第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

31 32歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週0日、3300gの児を正常分娩で出産した。分娩所要時間は11時間で、総出血量は300mlであった。児の出生後の状態は良好。妊娠中に早期母子接触について説明を受けて同意していた。
 早期母子接触を実施する際の留意点で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.児に服を着せる。
2.実施中は助産師が付き添う。
3.6時間以上継続して実施する。
4.母親の体位は水平位で実施する。
5.児にパルスオキシメータを装着する。

解答2・5

解説
1.× 児に服を着せる優先度は低い。なぜなら、一般的に早期母子接触は、裸の赤ちゃんを抱っこし、母親の皮膚と直接接触させるため。そうすることで、親子の絆が深まり、スムーズな育児のスタートができる。

2.〇 正しい。実施中は助産師が付き添う。なぜなら、新生児の状態は変化しやすいため。助産師は、児の体温、呼吸、心拍などをチェックし、安全を確保する必要がある。

3.× 「6時間以上継続」ではなく2時間以内で実施する。なぜなら、新生児・母親の体力や睡眠サイクルに配慮しなければならないため。一般的な早期母子接触は、出生後できるだけ早期に開始し、継続時間は30分以上で上限を 2 時間以内に設定する。児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。

4.× 母親の体位は、「水平位」ではなく上体30度挙上位で実施する。なぜなら、水平位より上体30度挙上位のほうが、抱っこがしやすく、児も抗重力位になり呼吸しやすいため。

5.〇 正しい。児にパルスオキシメータを装着する。なぜなら、児の呼吸状態を観察するため。一般的に、パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。90%未満が、早期母子接触を中止すべき児のSpO2の基準である。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

 

 

 

 

32 播種性血管内血液凝固〈DIC〉を発生しやすい基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっているのはどれか。2つ選べ。

1.子癇
2.前置胎盤
3.癒着胎盤
4.子宮破裂
5.羊水塞栓

解答1・5

解説

(※図引用:「産科危機的出血への対応指針 2022」日本産科婦人科学会より)

産科DICスコア

【基礎疾患】
①常位胎盤早期剥離
羊水塞栓症
③DIC型後産期出血
子癇
⑤その他の基礎疾患

【臨床症状】
①急性腎不全
②急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く)
③心、肝、脳、消化管などに重篤な障害(それぞれ4点を加える)
④出血傾向
⑤その他(脈拍、血圧、冷汗、蒼白)

1.〇 正しい。子癇は、播種性血管内血液凝固〈DIC〉を発生しやすい基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっている。子癇とは、妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし、痙攣発作の起こった時期により、妊娠子癇・分娩子癇・産褥子癇に分けられる。 子癇発作の発症頻度は、0.04%程度であり、妊娠中が19%、分娩時39%、産褥期42%との報告がある。てんかんや二次痙攣が否定されるものである。子癇の病態の詳細はまだ明らかになっていないが、高血圧に伴う一過性の脳浮腫が原因といわれている。(子癇のよみかた:しかん)

2.× 前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

3.× 癒着胎盤とは、胎盤の組織の一部(絨毛)が脱落膜を貫通して子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態をいう。分娩前には正確な診断が難しく、赤ちゃんを取り出した後、胎盤が子宮からなかなかはがれないために判明することがほとんどである。

4.× 子宮破裂とは、子宮が自然に裂けて開くことであり、強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。

5.〇 正しい。羊水塞栓は、播種性血管内血液凝固〈DIC〉を発生しやすい基礎疾患として産科DICスコアで加点対象となっている。羊水塞栓症とは、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる。肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害を病態とする疾患である。羊水塞栓症の症状として、①意識消失、②ショックバイタル、③播種性血管内凝固症候群(DIC)、④多臓器不全になる。ちなみに、播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。

DICとは?

播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。

 

 

 

 

 

33 予防接種を受ける子どもの親への説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「接種当日は入浴してはいけません」
2.「接種当日は激しい運動は避けましょう」
3.「副反応は接種後24時間以降にはみられません」
4.「家庭で測定した体温で接種ができるか判断します」
5.「不活化ワクチンを接種した後、1週間以上あければ生ワクチンが接種できます」

解答2・5

解説

予防接種法とは?

予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。

A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎

B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症

(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)

1.× 接種当日の入浴は可能である。一般的に、接種してから1時間以上経過し、注射した部位を強くこすらないように指導することが多い。

2.〇 正しい。「接種当日は激しい運動は避けましょう」と指導する。なぜなら、予防接種後は、体内で免疫反応が進行しているため。ワクチン接種後に激しい運動をしてしまうと、一時的に免疫力が下がってしまう可能性がある。

3.× 副反応は、接種後24時間以降もみられる可能性がある。なぜなら、免疫を獲得するまでに時間がかかるため。特に生ワクチンの場合は、接種後1~2週間後に発熱などが見られることがあり、4週間まで様子を観察する必要がある。

4.× 接種は、「家庭で測定した体温」ではなく医師の判断である。自宅での測定は、こもり熱の可能性も考えられるため、医療機関での再測定が推奨される。 通常、予防接種を行う前に体温測定を行うが、体温が37.5℃以上であれば接種できない。

5.〇 正しい。「不活化ワクチンを接種した後、1週間以上あければ生ワクチンが接種できます」と説明する。定期接種実施要領において、異なるワクチンの接種間隔について、定期接種化されている生ワクチンについては接種後27日以上、不活化ワクチンについては接種後6日以上の間隔をおくこと、とされている。

(※図引用:「生ワクチンと不活化ワクチン」田辺三菱製薬様HPより)

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

34 周産期医療情報センターについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1.二次医療圏に1か所設置される。
2.周産期救急情報システムを設置する。
3.地域周産期母子医療センターに設置される。
4.地域の周産期医療に関する情報を収集する。
5.全国の周産期医療施設の病床の空床状況を把握する。

解答2・4

解説

(※引用:「周産期医療について」厚生労働省様HPより)

周産期医療情報センターとは?

周産期医療情報センターとは、周産期医療に関する情報を収集・提供することで、周産期医療の有効な活用を支援する施設である。総合周産期母子医療センターに設置されている。

周産期母子医療センターには、①総合周産期母子医療センターと②地域周産期母子医療センターがある。
①総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
②地域周産期母子医療センターとは、産科・小児科(新生児)を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を常時担う医療機関である。

1.× 「二次医療圏」ではなく三次医療圏に1か所設置される(総合周産期母子医療センター)。ちなみに、地域周産期母子医療センターは、総合周産期母子医療センター1箇所に対して数箇所整備されている。

2.〇 正しい。周産期救急情報システムを設置するのは、周産期医療情報センターである。周産期医療情報システムとは、周産期医療に必要な情報を一元的に収集し、迅速かつ的確に提供 することにより、周産期医療設備等の有効かつ効率的な活用を支援するものである。

3.× 「地域周産期母子医療センター」ではなく総合周産期母子医療センターに設置される。

4.〇 正しい。地域の周産期医療に関する情報を収集するのは、周産期医療情報センターである。周産期医療情報センターとは、周産期医療に関する情報を収集・提供することで、周産期医療の有効な活用を支援する施設である。総合周産期母子医療センターに設置されている。

5.× 「全国」ではなく地域(三次医療圏)の周産期医療施設の病床の空床状況を把握する。具体的には、空きベッド数、手術の可否、担当医師などが確認できる。

(※図引用:「周産期医療体制の整備について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

35 ある年の人口統計を表に示す。
 周産期死亡率を求めよ。
 ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。

解答
①:0~9
②:0~9

解答33

解説

周産期死亡率とは?

周産期死亡率とは、妊娠満22週以後の死産数と早期新生児死亡数を合計したものを出生数と妊娠満22週以後の死産数を加えたもので除したものである。

【求め方】
周産期死亡率 = 年間周産期死亡数 ÷(年間出生数 + 年間の妊娠満22週以降の死産数)× 1000

ちなみに、周産期とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間をいい、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間である。

【求め方】
周産期死亡率 = ①年間周産期死亡数 ÷②(年間出生数 + 年間の妊娠満22週以降の死産数)× 1000

①年間周産期死亡数=妊娠満22週以降の死産数+早期新生児死亡数
=3000+1000
=4000

②年間出生数+年間の妊娠満22週以降の死産数
=1200000+3000
=1203000

周産期死亡率 = ①÷②× 1000
4000÷1203000
=0.0033
=33

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)