第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午後21~25】

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21 在胎30週0日、体重1200gで出生した児。生後7日で人工呼吸器を装着している。
 この児に対するディベロップメンタルケアで適切なのはどれか。

1.子宮内と同じような姿勢を保つ。
2.室内の照度は明るく保つ。
3.積極的に音刺激を与える。
4.気管内吸引は定時に行う。
5.清拭は深睡眠時に行う。

解答

解説

ディベロップメンタルケアとは?

ディベロップメンタルケアとは、早産で出生した低出生体重児や疾患をもって出生した新生児の成長発達を促すケアである。主な内容として、①ポジショニング、②ハンドリング、③早期母子接触、④タッチケアなどがある。光や音による刺激を緩和し、静かで暗くて温かい子宮内に近づけた環境に調整し、子宮内にいた時の姿勢に近づけたポジショニング(良肢位保持)を行う。また、赤ちゃんの睡眠覚醒リズムに合わせたケアを行い、体位変換やおむつ交換などでストレスがかからないよう優しい手技でケアを行う。また、家族の協力を得て、肌との触れ合いによる情緒的ケアも行う(※参考:「NICUにおける看護の取り組み」富山県HPより)。

1.〇 正しい。子宮内と同じような姿勢を保つことは、この児に対するディベロップメンタルケアである。なぜなら、子宮内と同じような姿勢(屈曲した姿勢)により、筋肉の緊張やストレスを減らしストレスの緩和と安静を保つことができるため。

2.× 室内の照度は、「明るく」ではなく暗く保つ。新生児(特に早産児)は、過度な光刺激に敏感であるため。光や音による刺激を緩和し、静かで暗くて温かい子宮内に近づけた環境に調整し、子宮内にいた時の姿勢に近づけたポジショニング(良肢位保持)を行う。

3.× 積極的に音刺激を与える必要はない。なぜなら、室内と同様で、早産児は外界からの刺激に敏感であるため。ストレスを与えない環境設定を実施する。

4.× 必ずしも、気管内吸引は「定時」に行う必要はない。なぜなら、気管内吸引は必要に応じて行うため。定時に行うと、必要以上に児にストレスを与えることになる。

5.× あえて、清拭は深睡眠時に行う必要はない。なぜなら、深睡眠時に刺激を与えると、児がストレスを感じたり、睡眠のリズムが乱れる可能性があるため。清拭やケアは、覚醒状態のときに行うのが望ましい。

 

 

 

 

 

 

22 在胎40週0日で出生した児。経過は順調で生後5日に2700gで退院した。生後30日、1か月児健康診査に来院した。体重は3500g。大泉門の大きさは2cm×2cm。児を引き起こすと、肘は軽く曲がり頭部がやや背屈している。児の便は便色カード2番で薄いクリーム色であった。黄疸が気になるという母親の訴えによって、経皮的黄疸計で測定したところ15mg/dlであった。
 健康診査の結果で異常所見はどれか。

1.体重
2.大泉門の大きさ
3.引き起こし反射
4.便の色
5.経皮的黄疸計の測定結果

解答

解説

本症例のポイント

・在胎40週0日で出生(経過:順調)。
・生後5日:2700gで退院。
・生後30日:3500g
・大泉門の大きさ:2cm×2cm
・児を引き起こすと、肘は軽く曲がり頭部がやや背屈
・児の便:便色カード2番薄いクリーム色
・母親の訴え:黄疸が気になる。
・経皮的黄疸計:15mg/dl
→上記評価の正常範囲をおさえておこう。

(※図引用:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)

1.× 体重は、正常範囲内である。本症例は、生後5日において2700g、生後30日において3500gである。25日間で800g増加している。つまり、1日32g増加している。
【正常乳児の一日体重増加量の目安】
0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

2.× 大泉門の大きさ(2cm×2cm)は、正常範囲内である。なぜなら、正常の場合、大泉門の大きさは1~4cmで平らであるため。ちなみに、1歳6か月ころに閉鎖する。①大泉門膨隆した場合(脳圧の上昇):頭の中に細菌やウイルスが侵入して髄膜炎、突発性発疹を起こし浮腫や水頭症などが生じている。②大泉門陥凹した場合(脳圧の降下):頻回の嘔吐と下痢で体の水分が失われて脱水を起こしている。

3.× 引き起こし反射(肘は軽く曲がり頭部がやや背屈)は、正常範囲内である。引き起こし反射の【刺激と反応】背臥位で新生児の両手を検者の両手でもち、ゆっくりと座らせるように引き起こす。両上肢の屈曲緊張が増し、首を屈曲させて起き上がる反応を示す。【出現と消失時期】1~2 ヵ月: 頭部背屈・上肢伸展。3~4 ヵ月:頭と頸は体幹と平行して遅れないようについてくる。四肢屈曲。5~6 ヵ月:頸は体幹と平行し、肘曲して引き起こしに協力する。7~8 ヵ月:肘屈曲、下肢伸展、頸前屈。

4.〇 正しい。便の色(便色カード2番:薄いクリーム色)は、異常所見である。なぜなら、便色カード2番(薄いクリーム色)は、胆道閉鎖症が疑われるため。胆道閉鎖症とは、生まれて間もない赤ちゃんに発症する肝臓および胆管の病気で、胆汁の通り道である胆管が、生まれつきまたは生後間もなく完全につまってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない状態である。つまり、胆汁の通り道である胆管が生後間もなく完全に詰まってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない疾患である。症状は生後数か月以内の黄疸、灰白色便、肝腫大、ビタミンK不足による出血傾向などがある。治療には手術療法により詰まった胆管の一部を切除、もしくは肝移植が必要になることもある。

5.× 経皮的黄疸計の測定結果(生後30日:15mg/dl)は、正常範囲内である。経皮的黄疸計値の基準値として、黄疸のピーク時(生後4、5日)に成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dl以下であり、かつ1日のビリルビン値の上昇が5mg/dl以下とされている。経皮的黄疸計(ミノルタ黄疸計など)は、新生児の皮下組織のビリルビンによる黄疸の度合いを測定するハンディタイプの医療機器である。

 

 

 

 

 

23 一般事業主に対し、仕事と家庭の両立に関する行動計画の策定を義務づけている法律はどれか。

1.母子保健法
2.労働基準法
3.少子化社会対策基本法
4.男女共同参画社会基本法
5.次世代育成支援対策推進法

解答

解説

1.× 母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

2.× 労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。

3.× 少子化社会対策基本法とは、少子化の主たる要因であった晩婚化・未婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」という新たな現象の把握と急速な少子化の進行を踏まえ、国民や社会の意識変革を迫る目的で制定された、日本の法律である。

4.× 男女共同参画社会基本法とは、男女平等を推進するべく、1999年に施行された日本の法律。男女が、互いにその人権を尊重しつつ、能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現のために作られた。 所管官庁は、内閣府である。

5.〇 正しい。次世代育成支援対策推進法は、一般事業主に対し、仕事と家庭の両立に関する行動計画の策定を義務づけている法律である。常時雇用する労働者が101人以上の企業は、行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局に届け出ることが義務、100人以下の企業は努力義務である。ちなみに、次世代育成支援対策推進法とは、次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ育成される環境整備を図るための次世代育成支援対策の基本理念を定めた法律である。都道府県・市町村の行動計画、一般事業主の行動計画を次世代育成支援対策推進センターなどで規定している。

 

 

 

 

 

 

24 思春期女子の身体変化で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.初経の発来は体脂肪量に影響される。
2.骨盤外計測値は14歳以降に急激に増加する。
3.初経のころの原始卵胞数は出生時よりも少ない。
4.年間身長増加量は初経後1年以内がピークである。
5.初経のころの子宮の形態は体部に比べて頸部が長い。

解答1・3

解説

第二次性徴とは

二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。

平均的に見ると男児の場合は、10歳前後に始まり約5年間続く。 体の成長には決まった順番があり、①睾丸の発達→②陰毛の発生→③精通→④声変わり→⑤体型の変化という順番をたどる。女児の場合は、8歳前後から始まり①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。その評価にはTanner分類が用いられている。

1.〇 正しい。初経の発来は体脂肪量に影響される。特に、体脂肪率が17%以上になると初経が発来しやすくなり、22%以上で月経周期が安定する。この頃の体重増加は、プロゲステロンの影響が強く、生理に不可欠なホルモンを分泌するのに必要な脂肪を蓄えるために起こる。

2.× 骨盤外計測値は、「14歳以降」ではなく10歳以降から急激に増加する。なぜなら、一般的に、骨成長は初経の約1年前に促されることが多いため。ただし、設問文に書かれている「急激な増加」の基準が定められてない。

3.〇 正しい。初経のころの原始卵胞数は出生時よりも少ない。なぜなら、加齢やダイエットに伴い、卵子の発育が止まるものもあるため。ちなみに、胎児の卵巣には600万~700万個の卵母細胞が存在し、卵母細胞の大半は次第に消失していき、出生時までに100万~200万個程度にまで減少する。思春期には約40万個となる。

4.× 年間身長増加量は、「初経後」ではなく初経前、1年以内がピークである。なぜなら、初経後は、性ホルモンの分泌が盛んになり、骨端が閉じて骨の成長が止まるため。したがって、初経後は身長の伸びが緩やかになる。

5.× 逆である。初経のころの子宮の形態は、「頸部」に比べて「体部」が長い。なぜなら、、初経のころには、すでに子宮体部の成長が進んでいるためである。つまり、成長に伴い、子宮体部が成長して頸部よりも大きくなる。構成比は、上2/3が体部、下1/3が頸部である。

(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)

 

 

 

 

 

25 妊娠初期においてhCG〈ヒト絨毛性ゴナドトロピン〉が関連しているのはどれか。2つ選べ。

1.妊娠悪阻
2.乳腺の分化
3.妊娠性痒疹
4.妊娠黄体の維持
5.甲状腺機能低下

解答1・4

解説

ヒト絨毛性ゴナドトロピンとは?

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。

1.〇 正しい。妊娠悪阻は、妊娠初期においてhCG〈ヒト絨毛性ゴナドトロピン〉が関連している。「妊娠悪阻の成因は不明であるが、妊娠初期の急激なホルモン環境、代謝の変化、環境要因の変化に対する体の不適応状態のあらわれであるといえる(※引用:「妊娠悪阻にまつわる諸問題」著:丸尾 猛様)」。ちなみに、妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

2.× 乳腺の分化は、主に①エストロゲンや②プロゲステロンが関与している。
①エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。
②プロゲステロンとは、黄体ホルモンともいい、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

3.× 妊娠性痒疹とは、多くは2回目以降の妊娠初期(3〜4ヶ月)に発症する強いかゆみを伴う発疹である。はっきりとした原因は不明であるが、ホルモンの変化ほか、肌の引き延ばしによる刺激などが考えられている。

4.〇 正しい。妊娠黄体の維持は、妊娠初期においてhCG〈ヒト絨毛性ゴナドトロピン〉が関連している。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。

5.× 甲状腺機能は、「低下」ではなく亢進する。なぜなら、ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、甲状腺を刺激する作用も持つため。この作用により、妊娠初期に甲状腺機能亢進症が起こることがある。この状態を妊娠時一過性甲状腺機能亢進症妊娠一過性甲状腺中毒症という。

 

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