第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後71~75】

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71 無対の静脈はどれか。

1.鎖骨下静脈
2.総腸骨静脈
3.内頸静脈
4.腕頭静脈
5.門脈

解答5

解説

(※図引用:「看護師イラスト集」看護roo!)

1~4.× 鎖骨下静脈/総腸骨静脈/内頸静脈/腕頭脈は、左右でをなす。ちなみに、腕頭脈は、右だけの無対動脈である。
5.〇 正しい。門脈は、無対である。門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。

 

 

 

 

 

72 血液中の濃度の変化が膠質浸透圧に影響を与えるのはどれか。

1.血小板
2.赤血球
3.アルブミン
4.グルコース
5.ナトリウムイオン

解答3

解説

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

1.× 血小板とは、出血の際の一次止血や血液凝固機能に関与する。血液中の細胞成分である。
2.× 赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。
3.〇 正しい。アルブミンが、血液中の濃度の変化が膠質浸透圧に影響を与える。アルブミンは血漿タンパクの約60%を占め、血漿中と組織間液中に存在し、お互いを交換しながら血漿膠質浸透圧の維持に関与しており、浸透圧によって血管内に水を引き込む。ちなみに、アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。
4.× グルコースとは、血液中の主要な糖分であり、脳のエネルギー源として関与する。
5.× ナトリウムイオンとは、電解質の一つである。 ナトリウムは、細胞外液中の陽イオンの90%を占め、血漿浸透圧や酸塩基平衡、細胞外液量の調整に重要である。 成人の人体の約60%はナトリウムなどの電解質を含む水分で構成されている。血漿浸透圧と膠質浸透圧の違いを理解し、血漿浸透圧は電解質、膠質浸透圧はアルブミンによって維持されていることを抑えておく。血液中の浸透圧は、イオンなどの低分子による血漿浸透圧と、血漿タンパク質による膠質浸透圧で決まる。膠質浸透圧が低下すると、毛細血管から組織液(間質)へ水が移動し浮腫が起こる。

 

 

 

 

73 院内感染の観点から、多剤耐性に注意すべきなのはどれか。

1.ジフテリア菌
2.破傷風菌
3.百日咳菌
4.コレラ菌
5.緑膿菌

解答5

解説

MEMO

院内感染とは、病院において様々な疾患を持った患者さんが、検査や治療・ケアを受ける状況下で、もとの疾患とは別にかかった感染症である。感染症は、人の身体に常在する微生物や外から入ってきた微生物によって起こる。

多剤耐性菌とは、多くの抗菌薬(抗生物質)に耐性を獲得した菌のことをいう。代表的なものとして、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性結核菌、緑膿菌などがある。

1.× ジフテリア菌は、多剤耐性はない。なぜなら、ワクチンにより予防できるため。ちなみに、ジフテリアとは、ジフテリア菌により発生する疾病で、主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出する。最後に報告されたのが1999年であるが、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた。通常の治療法である抗生物質に対しては耐性を持つことはほとんどない。また、百日せきワクチンを含むDPT三種混合ワクチン(ジフテリア百日咳破傷風)あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)接種はわが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減している。
2.× 破傷風菌は、多剤耐性はない。なぜなら、ワクチンにより予防できるため。ちなみに、破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。通常の治療法である抗生物質に対しては耐性を持つことはほとんどない。
3.× 百日咳菌は、多剤耐性はない。なぜなら、ワクチンにより予防できるため。百日咳菌とは、百日咳の原因菌である。百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険性も高い。症状として①カタル期(1~2週間)、 ②痙咳期(4~6週間)、 ③回復期(2~3週間)に分類され、痙咳期には、新生児・乳幼児期では無呼吸発作を伴う。通常の治療法である抗生物質に対しては耐性を持つことはほとんどない。
4.× コレラ菌は、院内感染するものではない。なぜなら、コレラ菌は、コレラを引き起こす代表的な経口感染症の一つで、汚染された水や食物を摂取することによって感染するため。病原性も弱く、死亡率も2%程度と言われている。ちなみに、コレラとは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することにより感染する疾患である。潜伏期間は、12時間〜5日で、小腸で増殖し、腸毒素(コレラ毒素)を放出する。症状は、下痢・嘔吐、それらに伴う脱水症状を生じる。
5.〇 正しい。緑膿菌は、院内感染の観点から、多剤耐性に注意すべきである。緑膿菌とは、水まわりなど生活環境中に広く常在し、健常者に感染を起こすことはまれだが、抵抗力の低下した患者(易感染性宿主)には感染することがある。緑膿菌は、グラム陰性桿菌の一種ともいわれ、急性腎盂腎炎の原因菌である。急性腎盂腎炎とは、細菌が主として上行性に腎盂腎杯および腎実質に感染し、急性の炎症を生じた病態のことを指す。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

74 過換気でみられるのはどれか。

1.骨格筋の弛緩
2.血中酸素分圧の低下
3.体循環系の血管の収縮
4.代謝性アルカローシス
5.血中二酸化炭素分圧の上昇

解答3

解説

過換気症候群とは?

過換気症候群とは、器質的障害が認められないのにストレスや緊張、不安などの心理的要因等により発作的に肺胞過換気状態を生じ、呼吸性アルカローンスに基づく臨床症状を呈する病態をいう。1回換気量と呼吸数の増加により分時換気量が増加する。

1.× 骨格筋は、「弛緩」ではなく収縮する。なぜなら、過呼吸により血液中の炭酸ガス濃度が下がり、血液がアルカリ性に傾くことで血管の収縮が起き、テタニーと呼ばれる手足のしびれや筋肉のけいれん・収縮を招くため。
2.× 血中酸素分圧は、「低下」ではなく上昇する。なぜなら、過換気によって、呼吸による酸素取り込みが増加するため。
3.〇 正しい。体循環系の血管の収縮が過換気でみられる。なぜなら、過呼吸により血液中の炭酸ガス濃度が下がり、血液がアルカリ性に傾くことで血管の収縮が起きるため。過呼吸で血管が収縮するというイメージが分からない場合は、逆の場合を想定するとイメージしやすい。低酸素状態あるいは虚血状態の組織では血管拡張機構が働き、血流は保たれるようになるためである。ちなみに、体循環系の血管とは、血液が心臓を出て全身に至り、毛細血管を経て再び心臓に戻ってくる循環のことをいう。
4.× 代謝性アルカローシスは、胃酸が失われる頻回の嘔吐で起こる。過換気の場合は、血中二酸化炭素分圧が減少することにより、呼吸性アルカローシスとなる。
5.× 血中二酸化炭素分圧は、「上昇」ではなく減少する。なぜなら、過換気により呼気から二酸化炭素が過剰に排出されるため。

 

 

 

 

75 乳癌の検査で侵襲性が高いのはどれか。

1.触診
2.細胞診
3.MRI検査
4.超音波検査
5.マンモグラフィ

解答2

解説

侵襲性とは?

侵襲とは、内部環境を一定に維持しようと調整するはたらき(ホメオスタシス)に変化をもたらすような外部刺激のことを指す。例えば、手術操作による循環動態の変動や組織の損傷、手術部位露出による寒冷刺激や手術への不安、恐怖などの心理的ストレスなどのことである。手術によって生じる侵襲は、手術侵襲と呼ぶ。

1.× 触診より侵襲性が高いものが他にある。乳癌の検査における触診とは、医師が直接乳房に触れることにより、しこりの有無やリンパ節腫脹、乳頭からの分泌物の有無などを観察する方法である。
2.〇 正しい。細胞診は選択肢の中で最も侵襲性が高い。乳癌の検査における細胞診とは、病変に細い針を刺して病変部の細胞を吸引し、採れた細胞を顕微鏡で観察することにより、がんかどうかなど、細胞の性質を詳しく調べる検査である。視診や触診、マンモグラフィ、超音波検査で乳がんを疑う場合や、良性病変を疑うが乳がんとの鑑別が必要な場合に精密検査として、超音波をみながら、刺吸引細胞診を実施することがある。
3.× MRI検査より侵襲性が高いものが他にある。核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。
4.× 超音波検査より侵襲性が高いものが他にある。乳癌の検査における超音波検査とは、乳房に直接プローブを当てて超音波が跳ね返ってくる様子を画像にし、乳房の状態を調べる検査である。
5.× マンモグラフィより侵襲性が高いものが他にある。マンモグラフィとは、乳房のX線撮影のことで、乳房撮影専用X線装置を用いて乳房を圧迫し、乳房内の組織の差を写し出す画像検査である。マンモグラフィでは、「しこり」や「石灰化」のように触れることの出来ない小さな病変を写し出すことが出来るため、早期乳がんや乳がん以外の病変を見つけ出すことに非常に有効である。

乳がんの検診について

乳がん検診(一次)は、国の指針によりますと、対象は40歳以上で、問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)が基本になっています。視触診の推奨はされていませんが、実施する場合はマンモグラフィ検査と併用します。乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、乳腺の密度が高い40代の検診精度が低くなるという課題があり、近年、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、単独で用いたりする方法を採用しているところもあります。約7万6千人の40代の女性を、マンモグラフィ検査を受けたグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループに無作為に分けて比較する大規模な臨床研究の結果、がんの発見率が、超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告があります。

(※一部抜粋:「乳がんの検診について」日本対がん協会HPより)

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