第96回(H25) 助産師国家試験 解説【午前21~25】

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21 病院で助産師外来を開設することになった。
 目標管理過程のPDCAサイクルの組合せで適切なのはどれか。

1.P:調査結果を参考に助産師外来の時間を変更する。
2.D:助産師外来の運営方法や人員配置について計画する。
3.C:利用者満足度調査を実施する。
4.A:助産師外来を実施する。

解答

解説

MEMO

PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)は、計画(P)→実施(D)→再評価(C)→アセスメント(A)というサイクルのことを指す。

1.× 調査結果を参考に助産師外来の時間を変更することは、アセスメント(A:改善)に該当する。

2.× 助産師外来の運営方法や人員配置について計画することは、計画(P)に該当する。

3.〇 正しい。利用者満足度調査を実施することは、再評価(C)に該当する。

4.× A:助産師外来を実施することは、実施(D)に該当する。

 

 

 

 

 

22 助産所の管理で正しいのはどれか。

1.妊産婦の入所数は1〜19人である。
2.開設者と管理者は同一人物でなければならない。
3.開設者は嘱託医師名を都道府県知事に届け出る。
4.業務に従事する助産師の略歴を広告してはならない。

解答

解説

助産所について

助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。

1.× 妊産婦の入所数は、「1〜19人」ではなく10人以下である。これは、医療法第2条2項において、「助産所は、妊婦、産婦又はじよく婦十人以上の入所施設を有してはならない」と記載されている(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

2.× 開設者と管理者は同一人物で「なければならない」という規則はない。助産所の管理者は、助産師ではなければならない。一方、助産所の開設者は、助産師でなくてもよい。医療法第11条以降に書かれている。

3.〇 正しい。開設者は嘱託医師名を都道府県知事に届け出る。これは、医療法第8条において、「臨床研修等修了医師、臨床研修等修了歯科医師又は助産師が診療所又は助産所を開設したときは、開設後十日以内に、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と記載されている(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 業務に従事する助産師の略歴を広告「してはならない」という規則はない。これは、医療法第二節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」に記載されている。
第六条の五 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。
2 前項に規定する場合には、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害することがないよう、広告の内容及び方法が、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
一 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。
二 誇大な広告をしないこと。
三 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。
四 その他医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

 

 

 

23 大地震が発生した。地区の電気・水道の使用ができなくなった。病院建物の倒壊はない。余震は続いている。
 褥婦に説明する内容で適切なのはどれか。

1.避難する際は新生児を助産師に預ける。
2.食事が十分に摂れなくても母乳哺育を続ける。
3.お湯を沸かせないときはミルクを水で溶かす。
4.母子の家族を病院に呼んで一緒に生活してもらう。

解答

解説
1.× 避難する際は新生児を助産師に預ける必要はない。災害時には、母親と新生児ができる限り一緒に避難することが推奨される。なぜなら、新生児の取り違いを防ぐため。また、母子の分離は、母親の不安を助長させる恐れがあるため。

2.〇 正しい。食事が十分に摂れなくても母乳哺育を続ける。なぜなら、母体が十分な食事を摂れなくても、母乳は一定の栄養を供給できるため。ミルクの準備が困難な状況では、母乳育児が最も安全かつ効果的な栄養供給手段である。

3.× お湯を沸かせないときはミルクを水で溶かすことはできない。なぜなら、水が安全でない場合や加熱できない場合、ミルクの使用は感染リスクが高まるため。新生児は免疫機能が未熟であることを考慮しなければならず、母乳がより安全である。

4.× 母子の家族を病院に呼んで一緒に生活してもらう必要はない。なぜなら、設問文から、「大地震が発生し、電気・水道の使用ができなくなっている」状況であるため。大地震後の余震が続く中、病院に外部から人を呼び込むことは、混乱感染症のリスクを高める可能性がある。

 

 

 

 

 

24 肺胞内圧を高く維持して肺胞の虚脱を防止する新生児の呼吸症状はどれか。

1.呻吟
2.多呼吸
3.陥没呼吸
4.鼻翼呼吸
5.シーソー呼吸

解答

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.〇 正しい。呻吟は、肺胞内圧を高く維持して肺胞の虚脱を防止する新生児の呼吸症状である。呻吟とは、苦しみうめくことで吸気時に声門を狭めて呼気を行うことで生じる「う~」といううなり声である。気道内圧を高めに維持しようとする自己防衛反応で、肺胞の虚脱を防ぐ効果がある(※読み:しんぎん)。

2.× 多呼吸とは、浅くて速い呼吸のことである。基準値として、新生児は60回/分以上、乳児は50回/分以上、幼児は40回/分以上である。主に肺炎など肺のコンプライアンスが減少するために1回換気量が不足し、呼吸回数で補おうとする。多呼吸の原因として、他にも肺の未熟性、感染症、心不全、代謝異常などがあげられる。

3.× 陥没呼吸とは、吸気時に胸の一部が陥没(肋骨の下が凹む呼吸様式)するものである。呼吸窮迫症候群のほかにも、肺炎・気道閉塞などで出現する。陥没呼吸は、胸郭の脆弱性による。

4.× 鼻翼呼吸とは、呼気時に鼻翼が膨らむ動きを伴うものである。呼吸困難の兆しであり、急性喘息・気道閉塞・細気管支炎・急性肺炎・心疾患などが原因となる。

5.× シーソー呼吸とは、息を吸うときに胸がへこんでおなかがふくらみ、息を吐くときはその逆で胸がふくらんでおなかがへこむ状態を指す。気道の通過障害や肺胞の拡張障害があると生じる。

 

 

 

 

 

25 32歳の経産婦。妊娠36週1日。妊婦健康診査に来院した。体重52kg。血圧136/82mmHg。尿蛋白+、尿糖(-)。下肢浮腫+。内診所見は、子宮口閉鎖。推定児体重は2680g。超音波検査では30分間に明瞭な四肢の動きを2回認め、そのうち1回は脚をすばやく伸展して屈曲位に戻す運動であった。この間、胎児呼吸様運動は認めない。36mmの羊水ポケットを認めた。NSTはreassuring fetal statusであった。
 対応で適切なのはどれか。

1.オキシトシン点滴静脈内注射
2.24時間後の超音波検査
3.1週後の超音波検査
4.ラミナリア桿挿入
5.帝王切開術

解答

解説

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

本症例のポイント

・32歳の経産婦(妊娠36週1日。体重52kg)。
血圧136/82mmHg尿蛋白+、尿糖(-)。下肢浮腫+。
・子宮口閉鎖。推定児体重は2680g。
・30分間に明瞭な四肢の動きを2回認め、そのうち1回は脚をすばやく伸展して屈曲位に戻す運動であった。
・この間、胎児呼吸様運動は認めない。
・36mmの羊水ポケットあり、NSTはreassuring fetal status。
→本症例の各評価項目は、現時点で正常範囲といえる。ただ、妊娠高血圧症候群(初期兆候)が疑われる。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

→本児の各評価項目も現時点で正常範囲といえる。バイオフィジカルプロファイルスコアリングも6点であり、胎児機能不全の疑いによって早期遂娩が必要とされる可能性がある。羊水量は問題がないため、24時間以内に再検をする必要がある。

1.× オキシトシン点滴静脈内注射は不要である。なぜなら、本症例に対し、緊急に分娩を誘発する必要はないため。ちなみに、オキシトシン点滴静脈内注射の適応として、分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、流産、人工妊娠中絶である。

2.〇 正しい。24時間後の超音波検査を実施する。なぜなら、本児のバイオフィジカルプロファイルスコアリングは6点であり、胎児機能不全の疑いによって早期遂娩が必要とされる可能性があるため。ちなみに、胎児機能不全とは、お産の途中でさまざまな原因によって胎児が低酸素状態になることをいう。胎児仮死、胎児ジストレスとも呼ぶ。原因としては母体の妊娠高血圧症候群、胎盤早期剥離、臍帯の圧迫などである。新生児蘇生法ガイドライン(NCPR)に従って蘇生初期処置を行い、蘇生終了後、新生児の健康に不安がある場合、新生児管理に関する十分な知識と経験がある医師に相談する。

3.× 1週後の超音波検査は不要である。なぜなら、本児のバイオフィジカルプロファイルスコアリングは6点であるため。バイオフィジカルプロファイルスコアリングが、8~10点(正常)と判定された場合、1週間後の超音波検査を行う。

4.× ラミナリア桿挿入は不要である。なぜなら、ラミナリア桿挿入の適応とはいえないため。ちなみに、ラミナリア桿とは、子宮頸管の拡張等に用いられる、棒状の医療機器である。単にラミナリアとも呼ばれることがある。

5.× 帝王切開術は不要である。なぜなら、帝王切開術の適応とはいえないため。
【帝王切開術の適応】
①母体適応:児頭骨盤不均衡前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延など。
②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎など。

胎児のwell-beingの評価

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性品脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

 

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