第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

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次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折と診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。

91 Aさんの術後に最も注意すべき所見はどれか。

 1.Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候
 2.Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候
 3.Homans〈ホーマンズ〉徴候
 4.Romberg〈ロンベルグ〉徴候

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(49歳、女性、BMI33右大腿骨頸部骨折
・これまで在宅勤務でほとんど外出しない
・久しぶりの出勤の際に転倒
右人工股関節置換術を受ける。
→本症例は、①BMI33、②ほとんど動かない、③手術を受けることから、術後に最も注意すべきことが絞れる。

 1.× Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候とは、総胆管癌、乳頭部癌、膵頭部癌にみられる徴候のことで、総胆管が、圧迫によって閉鎖し、胆囊内に胆汁が蓄積することで無痛性の胆囊腫大が起こることをいう。 
 2.× Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候とは、圧痛のある部位をできるだけ深く圧迫し、急に手を離すと鋭い痛みを感じる反跳痛のことである。炎症が波及した腹膜が急速に元の場所へ戻ると痛覚がより刺激されるために生じるもので、炎症が虫垂壁を超えて壁側腹膜に及んでいるサインである。腹膜に炎症があることを示し、腹膜炎を呈する疾患(消化管穿孔・急性虫垂炎など)で出現する。
 3.〇 正しい。Homans〈ホーマンズ〉徴候は、Aさんの術後に最も注意すべき所見である。Homans徴候(ホーマンズ徴候)とは、深部静脈血栓症でみられる所見である。 膝関節伸展位で足関節の背屈を他動的に強制する。腓腹部に疼痛を訴える場合(Homans徴候陽性)には下腿の深部静脈血栓症の可能性を示唆する。ちなみに、深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。
 4.× Romberg〈ロンベルグ〉徴候は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

 

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折と診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。

92 術後1日、Aさんは39.1℃の発熱がみられた。
バイタルサイン:呼吸数18/分、脈拍117/分、整、血圧132/82mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)。
身体所見:呼吸音は異常なし、腰背部痛なし、術創部の腫脹、発赤、熱感はない。左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤、熱感がある。
血液検査所見:赤血球344万/μL、Hb12.1g/dL、白血球11,900/μL、血小板18万/μL。
血液生化学所見:尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP11.4mg/dL。
尿所見:沈査に白血球を認めない。
胸部エックス線写真:異常所見なし。
 Aさんの発熱の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。

 1.肺炎
 2.腎孟腎炎
 3.術創部感染
 4.術後の吸収熱
 5.カテーテル関連血流感染症

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(49歳、女性、BMI33右大腿骨頸部骨折
右人工股関節置換術後1日:39.1℃の発熱。
・呼吸数18/分、脈拍117/分、整、血圧132/82mmHg、SpO297%
呼吸音は異常なし腰背部痛なし術創部の腫脹、発赤、熱感はない
左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤、熱感がある
・赤血球344万/μL、Hb12.1g/dL、白血球11,900/μL、血小板18万/μL。
・尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP11.4mg/dL
・尿所見:沈査に白血球を認めない
・胸部エックス線写真:異常所見なし
→各検査を正確に読み取り、各選択肢の否定ができるようになろう。

 1.× 肺炎より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の①呼吸音は異常がなく、②SpO297%、③胸部エックス線写真においても異常所見がみられないため。肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原体に感染することで、肺に炎症が起こっている状態である。早期離床や早期の積極的リハビリテーションを行うと、呼吸・嚥下・消化・排泄・免疫・認知の維持・回復が促進できる。
 2.× 腎孟腎炎より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は①腰背部痛はみられず、②尿所見においても沈査に白血球を認めないため。ちなみに、(急性)腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。
 3.× 術創部感染より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の術創部に腫脹、発赤、熱感はないため。
 4.〇 正しい。術後の吸収熱は、Aさんの発熱の原因で考えられる。吸収熱とは、手術などによって組織が破壊され血液や浸出液が生じ、体はそれらを吸収しようとする際に生じる熱のことである。非感染性の発熱であるため、様子観察することが多い。吸収熱は術後48時間以内にピークをむかえ、その後解熱していく場合が多い。
 5.〇 正しい。カテーテル関連血流感染症は、Aさんの発熱の原因で考えられる。なぜなら、本症例の左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤、熱感があるため。ちなみに、カテーテル関連血流感染症とは、中心静脈や末梢静脈につながる血管カテーテルを介して全身に感染する病気である。細菌に汚染されたカテーテルが体内に存在すると、血液中で細菌が増殖し、発熱や体のさまざまな場所に重篤な影響が出る可能性がある。

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折と診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。

93 術後3日、Aさんの全身状態は改善し、読書をして過ごしている。
 Aさんの術後の合併症を予防する適切な肢位はどれか。

 1.外旋
 2.外転
 3.内旋
 4.内転

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(49歳、女性、BMI33、右大腿骨頸部骨折
右人工股関節置換術実施。
→本症例は、前方アプローチか後方アプローチか不明であるが、右人工骨頭置換術をしているため、脱臼肢位を防ぐ生活指導が必要となる。

【人工骨頭置換術の患側脱臼肢位】
①後方アプローチ:股関節内転・内旋・過屈曲
②前方アプローチ:股関節内転・外旋・伸展
※人工骨頭置換術の脱臼発生率は、2~7%と報告されており、前方アプローチと後方アプローチと比較して、後方アプローチで発生しやすい。

 1.× 外旋は、前方アプローチの場合、脱臼肢位のため控える必要がある。
 2.〇 正しい。外転は、Aさんの術後の合併症を予防する適切な肢位である。なぜなら、前方と後方アプローチどちらでも構わずに、脱臼肢位を防ぐことができる安全な肢位であるため。
 3.× 内旋は、後方アプローチの場合、脱臼肢位のため控える必要がある。
 4.× 内転は、前方・後方アプローチどちらでも脱臼肢位のため控える必要がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。

94 Aさんの呼吸機能に関する数値で増加を示すのはどれか。

 1.1秒率
 2.残気量
 3.1回換気量
 4.動脈血酸素分圧〈PaO2〉(room air)

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(57歳、男性、肺気腫
・2人で暮らし:妻(50歳)
・21歳から喫煙習慣(5年前に風邪で受診)
・最近:坂道や階段を昇ると息切れを自覚。
→肺気腫とは、終末細気管支より末梢の気腔が、肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大し、明らかな線維化は認められない病変を指す。主な原因は喫煙である。慢性閉塞性換気障害を呈する。ちなみに、閉塞性換気障害では何らかの原因により気道が閉塞して気流が制限され、呼気が障害される。

 1.× 1秒率は低下を示す。なぜなら、呼気の排出が障害されるため。ちなみに、1秒率とは、息を努力して吐き出したときに呼出される空気量のうち最初の一秒間に吐き出された量の割合である。
 2.〇 正しい。残気量増加を示す。なぜなら、肺胞壁の破壊が起こるため。呼気の排出が障害され機能的残気量は上昇し、肺は過膨張する。ちなみに、残気量とは、最大に呼出させた後、なおも肺内に残っている空気量のことをいう。
 3.× 1回換気量は低下を示す。なぜなら、呼気の排出が障害されるため。ちなみに、一回換気量とは、一回の呼吸運動(呼気と吸気)で気道・肺に出入りするガスの量のことを指す。単位はmL。
 4.× 動脈血酸素分圧〈PaO2〉は低下を示す。なぜなら、肺気腫は肺胞壁の破壊を伴い、呼吸の効率が低下するため。

主な疾患

混合性換気障害:肺気腫など
拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。

95 Aさんは発熱、咳嗽、粘稠痰、呼吸困難を認めたため受診し、肺炎を伴う慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の急性増悪と診断されて入院した。入院後、薬物療法によって病状は改善し退院が決定した。看護師がAさんに退院後の生活について尋ねると、今回の入院をきっかけにAさんは退職し、家事に専念すると答えた。
 Aさんの呼吸機能に対する負荷が最も小さい動作はどれか。

 1.食べる直前に調理する。
 2.部屋全体に掃除機をかける。
 3.頭より高い位置に洗濯物を干す。
 4.買い物した荷物をカートで運ぶ。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(57歳、男性、肺気腫
・発熱、咳嗽、粘稠痰、呼吸困難を認めた。
・肺炎を伴う慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の急性増悪。
・入院後:薬物療法によって病状は改善。
・今回の入院をきっかけにAさんは退職し、家事に専念する。
→慢性閉塞性肺疾患の日常生活指導を覚えておこう。
【血中酸素飽和度が低下しやすい日常生活動作】
①排便(息を止めるため、呼吸のコントロールを行う)
②肩まで湯船につかる(胸部が圧迫されるため、動作環境や方法を工夫する)
③洗髪、上衣更衣、洗体など(上肢を使うため、上肢挙上は片腕のみで、呼吸のコントロールを行う。)
④ズボンや靴下を履く(体を前屈して行うため、動作のスピードや方法を調整する。)
※入浴の生活指導:息切れがある場合は全身入浴を控え、半身浴やシャンプーハットを使用したシャワーなどで対応する。入浴中は酸素吸入を行わない場合が多いため、入浴時間は短めにする。

 1.× 食べる直前に調理することの優先度は低い。なぜなら、食事(特に嚥下)の際は、呼吸が止まり疲労がたまりやすいため。調理後すぐに食事は負担が強いと考えられる。
 2.× 部屋全体に掃除機をかけることの優先度は低い。なぜなら、掃除機をかける(反復動作)は、疲労がたまりやすいため。部屋の大きさにもよるが、掃除機をかけたい場合は部屋を細分化して掃除機をかける。
 3.× 頭より「高い」ではなく低い位置に洗濯物を干す。なぜなら、上肢挙上動作は、胸郭の動きを制限し負担が大きいため。
 4.〇 正しい。買い物した荷物をカートで運ぶ。カートで運ぶことにより、腕の力も入りにくく呼吸の妨げになりにくい。

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集)

 

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