第96回(H25) 助産師国家試験 解説【午前26~30】

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26 30歳の初産婦。昨日午後10時に内診所見子宮口2cm開大で入院した。本日午前7時、陣痛間欠2分、陣痛発作50〜60秒。内診所見は、子宮口9cm開大、Station+1。胎児心拍数陣痛図では正常波形。時々悪心があり、陣痛に関係なく、ベッド上で体を丸めてベッド柵にしがみついている。
 産婦への援助で最も適切なのはどれか。

1.入浴を促す。
2.乳頭刺激を行う。
3.力を抜くよう促す。
4.坐位になるよう促す。
5.朝食の全量摂取を促す。

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦。
・昨日午後10時:子宮口2cm開大で入院。
・本日午前7時:陣痛間欠2分陣痛発作50〜60秒
・内診所見:子宮口9cm開大、Station+1。
・胎児心拍数陣痛図:正常波形。
・時々悪心があり、陣痛に関係なく、ベッド上で体を丸めてベッド柵にしがみついている
→本症例から、「ベッド上で体を丸めてベッド柵にしがみついている」ため適切な支援・対応を考えていこう。本症例は、分娩第1期である。陣痛周期に異常は見られない。

→微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。子宮口が完全に開いてから(分娩第2期)は、初産婦では4分以上、経産婦では3分30秒以上が微弱陣痛の目安となる。

1.× 入浴を促すより優先されるものが他にある。なぜなら、分娩第1期の入浴の効果に対するエビデンスは乏しいため。「分娩第1期の入浴(お湯につかること)の効果として、硬膜外麻酔などの使用、痛み、次回の妊娠・分娩を望まない割合の減少が認められた。入浴による産痛緩和の効果は、推奨の強さはCとしている(※一部抜粋:「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期 2016」)」。

2.× 乳頭刺激を行うより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の陣痛周期に異常は見られないため。ちなみに、乳頭の刺激は、子宮収縮を誘発させる作用がある。分娩後出血の予防介入方法のひとつである。ちなみに、乳頭刺激のほかにも、授乳、子宮底のマッサージまたは圧迫、子宮の冷罨法などあげられるが、未だ有効性が検証されていないものも多い。

3.〇 正しい。力を抜くよう促す。なぜなら、本症例の様子は「ベッド上で体を丸めてベッド柵にしがみついている」ため、力が入っていると考えられるため。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。本事例の母親の子宮口は、「9cm開大」であり全開大(約10cm)していないことから、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)と考えられる。陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。

4.× 坐位になるよう促すより優先されるものが他にある。なぜなら、坐位は必ずしも力を抜く姿勢ではないため。むしろ、力を抜く点に関しては、側臥位が望ましい。
・半坐位の【利点】①分娩第2期が短縮できる、②新生児との対面がしやすい、③子宮胎盤循環が良好に保たれる、④娩出力が有効、⑤会陰裂傷予防があげられる。【欠点】①背中の支えが必要、②母体血圧が上昇しやすい、③墜落分娩、④外陰部の浮腫が生じやすい、⑤脱肛を生じやすい。
・側臥位の【利点】①会陰裂傷の防止、②産婦が休息しやすい、③後方後頭位の回転に有効、④子宮胎盤血流量の減少が少ない。【欠点】①娩出力の低下、②産婦の表情がわかりづらい、③分娩時に足を保持する者が必要、④胎児心音が聴取しづらい。(※参考:「フリースタイル出産」看護roo!様HPより)

5.× 朝食の全量摂取を促す必要はない。なぜなら、本症例は、時々悪心がみられる状態であるため。食事を摂取するよりも、「ベッド上で体を丸めてベッド柵にしがみついている」様子から、リラックスと体力の維持を重視する必要がある。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

27 新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉で正しいのはどれか。

1.女児に多い。
2.肺表面活性物質は過剰である。
3.母親が糖尿病であると発症しやすい。
4.破水から出生までの時間が長いほど発症しやすい。
5.新生児へのステロイド治療によって症状が軽減する。

解答

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.× 「女児」ではなく男児に多い。呼吸窮迫症候群のリスクは、早産や糖尿病母体。分娩発来前の帝王切開、双胎(第2子)仮死男児である。一方、呼吸窮迫症候群のリスクの減少要因は、母体のステロイド投与、妊娠高血圧症候群などである。

2.× 肺表面活性物質は、「過剰」ではなく不足である。なぜなら、肺表面活性物質(サーファクタント)が不足し、肺胞がうまく膨らまず、呼吸困難を引き起こすため。

3.〇 正しい。母親が糖尿病であると発症しやすい。なぜなら、早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、胎児のサーファクタント産生が遅れやすくなる報告があるため。

4.× 破水から出生までの時間が長いほど発症しにくい。なぜなら、破水後時間が経つことによって、胎児の肺成熟が進むため。肺が一定のストレスを受けることで、サーファクタント産生が促されることがある。

5.× 「新生児」ではなく母体へのステロイド治療によって症状が軽減する。なぜなら、母体へステロイドを投与することで、胎児の肺成熟を促すことができるため。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。出生して肺呼吸が始まったときに肺サーファクタントが欠乏していると、肺胞内壁の水分が作り出す表面張力による肺を押しつぶすような力に対抗できない。肺がつぶれて伸展できず呼吸が障害される(新生児呼吸窮迫症候群の原因)。

 

 

 

 

 

28 2000年に策定された「健やか親子21」における2014年までの目標として正しいのはどれか。

1.10代の飲酒率を半減する。
2.10代の人工妊娠中絶をなくす。
3.朝食を欠食する子どもの割合を半減する。
4.かかりつけの小児科医を持つ親の割合を100%にする。
5.不妊治療のカウンセリングを受けられる割合を倍増する。

解答

解説

(※引用:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)

健やか親子21とは?

健やか親子21は、平成25年の第1次計画の最終評価報告書を受け、平成27年度より第2次計画が開始されている。第1次計画では目標を設定した指標が多かったため、第2次計画では見直しを行い、目標を設けた52の指標と、目標を設けない「参考とする指標」として28の指標を設定した。第2次計画の中間評価は5年後、最終評価は10年後を予定している。

<目標>
1. 思春期の保健対策の強化と健康教育の推進(十代の自殺、人工妊娠中絶、性感染症罹患)
2. 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援(妊産婦死亡、産後うつ病、産婦人科医・助産師数)
3. 小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備(低出生体重児、事故、妊娠・育児期間中の喫煙)
4. 子どものこころの安らかな発達の促進と育児不安の軽減(虐待死亡、母乳育児、心の問題に対応する小児科医)

(※参考:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)

1.× 10代の飲酒率を「半減」ではなく0%にする(※下図参照)。

2.× 10代の人工妊娠中絶を「なくす(0%)」のではなく6.5にする(※下図参照)。

3.× 朝食を欠食する子どもの割合を「半減」ではなく小学5年生 5.0%中学2年生 7.0%する(※下図参照)。

4.△ かかりつけの小児科医を持つ親の割合を100%にする。3・4か月児 80.0%、3歳児 90.0%と明記されている。

5.× 不妊治療のカウンセリングを受けられる割合を「倍増する」といった明記はない

(※引用:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

29 「母性健康管理指導事項連絡カード」について規定している法律はどれか。

1.労働基準法
2.母子保健法
3.母体保護法
4.国民健康保険法
5.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

解答

解説

母性健康管理指導事項連絡カードとは?

母性健康管理指導事項連絡カードとは、妊娠中および出産後の女性従業員が、病院やクリニックから指導を受けた内容を適切に事業主に伝達するための書類で、通称「母健連絡カード」と呼ばれる。母性健康管理指導事項連絡カードの記載は、助産師(もくしは医師も)が行える。母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

1.× 労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。

2.× 母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

3.× 母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

4.× 国民健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。

5.〇 正しい。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)において、「母性健康管理指導事項連絡カード」について規定している。母性健康管理指導事項連絡カードを活用して、「勤務時間の短縮」や「作業の制限」を申請できる。これは、男女雇用機会均等法の第十三条には「事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない」と記載されている(※「男女雇用機会均等法」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

 

 

 

30 トキソプラズマ症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.妊婦の尿検査によって診断する。
2.胎児への感染は母体経腟上行感染である。
3.妊婦の初感染は胎児感染のリスクが高い。
4.胎児に感染した場合は心室中隔欠損を生じる。
5.感染した動物の糞尿に妊婦が触れることによって感染する。

解答3・5

解説

トキソプラズマ感染症とは?

先天性トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)の経胎盤感染によって引き起こされる。症状として、未熟性、子宮内胎児発育不全、黄疸、肝脾腫、心筋炎、肺炎、発疹、脈絡網膜炎、水頭症、頭蓋内石灰化、小頭症、痙攣である。十分な加熱処理がされていない生肉、トキソプラズマの終宿主である猫との接触・糞尿処理が感染のリスクとなる。

1.× 妊婦の「尿検査」ではなく血液検査(血清学的検査またはPCR検査)によって診断する。トキソプラズマIgG抗体陽性となった場合には、トキソプラズマ症に罹患していることが疑われる。トキソプラズマは日本において妊婦の抗体保有率が最も低い。日本人のトキソプラズマ抗体陽性率は年齢x(0.1~1)%(例えば、30歳では3~30%)と年齢とともに上昇し、妊婦のトキソプラズマ抗体保有率は全体で10.3%、35歳以下では9.6%と報告されている。トキソプラズマに感染したことのない妊婦が約9割を占めており、妊娠中の初感染を起こしうる。

2.× 胎児への感染は、「母体経腟上行感染」ではなく胎内感染(経胎盤感染)が多い。経胎盤感染は、トキソプラズマのほかに梅毒、サイトメガロウイルス、パルボウイルス、風疹などがあげられる。母体経腟上行感染とは、腟や子宮頸管の病原体が子宮内へ上行し、分娩前に胎児に感染する感染症である。多くの場合、前期破水や細菌性腟症から上行性に頸管炎、絨毛膜羊膜炎、羊水感染、臍帯 炎、胎児感染へと、感染が波及していくと考えられている。

3.〇 正しい。妊婦の初感染は胎児感染のリスクが高い。妊婦がトキソプラズマに初感染した場合を除いて原則的に胎児感染することはなく、妊娠中の初感染と判断される場合に治療対象となる。妊婦のトキソプラズマ初感染による胎児感染率は妊娠時期の影響をうけ、妊娠12週の胎児感染率は6%程度であるが、臨床症状出現率は75%と高く、妊娠経過とともに胎児感染率は上昇するものの臨床症状出現率は低下する。 しかし、妊娠初期に感染したものほど、症状が重症化する確率が高いとされる。(※参考:「妊婦のトキソプラズマ感染で使用する抗トキソプラズマ原虫剤「スピラマイシン」の発売」日本産婦人科会より)

4.× 胎児に感染した場合は、「心室中隔欠損」ではなく未熟性、子宮内胎児発育不全、黄疸、肝脾腫、心筋炎、肺炎、発疹、脈絡網膜炎、水頭症、頭蓋内石灰化、小頭症、痙攣を生じる。ちなみに、心室中隔欠損のリスク要因は、遺伝的要因、母体の妊娠中の環境や生活習慣、関連する他の疾患や症候群など多くの要素が絡み合って発症を引き起こす。また、心室中隔欠損症とは、心室を隔てる壁に穴が開いているため血液の交通が生じる病気である。欠損を通る血液は左心室から右心室へ流れ、肺動脈に血液が多く流れることにより、肺うっ血や肺高血圧を引き起こす。多呼吸や陥没呼吸という呼吸器症状がみられ、哺乳不良や体重増加不良などの心不全症状が生じる。心室中隔欠損症の症状として、①肺動脈に血液が多く流れることにより、肺に血液がうっ滞する現象である「肺うっ血」や肺動脈の血圧が上昇する「肺高血圧」という状態を引き起こす。それにより呼吸が苦しくなり、多呼吸(呼吸数の増加)や陥没呼吸(肋骨の下が凹む呼吸様式)という呼吸器症状が初めに見られ、呼吸が苦しいことで哺乳不良や体重増加不良へとつながる。これらの症状を心不全症状と呼ぶ。

5.〇 正しい。感染した動物の糞尿に妊婦が触れることによって感染する。トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)の経胎盤感染によって引き起こされる。症状として、未熟性、子宮内胎児発育不全、黄疸、肝脾腫、心筋炎、肺炎、発疹、脈絡網膜炎、水頭症、頭蓋内石灰化、小頭症、痙攣である。十分な加熱処理がされていない生肉、トキソプラズマの終宿主である猫との接触・糞尿処理が感染のリスクとなる。

 

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