第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午後51~55】

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次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 在胎37週3日、体重2890gで出生した児。羊水混濁があり、出生直後に啼泣、四肢のチアノーゼ及び胎便がみられた。筋緊張は良好である。

51 生後2日。新生児室のコットにいる児の体温測定を行った。皮膚温38.0℃、直腸温37.4℃であった。全身の皮膚色は良好。
 対応で適切なのはどれか。

1.CRP測定
2.クベース収容
3.解熱薬の与薬
4.衣類や掛け物の調節
5.呼吸心拍モニター装着

解答

解説

本症例のポイント

・生後2日。
・新生児室のコットにいる児の体温測定を行った。
皮膚温38.0℃直腸温37.4℃
・全身の皮膚色:良好
→本症例の体温に着目しよう。通常、皮膚温は直腸温より低い。小児は体温調整機構が未熟であることに留意する。10歳ころより、体温調整機構は成人とほぼ同じになる。体温調整機能が未熟な年齢のうちは、掛け物や衣類を調整するなど児を温めすぎないようにすることで、高体温化を予防する必要がある。

→コットとは、産婦人科や小児科で使われている新生児用の可動式ベッドのことである。段差や階段、がれきがある場合は、移動が困難となる。

1.× CRP測定の優先度は低い。なぜなら、本児の直腸温37.4℃(正常範囲:36.7〜37.5℃程度)で、炎症感染症が疑われるとは言えないため。CRPとは、体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合、血液中に蛋白質の一種であるC-リアクディブ・プロテイン(CRP)をさす。 正常な血液のなかにはごく微量にしか見られないため、炎症の有無を診断するのにこの検査が行われる。

2~3.× クベース収容/解熱薬の与薬の優先度は低い。なぜなら、本児の直腸温37.4℃(正常範囲:36.7〜37.5℃程度)であるため。クベース収容とは、早産児や未熟児を保育器(クベース)に入れて、体温調節や感染予防、酸素の供給、全身状態の観察を行うことである。

4.〇 正しい。衣類や掛け物の調節が最も優先される。なぜなら、本児は、全身の皮膚色が良好で、直腸温も正常であるため。体温調整機能が未熟な年齢のうちは、掛け物や衣類を調整するなど児を温めすぎないようにすることで、高体温化を予防する必要がある。

5.× 呼吸心拍モニター装着の優先度は低い。なぜなら、呼吸心拍モニター装着の根拠に乏しいため。呼吸心拍モニター装着は、主に呼吸心拍に異常がある場合に用いられる。

JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)

(※図引用:「JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)」一般社団法人 日本蘇生協議会より)

新生児の低体温症

低体温症は、世界保健機関(World Health Organization)によって深部体温が36.5℃(97.7°F)未満のものと定義されている。早産児では、低体温症は罹病率および死亡率を上昇させる。低体温症は、単に環境性の場合もあれば、併発疾患(例、敗血症)の存在を示す場合もある。分娩室または手術室の適切な環境温度を維持することが、新生児の低体温症の予防において極めて重要である。低体温症の新生児は復温させ、基礎疾患がある場合は診断、治療を行う必要がある。

(※一部引用:「新生児の低体温症」MSDマニュアルプロフェッショナル版より)

 

 

 

 

 

次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 在胎37週3日、体重2890gで出生した児。羊水混濁があり、出生直後に啼泣、四肢のチアノーゼ及び胎便がみられた。筋緊張は良好である。

52 生後30日、1か月児健康診査に来院した。本日の体重は4150g、母乳栄養である。児は生後7日に退院し、体重は2790gであった。
 母親の児に関する訴えのうち、医師の診察を必要とするのはどれか。

1.「赤ちゃんのおっぱいから白い液が出ます」
2.「頭や眉のところにカサカサした固まったものがあります」
3.「授乳後、寝かせたら口の端からダラダラと母乳を出します」
4.「昨日から口の中に白いミルクかすのようなものがあって取れません」

解答

解説

本症例のポイント

・在胎37週3日(体重2890g:出生)。
・生後7日:体重2790g。
・生後30日:体重4150g、母乳栄養。
→【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

1.× 「赤ちゃんのおっぱいから白い液が出ます」という発言からは、医師の診察が必要とはいえない。なぜなら、これは魔乳と呼ばれ、母体から移行したエストロゲンの作用によって起こるものでるため。そのまま放っておき、1週間程度で自然寛解する。

2.× 「頭や眉のところにカサカサした固まったものがあります」という発言からは、医師の診察が必要とはいえない。なぜなら、顔面の湿疹および前頭部の脂漏性の湿疹は、新生児期に生じる脂漏性湿疹と考えられるため。脂漏性湿疹とは、生後2~4週間頃に皮脂分泌の活発な部位に出現する湿疹性病変である。新生児期は皮脂分泌が最も盛んな時期であることから、顔面や頭部に脂漏性湿疹を引き起こすことがある。そのため、ガーゼやタオルでこすると児の皮膚に小さな傷をつけるので、指の腹に石けんをつけて洗うと良い。

3.× 「授乳後、寝かせたら口の端からダラダラと母乳を出します」という発言からは、医師の診察が必要とはいえない。なぜなら、これは溢乳と呼ばれ、生理現象であるため。新生児の胃は成人に比べて縦型であり、噴門部の括約筋が弱い。したがって、反芻や溢乳、を起こしやすい。反芻とは、一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むことである。溢乳とは、授乳後に口から少量の乳がだらだらと吐き出される生理的現象である。ちなみに、哺乳後の排気(げっぷ)をすることで、胃の中の空気が飲んだものを押し上げることにより『吐き戻し』を防ぐことができる。そもそも新生児はミルクと同時に多量の空気も飲み込んでおり、成人の胃に比べ縦型で、食道・胃結合部(噴門部)の括約筋が弱い。したがって、ゲップとして空気が出やすい構造になっている。

4.〇 正しい。「昨日から口の中に白いミルクかすのようなものがあって取れません」という発言は、医師の診察が必要である。なぜなら、鵞口瘡が疑われるため。ちなみに、鵞口瘡とは、乳幼児の口の粘膜にできるカンジダというカビの感染症である。おもに新生児、乳児にみられ、不潔な乳首などを介して感染すると考えられている。そのほか、抗生物質の長期投与を受けた小児や、先天性あるいは後天性に免疫不全状態にある小児にみられる。カンジダ菌は常在菌のため、通常は人の体において増えすぎることなく、ほかの菌とバランスを保って生息している。しかし、新生児や乳幼児は免疫力が低いため、出産時や哺乳の際に感染したカンジダ菌が異常に増殖すると、鵞口瘡を発症しやすくなる。

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 34歳の1回経産婦。妊娠18週まで喫煙していた。妊婦健康診査に来院しないことが2回あった。2012年10月、妊娠36週3日に「6時間ほど前から痛みを感じ、自宅で様子をみていたが、我慢できなくなった」と電話があり、助産師は来院を指示した。来院時、胎児心拍数陣痛図で心拍数60bpmの遷延一過性徐脈を認め、常位胎盤早期剝離の診断で緊急帝王切開術が行われた。児の体重は2860g、Apgar〈アプガー〉スコアは1分後2点、5分後5点で、NICUに入院した。

53 8か月後、児は重度脳性麻痺の診断を受けた。母親は産科医療補償制度の申請をすることとした。
 産科医療補償制度の申請可能時期として正しいのはどれか。

1.2014年の誕生日まで
2.2017年の誕生日まで
3.2019年の誕生日まで
4.2022年の誕生日まで

解答

解説

(※図引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)

産科医療補償制度とは?

産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金が支払われる仕組みである。

①在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと、②先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある。

1.× 2014年の誕生日(2歳)まで/2019年の誕生日(7歳)まで/2022年の誕生日(10歳)までは、産科医療補償制度の申請可能時期とはいえない。

2.〇 正しい。2017年の誕生日(5歳)までが産科医療補償制度の申請可能時期である。補償を申請できるのは5歳の誕生日までである。満5歳の誕生日を過ぎると、補償申請を行うことができない。また、補償を申請できるのは、生後6か月の時点からである。なぜなら、3つの基準のうち、②「先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること」の備考に「お子様が生後6か月未満で死亡した場合は補償対象とならない」ことが記載されているため。(※参考:「産科医療補償制度の補償申請について」参加医療保障制度HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 34歳の1回経産婦。妊娠18週まで喫煙していた。妊婦健康診査に来院しないことが2回あった。2012年10月、妊娠36週3日に「6時間ほど前から痛みを感じ、自宅で様子をみていたが、我慢できなくなった」と電話があり、助産師は来院を指示した。来院時、胎児心拍数陣痛図で心拍数60bpmの遷延一過性徐脈を認め、常位胎盤早期剝離の診断で緊急帝王切開術が行われた。児の体重は2860g、Apgar〈アプガー〉スコアは1分後2点、5分後5点で、NICUに入院した。

54 分娩した病院に産科医療補償制度の手続きのため来院した母親から「うちの子が脳性麻痺になった原因はこの制度で分かるのですか」と相談があった。
 対応として最も適切なのはどれか。

1.「そのような質問にはお答えできないことになっています」
2.「補償するための制度で原因分析はしないのです」
3.「ご家族には原因分析の結果が伝えられます」
4.「原因分析の結果は公表されません」

解答

解説

(※図引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)

産科医療補償制度とは?

産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金が支払われる仕組みである。

①在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと、②先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある。

1.× 「そのような質問にはお答えできないことになっています」と伝える必要はない。なぜなら、原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされるため。

2.× 「補償するための制度で原因分析はしないのです」と伝える必要はない。なぜなら、産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度であるため。

3.〇 正しい。「ご家族には原因分析の結果が伝えられます」と伝える。なぜなら、原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされるため。

4.× 「原因分析の結果は公表されません」と伝える必要はない。なぜなら、原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言されるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 34歳の1回経産婦。妊娠18週まで喫煙していた。妊婦健康診査に来院しないことが2回あった。2012年10月、妊娠36週3日に「6時間ほど前から痛みを感じ、自宅で様子をみていたが、我慢できなくなった」と電話があり、助産師は来院を指示した。来院時、胎児心拍数陣痛図で心拍数60bpmの遷延一過性徐脈を認め、常位胎盤早期剝離の診断で緊急帝王切開術が行われた。児の体重は2860g、Apgar〈アプガー〉スコアは1分後2点、5分後5点で、NICUに入院した。

55 この事例について産科医師と助産師がカンファレンスを開催した。今後の再発防止に向けて、妊婦への指導を徹底することになった。
 強化する内容で最も適切なのはどれか。

1.禁煙指導を徹底する。
2.妊婦健康診査の定期的な受診を勧奨する。
3.分かりやすく切迫早産の症状を説明する。
4.気になる症状があるときはすぐに連絡するように説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・34歳の1回経産婦(妊娠18週まで喫煙)。
・妊婦健康診査に来院しないことが2回
・2012年10月、妊娠36週3日6時間ほど前から痛みを感じ、自宅で様子をみていたが、我慢できなくなった」と電話。
・助産師は来院を指示した。
・来院時(胎児心拍数陣痛図):心拍数60bpmの遷延一過性徐脈
常位胎盤早期剝離の診断:緊急帝王切開術が行われた。
・児の体重は2860g、アプガースコアは1分後2点、5分後5点、NICUに入院。
・8か月後:児は重度脳性麻痺の診断。
→本症例の経過で、今後の再発防止に向けての妊婦への指導をおさえておこう。

→常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。

1.× 禁煙指導を徹底するより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の今回の件は、喫煙のみが原因とはいえないため。また、妊娠18週以降、禁煙しているため、ある程度、喫煙に関しての知識も得ていると考えられる。ちなみに、妊娠中の喫煙は、早産や流産・死産の危険性を高め、また、低体重児の出産の可能性を高める。これは、たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素などによって、赤ちゃんに必要な栄養や酸素が十分に届かなくなるため、胎児の発育などに障害が生じてくる。

2.× 妊婦健康診査の定期的な受診を勧奨するより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の今回の件は、妊婦健康診査に来院しないことが2回のみが原因とはいえないため。また、2回を除けば、妊婦健康診査に来ていることを意味し、ある程度、妊婦健康診査の重要性を理解していると考えられる。妊婦健康診査の定期的な受診を勧奨するより、どうしても予定があるときや来れないときの連絡手段など、妊婦に寄り添う姿勢が大切である。

3.× 分かりやすく切迫早産の症状を説明するより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、常位胎盤早期剝離であり、切迫早産とは異なるため。切迫早産とは、子宮収縮が規則的かつ頻回に起こることにより子宮口が開き、早産となる危険性が高い状態である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもある。切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みである。このような症状がある場合には、まず横になって安静に促す。

4.〇 正しい。気になる症状があるときはすぐに連絡するように説明する。なぜなら、本症例(妊娠36週3日)において、6時間前から痛みの症状があったにもかかわらず、放置し我慢できなくなってから電話しているため。ほかの症状に陥ったときも連絡することで、早期発見・早期治療につながるだけでなく、再発防止のための一助となる。

喫煙のリスク因子

たばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である。喫煙者の多くは、たばこの害を十分に認識しないまま、未成年のうちに喫煙を開始しているが、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べて、これらの疾患の危険性はより大きい。さらに、本人の喫煙のみならず、周囲の喫煙者のたばこ煙による受動喫煙も、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などの危険因子である。また、たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意志だけでは、やめたくてもやめられないことが多い。しかし、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、これらの疾患の危険性は減少する。

(※一部引用:「たばこ」厚生労働省HPより)

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