第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後76~80】

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76 感染症と保健所への届出期間の組合せで正しいのはどれか。

1.結核:診断7後日以内
2.梅毒:診断後直ちに
3.E型肝炎:診断後直ちに
4.腸管出血性大腸菌感染症:診断後7日以内
5.後天性免疫不全症候群(AIDS):診断後直ちに

解答3

解説

保健所への届出期間

1~3類感染症:診断後ただちに届け出を行う。
4類感染症:原則、診断後7日以内に届け出を行う。
5類感染症(全数把握):原則、診断後7日以内に届け出を行う。
5類感染症(定点把握):次の月曜日まで、または翌月初日まで。

1.× 結核(2類感染症)は、「診断7後日以内」ではなく、診断後ただちに届け出を行う
2.5.× 梅毒/後天性免疫不全症候群(5類感染症)は、「診断後直ち」ではなく、全数把握で7日以内に届け出を行う。
3.〇 正しい。E型肝炎(4類感染症)は、診断後直ちに届け出を行う。
4.× 腸管出血性大腸菌感染症(3類感染症)は、「診断後7日以内」ではなく、診断後ただちに届け出を行う

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

 

 

 

 

 

77 平成24年(2012年)の医療法の改正によって、医療計画には①疾病・②事業及び在宅医療の医療体制に関する事項を定めることとされている。
 ①と②に入る数字の組合せで正しいのはどれか。

1.①4:②4
2.①4:②5
3.①5:②4
4.①5:②5
5.①6:②6

解答4

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。定めるべき内容として、5疾病5事業と在宅医療の医療体制がある。よって、選択肢4.①5(疾病):②5(事業と在宅医療)が正しい。

医療計画で定める5疾病5事業

【5疾病】
①がん、②脳卒中、③急性心筋梗塞、④糖尿病、⑤精神疾患

【5事業】
①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤小児医療(小児救急を含む)

記載事項
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要な事業。
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・業務連携の確保)、情報提供の推進。
③居宅等における医療の確保。
④ 地域医療構想に関する事項。
⑤ 地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥ 病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩ 医療の安全の確保
⑪ 医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬ 基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)
⑭ 地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。

 

 

 

 

78 筋骨格系の加齢に伴う変化が発症の一因となるのはどれか。

1.肺結核
2.骨盤臓器脱
3.前立腺肥大症
4.加齢黄斑変性
5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)

解答2

解説

1.× 肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。
2.〇 正しい。骨盤臓器脱は、筋骨格系の加齢に伴う変化が発症の一因となる。女性の場合に子宮や膀胱、直腸が骨盤底部の筋肉や靭帯の衰えにより骨盤内から脱出してしまう症状であり、加齢に伴って筋肉や靭帯の弾力性が低下することが一因となって発症する。骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。子宮脱では、排尿障害・下垂感・腰痛・失禁などの症状を呈する。
3.× 前立腺肥大症とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。
4.× 加齢黄斑変性とは、老化に伴い、眼の中の網膜の中心に出血やむくみ(黄斑部の変性疾患)をきたし、視力が低下する病気である。原因として、紫外線による暴露や、喫煙、遺伝、さらに生活習慣も変性への移行を促進していると考えられている。症状は、①ものが歪んで見える(変視症、歪視)、②視力低下、③中心暗点などがある。治療は、早期発見が重要で、血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体内注射が行われる。
5.× 慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえる。特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

 

(図引用:「加齢による身体機能の変化」著:瀬尾 芳輝)

 

 

 

 

 

79 平成25年度(2013年度)の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」における養介護施設従事者等による虐待で最も多いのはどれか。

1.性的虐待
2.介護等放棄
3.身体的虐待
4.心理的虐待
5.経済的虐待

解答3

解説

(※図引用:「平成25年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」厚生労働省HPより)

1.× 性的虐待は、3.5%である。
2.× 介護等放棄は、16.7%である。
3.〇 正しい。身体的虐待は、64.2%で養介護施設従事者等による虐待で最も多い。
4.× 心理的虐待は、32.8%である。
5.× 経済的虐待は、7.7%である。

 

 

 

 

80 Aさん(66歳、女性)は、4年前に前頭側頭型認知症と診断され、介護老人福祉施設に入所している。時々、隣の席の人のおやつを食べるため、トラブルになることがある。
 この状況で考えられるAさんの症状はどれか。

1.脱抑制
2.記憶障害
3.常同行動
4.自発性の低下
5.物盗られ妄想

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(66歳、女性)
・4年前:前頭側頭型認知症
・介護老人福祉施設に入所中。
・時々:隣の席の人のおやつを食べるためトラブルになる。
→頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。

1.〇 正しい。脱抑制がAさんの症状である。脱抑制とは、状況に対する反応としての衝動や感情を抑えることが不能になった状態のことである。本症例では「隣の人のおやつを食べていること」が脱抑制に該当する。
2.× 記憶障害は観察されない。前頭側頭型認知症は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。記憶は比較的保たれることが多い。一方、記憶障害が特徴(初期から発症)するのは、アルツハイマー型認知症である。
3.× 常同行動は観察されない。常同行動とは、毎日決まったコースを散歩する常同的周遊(周個)や、同じ時間に同じ行動を毎日行う時刻表的生活などの症状のことである。
4.× 自発性の低下は観察されない。自発性が低下とは、自己や周囲に対して無関心である様子である。
5.× 物盗られ妄想は観察されない。物盗られ妄想は、記銘力障害による置き忘れしまい忘れが多くなり、①身近な親しい人に盗られたと即断してしまう、②興奮したり騒いだりして、警察に連絡する場合も多い。盗まれるものは、お金・財布・通帳などの財産に関係するものが多い。アルツハイマー型認知症で認められる。言葉での説得は難しいため、一緒に探したり、自分で納得するように仕向けたりする方がよい。

アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。

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