第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 超音波断層法による妊娠期の診断で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.子宮内に胎囊が認められるのは妊娠7週以降である。
2.多胎妊娠の膜性診断は妊娠8〜10週ころに行う。
3.子宮頸管長は妊娠30週で30mm以上が正常である。
4.児の推定体重は児頭大横径と頭殿長とによって算出する。
5.AFIは子宮底部と子宮下部との2か所の羊水腔の計測によって求める。

解答2・3

解説

(画像引用:「多胎妊娠とは」和歌山県立医科大学様HPより)

1.× 子宮内に胎囊が認められるのは、「妊娠7週以降」ではなく妊娠4~6週である。ただし、妊娠5週を過ぎても、超音波検査によって子宮内に胎嚢が確認できない場合、子宮付属器にて胎児成分が存在しないか検索を行う。ちなみに、胎嚢とは、子宮内膜に受精卵が着床すると作られる、赤ちゃんを包む袋のことである。胎嚢は羊膜、尿膜、漿膜で包まれており、中は羊水で満たされている。通常は、胎嚢・胎芽・心拍の三つを確認できた時点で、正常妊娠であると診断される。

2.〇 正しい。多胎妊娠の膜性診断は、妊娠8〜10週ころに行う。多胎妊娠の膜性診断とは、妊娠中に胎児の膜の数を数えて、胎児どうしの関係を特定する診断である。胎児の膜には絨毛膜と羊膜があり、胎児の膜の構成によって、一絨毛膜二羊膜双胎、二絨毛膜二羊膜双胎、一絨毛膜一羊膜双胎などの種類に分類される。

3.〇 正しい。子宮頸管長は妊娠30週で30mm以上が正常である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもある。切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みである。このような症状がある場合には、まず横になって安静に促す。

4.× 児の推定体重は、「児頭大横径と頭殿長」のほかにも、腹部前後径や腹部横径、大腿骨長などによって算出する。胎児体重の推定は2つ方法がある。
①胎児推定体重=1.07×児頭大横径(BPD)の3乗+3.42×腹部前後径(APTD)×腹部横径(TTD)×大腿骨長(FL)
②胎児推定体重=1.07×児頭大横径(BPD)の3乗+0.3×体幹周囲長(AC)の2乗×大腿骨長(FL)
したがって、胎児推定体重算出には、児頭大横径(BPD)、腹部前後径(APTD)、腹部横径(TTD)、大腿骨長(FL)、体幹周囲長(AC)の計測値が必要となる。

5.× AFIは、「子宮底部と子宮下部との2か所」ではなく、子宮の各4分の1に分けの羊水腔の計測によって求める。AFIとは、「amniotic fluid index」の頭文字で、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。

児頭大横径とは?

児頭大横径とは、胎児の頭の横幅の左右差の中で最も大きい部分の長さを指す。
【測定方法】エコー検査によって、透明中隔と四丘体槽の観察できる高さで、頭蓋骨の「外側」から遠位の頭蓋骨の「内側」を測定する。

 

 

 

 

 

32 43歳の女性。妊娠 9週。超音波断層法で胎児心拍を認める。合併症はない。
 この女性に対する説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.流産のリスクが低い。
2.胎児の心奇形のリスクが高い。
3.妊娠高血圧症候群となるリスクが高い。
4.母体血清マーカー試験を受ける必要がある。
5.羊水検査による出生前診断の対象となり得る年齢である。

解答3・5

解説

本症例のポイント

43歳の女性(妊娠9週)。
・超音波断層法で胎児心拍を認め、合併症はない。
→本症例は、43歳と高齢である。高齢妊娠の場合のリスクをおさえておこう。高齢妊娠については、日本では「35歳以上の初産婦を高年初産婦とする」 と定義している。加齢に伴い、卵子の老化が起こるため、早産やダウン症の発症リスクを高めるとされている。

1.× 流産のリスクが「低い」とはいえない。なぜなら、加齢に伴い、卵子の老化が起こるため。

2.× 胎児の心奇形のリスクが「高い」とはいえない。なぜなら、本児の超音波断層法は、胎児心拍を認め、合併症はないため。ちなみに、胎児の心奇形は、ダウン症候群に合併しやすい。

3.〇 正しい。妊娠高血圧症候群となるリスクが高い。なぜなら、本症例は、43歳であり、年齢が上がるとともに、母体の血管系や内分泌系に負担がかかりやすくなるため。ちなみに、妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

4.× 母体血清マーカー試験を受ける必要はない。なぜなら、本児の超音波断層法は、胎児心拍を認め、合併症はないため。母体血清マーカーとは、採取した血液中にある成分(PAPP-A, free βhCG)を測定し、21トリソミー(ダウン症候群)や18トリソミーなどの染色体異常の有無を調べる検査のことである。

5.〇 正しい。羊水検査による出生前診断の対象となり得る年齢である。日本では、「出産予定日時点で35歳以上」を出生前診断の対象の年齢としている。ちなみに、羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。

用語の定義

・流産とは、日本産科婦人科学会は、「妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されること」と定義している。妊娠22週以降の場合の死亡胎児の出産は死産と定義。つまり、何らかの原因で胎児が亡くなってしまい妊娠が継続しなくなることである。日本産科婦人科学会の定義ではさらに、妊娠12週未満の「流産」を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の「流産」を「後期流産」としている。妊娠12週未満の早い時期での流産が多く、流産全体の約90%を占める。
・習慣流産とは、流産を3回以上繰り返した場合をいう。(死産や早期新生児死亡は含めない)。出産歴がない原発習慣流産と、出産後に流産を繰り返す続発習慣流産がある。続発習慣流産は、胎児染色体異常(赤ちゃんの染色体異常)による場合が多く、明らかな原因は見つかりにくい傾向がある。
・反復流産とは、流産を2回以上繰り返した場合をいう。最近、反復流産も原因精査の対象と考えられるようになってきた。

(※参考:「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」より)

 

 

 

 

 

33 新生児において交換輸血の適応となる核黄疸の症状(PraaghⅠ期症状)はどれか。2つ選べ。

1.嗜眠
2.けいれん
3.後弓反張
4.落陽現象
5.哺乳力の低下

解答1・5

解説

Praaghの分類

Praaghの分類とは、核黄疸の症状は4段階としており、第1期までは可逆性のことも多いが、第2期に至ると、進行して脳性麻痺になることが多いことを示している。

第1期:筋緊張低下,嗜眠傾向,吸啜反射の減弱。
第2期:筋緊張亢進,発熱,後弓反張。
第3期:第2期の痙性症状の消退。
第4期:錐体外路症状が徐々に出現(アテトーゼ,難聴,上方凝視麻痺)

1.〇 正しい。嗜眠は、新生児において交換輸血の適応となる核黄疸の症状(PraaghⅠ期症状)である。ちなみに、嗜眠とは、傾眠よりやや強い意識混濁な状態である。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能である。

2.× けいれんは、PraaghⅡ期症状の症状である。けいれんとは、自分の意志とは無関係に勝手に筋肉が強く収縮する状態である。けいれんの原因はさまざまで、慢性の脳疾患である「てんかん」の発作として起こるけいれんのほか、脳血管疾患や頭部外傷、身体疾患の急性症状としてみられるけいれん、薬物やアルコールに関連して発生するけいれん、発熱をきっかけに発生するけいれん、心因性に発生するけいれんなどさまざまである。

3.× 後弓反張は、PraaghⅡ期症状の症状である。後弓反張とは、後頚部の筋および背筋、上下肢筋の筋緊張亢進、または痙攣により頚部を強く背屈させ、全身が後方弓形にそりかえる状態のことをいう。要因として、重度の脳障害(脳性麻痺)などでみられる。

4.× 落陽現象は、PraaghⅡ期症状の症状である。落陽現象とは、眼球上転運動障害のことである。乳児の眼球が上から下にゆっくり動いて、下方向へ回転するように見える現象で、眼球の黒目が太陽が沈むように下のまぶたへ入り込む状態を指す。核黄疸や低酸素症、水頭症などの頭蓋内疾患で多くみられる。

5.〇 正しい。哺乳力の低下は、新生児において交換輸血の適応となる核黄疸の症状(PraaghⅠ期症状)である。

核黄疸とは?

核黄疸とは、間接ビリルビンが新生児の主として大脳基底核等の中枢神経細胞に付着して黄染した状態をいい、神経細胞の代謝を阻害するため死に至る危険が大きく、救命されても不可逆的な脳損傷を受けるため治癒不能の脳性麻痺等の後遺症を残す疾患である。核黄疸のリスク因子として、未熟児、溶血、新生児仮死、代謝性アシドーシス、呼吸ひっ迫、低体温、低タンパク血症、低血糖、感染症、頭蓋内出血、薬剤などがある。

「急性期の臨床症状として、Ⅰ期(生後数日)には筋緊張低下、嗜眠、哺乳力減弱をきたし、Ⅱ期(生後数日~ 1 週間)には筋緊張亢進、後弓反張、発熱、甲高い泣き声、痙攣などを呈し、Ⅲ期(生後 1 ~ 2 週間以降)には筋緊張亢進は減弱ないし消退する。更に慢性期(生後 1 ~ 1 年半)の臨床症状としてアテトーゼ、上方凝視麻痺、難聴などの核黄疸後遺症が出現する。通常、Ⅰ期では可逆性のことも多いが、Ⅱ期に至ると不可逆性でありビリルビン毒性による脳障害が惹起されるものと考えられている。核黄疸の発症予防のためには、I 期症状の段階での適切な治療が必要である」(※引用:「核黄疸(ビリルビン脳症)の発症予知と予防」著:李 容桂様 )。

 

 

 

 

 

34 8か月児のいる家庭で、児の事故防止のために必要な日常生活上の助言で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.「小さな物は、お子さんの身長と同じ高さに置いてください」
2.「テーブルにはテーブルクロスをかけないでください」
3.「洗面所には子ども用の踏み台を設置してください」
4.「浴槽の残り湯は20cm以下にしてください」
5.「階段には転落防止柵を付けてください」

解答2・5

解説

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

8か月児の特徴

つかまって立っていられたり、自分で起き上がれ伝い歩きもできるようになる。親指をつかってつかむこともできる。

1.× 小さな物は、お子さんの身長と「同じ高さ」ではなく手の届かない高いところに置く。なぜなら、8か月児はつかまって立っていられたり、自分で起き上がれ伝い歩きもできるようになるため。つまり、身長と同じ高さに置いても容易に物を取って、誤飲のリスクが考えられる。

2.〇 正しい。「テーブルにはテーブルクロスをかけないでください」と伝える。なぜなら、テーブルクロスをかけると、子どもがそれを引っ張り、テーブルの上にある物(熱い飲み物や重い物)が落ちてくる危険があるため。

3.× 洗面所には、子ども用の踏み台を設置しないほうが良い。なぜなら、踏み台を設置すると転倒や落下の危険が高まるため。つまり、溺死につながりかねない。

4.× 、浴槽の残り湯は、「20cm以下」ではなく残さない。なぜなら、残り湯が20cmであっても、浴槽に落ちると転び、溺れる危険があるため。風呂の残り湯は、使用後すぐに完全に排水することが推奨される。

5.〇 正しい。「階段には転落防止柵を付けてください」と伝える。なぜなら、階段に転落防止柵を設置することで、階段への侵入を防ぎ、転落事故を予防できるため。

 

 

 

 

 

35 小学校の低学年を対象に、文部科学省の「学校における性教育の考え方、進め方」に基づいて、性の健康教育を行うこととなった。
 テーマとして適切なのはどれか。2つ選べ。

1.男女の身体の違い
2.性感染症の予防法
3.二次性徴と性ホルモン
4.月経時の手当ての仕方
5.自分を大切にすること

解答1・5

解説

(※引用:「学校における性に関する教育の考え方、進め方」青森県HPより)

1.〇 正しい。男女の身体の違いをテーマとする。「心身の発育・発達や健康に関して必要な内容」に関する項目にて、「男女の体の違いに気付かせ、 自分や相手を大切にしようとする心情や態度を育てる。人間にはいろいろな器官があり、 それぞれ大切な働きを持っていること、 性器は大切な器官であり、 清潔にすることが大切であることを理解させる」と記載されている(※引用:「学校における性に関する教育の考え方、進め方」青森県HPより)。

2.× 性感染症の予防法は、小学校高学年で徐々に伝えていくべき内容である。小学校高学年において、「エイズという病気のあらましを理解させ、 エイズについて偏見や差別を持つことなく、 正しい判断ができる能力と態度を育てる」ことがあげられている(※引用:「学校における性に関する教育の考え方、進め方」青森県HPより)。

3~4.× 二次性徴と性ホルモン/月経時の手当ての仕方は、小学校中学年で伝えていくべき内容である。小学校中学年において、「体の発育・発達の仕方や体つきには男女や個人によって違いがあることを知らせ、 不安を解消させる。思春期の体つきの変化や精通、 初経などについて、 科学的に理解させる。女子に対して初経に対する心構えや月経の手当ての仕方を習得させ、 生活上の配慮について理解させる」ことがあげられている(※引用:「学校における性に関する教育の考え方、進め方」青森県HPより)。

5.〇 正しい。自分を大切にすることをテーマとする。「人間関係の育成に必要な内容」において、「男女が互いに仲良くし、 助け合い、 自他を大切にしようとする態度を育てる」と記載されている(※引用:「学校における性に関する教育の考え方、進め方」青森県HPより)。

第二次性徴とは

二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。

平均的に見ると男児の場合は、10歳前後に始まり約5年間続く。 体の成長には決まった順番があり、①睾丸の発達→②陰毛の発生→③精通→④声変わり→⑤体型の変化という順番をたどる。女児の場合は、8歳前後から始まり①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。その評価にはTanner分類が用いられている。

 

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