第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午後11~15】

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11 20歳の初産婦。産褥20日に新生児訪問の際、児の大泉門部分に堅くこびりついている垢を指して「ここをどうしていいか分からないのです」と助産師に尋ねた。
 原因を説明した後の指導で最も適切なのはどれか。

1.対処方法を口頭で説明する。
2.対処方法を実演しながら説明する。
3.小児科医師に相談するように話す。
4.1か月健康診査の際に相談するように話す。

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の初産婦(産褥20日)。
・産褥20日に新生児訪問。
・児の大泉門部分に堅くこびりついている垢を指して「ここをどうしていいか分からないのです」と。
→運動学習とは、訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で、状況に適した協調性が改善していく過程である。感覚運動学習とも呼ぶ。運動学習をする際には、①口頭指示(文字のみ)→②模倣→③介助(誘導)の順で難易度が下がっていく。

1.× あえて、対処方法を「口頭」で説明する必要はない。なぜなら、口頭で説明するだけでは、初産婦にとっては具体的にどのようにケアをすればよいかが分かりにくいため。実際に目で見たり手を動かした(模倣)り、誘導しながら説明する方が理解しやすい。

2.〇 正しい。対処方法を実演しながら説明する。なぜなら、実演しながら説明することで、初めてのケアをする母親は安心してケアが行えるため。

3~4.× 「小児科医師に相談するように話す」、「1か月健康診査の際に相談するように話す」必要はない。なぜなら、乳児脂漏性湿疹といい、一般的に健康問題ではないため。脂漏性湿疹とは、生後2~4週間頃に皮脂分泌の活発な部位に出現する湿疹性病変である。新生児期は皮脂分泌が最も盛んな時期であることから、顔面や頭部に脂漏性湿疹を引き起こすことがある。そのため、ガーゼやタオルでこすると児の皮膚に小さな傷をつけるので、指の腹に石けんをつけて洗うと良い。

 

 

 

 

 

12 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律〈DV防止法〉に規定されているのはどれか。

1.母子保健推進員の役割が規定されている。
2.事実上婚姻関係にある場合も保護の対象となる。
3.対象となる被害は、身体に対する暴力に限られる。
4.医療従事者は、被害状況の通報義務よりも守秘義務を優先する。

解答

解説

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)とは?

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)とは、今まで家庭内に潜在してきた女性への暴力について、女性の人権擁護と男女平等の実現を図るため、夫やパートナーからの暴力の防止、及び被害者の保護・支援を目的として作られた法律である。

【主な内容】
①配偶者からの暴力の定義
②国及び地方公共団体の責務
③配偶者暴力相談支援センター
④一時保護
⑤情報提供・通報
⑥警察官による被害の防止・警察本部長等の援助
⑦福祉事務所による自立支援
⑧各関係機関連携
⑨保護命令

(※参考:「DV防止法とは?」千葉県HPより)

1.× 母子保健推進員の役割が規定されているのは、「母子保健法」である。母子保健推進員とは、地域の妊産婦さんやお子さんの健康を見守るサポーター役として、市長より委嘱をうけて活動している。①母子保健に関する知識の普及、②母性および乳幼児の保険に関する問題の把握および情報提供、③健康診査、保健指導等の勧奨などの役割を持つ。

2.〇 正しい。事実上婚姻関係にある場合も保護の対象となる。これは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律<DV防止法>の第1条3項「この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする」と定められている(※引用:「DV防止法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 対象となる被害は、身体に対する暴力に限られ「ない」。1条1項”この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする”と記載されている(※引用:「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」千葉県HPより)。

4.× 逆である。医療従事者は、「守秘義務」よりも「被害状況の通報義務」を優先する。これは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律<DV防止法>の第6条2項「医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報することができる。この場合において、その者の意思を尊重するよう努めるものとする」と定められている。

 

 

 

 

 

13 産科ショックの症状で喘息様呼吸困難を起こすのはどれか。

1.アナフィラキシーショック
2.敗血症性ショック
3.神経因性ショック
4.出血性ショック

解答

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックであり,ほかにやや病態が異なるものとして子癇、羊水塞栓症、感染流産などがその基礎疾患となり得る。また仰臥位低血圧症候群、産科手術時の腰椎麻酔によるショックなどもこれに含まれる。

1.〇 正しい。アナフィラキシーショックは、産科ショックの症状で喘息様呼吸困難を起こす。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックは、主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。

2.× 敗血症性ショックは、細菌感染で起こる。敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

3.× 神経因性ショック(神経原性ショック)とは、上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで、交感神経系が抑制・遮断され、血管への神経支配が失われ末梢血管が弛緩し、自律神経系失調によって引きおこされた末梢血管弛緩による血圧低下である。血液分布異常性ショックの一つである。症状としては血圧低下のほか徐脈をともない、四肢末梢の皮膚は暖かく、乾燥している。外傷にともなうショックである。

4.× 出血性ショック(循環血液量減少性ショック)とは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。

敗血症とは?

肺血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。つまり、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態といえる。そのなかでも敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。組織灌流が危機的に減少し、肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

【初期の症状】悪寒、全身のふるえ、発熱、発汗など。
【症状進行時】心拍数、呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害など。
【重症化】腎不全、肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。

 

 

 

 

 

14 Seitz〈ザイツ〉法によって把握できるのはどれか。

1.胎児頤部の位置
2.骨盤内の児頭陥入の程度
3.両側の坐骨結節内縁間距離
4.恥骨結合下縁から岬角中央までの距離

解答

解説

(※図引用:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)

1.3~4.× 胎児頤部の位置/両側の坐骨結節内縁間距離/恥骨結合下縁から岬角中央までの距離は、Seitz〈ザイツ〉法によって把握できない。

2.〇 正しい。骨盤内の児頭陥入の程度は、Seitz〈ザイツ〉法によって把握できる。ザイツ法とは、児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。

MEMO

児頭骨盤不均衡とは、胎児の頭が母体の骨盤に比べて大きかったり、母体の骨盤の形に問題があったりして、胎児がスムーズに骨盤を通過できず分娩の進行が停止する場合を指す。全分娩の約4~6%にみられる。
【児頭骨盤不均衡の機能的診断法(※参考:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)】
①レオポルド触診法:第3、第4手法で、妊娠38週以降の初産婦に「floating head」が確認できる。
②Seitz法:児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。
③内診により、児頭の先進部がstation±0に達していれば、入口部における児頭骨盤不均衡はないと考えられる。
さらに、分娩の進行状況で、すでに子宮口が全開大し破水を認めているにもかかわらず、分娩が遷延している(2時間以上)状態であれば、児頭骨盤不均衡は極めて疑わしいと考えられるが、上記の所見により児頭骨盤不均衡が疑われる場合は、X線骨盤撮影による十分な骨盤形態の検討が要求される。

 

 

 

 

 

15 ゲート・コントロール説を応用した産痛緩和法はどれか。

1.瞑想
2.呼吸法
3.マッサージ
4.リラクセーション法

解答

解説

ゲート・コントロール説とは?

ゲートコントロール理論とは、高頻度刺激によって、脊髄の触・圧・振動覚などの低閾値感覚を伝える太い神経線維を刺激することで、脊髄後角の感覚神経を活性化させ、痛みの信号通路のゲートを閉ざし疼痛を抑制させる理論である。脳と脊髄は痛みやその他の接触刺激などを同時に感じ取らないように働いているため、このような理論が提唱されている。

1.× 瞑想は、ゲート・コントロール説に基づかない。なぜなら、ゲート・コントロール説に基づく「物理的な刺激」を利用する方法ではないため。ちなみに、瞑想とは、心を静めて無心になること、何も考えずリラックスすること、心を静めて神に祈ったり、何かに心を集中させること、目を閉じて深く静かに思いをめぐらすことなどとされている。

2.× 呼吸法は、ゲート・コントロール説に基づかない。なぜなら、ゲート・コントロール説に基づく「物理的な刺激」を利用する方法ではないため。

3.〇 正しい。マッサージは、ゲート・コントロール説を応用した産痛緩和法である。なぜなら、マッサージは皮膚や筋肉に触覚や圧力を与えるため。ゲート・コントロール説は、マッサージによる触覚刺激が痛みの信号を抑制し、産痛を和らげる効果がある。

4.× リラクセーション法は、ゲート・コントロール説に基づかない。なぜなら、ゲート・コントロール説に基づく「物理的な刺激」を利用する方法ではないため。リラクゼーション法とは、心身の緊張を緩和し、ストレスを和らげて、体の回復力を高めるための方法である。自律神経に働きかけて、身体や気持ち、感覚、考えなどをコントロールすることで、リラックス反応を引き起こす。

 

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