第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後76~80】

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76 直腸の構造で正しいのはどれか。

 1.陰窩には杯細胞が存在する。
 2.粘膜の表面には絨毛がある。
 3.縦走筋は結腸ヒモを作る。
 4.肛門管は血管が少ない。
 5.肛門管は内腔が広い。

解答

解説

MEMO

大腸は、①結腸と②直腸に分かれる。
①結腸とは、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に区別される。
②直腸とは、大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔である。

 1.〇 正しい。陰窩には杯細胞が存在する。陰窩(※読み:いんか)とは、上皮にある腺で、リーベルキューン腺小窩、腸腺とも呼ぶ。大腸には絨毛がないため、表面からのくぼみ全体を指す。大腸の陰窩では、粘液を分泌する杯細胞が生まれ、他の細胞とともに押し出されるようにして大腸内腔表面へと移動する。ちなみに、杯細胞(※読み:さかずきさいぼう)は、杯状細胞(※読み:はいじょうさいぼう)ともいう。粘液を分泌する上皮細胞のなかに混じって単独に存在する細胞である。つまり、粘液分泌性の単細胞腺である。小腸・大腸とみられる。
 2.× 粘膜の表面には絨毛が「ない」。直腸ではなく小腸にみられる。ちなみに、絨毛とは、器官の内面または外面をおおう膜から突出した微細な突起のことである。腸の粘膜や胎盤などに存在し、これによって表面積が著しく増大し、吸収などが有効に行われるようになる。
 3.× 縦走筋は結腸ヒモを作るのは、直腸ではなく結腸まで(盲腸を含めS状結腸まで)である。結腸ひもとは、結腸のまわりを縦(長軸方向)に走る3本のひも状の盛り上がりである。筋肉(外縦走筋の肥厚)でできていて、大腸の盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸にある。結腸紐は、幅約8mmで、①大網紐、②結腸間膜紐(間膜紐)、③自由紐に分類される。
 4.× 肛門管は血管が「少ない」とは言い切れない。どの部位と比較して少ない・多いと判断してよいか不明であるが、肛門管には、血管が網の目のように張り巡らされた静脈叢(直腸静脈叢)が存在している。ちなみに、肛門管とは、肛門から直腸までの間である。
 5.× 肛門管は内腔が「広い」とは言い切れない。どの部位と比較して広い・狭いと判断してよいか不明であるが、肛門管には内・外肛門括約筋が走行している。したがって、直腸部の中では、肛門管の内腔は狭いといえる。

 

 

 

 

 

77 外傷や風邪で発熱し、解熱するまでの体温のセットポイントと実際の体温(核心温度)の変化の例を図に示す。
 全身のふるえが起こるのはどれか。

 1.①
 2.②
 3.③
 4.④
 5.⑤

解答

解説

セットポイントとは?

 セットポイントとは、設定値と直訳でき、体温調節中枢には、体温を一定に保つ働きがあり、こうして設定された体温のことを指す。体温のセットポイント(設定値)が突然高く設定された場合(つまり、通常の体温が低く寒い)と認識するため、寒冷にさらされた場合と同様に体温を上昇させる反応が起こる。

 1.3.4.× ①/③/④は、実際の体温とセットポイントの設定値がほぼ一致している。したがって、体温調節中枢は、体温を一定に保てていると判断し、熱産生は起こらない。
 2.〇 正しい。が、全身のふるえが起こる。なぜなら、セットポイントの設定値が上昇しているため。したがって、体温調節中枢は、体温が低いと判断し、筋肉を収縮させて熱を発生させる。この現象をふるえ熱産生という。小刻みな収縮:シバリングによって生体内で熱が産生される現象である。寒さによる「ふるえ」は骨格筋の不随意運動による筋収縮で発生するエネルギーが熱となるため、熱産生が増加する。
 5.× ⑤は、セットポイントの設定値が下降している。したがって、体温調節中枢は、体温が高いと判断し、解熱する反応(発汗や皮膚血管の拡張など)を起こす。例えば、皮膚血管が拡張すると、体表面に近い血流量が増え、放熱が促進される。

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【8問】体温の基本についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

78 胃癌の胃切除術後5年ほどで欠乏し貧血を起こさせるのはどれか。

 1.ビタミンA
 2.ビタミンB1
 3.ビタミンB12
 4.ビタミンC
 5.ビタミンK

解答

解説
 1.× ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがある。ビタミンA欠乏は、眼球乾燥症・夜盲症を生じる。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。
 2.× ビタミンB1とは、チアミンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、解糖系やクエン酸回路のエネルギー代謝の一部で補酵素として関わる。ビタミンB1(チアミン)欠乏症では、①末梢神経の症状として脚気、②中枢神経の症状としてKorsakoff症候群(コルサコフ症候群)が生じる。Korsakoff症候群(コルサコフ症候群)の特徴的な症状は、①健忘、②記銘力低下、③見当識障害、④作話である。ビタミンB1の欠乏による脳障害が原因であり、治療はビタミンB1の投与である。完治しにくく後遺症を残す可能性が高い。
 3.〇 正しい。ビタミンB12は、胃癌の胃切除術後5年ほどで欠乏し貧血を起こさせる。この貧血を巨赤芽球性貧血という。巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。
 4.× ビタミンCとは、抗酸化作用をもち、多くのホルモン合成や薬物代謝に関わる。ビタミンC欠乏は、壊血病を生じる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。
 5.× ビタミンKとは、血液凝固のほかに骨形成(骨をつくる骨芽細胞の働き)を促進する作用と骨吸収(骨を壊す破骨細胞の働き)を抑制する作用がある。骨粗鬆症における骨量(骨の材料であるカルシウムとリンの量)の減少を抑えたり痛みを和らげる効果がある。

 

 

 

 

 

79 もやもや病について正しいのはどれか。

 1.脳動静脈の奇形である。
 2.浅側頭動脈の狭窄が原因である。
 3.代償性の側副血行路が形成される。
 4.ポリオウイルスの感染が関与する。
 5.Willis〈ウィリス〉動脈輪への血栓閉塞で生じる。

解答

解説

もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)とは?

もやもや病とは、日本人に多発する原因不明の進行性脳血管閉塞症であり、脳血管撮影検査で両側の内頚動脈終末部に狭窄ないしは閉塞とその周囲に異常血管網を認めるものをいう。発症には遺伝的要因が関与する。家庭内発症を10~20%に認め、男女比は1:2.5とされる。好発年齢は、二峰性分布を示し5~10歳を中心とする高い山と、30~40歳を中心とする低い山を認める。機序としては徐々に内頚動脈終末部が狭窄・閉塞し、それに伴い非常に細い血管径の異常血管網、いわゆるもやもや血管が増生する。
(※参考:「もやもや病(指定難病22)」難病情報センター様HPより)

 1.× 脳動静脈の奇形「ではない」である。もやもや病は、原因不明の進行性脳血管閉塞症で、脳動静脈の奇形とは全くの別である。ちなみに、脳動静脈奇形とは、脳内で動脈と静脈が直接つながり、異常な血管の塊(ナイダス)が形成される先天性疾患である。胎児期から小児期にかけて発生することがほとんどである。
 2.× 「浅側頭動脈」ではなく内頚動脈終末部の狭窄が原因である。原因不明である。
 3.〇 正しい。代償性の側副血行路が形成される。なぜなら、もやもや病は、脳血管閉塞が起こっており、脳血流を維持しようとするため。動脈輪近傍の本来は細いはずの毛細血管が多数拡張して側副血行路を形成する。異常な側副血行路は多くの場合、脳の深部に栄養を送る細い「穿通枝」とよばれる血管が拡張したものである。
 4.× ポリオウイルスの感染が関与するのは、「ポリオ〈急性灰白髄炎〉」である。もやもや病とは全くの別である。ちなみに、ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。
 5.× Willis〈ウィリス〉動脈輪への「血栓閉塞」ではなく狭窄・閉塞で生じる。なぜなら、もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)は、原因不明の進行性脳血管閉塞症であるため。血栓閉塞とは、血液中に形成された血栓が血管を閉塞し、末梢の循環不全による臓器障害を引き起こす疾患である。つまり、原因がわかっている。

(※図引用:慶應義塾大学医学部 解剖学教室)

 

 

 

 

 

80 感染症と代表的な原因ウイルスの組合せで正しいのはどれか。

 1.手足口病:アデノウイルス
 2.咽頭結膜熱:ヒトパピローマウイルス〈HPV〉
 3.突発性発疹症:コクサッキーウイルス
 4.伝染性単核球症:Epstein-Barr〈EB〉ウイルス
 5.ヘルパンギーナ:単純ヘルペスウイルス

解答

解説

子宮頸癌とは

子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。

 1.× アデノウイルスは、「手足口病」ではなく咽頭結膜熱流行性角結膜炎(はやり目)である。流行性角結膜炎とは、はやり目ともいい、アデノウイルスというウイルスの感染が原因となる病気である。まぶたは腫れ、結膜はむくみ、充血がみられる。
 2.× ヒトパピローマウイルス〈HPV〉は、「咽頭結膜熱」ではなく子宮頸癌である。咽頭結膜熱とは、プール熱ともいい、アデノウイルスが原因である。アデノウイルスは非常に感染力が強く、咳やくしゃみなどの飛沫や目やになどが感染源となる。
 3.× コクサッキーウイルスは、「突発性発疹症」ではなく手足口病ヘルパンギーナである。手足口病とは、手のひらや足の裏、口の中などに小さな水ぶくれのような発疹ができるウイルス感染症である。原因はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスといったウイルスへの感染である。5歳までの子どもがかかることが多く、夏に流行のピークを迎える。ちなみに、突発性発疹とは、乳児期に罹患することが多く、突然の高熱と解熱前後の発疹を特徴とするウイルス感染症である。原因ウイルスは、ヒトヘルペスウイルスである。予後は一般に良好である。
 4.〇 正しい。伝染性単核球症は、Epstein-Barr〈EB〉ウイルスである。伝染性単核球症とは、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)などに初感染することが原因で起こる、発熱やリンパ節の腫れなどの症状を起こす急性感染症である。ウイルス感染してから4週間以上の潜伏期間を経てから症状が現れる。1~2歳の乳幼児が発症しても微熱や扁桃腺の腫れなど症状は軽いが、学童期以降に発症すると重症化しやすい。主な症状は高熱や全身の倦怠感・疲労感、喉の腫れ・痛み、全身のリンパ節の腫れと肥大、発疹などである。
 5.× 単純ヘルペスウイルスは、「ヘルパンギーナ」ではなく皮膚、口、唇(口唇ヘルペス)ヘルペス脳炎である。ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスの感染や、免疫力低下による再活性化によって引き起こされる急性脳炎である。重症化することが多く、発症すると死亡することもある。アシクロビルの作用は、ウイルス増殖を抑制することにある。

癌の発生病理と関係のある感染症

①肝細胞癌:B型、C型肝炎ウイルス
②子宮頸癌:ヒトパピローマウイルス(16,18型)
③上咽頭癌:Burkittリンパ腫、NK細胞リンパ腫:Epstein barrウイルス
④胃癌:ヘリコバクター・ピロリ菌
⑤胆管癌:肝吸虫

 

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