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1 授乳期における喫煙によるニコチンの影響について正しいのはどれか。
1.射乳反射を亢進させる。
2.母乳中には移行しない。
3.母乳の分泌を抑制する。
4.母乳中の脂肪含有量を増加させる。
解答3
解説
1.× 射乳反射を「亢進」ではなく抑制させる。母乳分泌に対するニコチンの弊害としては、プロラクチン抑制ホルモンであるソマトスタチンのレベルが高くなり乳汁分泌を抑制すること、また、オキシトシンによる射乳反射の抑制などの母乳分泌抑制が報告されている(※引用:「喫煙妊婦の初乳中ニコチン濃度に関する検討」著:金森ら)。ちなみに、射乳反射とは、赤ちゃんが乳頭を口に含むこと(吸啜反射)で、オキシトシンが分泌され、乳管から乳汁が押し出される現象である。
2.× 母乳中に移行「する」。母親の血液中のニコチン濃度は、自らの喫煙以外にも、父親など生活を共にする家族の喫煙による受動喫煙によっても有意に増加する。また、父母の喫煙により、乳幼児の受動喫煙も問題となる。非喫煙の両親に比べ、両親が喫煙する家庭の小児呼吸器疾患の発症頻度は約3倍である。さらに、乳児突然死症候群の発症頻度は、乳児の覚醒反応を遅延させるために約5倍の高率であることが明らかにされている(※引用:「-たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう-」厚生労働省HPより)。
3.〇 正しい。母乳の分泌を抑制する。1日に4本以上の喫煙をしている授乳婦は、非喫煙の授乳婦に比べて母乳分泌量は10~20%低下し、その低下は喫煙量が多いほど著しいことが明らかにされている。また、平成2年乳幼児身体発育調査結果においても、喫煙者の母乳分泌量は非喫煙者に比べて減少していることが報告されている (※引用:「-たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう-」厚生労働省HPより)。
4.× 母乳中の脂肪含有量は、「増加」ではなく低下させる。なぜなら、ニコチンの弊害としてプロラクチンが低下するため。ちなみに、プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。
たばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である。喫煙者の多くは、たばこの害を十分に認識しないまま、未成年のうちに喫煙を開始しているが、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べて、これらの疾患の危険性はより大きい。さらに、本人の喫煙のみならず、周囲の喫煙者のたばこ煙による受動喫煙も、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などの危険因子である。また、たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意志だけでは、やめたくてもやめられないことが多い。しかし、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、これらの疾患の危険性は減少する。
(※一部引用:「たばこ」厚生労働省HPより)
2 風邪の症状があり、市販の総合感冒薬を内服した母乳育児中の母親から授乳について質問があった。総合感冒薬の主成分はアセトアミノフェンであることを確認した。
対応で最も適切なのはどれか。
1.「人工乳に切り替えましょう」
2.「搾乳して母乳を与えましょう」
3.「直接授乳を中止する必要はありません」
4.「冷凍した母乳を解凍して与えましょう」
解答3
解説
・風邪の症状があり(市販の総合感冒薬を内服)。
・「母乳育児中の母親から授乳について」質問があった。
・総合感冒薬の主成分:アセトアミノフェン。
→アセトアミノフェンとは、医療用医薬品の「カロナール」と同じ成分での解熱剤である。赤ちゃんの解熱剤としても使われる成分である。お薬が母乳中に出てくる量は非常に少なく、赤ちゃんへの影響はみられていない成分のため、授乳中に飲んでも差し支えない。また、アセトアミノフェンのほか、授乳中に安心して飲める薬として、ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェンなどである。
1.× 「人工乳に切り替えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、アセトアミノフェンは、授乳しても安全とされているため。人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。
2.× 「搾乳して母乳を与えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、アセトアミノフェンは、授乳しても安全とされているため。搾乳とは、児の哺乳力が弱いか、陥没乳頭などでうまく捕乳できない場合に、母乳を絞って哺乳瓶で与える方法である。ほかにも、NICUに入院したときや、今後児に影響がかかる薬物を内服する治療が始まるときなどに用いられる。
3.〇 正しい。「直接授乳を中止する必要はありません」と伝え対応する。なぜなら、アセトアミノフェンは、授乳しても安全とされているため。
4.× 「冷凍した母乳を解凍して与えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、アセトアミノフェンは、授乳しても安全とされているため。搾乳した母乳を冷凍保存しておくことで、保育園や実家に赤ちゃんを預けたり、ママの外出時や体調が悪いときなどにパートナーが授乳を代わることができたりと便利である。
3 高プロラクチン血症に伴う無月経の原因となるのはどれか。
1.体重減少
2.下垂体の腫瘍
3.分娩時大量出血
4.ドパミン受容体刺激薬の内服
解答2
解説
プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。
1.× 体重減少は、神経性食欲不振症に伴う無月経の原因である。神経性食欲不振症とは、神経性やせ症や拒食症とも呼ばれ、太ることに対する過剰な恐れなどから過度な食事制限を行い、極限まで体重が減少した状態を指す。妊娠中は十分に認識されないことが多い。稀ではあるが、これは母親と乳児の双方に害を及ぼす可能性がある。過度な食事制限を行うため、糖の不足による代謝性アシドーシスや低蛋白血症、ビタミンB1の不足が起こりやすい。
2.〇 正しい。下垂体の腫瘍は、高プロラクチン血症に伴う無月経の原因となる。高プロラクチン血症の原因として、①薬剤(抗精神薬や降圧薬、抗潰瘍薬など)、②下垂体の腫瘍、③その他(視床下部の病気や甲状腺機能の低下、てんかん、慢性腎不全など)があげられる。高プロラクチン血症を発症すると女性ホルモンの分泌が抑制されるため、生理不順や無月経になることがある。
3.× 分娩時大量出血は、低プロラクチン血症(シーハン症候群)をきたす。シーハン症候群とは、分娩時に大量出血してショックに陥り、脳にある下垂体に血液が行き届かなくなり、下垂体の組織が障害(変性や壊死)されて働きが下がること(下垂体機能不全)によって起こる一連の症状である。したがって、下垂体から分泌されるホルモンの量が低くなるため、産後の乳汁分泌低下などが起こる。
4.× ドパミン受容体刺激薬の内服は、プロラクチンの分泌を抑制させる。つまり、高プロラクチン血症の治療に用いられる。一般的に、ドパミン受容体刺激薬は、脳内のドパミン受容体を刺激して、不足しているドパミンの作用を補うことで、パーキンソン病の症状を改善する薬である。一方で、ドパミンは乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)や成長ホルモンの分泌を抑える作用もある。
無月経(月経がない状態)には①原発性、②続発性、③その他のものがある。
①原発性無月経:正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。
②続発性無月経:規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし、以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。
③その他:解剖学的原因(妊娠を含む)、慢性無排卵、卵巣不全など
(※参考:「無月経」MSDマニュアルプロフェッショナル版様より)
4 更年期の期間で適切なのはどれか。
1.閉経の前後3か月
2.閉経の前後1年
3.閉経の前後2年
4.閉経の前後5年
解答4
解説
1~3.× 閉経の前後3か月/前後1年/前後2年は、更年期の期間ではない。
4.〇 正しい。閉経の前後5年が更年期の期間である。更年期とは、閉経の5年前から5年後までの約10年、つまり、生殖期から非生殖期への間の移行期のことをさすことが多い。閉経の年齢は人によって異なり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいる。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。
5 臍帯について正しいのはどれか。
1.臍帯の表面は絨毛膜からなる。
2.臍帯動脈は臍帯静脈よりも太い。
3.2本の臍帯静脈と1本の臍帯動脈がある。
4.酸素分圧は臍帯動脈血よりも臍帯静脈血で高い。
解答4
解説
(※図引用:「看護師イラスト集」看護roo!)
臍帯とは、胎児と胎盤とをつなぐ、ひも状の器官。つまりへその緒である。胎児は受精卵から作られるが、胎児付属物(胎盤や臍帯、羊膜)も受精卵の一部から形成される。これらは、胎児が子宮内で母体から栄養や酸素を得て老廃物を母体血に引き渡すために必要な、いわば胎児の生命維持装置である。そのやり取りのために、胎盤、臍帯には母児の血液が多量に潅流しており、その異常の発生は胎児の生命だけでなく、母児の各種トラブルや後遺症と深く関連する。胎児だけでなく、妊娠中の胎児付属物に対する超音波診断も重要である。
(※図引用:「25. 胎盤・臍帯の超音波像」日本産婦人科医会様HPより)
1.× 臍帯の表面は、「絨毛膜」ではなく羊膜からなる。羊膜は卵膜の胎児側最内層を覆う半透明の薄い膜で、胎盤の胎児側および臍帯の外周も覆う。コラーゲンなどのタンパク質で構成されている。
2.× 臍帯動脈は、臍帯静脈よりも「太い」ではなく細い。なぜなら、臍帯静脈は、酸素を豊富に含んだ血液を胎盤から胎児に運ぶ役割を持つため。一方、臍帯動脈は酸素が少ない血液を胎児から胎盤に戻す役割を持つ。
3.× 逆である。「1本」の臍帯静脈と「2本」の臍帯動脈がある。臍静脈とは、胎児循環で胎盤から胎児に血液を送る血管である。一方、臍動脈とは、胎児循環で胎児から胎盤に血液を送る血管のことである。
4.〇 正しい。酸素分圧は、臍帯動脈血よりも臍帯静脈血で高い。臍静脈は、胎児循環で酸素を最も多く含まれ、酸素分圧(酸素飽和度)90%である。一方、臍動脈の酸素分圧(酸素飽和度)は60%である。臍動脈とは、胎児循環で胎児から胎盤に血液を送る血管のことで、胎児の体内で発生した二酸化炭素や老廃物を多く含む静脈血が流れる。
胎児循環とは、胎児における血液の流れ方のことで、肺のかわりを胎盤が果たす胎盤循環が主体である。胎児の下腹部で大動脈から出た左右の臍動脈は、胎盤で母体の血液とガス交換および栄養分・老廃物交換を行った後、1本の臍静脈として胎児体内に戻る。その後肝臓を通じ、あるいは静脈管を通って下大静脈から右心房に入る。この血液と上大静脈から右心房に入った血液の大部分は、心房中隔にあいている卵円孔を通じて直接左心房に移り、左心室から大動脈に出る。一部の右心房から右心室に入った血液は、肺動脈に出るが、肺がまだ活動していないので、その主体は動脈管を通じて大動脈に流入する。