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36 25歳の経産婦。妊娠40週。午前1時に子宮口3cm開大で入院したが、陣痛が弱くなったため陣痛間欠時に眠っている。午前11時、陣痛周期は8〜9分であり「痛みは強くありません」と言う。内診所見は、子宮口4cm開大、展退度70%、Station-1であった。胎児心拍数陣痛図は正常波形であった。未破水である。昼食は全量摂取している。昨夜排便があった。
陣痛を促進するための効果的なケアはどれか。2つ選べ。
1.グリセリン浣腸を実施する。
2.努責を誘導する。
3.歩行を勧める。
4.入浴を勧める。
5.導尿する。
解答3・4
解説
・25歳の経産婦(妊娠40週)。
・午前1時:子宮口3cm開大で入院。
・陣痛が弱くなったため陣痛間欠時に眠っている。
・午前11時:陣痛周期は8〜9分、「痛みは強くありません」と。
・内診所見:子宮口4cm開大、展退度70%、Station-1。
・胎児心拍数陣痛図:正常波形。
・未破水、昼食は全量摂取、昨夜排便があった。
→本症例は、分娩第1期であり、陣痛が弱いため、分娩を促進するケアが必要である。自然な方法で陣痛を促進するためには、体を動かすことやリラックスすることが重要である。
1.× グリセリン浣腸を実施する必要はない。なぜなら、本症例は昨夜に排便があったため。グリセリンとは、排便を促す目的のために浣腸液である。グリセリン浣腸とは、直腸内に50%グリセリン液を注入して排便を促す処置のことである。術前処置または便秘の治療として、直腸内容物を除去するために行われる。浣腸は一般的な処置であるが、腸管穿孔や溶血、血圧低下などさまざまなリスクがある。
2.× 努責を誘導する必要はない。なぜなら、本症例は、分娩第1期(子宮口4cm開大)であるため。努責(いきみ)は、胎児が下がってくる分娩第2期(子宮口が完全に開大)で行う。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。
3.〇 正しい。歩行を勧める。なぜなら、歩行は陣痛を促進する効果があるため。これは、重力により胎児の下降を助けることができる。また、適度な運動は、精神的にも気分転換に寄与する。
4.〇 正しい。入浴を勧める。なぜなら、入浴はリラックス効果があり、母体がリラックスすることで陣痛が促進されることがあるため。また、本症例は、未破水であることから、母子とも安全に実施することができる。
5.× 導尿する必要はない。なぜなら、導尿の適応に該当しないため。導尿の対象者は、急性尿閉や水腎症を来した慢性尿閉、全身管理が必要な重症患者、全身麻酔下の手術を受ける患者、骨折した患者などに用いられる。つまり、尿意がない患者に適応となりやすい。ただし、カテーテルを長期にわたり留置すると、尿路感染や出血、膀胱萎縮などのリスクが高まり、QOLの低下を招く。
37 ともに外国籍の両親が日本国内で出生した児を日本で養育するために必要となるのはどれか。2つ選べ。
1.出生届の提出
2.日本国籍の申請
3.日本の戸籍の作成
4.パスポートの申請
5.在留資格取得許可の申請
解答1・5
解説
外国人が日本で出生した場合、出生した日を含め14日以内に出生届を提出する必要があります。
出生届が提出されると、住所地において「出生による経過滞在者」として住民票を作成します。
なお、経過滞在期間の60日を超えて、日本に在留する場合は、出生から30日以内に出入国在留管理庁において在留資格の取得を申請する必要があります。また、特別永住許可の対象者は、出生から60日以内に市役所で特別永住許可の申請を行うことにより、特別永住許可を受けることができます。
(※引用:「FAQ」長浜市様HPより)
1.〇 正しい。出生届の提出は、ともに外国籍の両親が日本国内で出生した児を日本で養育するために必要となる。出生届の提出は、両親の国籍にかかわらず、日本で出産した場合は届け出なければならない。ちなみに、出生届とは、生まれてきたお子さんの氏名等を戸籍に記載するための届出である。戸籍に記載されることで、生まれてきたお子さんの親族関係が公的に証明され、住民票が作成される。なお、外国人のお子さんであっても、日本国内で出生した場合は、出生届をしなければならない。戸籍法により、出生届は出生日を含めて14日以内に在住している市区町村の役所に提出する。
2.× 日本国籍の申請は行うことができない。なぜなら、日本国籍の取得条件に当てはまらないため。日本国籍の取得条件には、「5年以上日本に住所を有すること」などがあげられる(国籍法5条)。本症例の場合、出生届を提出した後、「出生による経過滞在者」として住民票を作成される。60日間は日本に滞在できる。
3.× 日本の戸籍の作成は行うことができない。なぜなら、両親が外国籍の場合、その子どもは日本国籍を持たないため。戸籍は日本国籍を持つ人に対してのみ作成される。
4.× パスポートの申請は不要である。なぜなら、日本での養育と日本のパスポートは関係ないため。また、日本のパスポートの申請条件にも当てはまらない。日本のパスポートは、日本国籍のみつくることができる。
5.〇 正しい。在留資格取得許可の申請は、ともに外国籍の両親が日本国内で出生した児を日本で養育するために必要となる。在留資格取得許可申請とは、日本国籍を離脱したことや、日本で出生したことなどの理由から、上陸の手続を受けることなく日本に在留することとなる外国人の方が、当該理由が発生した日から60日間を超えて日本に在留しようとする場合に、在留資格を取得するために行う申請である。根拠法令として、「出入国管理及び難民認定法第22条の2及び第22条の3」があげられる(※参考:「在留資格取得許可申請」出入国在留管理庁様HPより)。
38 在胎30週、1600gにて出生した新生児。保育器に収容され、呼吸障害に対して経鼻的CPAP療法が行われている。
このときのケアとして正しいのはどれか。2つ選べ。
1.動脈血酸素分圧〈PaO2〉100Torrを目標に酸素濃度を調節する。
2.経口哺乳は生後6時間から開始する。
3.投与する水分量の目安を60ml/kg/日とする。
4.保育器内の温度は36〜37℃に設定する。
5.保育器内の湿度は60%に設定する。
解答3・5
解説
・新生児(在胎30週、1600g、保育器に収容)。
・呼吸障害に対して経鼻的CPAP療法。
→本症例は、早産児(在胎22週以降37週未満児のこと)かつ低出生体重児(2500g未満児のこと)といえる。したがって、呼吸障害に対する経鼻的CPAP療法を受け、体温調節、水分管理、酸素投与など保育器によって管理されている。閉鎖式保育器とは、未熟性の高い出生直後の新生児・未熟児を収容する医療機器である。
→持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。
(※図引用:「経静脈的水分摂取量」著:千葉正博様)
1.× 動脈血酸素分圧〈PaO2〉は、「100Torr」ではなく50〜80Torrを目標に酸素濃度を調節する。なぜなら、動脈血酸素分圧〈PaO2〉を100Torr以上に保つことは、酸素過剰な状態や過換気が考えられるため。
2.× 経口哺乳は、生後6時間から開始する必要はない。なぜなら、本症例は、早産児(在胎22週以降37週未満児のこと)かつ低出生体重児(2500g未満児のこと)であるため。早産児は胃が小さく、吸啜反射および嚥下反射は未熟であり、胃および腸管運動が不十分であるため、哺乳不良がみられることが極めて多い。このような因子により経口栄養および経鼻胃管栄養への耐容能が共に妨げられ、誤嚥リスクが生じる。経口哺乳は体重が2,000g以上になって行うことが多い。ちなみに、早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことである。分娩時期の分類として、①流産期とは、妊娠21週6日までの妊娠中絶(分娩)。②早産期とは、妊娠22週0日~36週6日における分娩。③正期産とは、妊娠37週0日~41週6日までの分娩。④過期産とは、42週0日以後の分娩である。
3.〇 正しい。投与する水分量の目安を60ml/kg/日とする(※上図:参照)。低出生体重児は全体重の約80%が水分であり、その割合は早期に生まれてくるほど大きい。水分量の調整には腎濃縮力が大きく関わるが、腎集合管などの構造上の未熟性や抗利尿ホルモンの分泌量が少ないことから濃縮力は低く水分の保持が困難である。加えて、体重が少ないほど体重あたりの体表面積は大きく不感蒸泄も多いため容易に脱水を起こす(※参考:「経静脈的水分摂取量」著:千葉正博様)。
4.× 保育器内の温度は、「36〜37℃」ではなく34.0±0.5℃に設定する。新生児が生まれた際の体重に応じて、適切な体温管理を行う必要がある。日齢0の場合、1000g未満は保育器内36.0℃に設定する。1000~1500gは保育器内35.0±0.5℃に設定する。1500~2000gは保育器内34.0±0.5℃に設定する。2500g以上は33.0℃に設定する。(※参考:(「新生児の診察と検査」著:小川雄之亮)
5.〇 正しい。保育器内の湿度は60%に設定する。なぜなら、出生直後の児は皮膚からの蒸散によって熱や水分が奪われやすく、気道粘膜が乾燥すると細菌やウィルスへの抵抗力が低下しているため。
過期産児とは:在胎42週以上に出生した児。
正期産児とは:在胎37週以降42週未満に出生した児。
早産児とは:在胎22週以降37週未満に出生した児。
超早産児とは:在胎28週未満に出生した児。
低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。外的ストレスをできる限り減らす必要がある。ポジショニングは、体内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。なぜなら、低出生体重児は、胎内で屈曲姿勢をとる期間が少なく、神経系の発達が未成熟、在胎週数に応じた筋緊張が低下を認めるため。したがって、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすい。胎内での屈曲姿勢に近い肢位をとらせるのが正しい。そのため、タオルやクッションなどを使用し姿勢のセッティングが必要になる。ポイントは、①頚部の軽度屈曲位、②肩甲帯の下制・前進、③骨盤後傾、④肩・股関節中間位(内・外転)、⑤上・下肢屈曲位である。
39 生後2か月から接種が可能なワクチンはどれか。2つ選べ。
1.Hibワクチン
2.麻疹ワクチン
3.DPTワクチン
4.肺炎球菌ワクチン
5.日本脳炎ワクチン
解答1・4
解説
(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)
1.〇 正しい。Hibワクチンは、生後2か月から接種が可能なワクチンである。対象年齢は生後2か月から5歳に至るまでである。ちなみに、インフルエンザ菌b型〈Hib〉感染症とは、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型という細菌によって発生する病気で、そのほとんどが5歳未満で発生し、特に乳幼児で発生に注意が必要である。主に気道の分泌物により感染を起こし、症状がないまま菌を保有(保菌)して日常生活を送っている子どもも多くいる。
2.× 麻疹ワクチンは、生後12か月から接種が可能なワクチンである。
3.× DPTワクチンは、生後3か月から接種が可能なワクチンである。DPTワクチンとは、ジフテリア(D:diphtheria)、百日咳(P:pertussis, whooping cough)、破傷風(T:tetanus)の3種混合ワクチンである。
4.〇 正しい。肺炎球菌ワクチンは、生後2か月から接種が可能なワクチンである。肺炎球菌ワクチンとは、肺炎球菌感染症を予防する定期接種の不活化ワクチンである。生後2ヶ月〜満5歳までの間に4回打つ。
5.× 日本脳炎ワクチンは、生後5か月から接種が可能なワクチンである(推奨期間は2歳以降)。日本脳炎ウイルス感染を予防する定期接種ワクチンである。ちなみに、日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。
40 分娩監視装置による連続的モニタリングが勧められるのはどれか。2つ選べ。
1.前期破水
2.予定日超過
3.分娩第1期
4.子宮収縮薬投与中
5.41ml以上のメトロイリンテル挿入中
解答4・5
解説
「経過観察」を満たしても、以下の場合は連続モニタリングを行う(ただし、トイレへの歩行や病室の移動等で胎児心拍数が評価できない期間を除く)
1)分娩第2期のすべての産婦
2)分娩時期を問わず、以下のような場合(①子宮収縮薬使用中、②用量41mL以上のメトロイリンテル挿入中、③用量41mL未満のメトロイリンテル挿入中であっても陣痛が発来した場合、④無痛分娩中、⑤38℃以上の母体発熱中、⑥上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合)
3)分娩時期を問わず、以下のようなハイリスク妊娠の場合(①母体側要因:糖尿病合併、“妊娠中の明らかな糖尿病”、コントロール不良な妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、妊娠・分娩中の低酸素状態が原因と考えられる脳性麻痺児、子宮内胎児死亡児出産既往(概ね30週以上)、子癇既往、子宮体部への手術歴、②胎児側要因:胎位異常、推定体重<2,000g、胎児発育不全、多胎妊娠、サイトメガロウイルス感染胎児、③胎盤、羊水、臍帯の異常:低置胎盤、羊水過多、羊水過少、臍帯卵膜付着が診断されている場合)
4)その他、ハイリスク妊娠と考えられる産婦(コントロール不良の母体合併症等)
7.以下の場合は分娩監視装置を一定時間(20 分以上)装着してモニタリングを記録し、評価する。1)破水時、2)羊水混濁あるいは血性羊水を認めたとき、3)間欠的児心拍数聴取で(一過性)徐脈、頻脈を認めたとき、4)分娩が急速に進行したり、排尿・排便後など、胎児の位置の変化が予想される場合(間欠的児心拍聴取でもよい)
(※引用「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223」)
1.× 前期破水は、連続的モニタリングの必要性はない。前期破水とは、陣痛開始前のいずれかの時点で胎児の周りの羊水が流れ出ることである。多くの場合、破水後まもなく陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。
2.× 予定日超過は、連続的モニタリングの必要性はない。なぜなら、予定日超過は、ハイリスクとはいえないため。
3.× 分娩第1期は、連続的モニタリングの必要性はない。分娩第2期のすべての産婦に、連続的モニタリングとなる。
4~5.〇 正しい。子宮収縮薬投与中/41ml以上のメトロイリンテル挿入中は、分娩監視装置による連続的モニタリングが勧められる。「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223」の連続モニタリングの適応において、「2)分娩時期を問わず、以下のような場合(①子宮収縮薬使用中、②用量41mL以上のメトロイリンテル挿入中、③用量41mL未満のメトロイリンテル挿入中であっても陣痛が発来した場合、④無痛分娩中、⑤38℃以上の母体発熱中、⑥上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合)」に該当する。ちなみに、メトロイリンテルとは、子宮口が開かない際に挿入する器具であり、挿入が容易で産婦の苦痛も少ない上に効果も大きいため陣痛誘発にも用いられている。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。