第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後6~10】

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6 正常に経過している褥婦の産褥3日における変化で正しいのはどれか。

1.尿量が減少する。
2.尿蛋白が検出される。
3.血清鉄は正常範囲となる。
4.血中にヒト胎盤性ラクトゲン〈hPL〉が検出されない。

解答

解説

産褥とは?

産褥とは、分娩終了直後から、妊娠分娩によって生じた母体の解剖学的および機能的変化が妊娠前の状態に復帰するまでの期間をいう。産褥の期間は通常6~8週で、この間に復古現象が進行する。通常6~8週にて、おおむね非妊時と同様の状態へと回復する。

1.× 尿量は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、分娩後(特に数日間)は、体内に余分に溜まった体液が尿として排出されるため。

2.× 尿蛋白が検出「されない」。なぜなら、蛋白尿は妊娠高血圧症候群尿路感染症を疑うため。ちなみに、妊娠中(特に妊娠後期)は、腎臓への血液循環量が多くなり、腎臓の処理能力に負担がかかるので、一時的に尿蛋白が検出されることがある。

3.× 血清鉄は、正常範囲「となる」と断言できない。なぜなら、分娩後、出血によって血清鉄の値は一時的に低下することが多く、産褥3日目にはまだ正常範囲に戻っていないことが一般的であるため。一般的に産褥1週間程度で戻り始め、正常範囲に戻るのは産褥2週問程度である。ちなみに、血清鉄とは、血清中に含まれる鉄分のことである。鉄欠乏性貧血の時に低値となり、溶血性貧血などの赤血球が壊れた際に増加する。

4.〇 正しい。血中にヒト胎盤性ラクトゲン〈hPL〉が検出されない。なぜなら、出産後、胎盤が排出されるため。したがって、ヒト胎盤性ラクトゲン〈hPL〉の濃度は急速に低下し、産褥3日目には血中にほとんど検出されなくなる。ちなみに、ヒト胎盤性ラクトゲンとは、胎盤の合胞体細胞で産生され、母体血中に放出される蛋白性ホルモンである。胎盤の絨毛上皮から産生されるホルモンで、胎児と母体へ栄養を届ける役割を担う。つまり、ヒト胎盤性ラクトゲンは、胎盤から分泌されるホルモンで、胎児の発育をサポートする。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

 

7 正常な分娩の進行について正しいのはどれか。

1.第1回旋では児背の位置が変化する。
2.第2回旋では小泉門が母体の背側に近づく。
3.第3回旋では児頭が後屈する。
4.第4回旋では肩甲が長軸方向で180度回転する。

解答

解説

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

1.× 第1回旋では、児背の位置が変化「しない」。児背の位置が変化し始めるのは、第2回旋以降であり、回転しながら下降する。

2.× 第2回旋では、小泉門が母体の「背側」ではなく腹側に近づく。大泉門が母体の「背側」に位置する。

3.〇 正しい。第3回旋では児頭が後屈する。なぜなら、産道を通過しやすくするため。

4.× 第4回旋では、肩甲が長軸方向で「180度」ではなく90度回転する。つまり、90度回転して、肩を出しながら横を向く。これは、両方の肩を一度に出せないためである。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

 

8 出生時の体重と身長が在胎週数相当の10パーセンタイル未満である児を表すのはどれか。

1.後期早産児
2.極低出生体重児
3.超低出生体重児
4.不当軽量児〈SGA〉

解答

解説

早産児の定義

過期産児とは:在胎42週以上に出生した児。
正期産児とは:在胎37週以降42週未満に出生した児。
早産児とは:在胎22週以降37週未満に出生した児。
超早産児とは:在胎28週未満に出生した児。

1.× 後期早産児とは、34週から37週未満で生まれた児のことである。重篤な合併症がなく退院し、医療機 関でフォローアップされていない場合をさす。

2.× 極低出生体重児とは、1500g未満児のことである。

3.× 超低出生体重児とは、1000g未満児のことである。ちなみに、低出生体重児とは、2500g未満児のことである。

4.〇 正しい。不当軽量児〈SGA:small for gestational age newborns〉は、出生時の体重と身長が在胎週数相当の10パーセンタイル未満である児を表す。不当軽量児とは、在胎週数に基づく基準値よりもサイズが小さい新生児であり、「出生体重が在胎週数の10パーセンタイル値未満」として定義される。低出生体重児(2500g未満児)と同様に、低体温、低血糖、貧血、黄疸(高ビリルビン血症)などが起こりやすく、感染への抵抗力も弱いため、外的ストレスをできる限り減らす。ポジショニングは、体内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。

不当軽量児とは?

不当軽量児とは、予定日より早く、予定日通り、あるいは予定日より遅く生まれたかどうかにかかわらず、体重が同じ在胎週数で生まれた赤ちゃんの90%より下にある新生児のことをいう。原因の多くは、単に遺伝的な理由によるもの(両親が小柄であるなど)。そのほかには、胎盤の機能が十分ではなかったために、胎児が適切な栄養を取れずに成長が阻害された場合である。これは母親が、高血圧、妊娠中毒症、腎臓疾患、あるいは糖尿病にかかっていた場合などに起こる。

 

 

 

 

 

9 妊娠高血圧腎症で重症と判定される尿蛋白定量の基準値はどれか。

1.300mg/日以上
2.1g/日以上
3.2g/日以上
4.5g/日以上

解答

解説

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

妊娠高血圧腎症とは?

妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に高血圧・蛋白尿が出現した場合をいう。妊娠前から高血圧と蛋白尿が存在し、妊娠20週以降にいずれかが増悪し、臓器損傷などをきたした場合でも診断される(※詳しくは上図参照)。

1~2.4.× 300mg/日以上/1g/日以上/5g/日以上は、妊娠高血圧腎症で重症と判定される尿蛋白定量の基準値ではない。ちなみに、妊娠高血圧腎症の「軽症」の基準は、①収縮期血圧が140mmHg以上160mmHg未満(重症では160mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上、②拡張期血圧が1100mmHg未満、尿蛋白300mg/日から2g/日未満の場合をいう。

3.〇 正しい。2g/日以上は、妊娠高血圧腎症で重症と判定される尿蛋白定量の基準値である。
「妊娠高血圧症候群とは?妊娠時に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と呼びます。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類されます。2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになりました。収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110 mmHg以上)になった場合、高血圧が発症したといいます。尿中に蛋白が1日当たり0.3g以上出ること(重症では2g以上)を蛋白尿を認めたといいます。この病気は、妊婦さん約20人に1人の割合で起こります。早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすく注意が必要です。重症になるとお母さんには血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、肝機能障害に溶血と血小板減少を伴うHELLP症候群などを引き起こすことがあります。また赤ちゃんの発育が悪くなったり(胎児発育不全)、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなり(常位胎盤早期剥離)、赤ちゃんの状態が悪くなり(胎児機能不全)、場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまう(胎児死亡)ことがあるなど、妊娠高血圧症候群ではお母さんと赤ちゃん共に大変危険な状態となることがあります」(※引用:「妊娠高血圧症候群」日本産婦人科学会HPより)。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P169」)

 

 

 

 

 

10 32歳の初産婦。妊娠28週0日で原因不明の死産となった。死産の翌日、褥婦は「私が何かいけないことをしたのでしょうか。赤ちゃんの世話を楽しみにしていたのに」と自分を責める言葉がみられた。
 この褥婦への入院中のグリーフケアで最も適切なのはどれか。

1.「次の妊娠に期待しましょう」
2.「一緒に赤ちゃんに洋服を着せてあげましょう」
3.「妊娠中のあなたの行動を振り返ってみましょう」
4.「死産のことは誰にも話さないようにしましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・32歳の初産婦(妊娠28週0日:原因不明の死産)。
・死産の翌日「私が何かいけないことをしたのでしょうか。赤ちゃんの世話を楽しみにしていたのに」と自分を責める言葉がみられた。
→死産は、全妊婦の「約5%」ではなく約8~15%に生じる。誰のせいでもないため、決して自責しないよう支援をする(※参考:「流産について」国立成育医療研究センター様HPより)。

→障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。
①ショック期:感情が鈍磨した状態
②否認期:現実に起こった障害を否認する
③混乱期:攻撃的あるいは自責的な時期
④解決への努力期(再起):自己の努力を始める時期
⑤受容期:新しい価値観や生きがいを感じる時期

1.× 「次の妊娠に期待しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、この言葉は、現在の悲しみを軽視しているように受け取られる可能性があるため。

2.〇 正しい。「一緒に赤ちゃんに洋服を着せてあげましょう」と伝える。なぜなら、グリーフケアの視点でもあり、本症例の「赤ちゃんの世話を楽しみにしていたのに」というニーズにも対応できる言葉であるため。死産した赤ちゃんと母親が少しでも時間を過ごすことで、現実を受け入れるプロセスを支援し、悲しみに向き合うことが期待できる。

3.× 「妊娠中のあなたの行動を振り返ってみましょう」と伝える必要はない。なぜなら、さらに自責しかねないため。死産は、全妊婦の「約5%」ではなく約8~15%に生じる。誰のせいでもないため、決して自責しないよう支援をする(※参考:「流産について」国立成育医療研究センター様HPより)。

4.× 「死産のことは誰にも話さないようにしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、母親の悲しみを抑え込もうとするものであるため。悲しみや喪失感を他者と共有することで、喪失感を軽減できることが期待できる。

グリーフケアとは?

グリーフケアとは、スピリチュアルの領域において、さまざまな「喪失」を体験し、グリーフを抱えた方々に、心を寄せて、寄り添い、ありのままに受け入れて、その方々が立ち直り、自立し、成長し、そして希望を持つことができるように支援することである。在宅で療養する終末期患者を看取る家族に対し、患者の療養中から死亡した後まで、経過に合わせた援助(グリーフケア)が重要である。

 

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