第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 29歳の初産婦。妊娠11週。妊娠初期の血液検査で、HBs抗原が陽性であった。手術や輸血の既往はない。

36 HBe抗原検査を行う際の妊婦への説明で正しいのはどれか。

1.検査は全額自費で実施する。
2.結果が陽性の場合、予防接種を受けないと90%以上に母子感染が起こる。
3.結果が陰性の場合、予防接種を受けなくても母子感染は起こらない。
4.結果が陽性の場合、胎内感染は起こらない。

解答

解説

ポイント

・HBs抗原が「陰性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染していない。自覚症状などがあれば、再度検査を促す。
・HBs抗原が「陽性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染している。医療機関の受診を強く勧める。HBs抗原が陽性となった場合には、医療機関において、現在の感染状態を調べるため、さらに詳しい検査を実施する。

~B型肝炎ウイルス検査について~
①HBs抗体:陽性であれば過去に感染し、その後、治癒したことを示す。HBVワクチンを接種した場合にも陽性となる。
②HBc抗体:陽性であればHBVに感染したことを示す。(HBVワクチン接種の場合は陽性にはならない。)
③HBc-IgM抗体:最近HBVに感染したことを示す。
④HBe抗原:陽性であれば一般にHBVの増殖力が強いことを示す。
⑤HBe抗体:陽性であれば一般にHBVの増殖力が低下していることを示す。
⑥HBV-DNA:血液中のHBVのウイルス量を測定する。

1.× 検査は、「全額自費」ではなく一部保険が適応される。したがって、HBe抗原検査の費用は、概ね3,000~5,000円前後で行える。

2.〇 正しい。結果が陽性の場合、予防接種を受けないと90%以上に母子感染が起こる。HBe抗原が陽性であれば、一般にHBVの増殖力が強いことを示す。

3.× 結果が陰性の場合、予防接種を受けなくても母子感染は「起こらない」と断言できない。なぜなら、本症例は、HBs抗原が「陽性」であるため。HBs抗原が「陽性」の場合は、B型肝炎ウイルスに感染している。

4.× 結果が陽性の場合、胎内感染は「と起こらない」と断言できない。むしろ、HBe抗原が陽性であれば、一般にHBVの増殖力が強いことを示すため、胎内感染のリスクが高まる。

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 29歳の初産婦。妊娠11週。妊娠初期の血液検査で、HBs抗原が陽性であった。手術や輸血の既往はない。

37 HBe抗原検査の結果は陽性であった。B型肝炎母子感染防止対策に基づく予防措置について説明したところ、妊婦から「予防措置をした場合、母乳はどうすればよいですか」と質問された。
 指導で正しいのはどれか。

1.母乳を制限する必要はない。
2.搾乳して凍結すれば母乳哺育が可能である。
3.搾乳して加熱すれば母乳哺育が可能である。
4.人工乳による哺育とする。

解答

解説

本症例のポイント

・29歳の初産婦(妊娠11週、手術や輸血の既往なし)。
・妊娠初期の血液検査:HBs抗原が陽性
・HBe抗原検査の結果:陽性
・B型肝炎母子感染防止対策に基づく予防措置について説明した。
・妊婦から「予防措置をした場合、母乳はどうすればよいですか」と。
→B型肝炎に関しておさえておこう。B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。

1.〇 正しい。母乳を制限する必要はない。なぜなら、適切な予防措置(新生児へのHBIG投与とB型肝炎ワクチン接種)が行われていれば、母乳を通じての感染リスクは極めて低いため。

2~3.× 搾乳して凍結/加熱する必要はない。なぜなら、母乳の冷凍/加熱によってウイルス感染を防ぐ効果はないため。

4.× 人工乳による哺育とする必要はない。なぜなら、適切な予防措置(新生児へのHBIG投与とB型肝炎ワクチン接種)が行われていれば、母乳育児を制限する必要はないため。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 P308」)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 29歳の初産婦。妊娠11週。妊娠初期の血液検査で、HBs抗原が陽性であった。手術や輸血の既往はない。

38 妊娠39週2日。3210gの男児を経腟分娩した。
 児へのB型肝炎母子感染防止対策で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.臍帯血のHBs抗原検査を行う。
2.出生後1週以内に抗HBsヒト免疫グロブリンを注射する。
3.生後1か月でHBs抗原検査を行う。
4.生後3か月で抗HBsヒト免疫グロブリンを注射する。
5.B型肝炎ワクチンを3回接種する。

解答3・5

解説

本症例のポイント

・29歳の初産婦(手術や輸血の既往なし)。
・HBe抗原検査の結果:陽性
・妊娠39週2日:3210gの男児を経腟分娩。

1.× 臍帯血のHBs抗原検査を行う必要はない。「従来、出生直後に臍帯血を用いた検査、生後2か月の乳児に対する検査を行っていたが、臍帯血については採取時に臍帯周囲に付着した母体血が混入する場合があるので、今後臍帯血の検査については行わず、生後1か月時の検査により判断することとする。また、生後1か月の検査結果をもとに、2回目のHBIG投与(生後2か月)の要否を決めることとなるので、従来行われていた生後2か月の検査は必ずしも必要としない」と記載されている(※引用:「B型肝炎母子感染防止対策の手引き」)。

2.× 「出生後1週以内」ではなく出生直後(12時間以内)に抗HBsヒト免疫グロブリンを注射する。B型肝炎の検査結果が陽性の場合、新生児は出生直後にB型肝炎ワクチン(HBワクチン)と抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の2つの予防接種を受ける。手順として、①出生直後(12時間以内)に抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与するとともに、1回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種を行う。②生後1か月に2回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)、③生後6か月に3回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を実施する。HBs抗原陽性かつHBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児を放置した場合、感染率が100%、キャリア化率が80~90%であるため、B型肝炎ウイルス母子感染予防処置が行われている。

3.〇 正しい。生後1か月でHBs抗原検査を行う。「従来、出生直後に臍帯血を用いた検査、生後2か月の乳児に対する検査を行っていたが、臍帯血については採取時に臍帯周囲に付着した母体血が混入する場合があるので、今後臍帯血の検査については行わず、生後1か月時の検査により判断することとする。また、生後1か月の検査結果をもとに、2回目のHBIG投与(生後2か月)の要否を決めることとなるので、従来行われていた生後2か月の検査は必ずしも必要としない」と記載されている(※引用:「B型肝炎母子感染防止対策の手引き」)。

4.× 「生後3か月」ではなく生後1か月で抗HBsヒト免疫グロブリンを注射する。B型肝炎の検査結果が陽性の場合、新生児は出生直後にB型肝炎ワクチン(HBワクチン)と抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の2つの予防接種を受ける。手順として、①出生直後(12時間以内)に抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与するとともに、1回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種を行う。②生後1か月に2回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)、③生後6か月に3回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を実施する。HBs抗原陽性かつHBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児を放置した場合、感染率が100%、キャリア化率が80~90%であるため、B型肝炎ウイルス母子感染予防処置が行われている。

5.〇 正しい。B型肝炎ワクチンを3回接種する。B型肝炎の検査結果が陽性の場合、新生児は出生直後にB型肝炎ワクチン(HBワクチン)と抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の2つの予防接種を受ける。手順として、出生直後(12時間以内)に抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与するとともに、1回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種を行う。生後1か月に2回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)、生後6か月に3回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を実施する。HBs抗原陽性かつHBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児を放置した場合、感染率が100%、キャリア化率が80~90%であるため、B型肝炎ウイルス母子感染予防処置が行われている。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 34歳の初産婦。保険会社の営業担当で外出が多い勤務をしている。妊娠24週0日までの経過に異常を認めなかった。妊娠28週2日の妊婦健康診査で血圧158/96mmHg、尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)であった。

39 助産師は母性健康管理指導事項連絡カードを発行した。
 この妊婦の状態に対する標準措置として定められているのはどれか。2つ選べ。

1.勤務時間の短縮
2.休業(自宅療養)
3.横になっての休憩
4.同一姿勢を強制される作業の制限
5.ストレス・緊張を多く感じる作業の制限

解答1・5

解説

本症例のポイント

・34歳の初産婦。
・仕事:保険会社の営業担当で外出が多い。
・妊娠24週0日まで:経過に異常なし。
・妊娠28週2日:血圧158/96mmHg、尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)。
・母性健康管理指導事項連絡カードを発行した。
母性健康管理指導事項連絡カードとは、妊娠中および出産後の女性従業員が、病院やクリニックから指導を受けた内容を適切に事業主に伝達するための書類で、通称「母健連絡カード」と呼ばれる。母性健康管理指導事項連絡カードの記載は、助産師(もくしは医師も)が行える。母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

1.5.〇 正しい。勤務時間の短縮/ストレス・緊張を多く感じる作業の制限は、母性健康管理指導事項連絡カードを活用してAさんが申請できる措置である。なぜなら、母性健康管理指導事項連絡カードを活用することで、的確にAさんの健康状況を事業主に伝えることができ、事業主は男女雇用機会均等法を守らなければならないため。男女雇用機会均等法の第十三条には「事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない」と記載されている(※「男女雇用機会均等法」e-GOV法令検索様HPより)。

2.× 休業(自宅療養)は、労働基準法第65条に規定されており、本症例の状態に対する標準措置とはいえない。ちなみに、産前休業とは、女性労働者が母体保護のため出産の前後においてとる休業の期間である。産休とも称される。産前休業は、「妊娠26週」から取得できる。また産前休業の期間は、予定日前の14週間取得できる。これは、労働基準法第65条「使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」と記載されている(一部引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 横になっての休憩は、Aさんの申請の有無に限らず行える。労働安全衛生規則の第六章(休養)の第六百十三条(休憩設備)に「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない」と記載されている。つまり、休憩中に横になることは労働者全員の権利である。

4.× 同一姿勢を強制される作業の制限は、Aさんの症状の改善にはつながりにくい。なぜなら、同一姿勢を強制される作業の制限は、静脈瘤に対する処置であるため。本症例は、「1日中顧客の苦情を聞いている仕事なので、最近では夕方になると疲れて頭が痛くなります」ということであるため、選択肢1/3の方が、優先度は高いと考えられる。ちなみに、下腿静脈瘤とは、静脈弁機能不全により下肢の静脈が逆流し、皮下静脈瘤が拡張・蛇行している状態である。誘因として、妊娠出産、立ち仕事、デスクワーク、スポーツ、肥満、加齢などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 34歳の初産婦。保険会社の営業担当で外出が多い勤務をしている。妊娠24週0日までの経過に異常を認めなかった。妊娠28週2日の妊婦健康診査で血圧158/96mmHg、尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)であった。

40 妊娠30週1日。頭痛が出現したため受診し、入院した。血圧162/102mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)である。
 治療薬として適切なのはどれか。

1.ジアゼパム
2.リトドリン塩酸塩
3.硫酸マグネシウム
4.ヒドララジン塩酸塩
5.アセトアミノフェン

解答

解説

本症例のポイント

・34歳の初産婦。
・妊娠24週0日まで:経過に異常なし
・妊娠28週2日:血圧158/96mmHg、尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)。
・妊娠30週1日:頭痛が出現したため受診入院。
・血圧162/102mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(-)。
→本症例は、妊娠高血圧症が疑われる。したがって、高血圧に対する処置が望ましい。

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

1.× ジアゼパムとは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、主に抗不安薬、抗痙攣薬、催眠鎮静薬として用いられる。

2.× リトドリン塩酸塩とは、子宮収縮抑制薬(子宮鎮痙薬とも)である。臨床応用としては、切迫早産や切迫流産の際に子宮収縮(陣痛)を抑制するのに用いられる。投与中に過度の心拍数増加(頻脈)があらわれた場合には、減量するなど適切な処置を行うことが求められる。主な副作用として、動悸、振戦(手足の震え)、吐き気、発疹などが報告されている。胎児には、頻脈、不整脈があらわれる。作用機序として、β受容体刺激剤の中でも強いβ2選択性により、細胞内c-AMPを上昇させ、子宮収縮抑制効果を示す。

3.× 硫酸マグネシウムの【作用効果】は、①切迫早産における子宮収縮の抑制、②重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療などである。また、「硫酸マグネシウムは、米国、独国、仏国、加国、豪州において、子癇の予防の効能・効果で承認されており、また、米国及び欧州のガイドラインにおいても子癇の予防に用いる旨記載されている」(※参考:「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議、公知申請への該当性に係る報告書、硫酸マグネシウム、重症妊娠高血圧症候群における子癇の予防及び治療」より)

4.〇 正しい。ヒドララジン塩酸塩が治療薬と考えられる。なぜなら、本症例は妊娠高血圧症が疑われるため。ヒドララジン塩酸塩(総称名:アプレゾリン)とは、妊娠中の高血圧の治療に用いられる。主な禁忌として、虚血性心疾患のある患者や大動脈弁狭窄、僧帽弁狭窄及び拡張不全、高度の頻脈及び高心拍出性心不全などがあげられる(※参考:「医療用医薬品 : アプレゾリン」より)。

5.× アセトアミノフェンとは、医療用医薬品の「カロナール」と同じ成分での解熱剤である。赤ちゃんの解熱剤としても使われる成分である。お薬が母乳中に出てくる量は非常に少なく、赤ちゃんへの影響はみられていない成分のため、授乳中に飲んでも差し支えない。また、アセトアミノフェンのほか、授乳中に安心して飲める薬として、ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェンなどである。

妊婦に対する硫酸マグネシウム

【作用効果】
①切迫早産における子宮収縮の抑制
②重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療

【副作用】
①マグネシウム中毒(眼瞼下垂、膝蓋腱反射の消失、筋緊張低下、心電図異常(房室ブロック、伝導障害)、呼吸数低下、呼吸困難等)
②心(肺)停止、呼吸停止、呼吸不全
③横紋筋融解症
④肺水腫
⑤イレウス(腸管麻痺)

(※参考「医療用医薬品 : マグセント」より)

 

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