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6 栄養素と妊婦が過剰摂取することによって起こる児の異常との組合せで正しいのはどれか。
1.ビタミンA:先天奇形
2.ビタミンD:低出生体重児
3.亜鉛:味覚障害
4.葉酸:神経管閉鎖障害
解答1
解説
①葉酸(水溶性ビタミンB):例、ほうれん草など
・神経管閉鎖障害児の発症が増加する。
②ビタミンA:例、家畜および養殖魚内臓
③水銀:例、魚類
④微量元素:例、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン
(※参考「食事と先天異常」日本産婦人科医会先天異常委員会委員より)
1.〇 正しい。ビタミンAの過剰摂取により、先天奇形(胎児の形態異常:水頭症や口蓋裂など)が生じる。一般的に、ビタミンAは脂溶性ビタミンで、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがある。妊娠3ヶ月までの過剰摂取により赤ちゃんの耳の形態異常が増えることがわかっている。妊娠中の必要量は1日2000 IU(600μg)で、上限は1日 5000 IU(1500μg)である。
2.× 低出生体重児は、ビタミンDの「過剰摂取」ではなく不足で生じる。一般的に、ビタミンDの欠乏は、くる病(乳幼児や小児)、骨軟化症(骨軟化症)の原因となる。くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害と骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。
3.× 味覚障害は、亜鉛の「過剰摂取」ではなく不足で生じる。一方、亜鉛を過剰に摂取すると、急性亜鉛中毒を引き起こす可能性があり、発熱や胃障害、めまい、吐き気などの症状が現れる可能性がある。
4.× 神経管閉鎖障害は、葉酸の「過剰摂取」ではなく不足で生じる。神経管閉鎖障害は、妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸を十分に摂取することで発症を低減できる胎児合併症である。葉酸とは、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。
神経管閉鎖障害とは、脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種で、二分脊椎、脳瘤、無脳症などである。二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。二分脊椎症には①開放性(表面からはっきりわかるもの)と②潜在性(わかりにくいもの)がある。前者には脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤などが含まれる。
7 22歳の初産婦。陣痛発来のため入院した。出産準備教育を受けていない。陣痛間欠8分、陣痛発作30秒。「これからお産がどうなっていくのか分からない。陣痛が怖くて、今後耐えられるか不安です」と訴えている。
産婦の話を傾聴した後、助産師の対応として最も適切なのはどれか。
1.「私たちに任せておけば大丈夫です」
2.「痛くても大声を出さないようにしましょう」
3.「お産の進み具合や過ごし方を説明しましょう」
4.「両親学級のテキストを渡すので読んでください」
解答3
解説
・22歳の初産婦(陣痛発来のため入院)。
・出産準備教育を受けていない。
・陣痛間欠8分、陣痛発作30秒。
・「これからお産がどうなっていくのか分からない。陣痛が怖くて、今後耐えられるか不安です」と訴えている。
→本症例は、出産準備教育を受けておらず、将来の不安が聞かれる。したがって、状況に合わせた支援が必要である。出産準備教育とは、家族が一つに新しい家族を迎え育てていく準備ができるよう妊婦やその家族などを対象として行う健康教育である。
【出産準備教育の目的】
①妊娠期の健康維持・増進、異常の予防。
②出産に向けての心身の準備。
③親になる心の準備。
④育児の準備。
⑤家族の準備。
⑥ネットワークづくり。
1.× 「私たちに任せておけば大丈夫です」と伝える必要はない。なぜなら、本症例の不安に寄り添っているとはいえないため。また、産婦の不安感を軽視している印象を与える可能性がある。
2.× 「痛くても大声を出さないようにしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、「声を出さないこと」が、出産の過程において良いメリットとなる根拠がないため。むしろ、陣痛の痛みが強いとき、声を出すことで一時的に痛みを発散する人も多い。
3.〇 正しい。「お産の進み具合や過ごし方を説明しましょう」と伝える。なぜなら、本症例は、出産準備教育を受けておらず、将来の不安が聞かれているため。したがって、出産の流れや現在の状況、これからの進み方を説明することは、産婦の不安を軽減するために非常に効果的であると考えられる。
4.× 「両親学級のテキストを渡すので読んでください」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、すでに陣痛発来しているため。入院している状況で、両親学級の産婦はテキストを読んで理解する余裕はない。ちなみに、両親学級とは、妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。
8 30歳の初産婦。妊娠32週0日に水様帯下の増量を主訴に受診した。体温36.8℃、脈拍60/分。下腹部に圧痛を認めない。内診で子宮口1cm開大、展退度30%。経腟超音波断層法で子宮頸管長33mm。腟分泌物でBTBは青変しない。癌胎児性フィブロネクチン陰性。顆粒球エラスターゼ活性上昇を認めない。血液検査で白血球の増加やCRPの上昇を認めない。分娩監視装置で8〜12分ごとの子宮収縮がある。
この時点の助産診断で正しいのはどれか。
1.高位破水
2.切迫早産
3.絨毛膜羊膜炎
4.子宮頸管無力症
解答2
解説
・30歳の初産婦(妊娠32週0日)。
・主訴:水様帯下の増量を受診。
・体温36.8℃、脈拍60/分、下腹部に圧痛なし。
・内診:子宮口1cm開大、展退度30%。
・経腟超音波断層法:子宮頸管長33mm。
・腟分泌物でBTBは青変しない。
・癌胎児性フィブロネクチン:陰性。
・顆粒球エラスターゼ活性上昇:認めない。
・血液検査:白血球の増加やCRPの上昇を認めない。
・分娩監視装置:8〜12分ごとの子宮収縮がある。
→上記の評価から正確に読み取れるようになろう。
1.× 高位破水は考えにくい。なぜなら、本症例の腟分泌物でBTBは青変しないため。BTBが青変しなかったため、羊水漏出(破水)は否定される。ちなみに、高位破水とは、子宮口より離れた部位で卵膜が破れ、羊水が少ない量で流出することをいう。完全破水は子宮口からの破水のため大量の羊水が流出するが、高位破水の場合、チョロチョロと少量であるため、おりものや、尿漏れと間違える妊婦さんも多い。
2.〇 正しい。切迫早産が最も疑われる。なぜなら、本症例(妊娠32週0日)は、内診にて子宮口1cm開大、展退度30%、分娩監視装置にて8〜12分ごとの子宮収縮があるため。経腟超音波で子宮頸管長は33mmであり、一般的に25mm未満であれば切迫早産のリスクが高いとされるが、他の所見(子宮口の開大、収縮の存在)から判断しても、切迫早産の診断が望ましい。ちなみに、切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満に下腹部痛、性器出血、破水などの症状に加えて、外測陣痛計で規則的な子宮収縮がみられ、内診では子宮口開大子宮頸管の展退などが認められ、早産の危険性が高いと考えられる状態である。
3.× 絨毛膜羊膜炎は考えにくい。なぜなら、本症例の顆粒球エラスターゼ活性上昇は認めず、血液検査は白血球の増加やCRPの上昇を認めないため。ちなみに、絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。
【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。(※参考:「子宮内感染について」より)
4.× 子宮頸管無力症は考えにくい。なぜなら、本症例は、分娩監視装置で8〜12分ごとの子宮収縮があり、経腟超音波断層法は子宮頸管長33mmであるため。子宮頸管無力症とは、陣痛などの下腹部痛や性器出血などの症状がないが子宮頸管が開いてきてしまう状態のことを言い、流産や早産の原因となってしまうことがある。頸管縫縮術とは、子宮口を縛る手術で、頸管無力症など主に切迫早産の可能性があり、35週の終わり頃まで妊娠を継続させるために行われる。シロッカー法やマクドナルド法などがある。
流産期とは、妊娠21週6日までの妊娠中絶(分娩)。
早産期とは、妊娠22週0日~36週6日における分娩。
正期産とは、妊娠37週0日~41週6日までの分娩。
過期産とは、42週0日以後の分娩。
9 初感染の性器ヘルペスウイルス合併妊娠で正しいのはどれか。
1.出生した新生児は結膜炎を発症する。
2.感染経路は産道感染よりも経胎盤感染が多い。
3.発症後1か月以内の分娩は帝王切開を選択する。
4.新生児ヘルペスを発症した場合、予後は良好である。
解答3
解説
性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。
1.× 出生した新生児は結膜炎を発症するとはいえない。結膜炎はクラミジアや淋菌などの感染症に関連することが多い。感染性の結膜炎は小児と高齢者に多い特徴がある。年齢によって原因菌が異なる。新生児ではクラミジア、淋菌、乳幼児はインフルエンザ菌、学童期では肺炎球菌、ブドウ球菌などが原因となる。症状は、充血と黄色っぽい目やになどである。
2.× 逆である。感染経路は「経胎盤感染(子宮内感染)」よりも「産道感染」が多い。出産時に産道で感染し「新生児ヘルペス」を発症させる可能性があるが、胎児への影響(経胎盤感染)はほとんどない。特に、母体が妊娠末期に初感染を起こした場合、ウイルスの排出が多く、分娩時に産道を通過する際に新生児が感染するリスクが高くなる。
3.〇 正しい。発症後1か月以内の分娩は帝王切開を選択する。産道感染による新生児ヘルペスのリスクがある場合は、経腟分娩(自然分娩)ではなく帝王切開で出産することで、新生児ヘルペスの発症を回避することが可能である。家族や周囲に性器ヘルペスを発症している人がいる場合は、タオルや洋式便座の共有から感染することもあるので、自分専用のタオルや使い捨ての便座シートを利用するなどの対策を行い、感染予防に努める。
4.× 新生児ヘルペスを発症した場合、予後は「良好」であると断言できない。なぜなら、脳炎や全身性感染を引き起こす可能性があるため。脳炎や全身性感染を引き起こした場合、致死率が高く、後遺症も残る可能性がある。ただし、再発例は、すでにヘルペスウイルスによる抗体を持っているため、初感染より軽症化しやすい。
10 出生時体重2000gの児でAGA〈appropriate for gestational age〉に比べ、SGA〈small for gestational age〉に生じやすい異常はどれか。
1.貧血
2.黄疸
3.呼吸障害
4.動脈管開存症
解答2
解説
在胎相当体重児<AFD児:appropriate for gestational age>とは、在胎週数や妊娠週数に対して適正な出生身長・体重である新生児のことである。
不当軽量児〈SGA児:small for gestational age〉とは、予定日より早く、予定日通り、あるいは予定日より遅く生まれたかどうかにかかわらず、体重が同じ在胎週数で生まれた赤ちゃんの90%より下にある新生児のことをいう。原因の多くは、単に遺伝的な理由によるもの(両親が小柄であるなど)。そのほかには、胎盤の機能が十分ではなかったために、胎児が適切な栄養を取れずに成長が阻害された場合である。これは母親が、高血圧、妊娠中毒症、腎臓疾患、あるいは糖尿病にかかっていた場合などに起こる。
【不当軽量児の生じやすい問題】
低血糖:グリコーゲンの蓄えが少なく、血糖値が低下しやすい。
低体温:皮下脂肪が少ないため、体温調節が難しい。
多血症:胎内での慢性的な低酸素状態により、赤血球が増加する。
高ビリルビン血症(黄疸):多血症に伴い、赤血球の破壊が増え、ビリルビンが増加する。
1.× 貧血より優先されるものが他にある。なぜなら、SGA児では赤血球数が増えるため、貧血(赤血球数やヘモグロビン濃度の低下)はむしろ起こりにくい。
2.〇 正しい。黄疸は、出生時体重2000gの児でAGAに比べ、SGAに生じやすい異常である。なぜなら、SGA児には多血症が多いため。SGA児は胎内での慢性的な低酸素状態により、エリスロポエチンの分泌が増加し、赤血球が過剰に産生され、多血症(赤血球数の増加)が起こりやすくなる。多血症により赤血球が多いと、その破壊によってビリルビンが増え、黄疸が出やすくなる。ちなみに、多血症とは、血液の中の赤血球やヘモグロビンの量が基準値よりも多くなる病気のことをいう。多血症には、①肥満、高血圧、緊張によるストレス多血症、②アルコール多飲や脱水による循環血症量の減少による相対的多血症、③喫煙や肺疾患による低酸素血症による多血症、④JAK2遺伝子の後天的変異による真性多血症や造血ホルモン産生腫瘍による2次性多血症があげられる。
3.× 呼吸障害より優先されるものが他にある。呼吸障害は、早産児の特徴である。呼吸障害、特に呼吸窮迫症候群(RDS)は、肺サーファクタントの不足による。在胎34週ころになると、肺サーファクタントが十分な量になり、肺機能は完成する。臓器のなかで肺機能が最後に成熟する。妊娠34週になると、肺の働きが成熟する。ちなみに、肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。
4.× 動脈管開存症より優先されるものが他にある。動脈管開存症は、早産児の特徴である。動脈管開存症とは、胎児期に開存している大動脈と肺動脈間に存在する動脈管が出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患である。つまり、出生後に動脈管が自然閉鎖しない病気である。大動脈から肺動脈への短絡が生じ、管が大きいと左心系の容量負荷になる。出生後は肺動脈圧が下がるため、胎児期とは逆に大動脈から肺動脈へ血液が流れるようになり、肺の血流が増加する。したがって、典型例では、ピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。治療が必要な症状として、動脈管が太く、たくさん血液が肺に流れて肺うっ血による心不全症状(哺乳不良、嘔吐、体重増加不良、頻脈、頻呼吸など)を引き起こした場合である。
呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。