第96回(H25) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

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6 妊娠に伴う腟の変化で正しいのはどれか。

1.分泌物のpHが低下する。
2.色が薄いピンク色に変化する。
3.上皮のグリコゲン含有量が減少する。
4.Döderlein〈デーデルライン〉桿菌が減少する。

解答

解説
1.〇 正しい。分泌物のpHが低下(酸性)する。なぜなら、妊娠中は、エストロゲンの増加・作用により、腟上皮細胞内のグリコーゲン含有量が増加するため(グリコーゲンはデーデルライン桿菌によって乳酸に分解される)。これが病原菌の増殖を抑える役割を果たす。

2.× 色が「薄いピンク色」ではなく藍紫色に変化する。これをリビド着色と呼ぶ。リビド着色とは、妊娠によって増加するエストロゲンにより血管の怒張やうっ血が生じ、それにより子宮膣部や膣壁の色が「妊娠初期は紅紫色、末期には暗い藍紫色」に変化することをいう。

3.× 上皮のグリコゲン含有量が、「減少」ではなく増加する。なぜなら、妊娠中は、エストロゲンの増加・作用により、腟上皮細胞内のグリコーゲン含有量が増加するため(グリコーゲンはデーデルライン桿菌によって乳酸に分解される)。

4.× Döderlein〈デーデルライン〉桿菌が、「減少」ではなく増加する。乳酸桿菌であるデーデルライン桿菌は、腟内を酸性に保つ働きがあり、異常細菌の増殖を防ぐ腟の自浄作用を行う。妊娠中は乳酸桿菌が増加し強酸性となる。細菌性腟症の主な特徴は、善玉菌(乳酸桿菌)の数量の減少と有害な細菌の増加が起こる。

妊娠中の生理的機序

心疾患合併の頻度は全分娩の1~3%である。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。正常妊娠ではこうした増加に対し、末梢血管抵抗が低下し、腎臓や子宮への血流量を増加させている。実際、腎血流量は非妊娠時に比べ30%増加し、子宮血流量は10倍になる。これらの循環変化は母体が順調に胎児を育んで行く上に必須のものであるが、心疾患を合併した妊婦ではしばしば負担となる。また、分娩中は子宮収縮により静脈環流量が増加し、第2期では努責による交感神経興奮により頻脈になり、心拍出量が増加する。したがって、分娩中は心疾患合併妊婦の症状が悪化する危険な時期といえる。分娩後(産褥早期)、子宮は急速に収縮し静脈環流量が増加するが、循環血液量は急には減少しないため、一過性に心負担は増加する。この心拍出量増加は、産後の利尿により循環血液量が減少するまで継続する。産褥期に一過性に浮腫が増悪することがあるが、こうした循環器系変化のためと考えられる。

(※一部引用:「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」(中井章人著,東京医学社)より)

 

 

 

 

 

7 妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸を十分に摂取することで発症を低減できる胎児合併症はどれか。

1.心奇形
2.胎児水腫
3.胎児発育不全
4.神経管閉鎖障害

解答

解説

MEMO

妊娠の計画・可能性がある女性は、普段の食事以外に1日400μgの葉酸を摂ることが望ましい。妊娠初期に葉酸の摂取が不足すると、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の発症リスクが高まる。妊娠中の1日当たりの葉酸の推奨摂取量は、480μgである。非妊時の女性(240μg)に加え、妊娠中の推奨摂取量(+240μg)を加えた葉酸を摂取することが望ましい。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P158」)

1.× 心奇形のリスク要因は、胎児の心臓が作られる段階で、多数の遺伝子と生活習慣などの環境要因が加わることで発症するとされている。そのため、妊娠中の飲酒や喫煙、薬の服用、風疹ウイルス感染などでも発症リスクが高まる可能性が指摘されている。

2.× 胎児水腫のリスク要因は、心血管系の異常(心臓構造異常、不整脈や特発性心筋症など)、染色体異常症(奇形症候群や21トリソミーなど)、TORCH症候群などの感染症、胎児胸部疾患、リンパ管異常などである。ちなみに、胎児水腫とは、お母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんの全身がむくんでしまっている状態である。むくみはお腹のなかや、胸のなか、皮膚の下、胎盤などあらゆるところでみられ、赤ちゃんの状態がよくないことを意味する。 胎児水腫を発症した際、赤ちゃんの状態は非常に悪く、死産に陥ることもある。

3.× 胎児発育不全のリスク要因は、上記表参照。胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

4.〇 正しい。神経管閉鎖障害は、妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸を十分に摂取することで発症を低減できる胎児合併症である。葉酸とは、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。

神経管閉鎖障害とは?

神経管閉鎖障害とは、脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種で、二分脊椎、脳瘤、無脳症などである。二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。二分脊椎症には①開放性(表面からはっきりわかるもの)と②潜在性(わかりにくいもの)がある。前者には脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤などが含まれる。

 

 

 

 

 

8 甲状腺疾患合併妊娠について正しいのはどれか。

1.甲状腺ホルモン製剤内服中は授乳を禁止する。
2.Basedow〈バセドウ〉病は妊娠中期以降に改善傾向を示す。
3.橋本病は分娩を契機に甲状腺クリーゼを発生するリスクが高い。
4.プロピルチオウラシルを内服していた場合、授乳中はチアマゾールに切り替える。

解答

解説

甲状腺機能亢進症の児への影響

甲状腺機能亢進症では治療下でも、甲状腺刺激活性を有する抗TSH受容体抗体(TRAb:TSH結合阻害抗体と刺激抗体)が胎盤を通過し、胎児甲状腺機能亢進症を惹起することがある。また、抗甲状腺剤使用例では出生後に母体由来抗甲状腺剤供給途絶により新生児一過性甲状腺機能亢進症(新生児バセドウ病)がバセドウ病妊婦1~5%に認められる。母体TRAbが高値であるほど新生児・胎児甲状腺機能亢進症の頻度が高くなるので、妊娠後期のTRAb測定は新生児・胎児甲状腺機能亢進症の発症予測に有用と考えられている。胎児甲状腺機能亢進は胎児頻脈、胎児甲状腺腫、発育不全の原因となる。母体への抗甲状腺剤投与による胎児甲状腺機能抑制の結果、新生児にみられる機能低下症や甲状腺腫は一過性で治療不要のことが多い。抗甲状腺剤で母体が管理されている場合は定期的に胎児心拍数の評価や胎児発育計測を行う。(※一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P30」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× 甲状腺ホルモン製剤内服中は授乳を禁止する必要はない。なぜなら、甲状腺ホルモン製剤などの服用中でも、妊娠・授乳は問題なく可能であるため。心配であれば、担当医とよく相談するよう促す。

2.〇 正しい。Basedow〈バセドウ〉病は、妊娠中期以降に改善傾向を示す。なぜなら、妊娠中期以降に胎盤から分泌される免疫抑制物質やhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の影響で甲状腺刺激が減少するため。ちなみに、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、妊娠初期に胎盤から分泌されるホルモンで、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを上昇させる作用がある。そのため、妊娠初期には甲状腺機能が一時的に軽度亢進することがあり、これを妊娠性一過性甲状腺機能亢進症(GTT)という。また、バセドウ(Basedow)病は、発汗過多、眼球突出、頻脈および手指振戦を示す。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。

3.× 「橋本病(甲状腺機能低下症)」ではなく、Basedow〈バセドウ〉病は分娩を契機に甲状腺クリーゼを発生するリスクが高い。ちなみに、橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。また、甲状腺クリーゼとは、甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン高値)の治療が不十分であったり治療を受けていない場合に、肺炎などの感染症や大怪我・手術などのストレスをうけると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐え切れなくなり、複数の臓器の機能が低下し、死の危険が切迫した状態になることを指す。症状として、高熱、頻脈、意識朦朧、心臓や肝臓の急速な機能低下、呼吸停止、全身性の黄疸がみられる。生命が危険な状態にあるため、入院し呼吸や血圧の管理、血中の甲状腺ホルモンを減らす必要がある。

4.× プロピルチオウラシルを内服していた場合、授乳中はチアマゾールに切り替える必要はない。なぜなら、チアマゾールはプロピルチオウラシルに比べて、授乳に対しては安全であるため(母乳への移行率が高い)。プロピルチオウラシルとは、甲状腺ホルモンをおさえる薬で、 バセドウ病など甲状腺機能亢進症に用いる。「妊婦または妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、定期的に甲状腺機能検査を実施し、甲状腺機能を適切に維持するよう投与量を調節すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である。

甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

【治療後1週間の注意事項】
・不要な放射性ヨウ素を早く体外に出すため十分に水分を摂る。
・排泄後、2度水を流す。尿の飛散による汚染を軽減させるため便座に座る。
・汗に少量の放射性ヨウ素が出るから入浴は最後に入る。
・可能ならば1人で寝る。
・唾液や体液にごく少量の放射性ヨウ素が出るからキスやセックスを避ける。
・子供との親密に接触(距離1m以内)すること、近くで長時間過ごすこと(添い寝など)などは避ける。

 

 

 

 

 

9 5名の経産婦に対して、上の子どもへの対応をテーマに育児教室を開催することになった。
 参加者を中心とした方法で最も適切なのはどれか。

1.シンポジウム
2.バズ・セッション
3.デモンストレーション
4.パネルディスカッション

解答

解説
1.× シンポジウムとは、「公開討論会」「研究討論会」「論文集」などを意味する言葉で、専門家がそれぞれのテーマについて講演し、その後に質疑応答を行う形式である。設問では、「参加者を中心とした方法」であるため不適切となる。

2.〇 正しい。バズ・セッションは、参加者を中心とした方法で最も適切である。バズ・セッションとは、参加者全員が自由に意見を出し合うことができるグループディスカッション手法である。参加者を6人くらいのグループに分けてある問題についてのディスカッションを行わせ、その内容をグループの代表者が発表し、参加者全体で問題の解決を図ろうとするものである。

3.× デモンストレーションとは、実演することや披露することをさす。ただし、抗議活動、デモ活動など「デモ活動する」といった使い方もある。

4.× パネルディスカッションとは、数名の専門家やパネリスト(問題を提起し討議する人)が異なる視点から議論を行う形式である。専門家による意見交換が中心となる。

 

 

 

 

 

10 母体保護法に定められた不妊手術について正しいのはどれか。

1.卵巣摘出術が含まれる。
2.配偶者の同意は不要である。
3.母体保護法指定医以外は実施できない。
4.都道府県知事に実施報告をしなければならない。

解答

解説

母体保護法とは?

母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

母体保護法の不妊手術に関しては、第二条(定義)に規定されている(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。
第二条 この法律で不妊手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で内閣府令をもつて定めるものをいう。
2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

1.× 卵巣摘出術が含まれない
母体保護法施行規則の第一章不妊手術(不妊手術の術式)に規定されている。
第一条 母体保護法(以下「法」という。)第二条第一項に規定する不妊手術は、次に掲げる術式によるものとする。
一 精管切除結さつ法(精管を陰のう根部で精索からはく離して、二センチメートル以上を切除し、各断端を焼しやくし、結さつするものをいう。)
二 精管離断変位法(精管を陰のう根部で精索からはく離して切断し、各断端を結さつしてから変位固定するものをいう。)
三 卵管圧ざ結さつ法(卵管の中央を引き上げ、直角又は鋭角に屈曲させて、その両脚を圧ざかん子で圧ざし、結さつするものをいう。)
四 卵管角けい状切除法(卵管を結さつして切断し、卵管間質部をけい状に切除し、残存の卵管断端結さつ部をしよう膜で覆い縫合するものをいう。)
五 卵管切断法(卵管を結さつし、切断するものをいう。)
六 卵管切除法(卵管及び卵管間膜を結さつして切断し、卵管の一部又は全部を除去するものをいう。)
七 卵管焼しやく法(卵管を電気メス、レーザーメス、薬剤等で焼しやくし、閉鎖させるものをいう。)
八 卵管変位法(卵管を骨盤腹膜外に移動させ、固定するものをいう。)
九 卵管閉塞法(卵管又は卵管内くうを器具、薬剤等により閉塞させるものをいう。)
(※引用:「母体保護法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)

2.× 配偶者の同意は、「不要」ではなく必要である。
母体保護法の第三条に規定されている。
第三条 医師は、次の各号の一に該当する者に対して、本人の同意及び配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、不妊手術を行うことができる。ただし、未成年者については、この限りでない。
一 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
二 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの
2 前項各号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による不妊手術を行うことができる。
3 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。
(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)

3.× 母体保護法指定医以外は実施できないのは、「不妊手術」ではなく人工妊娠中絶である。
母体保護法の第十四条(医師の認定による人工妊娠中絶)に規定されている。
都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)

4.〇 正しい。都道府県知事に実施報告をしなければならない
母体保護法の第6章の第25条(届出、禁止その他) に規定されている。
医師又は指定医師は、不妊手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その月中の手術の結果を取りまとめて翌月十日までに、理由を記して、都道府県知事に届け出なければならない。
(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)

母体保護法指定医師とは?

母体保護法指定医師とは、母体保護法によって、不妊の手術や人工妊娠中絶の手術を実施することのできる資格を持った医師のことである。都道府県医師会が母体保護指定医師審査委員会を設置して、医師の人格、技能、そして病院の設備を考慮して指定する。

 

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