。乳房緊満とは、産褥1~5日目頃、生理的な乳房の腫脹と痛みを自覚することである。原因として、母乳分泌が多すぎることや、乳房のうっ血、浮腫などがあげられる。両側乳房が発赤、腫脹し、疼痛や軽度の発熱を伴うことがある。

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。

109 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

 1.「生きていれば良いことがありますよ」
 2.「薬を飲むと数日で効いて楽になります」
 3.「悲しいことが続くときは誰にでもあります」
 4.「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、男性、うつ病
・2人暮らし:妻と自営業を営む。
・2か月前:仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振。
1か月前:気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。
・Aさん:死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうと。
・受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始。
・Aさん「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と。
→本症例は、うつ病(急性期)である。うつ病への対応を覚えておこう。うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

 1.× 「生きていれば良いことがありますよ」と伝える必要はない。なぜなら、根拠のない励ましとなるため。また、良いことは人によって価値観が違うため、看護師の価値観を押し付けないようにしよう。心理的な負担となるため、激励はしないことが望ましい。
 2.× 「薬を飲むと数日で効いて楽になります」と伝える必要はない。なぜなら、虚偽となるため。抗うつ薬は、遅発性であり、効果が現れるまでに通常2~4週間程度かかる効果が早い場合は、2週間程度で効果を実感できる場合もあるが、確実な効果判定のためには6~8週間後に継続する必要がある。
 3.× 「悲しいことが続くときは誰にでもあります」と伝える必要はない。なぜなら、言われたほうは、理解されなかった否定された態度として感じられるため。
 4.〇 正しい。「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」と対応する。なぜなら、気持ちを受け入れ、共感的な態度を示すことができているため。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。

110 Aさんはその後しばらく会話をしたり、食事も少し食べられたりしていたが、入院3日から、臥床したままで1日中全く動かず、昏迷状態になった。検査の結果、軽度の脱水以外の異常はなかった。治療として修正型電気けいれん療法が開始されることになり、実施後20分でAさんは覚醒し、その後の観察中にけいれん発作は認めなかった。実施後30分、Aさんは突然起き上がり興奮し、大きな声で「仕事に行く」と言って病室から出ていこうとした。看護師が制止し、一緒に座って話を聞いたところ、見当識障害、記憶障害、注意障害が認められた。
 Aさんの状態で正しいのはどれか。

 1.せん妄
 2.躁状態
 3.不安発作
 4.前向性健忘

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、男性、うつ病
・受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始。
・検査の結果:軽度の脱水以外の異常はなし。
・治療:修正型電気けいれん療法が開始。
・実施後20分:覚醒、その後の観察中にけいれん発作は認めなかった。
・実施後30分:突然起き上がり興奮し、大きな声で「仕事に行く」と言って病室から出ていこうとした。
・看護師が制止し、一緒に座って話を聞いたところ、見当識障害記憶障害注意障害が認められた。

→本症例は、修正型電気けいれん療法が開始している。適応や副作用に関して覚えておこう。修正型電気けいれん療法(mECT)とは、頭部に通電することで難治性の精神疾患の症状軽減を目指すものである。特に①不安・焦燥が大きい場合や②自殺企図の危険性の高い場合、③強い抑止を伴う場合などは、急速な症状の改善を期待して行われることが多い。麻酔薬と筋弛緩薬を用いたうえで脳に通電する。脳波上には発作波が記録されるが、筋弛緩薬を用いるので全身けいれんは起こらない。

【副作用】
・通電直後にあらわれるもの
①血圧上昇・頻脈、②不整脈

・麻酔から覚めた後にあらわれるもの
①健忘、②記銘力障害、③頭痛、④もうろう状態、⑤嘔気

 1.〇 正しい。せん妄がAさんの状態である。なぜなら、本症例は、興奮状態で、見当識障害記憶障害注意障害が認められているため。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。【症状】①意識がぼんやりする、②その場にそぐわない行動をする、③夜間に起こることが多い(夜間せん妄)、④通常は数日から1週間でよくなる。
 2.× 躁状態とは、他患者への話しかけが増え、逸脱行為、食欲増進、大声でしゃべるなど物事をやりたくて仕方ない、注意の転導、過干渉などが特徴である。
 3.× 不安発作とは、急激に訪れる不安、動悸、冷や汗などの症状である。パニック障害でみられる。
 4.× 前向性健忘とは、脳損傷後の出来事が思い出せない状態になることである。一方、逆向性健忘とは、損傷する以前の記憶が抜け落ちた状態になることである。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

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