第96回(H25) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 市町村における次世代育成支援の行動計画策定で適切なのはどれか。

1.民間事業者の活用は控える。
2.他の市町村と類似した計画とする。
3.社会的養護を必要とする子どもへの対応を検討する。
4.夫婦と子ども2人の世帯を想定して対策を検討する。

解答

解説

次世代育成支援とは?

次世代育成支援とは、国や自治体、企業が一体となり、次代を担う子供や、子供を育てる家庭を支援する取り組みのことである。国による行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主による行動計画の策定等により支援対策を推進するために必要な措置が講じられている。

1.× 民間事業者の活用は控えるものではない。むしろ、次世代育成支援の行動計画において、民間事業者や地域社会との協力は非常に重要である。「次世代法に基づき、企業は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定することとなっています。常時雇用する労働者が101人以上の企業は、行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局に届け出ることが義務、100人以下の企業は努力義務です」と記載されている(※引用:「次世代育成支援対策推進法」厚生労働省様)。これは、令和6年5月に改正された。

2.× 他の市町村と類似した計画とする必要はない。なぜなら、各市町村は、地域の実情に合わせた独自の計画を策定することが重要であるため。次世代育成支援対策推進法の第8条(市町村行動計画)において、「市町村は、行動計画策定指針に即して、5年ごとに、当該市町村の事務及び事業に関し、5年を一期として、地域における子育ての支援、母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進、子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備、子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保、職業生活と家庭生活との両立の推進その他の次世代育成支援対策の実施に関する計画を策定するものとする」と記載されている(※引用:「次世代育成支援対策推進法」厚生労働省様HPより)

3.〇 正しい。社会的養護を必要とする子どもへの対応を検討する。なぜなら、次世代育成支援では、親のいない子どもや、親の保護が不十分な子どもなど、社会的養護を必要とする子どもたちへの支援が重要な課題となるため。社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことである。

4.× 必ずしも「夫婦と子ども2人の世帯」を想定して対策を検討する必要はない。なぜなら、家族構成は多様化しており、夫婦と子ども2人という典型的な核家族に限定せず、多様な家庭構成(例えば、ひとり親家庭や共働き世帯、祖父母との同居など)を考慮する必要があるため。

 

 

 

 

 

17 母体保護法の目的で正しいのはどれか。

1.母子の生活を支援する。
2.母子保健事業を推進する。
3.母性の生命健康を保護する。
4.母子家庭および寡婦の福祉を保護する。

解答

解説

母体保護法とは?

母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

以下:第14条を一部引用する。

(医師の認定による人工妊娠中絶)
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫かんいんされて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。

(※一部引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)

1.× 母子の生活を支援するのは、「児童福祉法」が当てはまる。児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。

2.× 母子保健事業を推進するのは、「母子保健法」が当てはまる。母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

3.〇 正しい。母性の生命健康を保護するのは、母体保護法の目的である。母体保護法の第一条(この法律の目的)において、「この法律は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする」と記載されている(※一部引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 母子家庭および寡婦の福祉を保護するのは、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」が当てはまる。母子及び父子並びに寡婦福祉法とは、母子家庭等や寡婦に対する福祉資金の貸付け・就業支援事業等の実施・自立支援給付金の給付などの支援措置について定める日本の法律である。母子父子寡婦福祉資金の貸付制度は、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の経済的自立と生活意欲の助長を図り、あわせて児童の福祉を推進することを目的として、修学資金をはじめとした12種類(①就職支度資金、②医療介護資金、③技能習得資金、④生活資金、⑤就学支度資金、⑥修業資金、⑦結婚資金、⑧修学資金、⑨住宅資金、⑩転宅資金など)の資金からなる貸付制度である。

 

 

 

 

 

18 助産師の守秘義務違反とならないのはどれか。

1.妊婦の夫が有名人であることを友人の助産師に話した。
2.妊婦のパートナーが失業していたことを妊婦の母親に伝えた。
3.昨日の感動的な出産をしたAさんのことを妊婦である友人に話した。
4.5歳の子どもの腹部に複数の内出血があることを児童相談所に伝えた。

解答

解説

個人情報とは?

個人情報保護法(第2条)

『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名・生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう。

1.× 妊婦の夫が、有名人であることを「友人の助産師」に話したことは守秘義務違反である。なぜなら、たとえ友人が助産師であっても、妊婦の夫が、有名人であることは、個人のプライバシーであるため。

2.× 妊婦のパートナーが失業していたことを「妊婦の母親」に伝えたことは守秘義務違反である。なぜなら、たとえ妊婦の母親であっても、妊婦のパートナーが失業していたことは、個人のプライバシーであるため。

3.× 昨日の感動的な出産をしたAさんのことを「妊婦である友人」に話したことは守秘義務違反である。なぜなら、たとえ妊婦である友人であっても、妊婦のパートナーが失業していたことは、個人のプライバシーであるため。

4.〇 5歳の子どもの腹部に複数の内出血があることを児童相談所に伝えたことは守秘義務違反とならない。なぜなら、虐待の場合、守秘義務は該当しないため(根拠:DV法第6条2項)。ちなみに、児童虐待防止法6条には「(児童虐待に係る通告)児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」と記載されている(※引用:「児童虐待防止法」e-GOV法令検索様HPより)。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

19 助産業務について正しいのはどれか。

1.臨時応急の手当であっても医行為を行ってはならない。
2.医師の指示の下に行った行為は責任を問われない。
3.業務の範囲内において裁量権がある。
4.死胎の検案はできない。

解答

解説
1.× 臨時応急の手当の場合、医行為を「行うことができる」。これは、保健師助産師看護師法の第37条において「・・・ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)」となっており,臨時応急の手当ての場合医行為を行うことができる。

2.× 医師の指示の下に行った行為は責任を「問われない」と断言することはできない。医療従事者は、それぞれの資格と専門的判断に基づいて行動しなければならず、指示があっても、違法行為や不適切な行為を行った場合には責任を負う可能性がある。詳しくは、保健師助産師看護師法の「第5章 罰則」を参照。

3.〇 正しい。業務の範囲内において裁量権がある。裁量権とは、個人が自らの判断で行動や決定を行うことができる権限のことを指す。助産師は、正常な分娩の介助や産後ケア、新生児ケアなどの助産業務において、適切な判断を下すことが求められる。ちなみに、医師の裁量権とは、医師が患者のために最も有効だと判断した医療行為を医師の判断において実施することができる権利である。医療は人的制約や設備的な制約等、様々な制約の中で行わなければならない。また、高度に専門的な分野であり、治療には一定のリスクを伴うため、最も適した治療や検査等を患者自身が判断することは極めて困難である。したがって、医師に一定の裁量権を与えることによって、最終的には患者の利益になると考えられている。

4.× 死胎の検案は「できる」。死胎検案とは、死産した胎児について、医学的所見や状況を調査して死因や死亡時刻などを判断するものである。死産証書には、妊娠週数や死産児の体重、死産の原因、死産場所など、さまざまな事項が記載される。ちなみに、保健師助産師看護師法の第39条2項において「分べんの介助又は死胎の検案をした助産師は、出生証明書、死産証書又は死胎検案書の交付の求めがあつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

 

 

 

20 男性側の不妊原因で最も多いのはどれか。

1.造精機能障害
2.精路通過障害
3.勃起障害
4.射精障害
5.性欲低下

解答

解説

造精機能障害とは?

不妊症の男性因子は、①造精機能障害、②精路通過障害、③射精障害に分類される。①造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まってしまう状態のことを指す。造精機能障害には、①先天性(Klinefelter<クラインフェルター>症候群など)、②医原性のもの(化学療法・放射線療法など)、③精索静脈瘤によるもの、④突発性がある。このなかでは④突発性機能障害が最も多い。精子の機能が弱まる(=精液所見が悪くなる)ことで、自然妊娠が難しくなり、人工授精や体外受精、顕微授精をすることになる。①造精機能障害の原因として、約半分は原因不明なのに対し、精索静脈瘤が36.6%で、ホルモン低下によるものは1.2%である。いずれも治療可能な疾患である。

1.〇 正しい。造精機能障害は、男性側の不妊原因で最も多い(約80%)。2016年に公表された全国調査の結果では、造精機能障害が82.4%、精路通過障害が3.9%、性機能障害が13.5%であり、以前の調査と比較して性機能障害の割合が増加しています。

2.× 精路通過障害は、約4%である。精路通過障害とは、精巣では精子が作られているにも関わらず、精子の通り道(精路)に何らかの異常があり、精子が出ない状態である。

3~5.× 勃起障害/射精障害/性欲低下は、性的機能障害に該当し、全体で13.5%である。性的機能障害とは、性的な行為において、適切な性的応答や反応が得られない状態を指す。 男女を問わず、性欲減退や勃起障害、早漏、遅漏、オルガスムス障害、膣乾燥症候群などが代表的な性的機能障害として挙げられる。これらの症状は、身体的、心理的、あるいは両方の原因によって引き起こされることがある。

射精障害とは?

射精障害とは、性機能障害のうち、勃起には大きな問題は見られないが正常な射精の行えない症状のことを指す。男性不妊症にも該当する。早漏や遅漏、腟内射精障害、勃起障害(ED)も射精障害に含まれる。射精障害には心因性のものと、精液が膀胱中に射出される逆行性射精障害がある。

 

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