第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 27歳の女性。主婦。28歳の夫との2人暮らし。夫とともに不妊症の検査目的で受診した。結婚後2年間は避妊していた。子どもが欲しいと思い避妊を止めて3年たつが妊娠しないという。

46 女性は検査結果を聞き終わると「思い切って受診して良かったです。夫婦で、将来について真剣に話し合います」と話した。
 女性の心理的特徴で正しいのはどれか。

1.不妊かもしれないと気付き始める段階
2.不妊の原因を受け止める段階
3.治療に専念し始める段階
4.治療から離れる段階

解答

解説

本症例のポイント

・27歳の女性(主婦、2人暮らし:28歳の夫)。
・子どもが欲しいと思い避妊を止めて3年たつ。
・検査結果の聴取後「思い切って受診して良かったです。夫婦で、将来について真剣に話し合います」と。
→現時点で、本症例の気持ちや考えを共感してみよう。

1.× 「不妊かもしれない」と気付き始める段階は考えにくい。なぜなら、本症例は、すでに不妊の検査を実施し、結果をすでに聞いているため。ちなみに、「不妊かもしれない」と気付き始める段階は、妊娠を希望して一定期間(一般的には1年以上)経っても妊娠しないことで、不妊の可能性に初めて気付き、不安や戸惑いを感じる時期である。

2.〇 正しい。不妊の原因を受け止める段階は、本症例の心理的特徴と合致する。なぜなら、本症例は、検査結果をすでに聞き、不妊の原因が判明し、その結果を受け入れて今後の対応を考えている状態であるため。本症例は、検査結果を聞き終わった後、「思い切って受診して良かったです。夫婦で、将来について真剣に話し合います」と話している。これは、不妊の原因を理解し、パートナーとともに今後の治療方針や生活設計について前向きに考えようとしている姿勢であると考えられる。

3.× 治療に専念し始める段階は考えにくい。なぜなら、本症例は、検査結果の聴取後「夫婦で、将来について真剣に話し合います」と、具体的にどのような治療方針を決定したか未定である段階であるため。つまり、まだ治療に専念し始めたわけではなく、今後の方針を話し合う段階であり、治療開始前の状態と考えられる。

4.× 治療から離れる段階は考えにくい。なぜなら、本症例は、まだ治療を開始しておらず、今後の治療や生活について夫婦で話し合おうとしている状況であるため。したがって、治療から離れる段階ではない。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 37歳の初産婦。妊娠39週3日の午前1時に陣痛発来し、午前4時に入院した。入院時は陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。内診で子宮口3cm開大、展退度60%、未破水であった。

47 産婦は午後1時ころから陣痛発作時に強い痛みを訴えるようになった。午後2時、陣痛間欠5〜6分、陣痛発作40〜50秒。内診で子宮口6cm開大、展退度80%、Station-1、矢状縫合が横径に一致している。産婦は疲れた様子で「痛い。あとどれくらいかかるのですか」と言う。
 この時点の助産診断で正しいのはどれか。

1.微弱陣痛
2.遷延分娩
3.正常経過
4.Friedman〈フリードマン〉曲線における潜伏期

解答

解説

本症例のポイント

・37歳の初産婦
・妊娠39週3日の午前1時:陣痛発来(午前4時に入院)。
・入院時:陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。
・内診:子宮口3cm開大、展退度60%、未破水。
・午後1時ころ:陣痛発作時に強い痛みの訴え。
午後2時:陣痛間欠5〜6分、陣痛発作40〜50秒。
・内診:子宮口6cm開大、展退度80%、Station-1、矢状縫合が横径に一致している。
・疲れた様子「痛い。あとどれくらいかかるのですか」と。
→各選択肢の診断条件や基準などしっかりおさえておこう。

1.× 微弱陣痛といえない。なぜなら、本症例(子宮口6cm開大)は、陣痛間欠5〜6分、陣痛発作40〜50秒であるため。
ちなみに、微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。

2.× 遷延分娩といえない。なぜなら、本症例は、陣痛発来から13時間(午前1時:陣痛発来現在午後2時)であるため。ちなみに、遷延分娩とは、有効な陣痛があるが子宮頸管の開大や胎児の下降が異常に緩徐な場合である。定義として、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らない場合である。なお、初産婦の分娩開始から子宮口が全開大するまでの分娩第一期のみの所要時間は10〜12時間であり、全体の分娩所要時間は12〜15時間である。

3.〇 正しい。正常経過といえる。なぜなら、上記の評価は正常範囲からの逸脱は見られないため。

4.× Friedman〈フリードマン〉曲線における「潜伏期」ではなく活動期である。なぜなら、子宮口が6cm開大しているため。分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大までの期間)として、分娩開始からの時間を横軸に、子宮口開大度と胎児の下降度を縦軸としてグラフ化したものとして、陣痛曲線(Friedman曲線)と呼ばれる。この陣痛曲線(Friedman曲線)は、大量の正常分娩のデータから作成されており、これに照らしあわせることによって、個々の症例の分娩経過が問題ないかを判断することに役立つ。

Friedman曲線とは?

フリードマン曲線とは、分娩第1期から分娩第2期(破水)までの分娩経過をグラフ化したものである。子宮口開大度と胎児の下降度を縦軸に、分娩開始からの時間を横軸に表されている。

(※図引用:「Friedman曲線」20.正常経腟分娩の管理より)

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 37歳の初産婦。妊娠39週3日の午前1時に陣痛発来し、午前4時に入院した。入院時は陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。内診で子宮口3cm開大、展退度60%、未破水であった。

48 午後8時、陣痛間欠3〜5分、陣痛発作50秒。内診で子宮口7cm開大、Station±0、大泉門は2時方向に触れる。
 この時点の助産診断で正しいのはどれか。

1.低在横定位
2.後方後頭位
3.前方後頭位
4.前方前頭位

解答

解説

本症例のポイント

・37歳の初産婦。
・妊娠39週3日の午前1時:陣痛発来(午前4時に入院)。
・午後8時:陣痛間欠3〜5分、陣痛発作50秒。
・内診:子宮口7cm開大、Station±0大泉門は2時方向に触れる。
→上記の評価から正確に読み取れるようにしよう。

(※図:児頭下降度に関する各種表現方法の対応表)

1.× 低在横定位は考えにくい。低在横定位とは、異常分娩の1つであり、第2回旋が起こらなかったため骨盤底に達しても矢状縫合が横径に一致した状態である。児頭が横向きのまま下降するため、縦長の骨盤峡部で引っかかってしまい分娩が停止した状態となる。

2.× 後方後頭位は考えにくい。後方後頭位とは、胎児後頭が母体の後方に向かって回旋(先進部の小泉門が後方に回旋)したものをいう。分娩の経過中に後方後頭位をとるものは1~5%であるが、約70%は分娩進行中に前方後頭位に変わり、一部は定在横定位になる。産道に比べて児頭が相対的に小さい場合に起こりやすいとされ、広骨盤または過少児頭の場合に問題となる。第2回旋の異常(後方後頭位) に対し、腹側を下にした側臥位で休むことにより胎児の自己回転を促す方法がある。

3.× 前方後頭位は考えにくい。回旋異常は,内診により小泉門と大泉門の位置を評価することで診断する。正常の第2回旋は,母体側方の小泉門が母体の前方(12時の方向)に回旋する前方後頭位である。第2回旋の異常である後方後頭位では,小泉門が母体の方向(6時の方向)に回旋する。低在横定位では第2回旋が起こらないままで,児頭が骨盤底まで下降する。

4.〇 正しい。前方前頭位である。本児は、Station±0大泉門は2時方向に触れることから、胎勢異常(反屈位=前頭位)である。したがって、先進する大泉門が2時方向=「母体前方に回旋」してきているため、前方前頭位といえる。

第1頭位とは?

第1頭位とは、胎児の背中が母体の左手側にあることをいう。つまり第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。
第2頭位とは、胎児の背中が母体の右手側にあることをいう。

不正軸進入とは、胎児の頭が背骨に対して左右どちらかへ傾いた状態で骨盤の中に入り込んでしまい、恥骨や仙骨が邪魔になって分娩が停止してしまう状態である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

(※図引用:「助産師基礎教育テキスト:第 5 巻:2020 年版訂正ご案内」株式会社日本看護協会出版会様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 37歳の初産婦。妊娠39週3日の午前1時に陣痛発来し、午前4時に入院した。入院時は陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。内診で子宮口3cm開大、展退度60%、未破水であった。

49 産婦は翌日午前2時に児を娩出した。羊水混濁があり、児の四肢末梢にチアノーゼを認める。児は出生直後に啼泣したが、呼吸は浅くやや速い。四肢の動きを認める。
 新生児蘇生法ガイドライン2010に基づくこの時点の対応で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.酸素投与
2.血糖値測定
3.口腔内吸引
4.胸腹部エックス線撮影
5.温めたタオルでの清拭

解答3・5

解説

本症例のポイント

・37歳の初産婦。
・妊娠39週3日の午前1時:陣痛発来(午前4時に入院)。
・翌日午前2時:児を娩出。
羊水混濁があり、児の四肢末梢にチアノーゼを認める。
・児:出生直後に啼泣したが、呼吸は浅くやや速い
四肢の動きを認める
→NCPRのアルゴリズムにより、どのような対応をすべきか把握しておこう。

JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)

(※図引用:「JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)」一般社団法人 日本蘇生協議会より)

1.× 酸素投与は必要ない。なぜなら、NCPRのアルゴリズムにおいて、出生直後のチェックポイント(早産児、弱い呼吸、啼泣、筋緊張低下)のいずれも該当しないため。

2.× 血糖値測定は必要ない。なぜなら、血糖値測定は、低血糖を示唆する場合(震え、けいれん、無呼吸など)に行われるため。

3.〇 正しい。口腔内吸引を実施する。なぜなら、本症例は羊水混濁があり、児の四肢末梢にチアノーゼを認められることから、胎便吸引症候群が考えられるため。羊水混濁とは、胎児が子宮内で大腸から老廃物(胎便)を排出することで羊水が濁っている状態を指す。羊水混濁の原因として、胎児のストレスや胎便吸引症候群を示唆することがある。ちなみに、胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。

4.× 胸腹部エックス線撮影は必要ない。なぜなら、胸腹部エックス線撮影は、呼吸困難の原因が不明である場合、先天性疾患や肺疾患の診断のため用いられる検査であるため。

5.〇 正しい。温めたタオルでの清拭を実施する。なぜなら、新生児蘇生の初期対応として、乾燥した温かいタオルで児を包み、体温低下を防ぐことは重要であるため。これにより、低体温による代謝異常や呼吸抑制を防ぐことができる。

 

 

 

 

 

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
 30歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。バースプランでは、夫の立会い分娩、出産直後からの母子同室および母乳哺育を希望していた。妊娠40週1日、夫が立会い、3200gの女児を経腟分娩した。分娩所要時間は12時間、総出血量380g。会陰切開・縫合術を受けた。分娩後2時間の母児の経過は良好だったため、帰室して母子同室を開始した。

50 帰室後2時間が経過し、助産師が訪室すると褥婦は「会陰の傷がズキズキと痛いのですが大丈夫ですか」と訴えた。腟と外陰部の状態を観察したところ、創部に軽度の腫脹がみられたが離開や血腫はなかった。児はコットで覚醒している。
 この時点の対応で最も適切なのはどれか。

1.会陰部の冷罨法を行う。
2.鎮痛薬は使えないと説明する。
3.自然に痛みはなくなると説明する。
4.児を添い寝させて気を紛らわせる。

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠経過:順調)。
・妊娠40週1日:夫が立会い、3200gの女児を経腟分娩。
・分娩所要時間:12時間、総出血量380g。
会陰切開、縫合術を受けた。
・帰室後2時間:褥婦「会陰の傷がズキズキと痛いのですが大丈夫ですか」と。
・腟と外陰部:創部に軽度の腫脹、離開や血腫はなかった。
→会陰切開、縫合術の対応をおさえておこう。

1.〇 正しい。会陰部の冷罨法を行う。なぜなら、本症例は、炎症症状がみられるため。炎症症状に対し、冷罨法の冷却により、血管が収縮し、炎症反応が抑制されるため、疼痛の緩和が期待できる。

2.× 「鎮痛薬は使えない」と説明する必要はない。なぜなら、鎮痛薬の使用は、母乳哺育中でも適切な薬剤を選択すれば可能であるため。『アセトアミノフェン』や『非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)』は、乳児の治療量と比べても極めて少なく、母乳中の薬物を摂取した赤ちゃんに有害な影響は起こらなかったとの報告がされている。そのため、これらの解熱鎮痛剤(飲み薬、外用薬含む)を使用中であっても授乳をやめる必要はない(※引用:「母子日赤だより」東京かつしか赤十字母子医療センター様HPより)。

3.× 「自然に痛みはなくなる」と説明する優先度は低い。なぜなら、本症例の「会陰の傷がズキズキと痛いのですが大丈夫ですか」という不安に対し、何の対処もしないのは、苦痛を無視していると感じ取られかねないため。痛みが時間とともに軽減する可能性はあるが、現在の疼痛に対して共感や何らかの具体的な対策を提案することが重要である。

4.× 児を添い寝させて気を紛らわせる優先度は低い。なぜなら、疼痛の直接的な緩和にはつながらないため。疼痛の炎症症状に対しての何らかの具体的な対策を提案することが重要である。

炎症4徴候とは?

炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

 

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